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シオドア・スタージョン『スタージョンは健在なり』サンリオSF文庫

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2000年


9/3
平行してスタージョン短編集。いいですねえ。静かな狂気と孤独。スタイリッシュな文体と構成。複雑で繊細。思わず短編チェックリストを作ってしまった。最近出た短編集第1巻「究極のエゴイスト」引っぱり出してチェック入れたりして。
「スタージョンは健在なり」より
「ここに、そしてイーゼルに」★★★★★
SFなのかファンタジーなのか、普通小説なのか分類不能だが傑作なのは間違いない。こういう作品を評するのにspeculative fictionという語は最も適切だ。スランプに悩む画家が現実と空想の世界を交互に行き来する話が進む内に、空想世界の原因がやがて判明し、あわせて現実世界での出来事の種明かしが・・・そうして画家が再びかけるようになるまでを描く。何というか、技巧的だが技巧が決して嫌みにならず独特の味を醸し出す。一度読んだら忘れられない、他では味わえないというか。この作品だけ50年代の作品だが、この後スタージョン自身がスランプに陥っており、ある意味私小説的な作品とも言える。この作品を巻頭に置いたということ自体が、また技巧的(笑)。
「時間のかかる彫刻」★★★★★
スタージョン唯一のヒューゴー賞受賞作。絶品だ。盆栽論と人間関係論、恋愛論を巧みにからみ合わせ、絶妙の結末へと導くこの技の冴え! 見事というほかない。メインアイデアはSFそのもので、かつこのアイデアが作品のテーマともよく結びついている。地味ではあるが、スタージョンの持ち味を生かした名作と言える。
「きみなんだ!」★★★★★
絶好調! SFでもファンタジーでもなく、まぎれもない普通の恋愛小説だが、ジャンル、題材の如何を問わず、スタージョン的としかいいようのない味とテーマ性で迫ってくる。この作品もスタージョンらしい、地味だが綺麗にまとまったほろ苦い佳編である。

うーむ、スタージョンは、全作品を読んだ方がいいな。
今持っているのは、
「人間以上」
「究極のエゴイスト」(原書)
「ヴィーナス・プラスX」(原書)
「きみの血を」(原書)
「スタージョンは健在なり」
以上五冊。今後揃えるべきは、
「夢見る宝石」「きみの血を」「コズミックレイプ」「一角獣/多角獣」ほか短編集2冊の訳本。
原書は、スタージョン短編集の2巻以後(全巻揃える)。
あと、有名な短編が訳されているアンソロジーと雑誌。

しかし、スタージョン、復刊してほしいよまじで。アメリカでも短編全集が出ているぐらいだから未だに根強いマニアがいるということ。この全集を全部訳してくれとまではいわないから、有名な作品ぐらいは集めた本を出してくれてもいいのではないか。
我が輩がもし編集者なら、次のようなスタージョン選集を出す。★は初訳。

・『夢見る宝石』1950

・『人間以上』 1953

・『コスミック・レイプ』 1958

・『ヴィーナス・プラスX』1960 ★

・『きみの血を』 1961

・『スタージョン短編ベスト30(上)』
「皮膚騒動」Derm Fool (Unknown 1940/3)
「それ」It (Unknown 1940/8)
「究極のエゴイスト」The Ulimate Egoist ★
「極小宇宙の神」Microcosmic God (Astounding 1941/4)
「殺人ブルドーザー」Killdozer !★
「記念物」 Memorial (Astounding 1946/4)
「ビアンカの手」Bianca's Hands (Argosy 1947/5)
「空は船でいっぱい」The Sky Was Full of Ships (Thrilling Wonder Stories 1947/6)
「雷鳴と薔薇」Thunder and Roses (Astounding 1947/11)
「熊人形」 The Professor's Teddy-Bear (Weird Tales1948/3)
「影よ、影よ、影の国」Shadow, Shadow on the Wall (Imagination 1951/2)
「反対側のセックス」The Sex Opposite (Fantastic 1952/Fall)
「孤独の円盤」A Saucer of Loneliness (Galaxy 1953/2)
「考え方」A Way of Thinking (Amazing 1953/10&11)
「一角獣の泉」The Silken-Swift (F&SF 1953/11)
「解説」(略)

