我が家のいつもの昼食時

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匿名ユーザー

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これはあわあわpの【初音ミクオリジナル曲】『noodle(ぬーどる~)』【ネギラーメン】という曲をテーマにしたSSです。

また、にゃっぽんのカナの日記にて改変前verを上げてます。


 

「マスター、またカップ麺ですか? 」
我が家の紅一点、VOCALOID2 CV-01の初音ミクがそう声をかけてくる。
VOCALOIDだのCVだの横文字がからっきしな俺は彼女を歌う機械だと考えている。
「たまには自炊とかしたらどうなんですか? 私はネギ一本で構いませんよ、全然」
そして驚くべきことにその機械であるはずのミクは食事をする。
別に食事をしないことで支障があるわけではないらしい。

にもかかわらず、彼女の食、否ネギに対する執念はすさまじいもので事ある毎に所望してくる。
「だったらお前が作れよ、一応性別的には女なんだろ」
カップ麺を開け、薬味を入れながら俺はそう言う。
「マスター、それは時代錯誤な考え方ですよ。そもそも私は歌うだけですよー」
なぜか勝ち誇ったかのようにミクは俺に向かってそう言う。
そんな彼女の言葉に俺は大人であるからネギを食べてるじゃないか、とか役に立たないな、などという突っ込みは入れない。
別に入れるお湯の量に気を向けていて返事をするのが面倒だったから、とかいう理由ではない。


お湯を入れてふたをし、ミクをみると少し顔を赤らめて何かゴニョゴニョと言っている。
「ミク、どうかしたか、ネギか? 」
不思議に思った俺がそう優しく問いかけたところ、ミクは慌てながら
「そ、そんなことよりそれは何味なんですか!? 」
と叫ぶ。
流石いつも発声練習をしているだけあって、耳がキーンと鳴り一瞬だけ意識が遠のく。
しかしミクは、俺のなけなしの優しさよりラーメンの味を気にするのか。
そうか、俺のなけなしの優しさはそんなことなのか……。
若干へこみつつも俺はたまたま家に残っていたカップ麺の中から味の確認もせずに選んだことに気づき三分という時間を待ってるカップ麺に視線を走らせる。
「えーっと……」
何味かを言おうとしたその時だった。
「あ、あの。えーっと、さっきの話なんだけど……」
ミクが俺よりも先に口を開く。
また話の転換か、さっきから俺は尽く言うことや言おうとしてることを流されてる気がする……。
「さっきって、自炊とかそういう話か? 」
更にへこみつつもそう尋ねると、彼女は首を縦に振る。
「そう、それです! もしも私が食事を作れたら……」
そうミクは話し始めるが、その内容に俺は彼女に胡乱な眼差しを投げかけざるを得なかった。
しかし彼女はそのことが気に入らなかったらしく、少し怒り出す。
「何ですか、その失礼な視線は。私だって料理くらい出来るはずですよ、きっと、たぶん……」
どんどん勢いが無くなっていく彼女に俺の中の疑いの気持ちは少しずつ強くなってくる。
「いいわ、当レストランにはメニューはありません!

食べたいものを言ったら何だって作ってあげますから! 」
もしもの話じゃなかったのか、とかレストランってなんだよ、とか言おうと思った。

だが、今は俺が何を言っても火に油を注ぐことになりそうだったから口を噤む。
「例えばネギラーメンとかネギカレーとかはどうですか?

ネギシチューにネギライス、焼きネギ、揚げネギ。何でも作れますよ! 」
自信満々な態度で俺にそう言い切って来るミクに、俺は思わず口を開いてしまう。
「どうって、全部ネギばっかりじゃないか……」
これでネギがほとんど入ってなかったら詐欺になるほどの名前ばかりだ。
そのレストランの常連はお前くらいだろう。
「そ、そんなことは……。えーっと、ネギ炒めにネギサラダに、え、あれ、あれ!? 」
俺の指摘にうろたえてるミクを見て俺はようやく彼女が本気で気づいてなかったことを知り、つい笑ってしまう。
「に、二分経過してますよ!! 」
顔を赤く染めて視線をさまよわせて時計を見て、おそらくはさっきの事をごまかす為にミクはそう叫ぶ。
さっきの叫び声よりも高く大きく、アパート住まいの俺としてはご近所さんのことが気になってしまう。
「俺はきっちりカップ麺の容器に書いてある時間を計って食べる派だ。固めは好きじゃない」
そう返すと、彼女はなぜか得意になって嬉しそうに口を開く。
「知ってますよー。だから後一分はかま……な、なんでもないです!! 」
せっかく戻りかけていたのに、また顔に血が上り始め、そっぽを向く。
そんなミクを見て、俺はとりあえず見えている後ろ頭をなでてみたが、その手は無言のまま弾かれてしまった。



「あ、マスター。それって何味なんですか? 」
少しして機嫌も直ったのか、ミクはそう聞いてくる。
いや、お前さっきそれ聞いたじゃん……と思ってる間にミクは目を輝かせて畳み掛けるように口を開く。
「味噌ラーメンに、ネギラーメン。塩ラーメンにネギラーメン。

それからネギラーメンとネギラーメンと豚骨ネギラーメンに……」
「ネギばっかりじゃねーか」
さっきも同じようなことを言った気がするが、とりあえず口に出してみるとミクは笑って、
「そんなことないですよー、あとはネギラーメンにネギラーメンにネギラーメン! 」
そんなにネギラーメンがよかったのか。
若干呆れながら俺はようやく答えを言う。
「醤油ラーメンだ」
俺の言葉にミクは衝撃を受けたようで、まるで地球外生命体でも見るかのような目で俺のほうを見てくる。
「なにやってるんですか、マスター! 私が食べるネギが無いじゃないですか! 」
本日三度目、今までで一番甲高いミクの叫び声はおそらく町中に響いただろう。

 

 

 

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