おにごっこ

おにごっこ -- ルキアスレのじゅ~にん 2006-02-25 03:08:44


木枯らしの吹く季節。今日もいつもどおりの授業を終え、いつものように来た道をたどり、寮に向かう。明日は日曜日。みんな、街で遊ぶ約束でも取り付けているのだろう。授業を終えた生徒たちで賑わう校内は、とても冬目前とは思えないほどの活気に満ちていて、そこだけまるで、冬を通り越して春になってしまったようだ。
レオン「オッス。お疲れさん。明日は学校休みだな。今日、どうする?どっか遊びに行くか?それとも、寮に戻って、朝まで耐久ウイ○レでもやるか?明日は学校ないんだから、徹夜してもそのあとゆっくりと寝られるぜ?」
そんな俺にもレオンから誘いの声がかかる。
俺「いや、遊びに行きたいのは山々なんだけど、どーも疲れててダメだ。帰って寝るわ。」
親友のレオンと遊ぶのは楽しい。できれば遊びたい。しかし、昨日の夜によく寝付けなかった為に睡眠不足な状態。少しくらい遊ぶくらいなら平気だが、何せレオンと遊ぶのはハードだ。やることなすこと全てが極端。そんな彼に付いていくのは、今は不可能と考えてやむなく断る。すると、彼は少し残念そうな顔をしたが、すぐにいつもの顔に戻り、
レオン「そっか・・・。まぁ、たまには身体を休めるのも良いわな。んじゃな!」
そういって今度はタイガのほうに向かって走っていった。おそらく、今度はタイガを遊びに誘いに行ったのだろう。短い付き合いではあるが、何となくそれが分かった。
                  *
「さてと。」 走っていくレオンの背中を見送り、出来がいいとは言えないが温かいベッドのある自分の寮のほうに今度は足を向ける。
寮と校舎はそれほど遠くない。いや、実際には結構どころか、かなり距離はあるのだが、そこは魔法学校。RPGでいうところのワープゾーンのようなものが作られていて、そこから寮に直接行ける。ちなみにその場所は校舎からおよそ5分ほどの場所に設置されている。よって、通学にかかる時間は約5分。よほどの寝坊でもしない限り、遅刻することは滅多にない。ほぼ全ての生徒がこれを利用している。(サンダースは噂によると、片道1時間半かかる道を毎日、箒で通っているらしい。)
そんなわけで、いつものようにその場所に向かう俺。この疲れた身体にムチ打って、箒で帰る気など毛頭ない。校舎正面から並ぶ並木道を歩いていく。すると遠くのほうから甲高い子供の声がいくつか聞こえてきた。
子供たち「あはははは、ここまでおいで~。」「こっちこっち~。」
俺「こんな寒い中、外で遊んでるのか。元気だねぇ、子供ってのは。」
自分もかつてはあんなふうに、暑いとか寒いとか気にせずに外で遊んでいたのを思い出しつつ、そんなセリフを吐いてみる。
俺「この声の感じからいって、3、4人くらいだな。男の子と女の子か。あの頃って、男だとか女だとか、そんなの関係なく遊ぶんだよなぁ。大人になっていくにつれて・・・」
なんてことを考えながらも、声がする方に歩いていった。
                  *
並木道の先には大きな広場がある。自然いっぱいの公園みたいなものか。その一角に寮につながる移動ポイントがあるのだが、その広場に着いたときに見覚えのあるやつを見つける。
「ルキア?」
先ほどから聞こえてきていた甲高い声、もちろんその声は子供の声だった。だが、どうやら中にはルキアの声も混じっていたようだ。ルキアとは、同じクラスというのもあって、結構仲がいい。いつも聞きなれているルキアの声。しかし、彼女の声も高いため、遠くからでは子供の声のように聞こえたようだ。
しばし、様子を伺う。
「おねえちゃん!こっちだよ~。はやくはやく~。」と男の子。見た感じ、どうやらまだ、幼稚園に通っているくらいの子みたいだ。
その子に併走するように、今度は女の子。男の子より少し幼い。きゃっきゃ、きゃっきゃ、言いながら一緒に逃げる。兄妹だろうか。その子達を笑顔で追い、「つかまえた~♪」と
女の子を後ろからルキアが抱きしめる。つかまった女の子の表情も笑顔。「えへへ~♪」ととても嬉しそうだ。女の子が捕まったのを見て、男の子もルキアのほうに駆け寄る。
「おねえちゃん、ぼくもぼくも~。」そう言って女の子と同じように抱きしめてもらうことをせがむ。
ルキア「はいはい、こっちにおいで。」そう言って二人ともぎゅっと抱きしめる。
俺「そういや、小さい弟と妹がいるって言ってたっけ。」
普段は学校の寮住まいで、家族とは離れて暮らしているものの、長い休みに入ればみな家族の元へ帰る。それは、ルキアも同じだ。きっと、家ではあんなふうに弟と妹の相手をしているんだろう。もともと人付き合いや世話をするのが得意なルキアにしても、慣れていなければ、ああはいかない。
男の子「ぼく、お姉ちゃんだいすき!ぼくおおきくなったら、おねえちゃんとけっこんする!」
女の子「だめ~!おねえちゃんはわたしとけっこんするの~!」
男の子「おんなの子どうしじゃ、けっこんできないんだぞ~!」
女の子「え~?じゃあ、おねえちゃんみたいな、やさしいおねえさんになる~!」
二人の微笑ましいやりとりを笑顔で見つめるルキア。
そんな二人のやりとりの頃合いを見計らって、
ルキア「さ~て、おにごっこのつづきはじめるよ~。こんどは逃げきれるかな~?」
今度は少しイジワルそうな表情をして、二人に言う。
その表情を見たふたりは、それがスタートの合図とばかりに走り出す。
ルキア「ほらほら、まちなさ~い♪」と追いつくか、追いつかないかギリギリのスピードで二人を追い回す。
男の子「やだよ~だ!はははっ!」後ろを少し振り返りながら、逃げる。
女の子はと言うと、先ほどはつかまってしまったので、今度はつかまらまいと必死で逃げている。
俺 「本当に姉妹みたいだなw」
こんな寒空の下のぽかぽかとした温かな光景に、なんとなく口元が緩んでしまった。
                 *
                 *
                 *
キーンコーンカーンコーンと、午後五時を知らせる学校のチャイムが鳴った。
いつの間にこんな時間になったんだろう。30分近く、声もかけずに見ていたようだ。
チャイムの音に気付いた男の子が思い出したように、辺りの様子をうかがう。
男の子「もうかえらなくちゃ!」
急いで身体の割りに大きめのカバンを背負う。
男の子「ほら!はやくはやく!はやくかえらないと、おかあさんにおこられちゃうよ!」
それを聞いた女の子もあわててカバンを背負おうとするがなかなかうまく背負うことができない。
それを見たルキアは、何も言わずにカバンを背負わせてあげる。
男の子「おねえちゃん、ありがと~!またね~!」と後ろを振り向きながらも駆け出す。
女の子「まってよ~、おにいちゃん!」
男の子を追いながら、その子もまた「おねえちゃん、ありがと~♪」と遊んでもらったお礼を言って移動ポイントの方へ走っていった。
二人の去っていく姿を見つめるルキアの表情は、離れて暮らしている弟や妹を思い出したのだろうか、どこか寂しげで、俺は声をかけずにはいられなかった。
俺「よっ!お疲れさん!ずいぶん、楽しそうだったな。」
そんな表情をしている彼女の気を紛らわせようと、できる限りの笑顔を作って話しかけた。
突然横から声がして、振り向くルキア。一瞬、驚いた表情を見せたが、その表情もすぐにいつもの明るい表情に変わる。
ルキア「えっ?いつからいたの?」
俺  「ん?30分くらい前かなぁ。」
ルキア「声かけてくれればいいのに~。」
俺  「だって、あまりにも楽しそうでさ。声かけるの悪いかなって。」
ルキア「そんなことないよ。あの子たちも、きっと一緒に遊びたかったと思うよ?」
俺  「そうかな?あいつら、ルキアだから懐いたんじゃないか?俺じゃダメだよ。ぱっと見、ほら、イジメそうだろ?w」
両手を左右に広げて見せる。すると、
ルキア「そんなことないよ。」と笑って答えてくれた。
                *