・『スタージョン短編ベスト30(下)』
「黄金の螺旋」The Golden Helix (Thrilling Wonder Stories 1954/Sumer)
「ここに、そしてイーゼルに」To Here and the Easel (Ed:Frederik Pohl Star Short Novels 1954)
「隔壁」 Who(Bulkhead) (Galaxy 1955/3)
「みどり猿との情事」Affair with a Green Monkey (Venture 1957/5)
「奇妙な触合い」A Touch of Strange (F&SF 1958/1)
「メドゥーサとの結婚」To Marry Medusa (Galaxy 1958/8) ★
「海を失った男」The Man Who Lost the Sea (F&SF 1959/10)
「あなたに必要なもの -小さな町の出来事-」Need (Beyond 1960 Original)
「タンディの物語」Tandy's Story (1961)★
「恋に落ちた時」When You Care, When You Love (1962)★
「もしすべての男が兄弟だったら、きみの妹をだれかと結婚させてもかまわないかい?」If All Men Were Brothers Would You Let One Marry Your Sister? (1967)★
「愛することを学んだ男」The Man Who Learned Loving (1969)★
「時間のかかる彫刻」Slow Sculpture (Galaxy 1970/2)
「箱と夢想家」Case and the Dreamer (1972)★
「ヘリックス・ザ・キャット」 Helix the Cat
「解説」(略)

何といってもこの選集の売りは、初訳が多数含まれていること! 特に、ほとんど未紹介の60~70年代各賞ノミネート作品が完全収録されていることだ。危険なヴィジョン収録の「もしすべての男が・・・」なんて超貴重だぜ。
しかし、どこの出版社も出しそうにないから(落涙)、おれが自費出版で出すしかない。
読むのは自分だから、当然発行部数は1冊。金は10万ぐらいまでならかかってもいいから、きちんと製本までやりたいぞ。
訳されているものは、いちおう参考にするが、自分で新たに訳文を起こす。

さて、今まで読んだ作家の中で、全集を作りたいぐらいいいと思ったのは、
エリスン
ルグィン
ディレーニイ
スタージョン
以上の4名。
次点候補
ライバー
べスター
ゼラズニイ
まあここまでね。

このうちエリスンとスタージョンは未訳が多いので(名作すら)、まずは原書入手から始めねば。

エリスンの短編集案。

・『ハーラン・エリスン短編ベスト30(上)』
「聞いていますか?」Are You Listening?
「「悔い改めよ、ハーレクィン!」とチクタクマンはいった」 "Repent, Harlequin!" Said the Ticktockman (Galaxy 1965/12)
「竜討つものにまぼろしを」 Delusion for a Dragon Slayer (Knight 1966/9)
「おれには口がない、それでもおれは叫ぶ」 I Have No Mouth, and I Must Scream (If 1967/3)
「プリティ・マギー・マネーアイズ」Pretty Maggie Moneyeyes (1967)
「世界の中心で愛を叫んだけもの」The Beast That Shouted Love at the Heart of the World (1968)
「ガラスの小鬼が砕けるように」Shattered Like a Glass Goblin (1968)
「世界の縁にたつ都市をさまよう者」 Prowler in the City at the Edge of World
「少年と犬」A Boy and His Dog (1969)
「ブリロ」Brillo (1970) (with Ben Bova) ★
「はざまの里」The Region Between (1970)★
「丘のふもとで」On the Downhill Side (1972)★
「バシリスク」 Basilisk (F&SF 1972/8)
「死の鳥」 The Deathbird (F&SF 1973/3)
「北緯38度54分西経77度0分13秒 ランゲルハンス島沖を漂流中」 Adrift Just Off the Islets of Langerhans: Latitude 38 54' N, Longitude 77 00' 13" W (F&SF 1974/10)

