いつまでも・・・

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匿名ユーザー

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自ブログより転載】





「いろんなKAITOの動画見てたらすっごく欲しくなっちゃってさ」

この間マスターがそんなことを俺に話した。
俺がマスターの元へ届いたとき、マスターは小さい子供のようにはしゃいで喜び、俺をインストールしたという。
初めてマスターと出会ったときのことをまだハッキリと覚えている。


「KAITO、待ってたよ!これからよろしくね」


俺に笑顔を向けてそう言ったマスター。
つられて自然と笑みがこぼれた。

マスターは、俺に何を歌わせようか、喋らせようかとウキウキしていた。
とりあえずマスターは、試しに『aーーー』と俺に声を出させた。
そのときも、すごく嬉しそうにしていた。

俺はこれから始まる生活はどんな風になるだろうとワクワクした。
そして、どんな歌を歌わせてくれるのか楽しみだった。


…最初はそんな気持ちでいっぱいだったんだ。


俺がインストールされてから4日経ったけど、まだ歌わせてもらっていない。
この4日間、マスターはずっとPCを開いていたけど…。
でも、まだ4日しか経っていないから、俺は何も言わず気長に待っておくことにした。

・・・・それから2週間。
まだマスターが俺を歌わせようとする気配がない。
なんか、動画を見て笑ったり、画面に向かって少しだけ独り言を言ったりしていた。
他のマスターのKAITOを見ては
「うまいなぁ~…」
とか言ったりして、羨ましそうにしていた。

その次の日からマスターは、PCでボーカロイドの動画を見るたびに
「ああ…KAITOを歌わせてあげなきゃな~…」
と1日に一回くらい呟くようになっていた。
もう口癖みたいになっていた。

『マスター、俺いつまでも待ってますよ』

だから、焦らずに、マスターのペースで俺に歌を教えてくださいね。


…そんなふうに待っていたら、いつの間にか1ヶ月以上経過していた。
マスターはずっと俺を放置している。
口癖も、もう無い。
俺のことが嫌いになったのだろうか。
俺がマスターのPCに存在していることも忘れてしまったのだろうか。
・・・ああ・・・



――――歌いたいな・・・



つい、本音が出てしまう。
“いつまでも待ってる”なんて言っておいて…。


それから更に1ヶ月が過ぎてしまった。
マスターは相変わらず動画を見ている。
俺は…PCから出してもらえず、マスターが歌わせてくれるのをただ待つばかり。
歌えないのなら、もういっそのことアンインストールしてくれたほうがマシだと思ってしまった。

けれど…まだマスターと別れたくない。

約2ヶ月前に見たマスターの「よろしくね」と言った時の笑顔がまだ頭の中に鮮明に残っていた。
そのときに俺は
『この人に歌を教えてもらいたい』
『この人のもとで歌いたい』
と思ったのだから。
だから、まだ1年も経っていないのに、マスターにアンインストールされるのは…悲しくて、ツラくて、嫌なんだ。

ねぇ、マスター

俺のこと忘れないでください。

嫌いに、ならないで・・・



「・・・・KAITO」

『!!』

しばらくして、マスターが俺を呼んだ。
一瞬驚いたけど、俺は嬉しくて笑顔で返事をした。
でも、ふと嫌な考えが頭をよぎる。


――――アンインストールされるのではないか…?


・・・と。
けれど、次のマスターの言葉にその考えは消え去った。



「なんか、ずっと放置してたね…ゴメンね…。今日、歌わせるから」



そう言った。

すごく嬉しかった。
やっと歌うことができるんだ!

後で知ったんだけど、マスターはこの2ヶ月間、かなり時間を空けながらだけど曲を作っていたらしい。
でも、なかなか思った通りにいかないし、前奏ができてもそこから先に進めなかったりと、曲作りにすごく苦戦していたようだ。

「初心者なんだけどさ、簡単な曲すら作れないからかなりヘコむ…。いつKAITOにオリジナル曲を歌わせてあげられるか…。こんなマスターでごめんね」
『謝らなくてもいいんですよっ?前にも言いましたけど、俺はいつまでも待ちますから。マスターのペースでいいんです』
「…うん。…ありがとう、KAITO」


今、俺はカバー曲を歌っている。
マスターは、歌と伴奏がズレてるとか、一部声がこもるだとかで頭を悩ませていた。
そうしてなんとか出来上がり、嬉しそうなマスターを見て、俺も嬉しくなった。
ますますこの人のもとにずっと居たいと思った。


マスター、


これからもよろしくおねがいします。


End


~オマケ~

「KAITO~!」
『?なんですか、突然俺をPCから出して…』
「いつもありがとう。んで、こんな難しい歌をよく歌えましたってことで褒美」
『わ…!こ、これっ…ダッツじゃないですか!しかも5つも!!マスターありがとうございます!』
「どういたしまして。(予想以上に喜んでんだけど…)」



読んでくださってありがとうございました!!

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