SF百科図鑑 ダン・シモンズ『カーリーの歌』


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2002年

5/13
「カーリーの歌」難航。興味を喚起するためインターネット検索。

(一人目)
「カーリーの歌 ダン・シモンズ 早川文庫
世界幻想文学大賞を受賞した作品。本当は下の作品ではなくこちらが読みたかったのだ。でも両方読んだおかげでダン・シモンズという人が良く判った。この作品は、死んだはずのインドの詩人を追ってカルカッタを彷徨う男の話。話自体は面白くなくもないのだが、実に後味の悪い小説だった。『愛死』でも見られたが、屍体や不潔さ、そしてそういうものに直面した時の恐怖感などというようなものを執拗に描いて、非日常の状況を形作っていく手法は、(描写力はたいしたものだけれども)なんとも不快である。なんか先が読めてしまうしね。ところで、もしかして『リング』ってこれのパクり?」

「話自体は面白くなくもない」のところは共感しかねるが(面白くないじゃん)、「後味の悪い小説」「何か先が読めてしまう」というのは全くその通り。とにかく話が進まず、冗長で退屈。どうでもいいディテールにこだわり過ぎてテンポがあまりにも悪い。その割には全然恐くなくて、単にくだらない。ストーリーに意外性がないというのが何といっても最悪。インドの暴力的な神カーリーが死者を蘇らせ、秘密結社を組織して世界の支配を目論むというネタはあまりにも陳腐。このくだらないネタを無意味に膨らませた無駄に長い愚作。読むだけ時間の無駄。「世界幻想文学大賞受賞作を読破する」というくだらない読書指針を持つ私のような狂人以外には全くお薦めできない。
ちなみに、「リング」ってこれのパクリ?っていうくだりは、どこがパクりなのか全く理解できないぐらい意味不明で的外れであり、レビュアーのレベルが分かって微笑ましい。

(2人目)
「ダン・シモンズ『カーリーの歌』(1985/ハヤカワ文庫NV)読了。
8年前に失踪し、死んだと思われていたインドの偉大な詩人ダースが、 実は生きていて、しかも新作を書いたという情報をつかんだ詩人で編集者のロバートは、 アメリカからカルカッタへ向かう。
ところが、カルカッタには暗黒神カーリーを崇拝する邪教集団がいて、ロバートは、 恐ろしい体験をすることになってしまう。どれくらい恐ろしかったかと言うと、カルカッタを街ごと、 核兵器で跡形もなく吹き飛ばしてしまいたくなるくらい恐ろしかったのであった。
ウェス・クレイブン監督『ゾンビ伝説』(1988)に、ちょっと似ているかな。 得体の知れない世界にはまってしまい逃れられなくなるのは怖い。現実的な恐怖と、 幻覚あるいは超自然的な恐怖が錯綜する、こういう話が、モダン・ホラー(モダンホラーではない)の 王道かもしれない。本当に怖い作品のひとつ。★★★★ 」

こいつのレビュウ★。「得体の知れない世界にはまってしまい逃れられなくなるのは怖い」「本当に怖い作品のひとつ」のあたりに、こいつの頭の悪さがにじみ出ている。しかしいちばん馬鹿っぽい、というより、馬鹿そのものなのは、「ウェス・クレイブン監督『ゾンビ伝説』(1988)に、ちょっと似ているかな」という部分。相当頭が悪そうだ。あまりにも恥ずかしすぎて、これ以上コメント不要。

