はじめての多言語タイピング(2016年版)

 いよいよ今年も、Intersteno世界大会のシーズンがやってきました。
 年に一回の世界大会、色々な楽しみ方があるとは思いますが、このWikiを見てくださっているということは少なからず多言語タイピングにも興味があるのではないでしょうか?

 「多言語タイピング」というと難しく感じるかもしれませんが、ある程度言語数を絞ればそれほど難しいものではありません。

 ガチで多言語を極める人はもちろん、

  • 日本語や英語に挑む前のリハーサルとして打ちたい
  • 世界の言語やタイピング事情を知りたい
  • タイピングを始めた頃のようにサクサク成長する楽しみを感じたい
  • 多言語が打てることを周囲に自慢したい
  • 年に一回のお祭りなので色々打って楽しみたい

などなど、様々な動機の人が多言語タイピングに興味を持ってもらえればと願っています。

 この記事では、これから多言語タイピングを始める方を対象に、日本語・英語も含めて6~7言語程度を制覇することを目標とした場合、どの言語を練習すればいいのか、などの情報をまとめています(それ以上の言語数を制覇するための情報も簡単に記述しています)。

 


0.配列について

多言語タイピングの配列には、大きく分けて
 1)各言語の標準配列を使用する
 2)U.S.インターナショナル配列を使用する
 3)配列変更ソフトを使用する

という3種類のアプローチがあります。


1)各言語の標準配列を使用する
 OSにはそれぞれの言語ごとの配列が標準でインストールされています。これを使えば導入が比較的容易ですし、さらにそれぞれの国で実際使われている配列なので、効率的に打鍵することができます。実際、日本人初の17言語制覇を成し遂げたジュニアさんも言語ごとに配列を切り替えており、歴代2位の記録(81394点)を出したDaniel Chen氏も配列変更はおこなっていないそうです。
 一方で、各言語の配列ごとに記号や文字の位置が大きく異なることがあり、配列同士が混同しやすいことがデメリットとして挙げられます。ある程度の速度で正確に打てるようになるには、それなりに練習時間が必要となるでしょう。

 

2)インターナショナル配列を使用する
 OSには、各言語ごとの配列とは別に「USインターナショナル配列」という配列も入っています。この配列を使えば、一つの配列でInterstenoの半数近くの言語を打つことができます(さらに拡張配列を導入することでほぼ全ての言語を打つことができます)。昨年のInterstenoオンライン大会では、dqmaniacさんをはじめ多くの方がインターナショナル配列を使用し、短期間で記録を伸ばしました。かなり習得のしやすい配列だと言えるでしょう。
 ただし、一部の文字を入力する手順が煩雑であり、言語によってはロスが大きくなることもあります。さらに記録を伸ばすためには、他の配列と併用したり、配列変更が必要になってくるかもしれません。

 

3)配列変更ソフトを使用する
 Interstenoでは、配列変更がルール上認められています。そこで、歴代最高得点(81505点)のSean Wrona氏をはじめ、多くの参加者がMicrosoft Keyboard Layout Creator (MSKLC)などの配列変更ソフトを使用しています(配列変更ソフトの紹介ページはこちら)。

 また、paraphrohnさんやまあ、まったりとさん、たのんさんが、多言語タイピング用の自作配列を公開しています。習得のしやすさ、打ちやすさとも優れており、興味があればぜひ一度使ってみることをお薦めします。
 まあ、まったりとさんの配列は、一つの配列で38もの言語が打てるようにデザインされているのが特徴で、右手小指を使う頻度が比較的多い配列です。
 たのんさんの配列も単一の配列で日本語・ロシア語以外の言語を打つことができます。デッドキーが2種類に限定されており、2打鍵以内にすべての特殊文字が打てるようになっています。配列の文字の並び方が視覚的にわかりやすいので、他の配列と比べてとっつきやすく感じるかもしれません。
 paraph配列集は言語ごとに配列を使い分ける「配列集」になっていて、一見すると視覚的にはややこしそうに見えるかもしれませんが、実際に打ってみれば意外とすんなりと覚えられるのではないでしょうか。QWERTYの動きがそのまま活かしやすくなっているので、元々ローマ字入力や英語がある程度打てる方であれば、その速度がそのまま反映されやすい配列と言えるでしょう。
 また当サイトでは、インターナショナルの拡張配列(通称「かり~配列」)を配布しています。この配列の対象者としては、「とりあえずインターナショナル配列で打てる範囲の言語をすべて打ち終えた人が、残りの言語も急遽攻略することにした」というような方を想定しています。インターナショナル配列で始めたけど残りの言語も打ちたくなった時には検討してみてください。一方で欠点として、インターナショナル配列のところでも書いたとおり、言語によってはロスが大きくなることもあります。

