ルキアの目玉焼き

 時刻は7時半。俺はうるさい目覚まし時計に悩まされていた。
 ”春眠暁を覚えず”とはよく言ったもので、やはり春の朝は眠い。ああ・・・、
目覚ましがなってるから、今日って何か用事があったっけ?
 俺はまぶたを閉じたまま目覚まし時計を止めた。何か心に引っかかるもの
はあるが、今はそれ以上に眠い。再びまどろみの中に落ちようとしたとき誰かが
部屋に入ってきた。
 「朝だよ。早く起きてよ~」
 (ん・・・。妹か・・・)
 俺はだんまりをきめこんだ。妹相手なら何とかなる。
 「起きないと実力行使しちゃうよ?」
 (ふん、貴様のボディプレスなど軽すぎて効かぬわ・・・)
 心の奥底で勝ち誇り、わざと仰向けになった。
 (さあ、妹よ!俺を超えてみろ!)
 「じゃあ、ルキアお姉ちゃんいくよ」
 「うん、派手に決めちゃお!」
 予想を裏切る発言に俺は青ざめた。
 (ん?ルキア!?まずい!!)
 俺が起きようとしたときには、高く飛んだ妹とルキアが俺の体の上にいた。
 「ちょっ・・・! ちょっとまて!! ぐはあああっ!!」
 妹の背中が俺の下腹部に、ルキアの両膝が腹部にめり込んだ。
母「今日はやけに大きな音がしたわね」
妹「うん、今日はセントーンにしたの」
ル「ちょっとやりすぎたかな?」
母「あら、あのぐらいで壊れるほどこの子はやわじゃないわよ」
 腹部を押さえながら台所に行くと母親を含め妹とルキアの三人が楽しそうに
話している
漏「お袋・・・、なぜルキアを勝手にあげたんだ?」
母「あら?幼馴染みだからいいじゃない」
漏「そうだけどさ・・・」
 俺は少し憮然としながら朝食を済ませた。気のせいだろうか?いつもと少し
朝食の味が違う気がした。

 朝食を食べ終えて素早く身支度を済ませると玄関には妹とルキアが待って
いた。二人は黒い制服に身を包んでいる。
母「ルキアちゃん。もしこの子がサボろうとしていたら、投げるなり極めるなり
 絞め落としていいからね」
ル「は~い」
 二人の会話を受け流しつつ俺は玄関を出た。
ル「でも、君のお母さんって料理上手だね」
漏「あ、ああ。しかし、今日の目玉焼きは美味かったなぁ。焦げ具合が最高だったぜ。
 あの目玉焼き作れる人と結婚してえな」
妹「お兄ちゃん、その目玉焼きつくったのルキアお姉ちゃんだよ」
ル「ちょっ、ちょっと・・・」
 その言葉を聞いたとき俺とルキアの顔が赤くなった。妹は何か解さない顔をしている。
それから俺とルキアの間に会話がなくなった。

 アカデミーの玄関で妹と別れ、ルキアを二人っきりになってしまった。周りに人がいるのに
二人っきりと言う表現はおかしいかもしれない。だが、朝の俺の一言で俺は変な想像をして
しまいさっきからルキアを妙に意識してしまっているのだ。
 悲しいことに教室に入っても上手く会話が出来なかった。

 アカデミーの始業式とホームルームを終えて、俺は足はやに家路につこうとした。
(帰ってとりあえず落ち着こう・・・)
 バックを背負い、教室から出ようとしたとき。俺の背中を誰かが強く叩いた。
ル「一緒に帰ろ!」
 振り返ると今朝の登校中のルキアとはまったく違う。いつもの元気なルキアがいた。

 朝とは違い、元気なルキア。そんなルキアを見て俺は心底安心していた。
(俺はあの目玉焼きを褒めたのであって、べ、別にルキアを嫁さんにしたいというわけでは・・・)
ル「ねえ」
漏「ん?なんだ?」
ル「また・・・、朝ごはん作りにいっていいかな?」
漏「えっ・・・」
 突然のことに俺はあっけにとられてしまった。
ル「いや、その・・・嫌ならいいんだけど・・・」
漏「ルキア・・・」
ル「な、何?」



漏「あの焦げ目、忘れるなよ」
ル「・・・。うん!」

 それからは俺もルキアもいつも通りだった。近所で別れ際、
ル「これから毎朝行くけど、起きなかったら妹さんと強引に起こすからね」
漏「ああ、覚えてくよ」
 ルキアの背中を見送り俺は自宅に向かった。家に着き、自室の寝台に寝転んだ。
(まあ、無理矢理起こされるのは嫌だが・・・ルキアの手料理が食えるならそれもいいかな)
 俺はこれからのことを思うと今まで面白くなかった学園生活が楽しくなる気がした。

 そう、これからもルキアと共に過ごせると思うと・・・。
最終更新:2006年01月04日 19:04
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