・『ハーラン・エリスン短編ベスト30(下)』
「キャットマン」 Catman (1974)
「クロウトウン」 Croatoan (F&SF 1975/5)
「砕けた日」Shatterday (1975)★
「ジェフティは5つ」 Jeffty is Five (F&SF 1977/7)
「時計を数えよう」Count the Clock That Tells the Time (1978)★
「嘘こそわが人生」All the Lies That Are My Life (1980)★
「大理石の上に」 On the Slab (Omni 1981/10)
「失われた時間の勇士」Paladin of the Lost Hour (1984)★
「ヴァージル・オッダムと東極に立つ」 With Virgil Oddum at the East Pole (Omni 1985/1)
「夢の羊の効用」The Function of Dream Sleep (1988) ★
「コロンブスを大陸に導いた男」 The Man Who Rowed Christopher Columbus Ashore (1991)★
「縞瑪瑙のメフィストフェレス」Mefisto In Onyx (1993)★
「アヌビスとのおしゃべり」Chatting with Anubis (1995)★
(2つ足りないので後で追加する)

うう、我慢できない、目次だけ作る!
目次を作ったら中身も入れたくなってしまった(笑)。
とりあえず、「究極のエゴイスト」に入っている短編だけ入力する。まずは本邦初訳の表題作だけ読むとするか。

なを、(略)

「究極のエゴイスト」より(結局、最初から読み始めてしまった)
「重量保険」★★★
スタージョンの初めて売れた小説。10代の船員時代に、新聞の公募ショート-ショートに採用された。ドライアイスをねたにしたショート-ショートで、大した作品でないのは間違いないが、叙述トリックの使い方に技巧派の素養が垣間見える。

「スタージョンは健在なり」より
「ジョーイの面倒をみて」★★★★1/2
巧い! これまた普通小説で、単純なショートショートかと思いきや、ラストの巧いこと! このラストで★1つ加点しちゃいました。

で、後は明日通勤電車で読むことにして、家ではザンジバー読みに努めます。

9/9
クレス不眠人残り2冊とダルグレン届く。

スタージョン短編集読み終わる、良かった。
「箱」★★★★
「人の心が見抜けた女」★★★★
「ジョリー、食い違う」★★★★1/2
「<ない>のだった--本当だ!」★★★★1/2
「茶色の靴」★★★1/2
「フレミス伯父さん」★★★★1/2
「統率者ドーンの<型>」★★★1/2
「自殺」★★★1/2
総じて、SFより普通小説の方が出来が良い。
SFと呼べるのは、「時間のかかる彫刻」「箱」「<ない>のだった--本当だ!」「統率者ドーンの<型>」、境界作品まで広げても「ここに、そしてイーゼルに」「人の心が見抜けた女」「茶色の靴」「フレミス伯父さん」まで。残り4編は純然たる普通小説。
しかし、ジャンルの如何を問わずどの作品も、出来の良いものは訴えかけてくる共通の何かがあり、それは中毒性、習慣性がある。
あかん、他のも読んでしまいそうだ。
「夢見る宝石」とか良さそう。「きみの血を」も邦訳があったとは。

年代順読み、少し変則するかも。続き物や同一作者の物はできるだけ纏めて読んだ方が良いからだ。
例えば70年代ではクラーク、ルグィン、ティプトリーといった複数受賞作家は、最後に気合い入れて纏めて読んだ方がよいのでは。但し、「宇宙のランデヴー」だけは既に半分ぐらい読んでいるので、先に読む。
要するに、単発受賞作家を先に一気読みするということ。そのほうが幅も早く広がる。

で、基本的に長篇優先で、短編は後回しというスタンスも同じ。

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