 人それぞれ打鍵の癖や多言語タイピング習熟に割ける時間、目標などに応じて、理想の配列は変わってきます。色々と考えるよりも、まずは既存の配列を色々と試してみて、不満を感じたらその時は自分なりの配列変更を導入してみるのがよいのではないでしょうか。

 

 本記事では、導入・習得のしやすさの観点から、主にインターナショナル配列を導入することを想定して書いていきますが、それぞれの目的に応じてお好みの配列をご使用ください。

 なお配列の導入手順については「PCの設定方法のページをが確認ください。


1.オランダ語

 まず初めに紹介するオランダ語は、こんな見た目の言語です(Interstenoの練習画面より)。

 英語と同じく「ゲルマン語派」というグループに属します。例えば冒頭の"de negatieve effecten van alcohol"(アルコールの悪影響)という文字列は、英語ができる方が見れば大体意味が掴めるのではないでしょうか?

 オランダ語の最大の特徴は、特殊な文字が非常に少ないことです。たとえば上記の文章であれば、特に配列変更しなくても打つことができます。文章の運がよければ、一つも特殊な文字に出会わずに打つことができるほどです。まずはぜひInterstenoのTraining10FastFingersなどで一度打ってみてください。

 ただし、特殊な文字がまったく出てこないわけではありません。アキュート・アクセント(áéíóú)やグレイヴ・アクセント(è)、トレマ(äëïöü)と、実は特殊な文字の種類だけでみると西欧の言語の中でも比較的多くの種類が出てきます。慣れないうちは無視しても構いませんが、Interstenoで確実に失格を避けるためには、これらの特殊な文字にも少しずつ慣れる必要があります。多言語タイピングにおける最初の山と言えるでしょう。これらが打てるようになると、打てる言語の種類はかなり広がります。
 なお、インターナショナル配列やオランダ語配列における特殊な文字の入力方法については、オランダ語のページを参照してください。

 また、オランダ語の難しい点として挙げられるのが、複合単語の存在です。たとえば英語の場合、4000という数字はforty thousandと表記されますが、オランダ語の場合は上記の文章でも六行目にあるように、veertig(英語のforty)とduizend(英語のthousand)がくっついてveertigduizendと書かれています。そのため一つ一つの単語が長くなりやすく、手が止まってしまいがちです。逆にいえば、オランダ語で合格圏内に到達できるようであれば、それよりも単語が短く打ちやすいスペイン語、イタリア語などは比較的すぐに合格圏内に到達できると思います。


2.スペイン語

 次に紹介するスペイン語は、こんな見た目の言語です(Interstenoの練習画面より)。

 オランダ語のように複合語がなく比較的単語が短いので、多言語の中でも打ちやすい言語と言われています。オランダ語でInterstenoの合格圏内に到達できる方なら、少し練習すればスペイン語でも容易に合格圏内に到達できるでしょう。

 ただしオランダ語と比べると特殊な文字の比率が大きく上がります。上の画像でも、たとえば2列目にóやáといった文字が確認できますが、このoやaの上についた点はアキュート・アクセントと呼ばれ、スペイン語以外にも様々な言語で使われる記号です。スペイン語では他に、トレマ付きu(ü)チルダ付きn(ñ)が使われます。

 オランダ語は特殊な文字が少ないので、配列変更をしなくても失格せずに打てる可能性がありますが、スペイン語に関しては配列変更をしなければ間違いなく失格となるでしょう。

 スペイン語に使える配列としては、スペイン語配列や、U.S.インターナショナル配列が挙げられます。この2つはどちらもスペイン語を打つためにデザインされているので、どちらの配列を選んでも大きな差はありません。フランス語やポルトガル語など様々な言語に応用が効くのはU.S.インターナショナル配列なので、それらも同じ配列で打ちたい方はU.S.インターナショナル配列をお勧めします。一方、各国の配列を極めたい方、スペイン語とイタリア語以外にロマンス語はの言語を打つ予定のない方はスペイン語配列がよいでしょう。詳しい打ち方はスペイン語のページを参照してください。

