SF百科図鑑 Kim Stanley Robinson "Green Mars"


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2001年

5/13
昨日、今日と久々に(略)中では。

「緑の火星」第1部読み終わりました。「赤」よりも断然こっちのほうが面白いですね。わたしのいちばん好きな、「巨大構築物の中で生活し、それが全世界と思っている人々」が出てきます。南極のドーム型避難所の話です。とにかくこの手の話は面白くないわけがない。コグズウェル「壁の中」ライバー「影の船」「バケツ一杯の空気」荒巻義雄「紅い世界」オールディス「ノンストップ」ハインライン「宇宙の孤児」プリースト「逆転世界」など、とにかくこの手の話には弱いわたしです(オールタイムベストを選ぶと上位の半分ぐらいはこの手の話になってしまうでしょう)。
しかも、嬉しいことに、この手の話ではお約束の「少年」が主人公で、少年の成長に伴う視野の広がりと、外の世界を知る「認識の変革」が重ね合わされ感動を増幅するという、例のスタイルです。もう、そのものずばり、わたしのスイートスポット直撃です。恋の話もあります。もっとも、一筋縄で行かないロビンスン、タブーに類する恋であり「環境が人間心理やモラルに与える変容」を伝える媒体として機能しているのが何とも強かですが。
避難所の名前は「ジゴート」、南極の厚い氷の中に巨大な空洞を掘ってドーム型の居住地にしたものです。中央に大きな池があります。住居は竹のような形をしており、節の一つ一つが部屋です。菜園用の建物や学校もあります。全員がヒロコの子か孫ですので、「3世」はみな兄弟か従妹です。主人公のナーガルは3世の火星年で7歳(地球年で14歳程度?)、温度調節ができる特殊な身体機構を持っています。3世のジャッキーに恋心を抱いています。学校ではヒロコの他、時々外からコヨーテがやってきて教えたりします。ナーガルは特殊な血液型で、同じ血液型のサイモンが白血病で倒れたため骨髄移植をしたりしますが、結局治療のかいなくサイモンは死んでしまいます。サイモンが初めての死者でした。この経験からナーガルは初めて死というものに対して恐怖を抱きます。
その後、ナーガルはコヨーテの車で避難所を出て南極地域の他の避難所やクレーター、モホール(地層のずれ=モホ面に掘った居住施設用の巨大な穴)を訪ねて回ります。中には深く掘られた(溶岩まで届くのではないかと思われる)モホール(二人はロボットを穴の底に送り込みます)、ジゴートより巨大な避難所等があります。避難所は隠れているものと開かれているものと両方あり、開かれている避難所のおかげで隠れている避難所のカモフラージュになっています。ある避難所で遺伝子解析をしてもらい、ナーガルはコヨーテの子だということがわかります。
その後二人はジゴートに戻りますが、ナーガルは外を見てしまった後で故郷を見てその小ささに驚きます。また同世代の「3世」からの疎外感を味わい、自分は元の自分にはなれないことを悟ります。そうこうするうちドームの屋根の氷が落ち、結局より極点に近い位置により大きな穴を掘ってドームを移設することになります。作業後、ナーガルはまたコヨーテ(とピーターとミッシェル)と旅に出ることになります。そのしばらく前、ナーガルはジャッキーと結ばれ、お互いに「きみはぼくのもの」と誓いあいますが、その後浴場でジャッキーがダオといちゃついているのを見てショックを受けます。「きみはぼくのもの」の意味がナーガルとジャッキーでは違っていたのでは? つまり、「永遠の絆で結ばれる」という意味でなく、「自分の男(の1人)として所有した」という意味だったのでは? この様子を見たマヤが疑わし気にかれらを見ます(近親相姦になるからです)。自室に駆け戻って鏡を見たナーガルは自分の姿を見て、「ジャッキーはナーガルの外見に備わった力強さに対抗するための慰めをダオに求めていたので、自分と同じ心境だったのだ」と思い直します。
ナーガルがコヨーテとともに再出発するところで1章は終わります。

