SF百科図鑑
ナンシー・クレス「密告者」
最終更新:
匿名ユーザー
2001年
9/9
クレス「密告者」★★★★★
間違いなくクレスの最高傑作! 90年代中短編でも屈指の傑作でしょう。異種族間の比較、意思疎通というテーマは奇しくもルグィンと通ずるが、本編の見事さはそのユニークなアイデア。共有現実から逸脱する<非実在>を罪として扱う文明という設定がまた何とも強烈。ミステリアスな前半の展開を経て、後半のどんでん返しが見事。人工的に妄想を植え付けて精神分裂病にする人体実験というのが強烈。ストーリーもメリハリが効いて、うまい。人間について、文明について深く考えさせながら、物語としての面白さにもよく目配りをした、本格SFの傑作の見本ともいうべき作品。こういう作品がメインストリームにならなければ、SFは衰退すると断言できる。ケイディのような作品や、ハリーポッターが受賞するようではいかんのである。
これでSFM掲載分は残り1作、チャンのみとなりました。なんとか(略)までには制覇できそうです。