 また他に、インテルステノ用paraph配列集まあ、まったりとさんの配列たのんさんの配列などの選択肢もあります。

 

イタリア語

 イタリア語も、スペイン語と同じグループに属する、かなり打ちやすい言語です。

 イタリア語で頻繁に使われるアクセント記号はグレイヴ・アクセント(àèìòù)と呼ばれるもので、スペイン語などで使われるアキュート・アクセントとはアクセントの点の向きが逆になっています(例:àとá)。

 ただしイタリア語でも、éに限ってはアキュート・アクセントが使われることもあり、それぞれのアクセント記号を混同しないように注意する必要があります。

 イタリア語に使える配列として、イタリア語配列の他、スペイン語配列やU.S.インターナショナル配列が挙げられます。イタリア語配列はグレイヴ・アクセントが一打鍵で入力できるので、習熟すればかなり早く打てるようになるでしょう。ただし、その威力を発揮できるまでにはある程度の練習が必要になります。

 一方、インターナショナル配列でグレイヴ・アクセントを打つ練習をしておけば、フランス語やポルトガル語など、他のロマンス語派の言語を打つ際に非常に楽になるでしょう(同様のことはまあ、まったりとさんの配列たのんさんの配列などにも言えます)。


3.ドイツ語

 ドイツ語は、オランダ語や英語と同じグループの言語です。

 使われる特殊文字の種類は3種類のウムラウト(äöü)エスツェット(ß)の合わせて4つだけなので、比較的とっつきやすいのではないでしょうか。ただし、オランダ語と同様一つの単語が長いことや、名詞の語頭がすべて大文字になることから、スペイン語やイタリア語と比べると速度は少し伸ばしにくい面もあります。

 インターナショナル配列では、右Altキーを押しながらQ,Y,O,Sのキーを押すことでそれぞれの文字を出すことができます。

 もしある程度練習時間がとれるのであれば、特殊文字がすべて1打鍵で出せるドイツ語配列を練習してみてもいいかもしれません。ただし、通常のQWERTY配列と異なりZとYの位置が逆になったQWERTZ配列なので、慣れるまでは少し時間がかかることを想定したほうがよいでしょう。
 QWERTY配列でドイツ語配列を打ちたい場合は、MSKLCなどの配列変更ソフトの活用をお勧めします。

 

フィンランド語

 フィンランド語はこれまでのものと言語のグループは大きく異なりますが、特殊文字はドイツ語にも使用されたウムラウト(ä, ö)以外はほとんど出てきません。そのため、ドイツ語と同じ配列を流用することも可能です。

 ただし、フィンランド語は言語の特性上速度が出にくく、ウムラウトが連続して出ることもしばしばあります。QWERTYの実力によっては、かなり苦戦する可能性もあります。ドイツ語が失格ラインギリギリの方は、フィンランド語配列のように、一打鍵でウムラウトが出せる配列に思い切って変えることをお勧めします。覚えなければいけない文字は二つだけなので、何度か練習すればすぐ馴染むはずです。


 ここまで紹介した言語に英語・日本語を加えると7言語制覇できたことになります。

 さらに、フィンランド語が失格ラインを超えられるくらいの地力の持ち主であれば、まだまだ挑戦できる言語はたくさんあります。
 たとえばロマンス語派はスペイン語・イタリア語以外の言語も比較的打ちやすく、特にインターナショナル配列でも打つことができるフランス語ポルトガル語はぜひ挑戦してみてほしい言語です。また拡張配列などを用いれば、ルーマニア語も打つことができます。
 また、同じく拡張配列などで打つことができるクロアチア語も、特殊文字が5種類しかなく、とても打ちやすい言語です。練習すればドイツ語・フィンランド語より高得点を叩き出すことも夢ではありません。

 残りの言語はかなり難易度も上がりますが、特にポーランド語トルコ語に関しては、paraph配列集が威力を発揮する言語なのではないでしょうか。短期戦で挑むなら、ぜひ導入をご検討ください。
 残りの4言語(チェコ語、スロバキア語、ハンガリー語、ロシア語)に関してはどの配列を用いてもかなり難易度が高い言語ですが、ここまで失格ラインを超えてこられた方であれば、残りも十分失格ラインを超えられる可能性はあるでしょう。ぜひ挑戦してみてください。

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