2章は、小惑星を加工して静止衛星にし、そこから軌道エレベーターを降ろす出だしから始まります。次いで、妻と別居中に火星出征の徴集状が届いた地球人が出てきます。

このとおり、「赤」とうってかわり息をもつかせぬ面白さですが、落ち着いたドライでいて叙情的な文体は「赤」を引き継いでいるといえるでしょう。そして、「軌道エレベーター」「人工受精と遺伝子工学」といった最近の題材を取り込みつつ、バラード風心理&情景描写を盛り込みながら、教養小説風の「少年の成長」を話のコアとしているのが素晴らしいですね。この後のナーガルの行く末が気になります。「赤」みたいに次々に殺さないでほしいな。

ちなみに並行してビジョルド「親愛なるクローン」読んでいます。「迷宮」の集団脱走の直後の話のようですね、例によって高額の修理代等をバラヤーの政府にすねかじりするところから始まり(地球に来ています)、美人に生まれ変わったボディガードのエリ・クイン中佐などが出てきます。今までの長編ではいちばん面白そうな感じがしますね。

5/14
「緑」2章に入りました。アートという男が、雇い主のフォートから徴集されて秘密の施設で訓練を受けているところです。多分火星に派遣されるための基礎訓練でしょう。パソコンを使った「持続可能な人口規模の計算」等を教わります。ディテールへのこだわりは「赤」を彷佛とさせます。今のところストーリーらしいストーリーはありません。火星再開発の話に持っていくための伏線というか、基礎知識を読者に与えるためのパートでしょう、恐らく。アートの得意分野は「調停者」です。その割には妻とうまく行かず別居が決まった矢先の徴集で、アート自身は「別居になったから選ばれた」と思っています。このアートと妻のやり取りなど、ディックを彷佛とさせます。妻にしいたげられるダメ亭主ってディックの得意なキャラですからね。


5/15
完全に過労です。6月後半ぐらいまでは息抜きできそうにありません。ふぅ。しかも、(略)。

そういう状態にもかかわらず、「緑」は読み続けています。
ただ、予定したようには進めませんね、平日はきつくてとてもノルマをこなせません。当初の予定では今日は6章まで読み終えるはずだったのに、まだ2章すら読み終わっていません。このペースでは1か月かかってしまいます。2日に1章のペースですから。これではいけません、少し加速して、いくら何でも2週間以内にはおさめたいところです。
さて、2章ですが、アートが外交官兼スパイとして火星に送り込まれます。落下したケーブルを回収するというのが表向きの理由ですが、実際には火星の地下グループの動向に探りを入れるために送り込まれたのです。宇宙船で火星に到着し、周辺を視察し、ナーガル(!)と会うところまで読みました。
とにかく、このへんの経済学やバイオテクノロジー、物理学関係の細かい書き込みには圧倒されます。専門用語がぽんぽん出てきますので。
ナーガルとアートは歓迎パーティで出会い、ナーガルがアートを公園に誘います。
「なぜここにいるのですか?」ナーガル
「手伝いに来てるんです」アート
「われわれに加わりたいと?」ナーガル
「ええ。お望みなら、いつでも」アート
「けっこう。でもわたしの作業はわたしがやります。いい顔をしない人がいますから。あなたを紛れ込ませるためには、事故を装う必要があります。それでもよければ」ナーガル
「けっこう。わたしもそのつもりでした」アート
「そうですか、よかった。では自分の仕事を続けてください。回収作業を。途中で拾いに行きますよ」
ナーガル立ち去り、アート自室に戻る。パソコンでナーガルを調べる。見つからない(地名以外)。外の火星の景色を眺め、初めて真の(地下の)火星人に会ったのだと感慨に耽る。
19
数日後ローバーで出かけて、パヴォニスモンス西方の坂にいる。ケーブル回収作業と思われます。ケーブルの一部はビースト?(企業? 機械?)が鉱山鉄道のレール等に転用しています。またアートの雇い主の子会社オーロボロ社も一部自社施設に再利用しています。アートはローバーで南下?しどこかのクレーターに入っていきます。ビースト?の施設のようです。
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アートはチェックインしイオン色層分析法の研究室を見た後、ローバーで周辺を見て回ります。シェフィールドに最初についたとき案内してくれたザファーもそうしろといっていたからです。で、ある日パイロットフィッシュ(魚型の乗り物?)に乗って遠出しているとき、車の鍵が開かなくなってしまいます。そして、2人組の「ナーガルのグループ」と思われる人たちに拾われます。「事故を装う必要がある」とはこのことでした。

2章は、ブラナーっぽくて、何だか「ザンジバルに立つ」でのヤタカンに潜入する話を思い出しました。

というわけでアートは無事地下組織に迎え入れられるのですが、「なんか話がうますぎない?」という感じです。さて、3章以下でどうなるのでしょうか?

