SF百科図鑑 コリン・ウィルソン『賢者の石』創元SF文庫


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September 04, 2005

コリン・ウィルソン『賢者の石』創元SF文庫

第2長編
これは凄い、凄すぎる。不老不死の秘密に興味を持ち研究を始めた男が、仲間の男と協力して、脳細胞の接合部に特殊な合金を埋め込むことにより超越自我的な体験をする能力を獲得する技術を開発、自らその手術を受ける。そして、不死性や、超越的自我体験はおろか、自在に時間を超越した全体的な認識を瞬時に行う能力すら獲得していく。この能力を使って、シェイクスピア=ベーコン説や、マヤ文明=ムー文明説などの考古学的研究を行っていくうちに、ラヴクラフトのクトゥルー神話に現れる古き種族が実在した超越的な、肉体を持たない人類の主人たる古代種族であったことを突き止める。そして、古き種族がなぜ滅びたのか、なぜ猿が奴隷として選ばれ人間にされたのか(ダーウィン進化論は誤りで、自然選択ではなく進化欲求が進化の原因であることが明らかになる)といった謎を追ううちに、謎の存在が恐るべき力で妨害を仕掛けてくる。最後に主人公たちは謎を解き明かし、人類は前頭葉をコントロールする力を身に付けて古き人々の復活に備え自らの主人たる力を付けるべきだと宣言して終わる。
哲学や脳生理学などさまざまな学問的知識をぶち込んで独特の進化論、トランスパーソナル心理学、超越的・神秘的体験論、時間認識論を緻密かつ大胆に展開する思弁性の強烈さ、センスオブワンダーと、後半のラヴクラフト本歌採りの冒険ホラーSF的娯楽性の高さの見事な結合が奇跡的に成功しており、空前絶後の凄い作品に仕上がっている。今まで読んでいたSFは一体なんだったんだろうといいたくなるぐらい、格が違う。イーガンとかテッド・チャンですら、子供のオナニーにしか見えないほどだ。オールタイムベスト。

テーマ性  ★★★★★
奇想性   ★★★★★
物語性   ★★★★★
一般性   ★★★
平均    4.25
文体    ★★★★★
意外な結末 ★★★★★
感情移入力 ★★★★★
主観評価  ★★★★★(50/50) 
silvering at 19:41 │Comments(0)読書