SF百科図鑑 マージ・ピアシー『時を飛翔する女』学芸書林


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December 29, 2004

マージ・ピアシー『時を飛翔する女』学芸書林

時を飛翔する女前から欲しかった邦訳本、遂に入手。プリングルの100冊に入っています。続編の『彼、彼女、それ』がアーサー・C・クラーク賞を受賞しているようなので、本書が気に入ったら読んでみる予定。しかし、クラーク賞の受賞作って過去読んだものに外れが少ないので、私の好みに合った賞なのかもしれない。他の受賞作も要チェックかも。幻想文学賞も米国のより英国のほうが好みの作品が多いしな。
silvering at 21:21 │Comments(8)TrackBack(0)読書

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この記事へのコメント

1. Posted by slg   December 29, 2004 21:59
冒頭だけ読んだ。初っぱなからぐいぐい引き込まれる。主人公のところへ、ひもの男に売春婦をさせられている妊娠中の姪が男の暴力から逃れて逃げ込んでくる。男は中絶しろといいながら怒鳴り込んでくる。フフッ、凄そう。いきなりフェミニズム全開のテロリズム小説な予感。ワクワク。
2. Posted by slg   December 30, 2004 03:56
アーサー・C・クラーク賞受賞作、AmeQサイトによると次の通り。

1987

* Winner 『侍女の物語』 The Handmaid's Tale マーガレット・アトウッド(Margaret Atwood)
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1988

* Winner Drowning Towers (George Turner)
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1989

* Winner Unquenchable Fire (Rachel Pollack)
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1990

* Winner The Child Garden ジェフ・ライマン(Geoff Ryman)
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1991

* Winner Take Back Plenty コリン・グリーンランド(Colin Greenland)
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1992

* Winner Synners パット・キャディガン(Pat Cadigan)
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1993

* Winner Body of Glass (Marge Piercy)
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1994

* Winner 『ヴァート』 Vurt ジェフ・ヌーン(Jeff Noon)
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1995

* Winner Fools パット・キャディガン(Pat Cadigan)
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1996

* Winner 『フェアリイ・ランド』 Fairyland ポール・J・マコーリイ(Paul J. McAuley)
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1997

* Winner 『カルカッタ染色体』The Calcutta Chromosome (Amitav Ghosh)
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1998

* Winner The Sparrow (Mary Doria Russell)
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1999

* Winner Dreaming in Smoke (Tricia Sullivan)
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2000

* Winner Distraction ブルース・スターリング(Bruce Sterling)
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2001

* Winner Perdido Street Station チャイナ・ミーヴィル(China Mieville)
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2002

* Winner Bold as Love (Gwyneth Jones)

2003
The Separation, Christopher Priest (Scribner UK)



あれ、ピアシーの受賞作違うじゃん。ローカスインデックスによると、

1976 Woman on the Edge of Time
retrospective Tiptree short list : 1996 Tiptree
1991 He, She and It
short list : 1992 Tiptree
1992 Body of Glass
winner : 1993 Clarke W

このシリーズは2作ともティプトリー賞の候補どまりじゃん。Body of Glassがクラーク賞受賞作だ。この解説者(訳者)はSF部外者だし、しょうがないか。クラーク賞とティプトリー賞を混同したのか、それにしても受賞作は別の作品だし、いい加減としか&&

3. Posted by slg   December 30, 2004 05:52
で、108ページまで読んだ。

基本的に、無実の罪で精神病院に入れられた貧民階級のヒスパニック女性の主人公が、未来人とコミュニケーションし、未来社会を垣間みながら、精神病院で悲惨な目に遭うという話。未来社会をどういう位置づけで持ち込んだのかは明らかでないが、今のところとにかく精神病院内部やヒスパニック貧民階級の生活描写の悲惨さが強烈だ。ぐいぐい引き込む迫力がある。
4. Posted by slg   December 31, 2004 04:52
CD整理が忙しくてなかなか読めないので、プリングルの解説を先に読んだが、主人公が未来と現代を行き来しつつ最後は病院権力に反旗を翻すらしい。
個人的には未来社会の設定が単純化され過ぎで、ただ描写されるのみで何ら事件が起こらないこと、要するに主人公の理想郷の視覚化に過ぎず主人公に力を与える媒体としてしか機能していないことなどに本作におけるSF的要素の限界を感じる。
だが、本作の肝はあくまでも現代における主人公のおかれた状況の生々しい悲惨さにある。このやりきれなさと対比する意味で、嘘っぽい未来社会設定をあえて採用したのかも知れない。
5. Posted by slg   January 03, 2005 23:37
230ページぐらいまで来たが、あまり面白くない。何より弱みなのは描写される未来社会が仰々しく長々と紹介されながらも陳腐なこと。20世紀初頭のウェルズやヴェルヌの作品並に古臭い未来社会が蜿蜒と綴られる。確かに70年代のフェミニズム、ヒッピー思想から導かれるであろう未来社会になってはいるものの(例、女性は出産、育児といった役割から肉体的にも社会的にも解放され、男女の区別が相対化しているとか、統治機構がピラミッド型でなくなり、直接民主制というよりも「おおらかな自己決定」ともいうべきシステムになっていること、科学技術・医学の軽視、死の肯定と不必要な延命の忌避、ドラッグ肯定等)、頭で作られた未来社会設定にリアリティを与えるためのアレンジメントがほとんどなされていないために、意外なほど牧歌的で古臭く感じられるものになっている(70年代のヒッピーやフェミニズムの思想自体が既に風化しているせいもあるだろうが)。
せめて、陳腐な設定でも話に抑揚を持たせればごまかしもできようが、本作の場合はただ主人公の女が現実の苦難から逃避する対象でしかないために、当該未来社会はただの理解客体でしかなく、物語的事象の発生する場としては全く機能させられていない。従って非常に退屈で、読んでいて「時間の無駄だ」という印象を強めてしまう。