いよいよ3章です。
まず恒例のプロローグ部分は、懐かしのアンが溶岩流で自殺を図り失敗する場面です(笑)。「赤」の陰気なキャラたちの中でも群を抜いて根暗だったアン、さすが相変わらず鬱病全開でトばしてくれちゃいます。やってくれますなあ。ざっと斜め読みしたところ3章はアン中心の話のようです。またもやどろどろのバラード風愛憎劇に揺り戻してしまったりして。
第1段落(2)です。いきなり地学用語を連発し、火星のタルシス隆起の両側の陥没がなぜできたのか、隆起生成後に揮発化して羽毛状になったマントルが地殻下に潜り込んだために地殻が凹んだのか? を探るため毎日アンが車で地形を見て回り、地震観測をして研究を続けるというくだりです。こんなことばっかりしてたら鬱病になるだろうね(笑)。とにかく難解な地学用語連発で、はっきりいってここは参りました(笑)。とにかく火星の地形について瞑想に耽りながらアンが研究しまくります。最後の最後まで(笑)。fines?粉鉱なんて、普通知らねえよな。rubbleandfinesだって。この4ページで地学に詳しくなります。火星震marsquakeなんて造語まで出てくるし(まあこれぐらいわかりますけどね)。
さて、寝る前に3章終わるぞ!

5/16
「緑」3章読み終わりました。
地下に生き延びた「最初の100人」の生き残りが「レッズ」(赤)として再結成するまでのくだりです。地下避難所で生き延びていたメンバーが再び集まります。鬱病ぎみのアンも説得されて復活します。さあ、この先、火星の覇権をめぐる争いが。くれぐれも、単なる独立戦争をだらだら描く作品にだけはなってほしくないです。
しかし、バイオテクノロジーの研究所biotique(バイオティック)という造語は、ブラナー「ザンジバル」のbeautique(ビューティック)というのを多分真似してるね。未来社会(特に超国籍企業が幅をきかしてるところ)の造型は、明らかに「ザンジバル」の影響が顕著と思われます。あれも、GT社が幅をきかしていたしね。

いよいよ4章に入ります。(略)。少しは読書に集中できそうです。

4章冒頭は、再建された軌道エレベーターの静止衛星となった小惑星を利用した太陽光線を巨大な鏡で集めることによってエネルギーを利用する技術についての説明です。しかし、この説明を読んでもほんとにそんなに集めることができるのだろうか、と疑ってしまいますが。

5/17
「緑」第4章「英雄としての科学者」読み進みます。この章が100ページもあります。危惧したとおりまたもや老人が主人公のパートで、ロビンスンは老人(最初の100人メンバー)が主人公になるととたんに筆が鈍り、ストーリーが鈍臭くなるような気がします。このパートはサックスがID偽造と整形手術を受けて、地上のバロウズのバイオティック社に潜入する話です。このへんはブラナーの影響だと思いますが。「ザンジバル」「衝撃波」とネタかぶってるよね。で、サックスは、超美男子に生まれ変わって(^^;)、リンドルムという新しい名前の人物になりすまそうとしますが、何とそこへ最初の100人のメンバーのフィリスという女(既に110歳を越えている^^;)が訪れます。サックスは声までは変えていなかったため、フィリスはどうやら勘付いた?ようです。パーティーのエレベーターの中で、サックスはフィリスに誘惑され、「リンドルムほどの色男なら当然誘惑にはすぐ乗るはず」と自分に言い訳しつつ、ズボンにテントを張ってフィリスの部屋に連れ込まれ、やってしまいます。何十年も前にヒロコとやって以来だったそうです(しかし、ヒロコってのがまた、とぉぉんでもない・・・(笑)。「赤」でいろんな男とやりまくって、精子を集めて子供たちのコミューンを作ってたというんだからなあ)。おいおい、こちとら老人のセックスなんて見たくないよといいたくなってしまいますが、ロビンスンの悪趣味には歯止めのかけようもなく(苦笑)、こうなるともうどうしようもありません。はぁ・・・。まだ70ページもあるぅ、サックスのパートが・・・あぁ、頭痛い・・・。火星の風景描写も多すぎ。くどい。というわけで雲行きが怪しくなってきました。
個人的には、ナーガルのパートがいちばん面白くあのまま続けばよいと思っていたのですが、2章のアートが火星に送られるパートもまあまあ面白く、ブラナーっぽいところに新しさもあったので結構期待したのでした。しかし、100人メンバーがメインに出始めた(しかもいちばんの根暗のアン)あたりから雲行きが怪しくなり、おいおいとうとうサックスかよ、もういいよという感じです。まあちょっとブラナーっぽいところは「赤」よりはましですけどね。
さっきアマゾンコムで、マーティン「氷と竜の歌」6部作第3部(ヒューゴー賞ノミネート・・・おいおいファンタジーだろ)の書評読んでたら「面白すぎる」だってさ、うおおうらやましい! 何だかそっちのほうを読みたくなってきてしまった・・・。