(3人目)
「「カーリーの歌」 ダン・シモンズ著 柿沼英子訳 ハヤカワ文庫NV定価  ISBN
世界幻想文学大賞受賞作。・・・というのは実はあてにならない。「妖女サイベルの呼び声」とか「リトル、ビッグ」とかが受賞してるかと思うと「魔界の盗賊」とかも受賞してるから・・・「アラン史略」の1巻だけに賞を与えてみたり・・・あれ、3部作で読まないと面白くないと思うんだけどなー。
さて、この作品、ハヤカワSFでもなくFTでもなくNV。普通の小説、という分類になっている。確かにSFとは言えないし、FTに入れればそれはそれで浮いた感じになっていたかもしれないホラー作品である。
アメリカ人の詩人兼編集者が、行方不明となった偉大な詩人を求めて妻子同伴でインドに旅立つことからこの物語は始まる。主人公ルーザックは、文明社会から一転インド、カルカッタのどす黒い混沌の中に投げ込まれ、文字どおり翻弄される。むせかえるような暑さと湿気の中、謎めいた邪教集団の影に弄ばれるルーザック。彼を待ち構える悲劇に際限はなく、邪悪と暴力、貧困と無知と狂気とが支配するカルカッタの前にルーザックはなす術を持たなかった・・・。
・・・正直言って、素直には読めませんでしたねー。所詮欧米人って奴はアジアのことを・・・と、普段、欧米文化にどっぷりはまってる奴の癖に、妙にひねくれて読んでしまいました。
作品が一人称で語られる以上、地の文が余り冷静でも不自然になってしまうのは分かる。また、不自然にカルカッタをほめちぎる必要もないだろう。再読してみて、どぎつい描写が気になるのは前半で、後半に行くにしたがって、余り気にならなくなって行くと言うことに気付いた。これは、やはり、主人公の視点の変化を作者がある程度計算している証拠だと思う。だけど、主人公の視点がカルカッタに対して他者の視点を保っているときなんか、どうも同調しかねると言うか、行間から、主人公だけでなく作者の偏見まで見てしまったような気になってしまうのだった。
いや、これは、何も差別的な表現じゃないんだ。事実なんだよ。・・・とはどこにも書いてないが。なんか、そう言ってそうで、それがいやだ。「作者が書こうとしたのは際限ない暴力の象徴としてのカルカッタであって、西洋人の思い上がりではない」とか解説に書いてあるけど、じゃあ、「際限ない暴力の象徴」としてインドを選んだ理由は?と思ってしまう・・・。
さて、差別とホラーといって思い出されるのがなんといっても、アメリカの怪奇作家H.P.ラヴクラフトである。彼は、作品の中に、読者を恐ろしく突き放したような巨大なスケールの宇宙的恐怖を書く一方で、黒人、アジア人、白人貧困層にまで蔑視を向けている。書かれた時代(そして作者自身の異様な個性)の事もあって、こちらはさして気にならなかったのだが、そのほかにも作中妙にヒューマニズムを持ち出さず、当たり前の事として書き切った、ということもあるだろう。要は下手な言い訳など一切していないのである。
このあたりが、この「カーリーの歌」では中途半端で、それが作者の逃げの様に感じられ、余計にひねくれて読んでしまう原因なのではないだろうか。・・・(作中、インド社会を正面切って批判するのが白人の主人公ではなくインド人である主人公の奥さん、というのも何か姑息な感じがする・・・)
特にそれを強く感じたのはラストのクライマックスで、もっと紙幅を割いてしかるべきところで主人公は、えらく、あっさりと優等生的な結論を得て終わる。そんな簡単に葛藤にカタが付くなら、最初から誰も苦労しないって・・・
途中のストーリー展開とか、カーリー女神を崇める邪教団の描写とか、カルカッタの描写の生々しさともあいまって、結構、いい線を行ってただけに残念。 」

ハイレベルなレビュウである。私がこの本に感じる違和感の一端が、シモンズの行間ににじみ出る意図せざるアジアに対する偏見にあることをこの文章で気付かされた。「途中のストーリー展開とか、カーリー女神を崇める邪教団の描写とか、カルカッタの描写の生々しさともあいまって、結構、いい線を行ってた」というくだりに共感しかねる以外は、ほぼ全面的に支持する。