本書で非常に面白い唯一の場面である「現実の時間での精神病院内部の刑務所以上に悲惨な生活」の描写も、主人公が逃避する未来社会の場面があまりに長すぎることで水をさされてしまい、十分に味わうことができない。しかも、この現実時間においても事件らしい事件が起こらない。(ようやく、主人公らが別の病棟に移されるという事件が起こって、多少なりの物語性が出てはきたが&&)

更に、訳文があまりよくないようである。直訳的で日本語としてどうかという部分が時々引っかかるのは、原文の印象を伝えるためにわざとそうしているのだと解釈し大目に見てきたが、それだけでは説明のつかない「これはどうか」という部分も結構目立ってきた。特に会話文がかなり不自然だ。主人公が精神病者の扱いであることからわざとそうしているという可能性も捨てきれないものの、不自然なのは主人公の言葉だけではないことからやはり訳者の能力というか語感的センスの問題の疑いも出てきた。
6. Posted by slg   January 09, 2005 03:47
恐ろしくつまらない。冗長の一語。ストーリーが全く動かない。というか、ストーリーがない。現代のパートでは、狂気を治療するため脳に電極を埋め込んで電気ショックをかけると言う恐るべき治療が行われようとするが、そこからまた話が全然進まない。一度脱走に成功するもののすぐに逆戻り、ストーリー上不必要なエピソードで腹が立つ。
何より未来社会があまりに退屈すぎる。様々な社会構成要素を極端に理想化し現代と対比しようと言う意図は分かるが、いずれもあまりに馬鹿馬鹿しいものばかりだし、対比の仕方もただ羅列しているだけで面白みも何もない。対比するにしても小説のプロならば未来にも事件を起こし、その事件の帰趨を追わせながら読者に考えさせるようにすべきである。それをただ現代人と未来人の会話でひたすらだらだらと説明するというのは、はっきり言って素人以下。

この本のツマラサナのお陰で身体の節々が痛くなってきた。
おい、日本語の本に2週間もかかってるよ。本当はヴォネガットの方を読みたいんだけど先に読まねばこのまま中途で投げてしまうのではという恐怖故、無理にでも先に読もうとしているこの本のせいで、読めない。
7. Posted by slg   January 09, 2005 04:06
こんだけ悪口を書けば、判官贔屓の性格なので可哀想になって少しは面白くなるのではと思ったところ、早速少し面白くなった。外科的治療で「治った」とされて自宅に戻った患者が早速自殺したのだ。これを主人公は「確かに治ったわ、少なくとも今まで彼は優柔不断で死に切れなかったのに、手術のお陰で決断力がついて、一気に死ねたもの」と評する。
よし、この調子で怒濤の激動のラストになってくれよ!
8. Posted by slg   January 09, 2005 17:08
読了。

申し訳ないが最後まで褒めるべき点が見つからなかった。

志の高さは分かるが、それが徒になって、健全な(親切な)ストーリー展開が犠牲にされている感じがする。
本作の基本構造は、現在における精神病院における病院権力からの逃走の闘争と、主人公の内面においてその決意を高める契機となる、主人公の幻想なのか現実の未来なのか判然としない未来社会の平板な対比的描写を交互に描くものである。
この後者が冗長きわまりない。その未来社会があまりに単純化された観念的なものである上に、ひたすら平板に説明されるだけであり、物語的事象が全く発生しない。主人公が性交をし子供を設ける、戦争に巻き込まれる、主要な人物が死ぬといった事象も前後の脈絡なく発生するものの、相互の連鎖性/因果性がないために「ただ起こっただけ」で間もなく無意味に元の情景描写の中に埋没してしまう。物語展開上の必然性が全くない。
現代パートにおける前者の描写やストーリーはそれだけとればいい線行っているのだが、後者のパートが長々と挿入されるためにせっかくの物語的な緊張の線が途切れて、跛行的になってしまう。
後者の部分は必要だったのか? 個人的には本書が前者の要素だけで構成されていれば、はるかに強烈なインパクトを持った作品になっていた気がしてならない。本作をSFたらしめているのは確かに後者故であるが、本作はそのSF要素を無計画に持ち込んだが故に駄作になったのではないか。
作者の意図としては、後者の要素は、逆境の中で主人公の内面に形成されるフェミニズム的、マイノリティ的理想社会像の視覚化と、それにより形成される主人公の闘争への決意という不可欠要素であり、要するに作者自身の内面にあるフェミニズム/マイノリティ闘争の青写真を明確化することに眼目があったのかも知れない。しかし、その意図は理解できるものの、いやしくも商品としての小説という形で市場に出す以上は、それをより多くの読者が物語という形で摂取しやすくなるよう造型する倫理的義務があると思う。作者はその作業に失敗した結果、結局、自己満足の独りよがりな作品となってしまい、より多くの読者の自己の思想を理解させ、永続的変化を与えるという作戦に失敗している。つまり、フェミニズム/マイノリティの政治運動の一環として本書をとらえてすら、失敗しているのである。
その結果として、主人公の悲惨な状況を客観的に突き放すことでインパクトを与えることを意図したかに思える最後の病歴カルテも、ただあざといという印象しか残さずに終わっている。

テーマ性   ★★★★★
奇想性    ★
物語性    ★
一般性    ★
平均     2点
文体     ★
意外な結末  ★
感情移入力  ★★★
主観評価   ★1/2(18/50点)