5/18
「緑」第3部やっと204ページまでいきましたが、とにかくもう、バイオティークにおけるサックスの火星地球化(二酸化炭素の大気中の配合割合を調整して火星大気の温暖化を図る等)の技術的ディテールの描写が詳しすぎ、読むほうは青息吐息です(笑)。この火星三部作の世評が高いのはこの技術的ディテールの病的詳細さなのでしょうが、わたしにとっては嫌いな部分です(苦笑)。とにかく、ストーリイらしいストーリイがなく退屈です。
しかも、科学的専門用語が多くて疲れます。頭に来て、生物/地学/物理/化学用語をまとめて暗記してやろうか(しかもペンギンライブラリーの解説を読みまくってやろうか)とまで思っています。

ビジョルド「クローン」はデンダリイ艦隊員が問題を起こしてマイルズが助けるくだりで面白くなってきました。

今後の読む順序ですが、「緑」「クローン」「ミラーダンス」「青」「スノクラ」「ダイヤエイジ」「天空の深淵」の予定です。まずは「緑」ですな。

「緑」第3章はきついです。火星を温暖化するためにあらゆる方法を試しており、サックスの考えとは裏腹に、「二段階モデル」(=二酸化炭素を増やして急激な温暖化を実現した後で二酸化炭素を減らす方法)が有力化しており、その推進派第一人者であるボラジャニ教授の基調演説とその後の議論の場面なのですが、わずか5ページを理解するのに1時間ぐらいかかってしまいました。まず基本的な元素や物質の名称を知らなければならず、ついでその化学構成や性質を知っていなければなりません。何しろ元素の周期律表すら覚えていないようなひどさですので、これは辞書だけでは不足で、化学や物理や生物や地学や天文学やロケット工学や経済学の英語の基本書を買って下勉強をしなければなりません。向こうの大学の教科書などが最適でしょう。また英語でないと単語を覚えないので意味がありません。オックスフォードかペンギンブックスで入門書のような本がシリーズで出ていたと思うので、あれらの中からピックアップして読むしかありません。とにかく、5ページに1時間もかかるようでは、やるしかありません。