ルキア「帰ろっか、あたし達も。」
俺  「そうだな。」
夕日が沈む様を背中に感じながら、移動ポイントの方へ歩き出す。
二人の間に、会話はない。別に、何を話していいのか分からないのではない。
ただ、ふたりとも先ほどまでの出来事に少しの間だけ浸っていたくて。
俺「あのさ・・・。」
沈黙を破って、一声かける。
ルキア「ん?」
その急な一声に俺の顔を見るルキア。
「なんつーかさ。もうちょっとで冬休みに入って、家族に会えるわけだしさ、落ち込んだりするなよ?」
何を言いたかったのか、ピンときたようだ。すぐさまに笑顔で、
ルキア「ふふ、心配してくれてありがとっ♪だいじょうぶだよ。それより、今度は一緒にやるよっ♪」
俺  「え?やるって、なにを?」
ルキア「決まってるじゃない。お・に・ご・っ・こ♪一緒にしよっ♪」
俺  「マジで?俺、そんなに子供は得意じゃ・・・。」
それを遮るように、
ルキア「いいから、いいから♪あたしの落ち込んでいる顔を見た罰だよ♪」
そう言って、軽くスキップをして先を行く。
俺「お、おい!ちょい待てって!」
ルキア「ヤダよぉ~だ♪つかまえてごらん♪」
スキップをして逃げる彼女の真っ赤な髪が揺れた。


   おわり



名前:
コメント:
最終更新:2006年02月26日 23:33
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。