(4人目)
「「カーリーの歌」解説 ハヤカワ文庫NV 柿沼瑛子・訳
86年度世界幻想文学大賞を受賞したシモンズの処女長編である。
インドという日本人にもあまりなじみのない土地を舞台にして、 シモンズはそこに白昼夢―それも強烈な悪夢を描いている。 シモンズ自身がカルカッタを訪れたのは数日とのことだが、その印象は強烈だったらしく、 混沌としたカルカッタの風景が、読者のわれわれにも見えるようだ。
作品はホラーとして発表されているが、シモンズ自身は否定。
物語は時に現実を超えた幻想的な世界を構築している。「瘴気(ミアズマ)」という言葉が 登場するように、世界のどこかにはそんな邪気めいた空間が存在するかのようだ。 紛れ込んだ者がそこから抜け出すには確かに大きな犠牲が必要かも知れない。
一貫して「暴力」をモチーフに作品を描きつづけるシモンズのそのすべてがこの作品に集約されている。
読者には、作品が醸し出すインドの非衛生的な町の様子が、 読むうちにそこに見えるように浮き出てくるのが驚きであろう。アメリカの平凡な一市民が、 うむを言わさず地獄へ呑み込まれていくその物語に目を離せないはずである。
その地獄はやがて悪夢のような幻想めいた風景に取って代わり、地獄に閉じ込められたかのような風体の 謎の詩人も、まるでゾンビのように体を半分腐らせながら登場するのが不気味だ。 下手なホラー映画そこのけの危ない雰囲気が、ひしひしと伝わってくるシモンズのその筆力に脱帽することうけあいだ。シモンズ自身は、この幻想的な小説のすべてに納得いく現実的な説明が 付けられると語っているが、私には幻想であってほしい世界である。
物語はクライマックスで、恐るべき悲劇をもって主人公たちを打ちのめすが、 作品はそれでも最終的には生きる希望を見つけ出す人間の強さを描いているところが素晴らしい。 シモンズという作家の、容赦ない作風と魅力を見つけ出すには入門編として最高の本だと思う。」

レビュアーの知的レベルはそれほど低くないと思うが、その手放しの賞賛には全く承服できない。特に、ゾンビのように体を腐らせながら登場する詩人という、スプラッター映画から抜け出してきたような陳腐なキャラクターに対する「不気味だ」「ひしひしと伝わってくるシモンズのその筆力に脱帽する」などといった絶賛は全く理解のしようがない。知性以前のもっと根本的なセンスに、このレビュアーは致命的な障害を持っていると思われる。その結果として、「生きる希望を見つけ出す人間の強さを描いているところが素晴らしい」「シモンズという作家の、容赦ない作風と魅力を見つけ出すには入門編として最高の本」といった目を覆いたくなる間抜けな結論に到達しているのには、同情を禁じ得ない。お大事に。

というわけで、この作品が大したことないのではないかという私の印象が、単に私の能力や感性の不足ゆえでなく、むしろこの作品のレベル自体に起因するものであったことが上記レビュウによって証明されたので、安心して本作を「くだらない」という印象のまま読了し反省せずに済ますことができる。今日中に斜め読みによって読み終える予定である。

シモンズ「カーリーの歌」★★
冗長で陳腐でつまらない。出来の悪いスプラッターホラーと普通小説の出来損ないの融合に過ぎない。先の展開が読めるし、カーリーが操る秘密結社の造型もピンボケでリアリティに欠ける。何より最悪なのは救いがたいまでのアジア的なものに対する国辱的な偏見だ。終盤の娘を失った夫婦がトラウマを脱するまでのくだりはあまりに御都合主義でおめでたいし、作者の暴力に対する怒りの主張は分かるが、その暴力の象徴がインドでありカルカッタでありカーリーでなければならない必然性がない。この本にはラスト2ページ以外読むに値する部分はないと断言できる。
なまじディテールの書き込みの力があるだけに、デビュー作でここまでの筆力を示したことに幻惑されての過大評価の結果が世界幻想文学大賞の受賞であろうが、遺憾ながら本作にはその評価に値する実質が伴っていないと考える。