続いて会議後のランチの場面で、会場はすっかり「2段階モデル」に流れが向いてしまったような会話の雰囲気です。最終目的は、火星の地表を生存可能な大気にすることであり、サックスの見解では、最終的な大気の組成は、窒素300ミリバール、酸素160ミリバール、アルゴンやヘリウム等30ミリバール、二酸化炭素10ミリバールというものです。全体の気圧は500ミリバール。これが理想の構成です。(このあたりも、地球の大気の組成や各気体の特性等を知っていたらなお面白いのになあ、と悔やまれます。)この気圧は地球の4000メートル程度、自然状態の人間が生存可能な上限だそうです。この気圧で酸素をこれ以上増やすと自然発火が生じ易くなってしまいます(そういえば「赤」で酸素が噴き出して人間が自然発火する場面がありました)。
要するに、生存可能な地表とする(=地球化)ために、「平均気温を上げる」「呼吸可能な大気を作る」の2つの課題があるわけなのですが、両方を並行して行おうというサックスの元々の「一段階モデル」に対し、どうも、気温?呼吸という2段階モデルの方が有力になりつつあるようなのです。ただ、この問題は、最初の見積もりで、最終段階まで2万年もかかってしまうと予測されていた点にあります。サックスとしては生きているうちに気密服のサポートなしで地表を歩けるようになりたいと思っており、そのためには一段階モデル以外にあり得ないのですが、どうもそのようにはいきそうにないのです。考え事をするあまり、サックスは食べているパストラミサンドの味もわかっておらず、バーキナに味をきかれて「ああ! 美味しかった、美味しかった。美味しかったに違いないよ」と答えます。このあたりの情熱的な研究馬鹿ぶりが伝わってくるのが、サックスのキャラの面白さでもあります。(なお、最後の台詞は、あるいは、「今までの(自分が行ってきた)地球化措置はうまくいってきたに違いない」という意味をかけているようにも思われます。)
さて、恐らくこの後は、「地下派」=レッズ=最初の100人の生き残りと、2061年大破壊後にUNOMAから派遣された「地上派」=現在の火星地球化を推進している勢力との鬩ぎ合いが展開し、それにあわせて火星の地球化する様がリアルに描かれていくことになるのでしょう。ようやく、可也面白くなって参りました。早速今日、参考書(物理、地学、生物、天文、経済)も買ってくるつもりです。

5/19
「緑」もう少しで4章読み終わるっっ。サックスは、デズモンドから、「ヒロコのためにバイオティックの種子や根茎その他もろもろ必要なものを盗み出してくれ」と依頼され、迷った挙げ句受け入れます。また、サックスは2段階モデルに対して強い不満を持っていますが、デズモンドは諦観的で、「人間というのは合理的ではない。長い視野よりも目先のことしか頭にない」と言います。デズモンドによれば、超国籍企業(トランスナッツ)はあるメサをドーム化してそこでプルトニウムを用いたロボット管理の自動工場を建設していましたが効率化するために肉体労働者を用いることにし、メサの中に住居から墓場までをしつらえており、労働者には高い給料とボーナスで埋め合わせをしている、とのことで、サックスは信じられませんがデズモンドは事実だと言います。また、二人が途中でレッズの隠れ居住地に行く場面では、途中で、(衛星から反射された太陽光によると思われる)光線によって地表の岩石が融解する場面などが出てきます。
とにかく特徴的なのは、サックスの思考やキャラクター描写を重厚かつ綿密に行っていること、政治機構やイデオロギーの対比分析を綿密にしていることです。極めて重厚であり、軽佻浮薄とは対極にあるといえます。このパートも新語が次々と出てきて、ずいぶん語彙を増やさせていただきました(笑)。

また、今日は、オクスフォードの辞書兼シソーラスを買いました(それと科学ポケット図鑑)。これで類義語の知識を増やしたり、科学についての理解を深めつつ科学用語を覚えたりできます。

更に、(略)。

「緑」第4章読み終わりました。何と、サックスがフィリスに正体を見破られてしまい、フィリス抹殺を図りますが先にフィリスに手を回されてしまい逮捕されてしまいます。完全にブラナーのノリですね。いや、面白くなってきました。このままレッズは全員白日の下に引きずり出されてしまうのでしょうか? 


5/20
オークス、予想通りテイエムオーシャン飛びました(3着に粘ったのは、スローペースに助けられたのでしょう)。来週のダービーも楽しみです。

さて、今日はこれからトンコツラーメンを食べに行ってきます。(略)。

「世界のSF文学総解説」92年版ゲット。やはり、国内のものではこの本が一番です。再版が出ないのが残念。早川の偏った「ハンドブック」なんかより100倍いいのに。
この本で漏れている作品を拾ってみました。
<宇宙/異星生物>
火星三部作(ロビンスン)火星転移(ベア)ナイトフライヤー/サンドキングズ(マーティン)スターファイター(ハインライン)無頼の月(バドリス)琥珀のひとみ(J・ヴィンジ)ダウンビロウステーション(チェリイ)遠き神々の炎/天空の深淵(V・ヴィンジ)血を分けた子供(バトラー)オービッツヴィル(ショウ)ブロントメク/ハローサマー、グッドバイ/冬の子供たち(コーニイ)フィアサム・エンジン(バンクス)樹海伝説(ビショップ)アースウインド/リードワールド(ホールドストック)ノンストップ(オールディス)タウ・ゼロ/土星ゲーム(アンダースン)
<未来社会>
ザンジバーに立つ/歪んだ軌道/羊は見上げる/衝撃波をのりきれ(ブラナー)わが名はレジオン/霜と炎(ゼラズニイ)不可能の物語(ウィリス)スノウクラッシュ/ダイヤモンドエイジ/クリプトノミコン(スティーヴンスン)キリンヤガ(レズニック)治療者の戦争(スカボロー)ターミナル・エクスペリメント(ソウヤー)内側の世界(シルヴァーバーグ)ヴィーナス・プラスX(スタージョン)バッグ・ジャック・バロン(スピンラッド)杜松の時(ウィルヘルム)歌の翼に(ディッシュ)タクラマカン/ネットの中の島々(スターリング)順列都市/祈りの海(イーガン)バービーはなぜ殺される/ブルー・シャンペン(ヴァーリイ)クラッシュ/死亡した宇宙飛行士/22世紀のコロンブス/殺す/コカイン・ナイト/スーパー・カンヌ(バラード)ロボットの魂/光のロボット/カエアンの聖衣(ベイリ-)マイクロチップの魔術師(V・ヴィンジ)月曜日は土曜日に始まる/そろそろ登れかたつむり/蟻塚の中のかぶと虫(ストルガツキー)浴槽の中で発見された手記(レム)
<幻想・異世界>
怒りのキャンディ/奇妙なワイン/鋭い牙を持つ夢(エリスン)タンジェント(ベア)夢幻会社/コンクリートの島/ヴァ-ミリオンサンズ(バラード)新しい太陽の書/デス博士の島その他の物語(ウルフ)ヘリコニア3部作/マラキアタペストリ/解放されたフランケンシュタイン/解放されたドラキュラ/スーパートイズ(オールディス)リトルビッグ/エンジンサマー(クロウリー)カイトワールド(ロバーツ)ミサゴの森/ラヴォンディス(ホールドストック)戦時生活/ジャガーハンター(シェパード)ココ/ゴーストストーリー(ストラウプ)大潮の道/いにしえの地球の物語/グリュフォンの卵(スワンウィック)大人のための聖書の物語/イェホバ曳航(モロウ)栄光/魔法/限りなき夏/ドリーム・アーキペラゴ/エクストリームス/逆転世界(プリースト)ディスクワールド・シリーズ(プラチェット)黒き流れ3部作(ワトスン)氷/ジュリアとバズーカ(カヴァン)吸血鬼つづれ織り/世界の果てまで歩こう(チャーナス)リリス/ファンタステス(ジョージ・マクドナルド)火星夜想曲(イアン・マクドナルド)消えた子供たち(カード)フィーヴァ-ドリーム/子供たちの肖像(マーティン)はてしない物語(エンデ)夜明けのヴァンパイア(ライス)オールウェイズ・カミングホーム(ルグィン)新しいSF/レンズの眼(ジョーンズ)妻という名の魔女たち/闇よ、つどえ!/闇の聖母(ライバー)アヴラム・デイヴィッドスンの宝物(デイヴィッドスン)スタージョンは健在なり/きみの血を(スタージョン)心地よく秘密めいたところ(ビーグル)ダルグレン(ディレーニイ)エペぺ(カリンティ)暗闇のスキャナー/流れよわが涙、と警官はいった(ディック)ユニコーン・ヴァリエーション/ドリームマスター(ゼラズニイ)人獣細工(小林泰三)
<時間・次元>
太陽の王と月の妖獣(マッキンタイア)パヴァーヌ(ロバーツ)ダンワーシイ・シリーズ(ウィリス)さよならダイノサウルス(ソウヤー)時間的無限大/タイム・シップ(バクスター)宇宙消失(イーガン)世界Aの報告書(オールディス)時だけが敵(ビショップ)リプレイ(グリムウッド)フロム・タイム・トゥ・タイム(フィニイ)グリンプス(シャイナー)パラドックス・マン(ハーネス)モモ(エンデ)去りにし日々、今ひとたびの幻(ショウ)ビッグ・タイム(ライバー)時間線を遡って(シルヴァーバーグ)カリスマ(コーニイ)
<人類(進化)>
ダーウィンの使者/<道>2部作/ブラッドミュージック(ベア)夜の大海の中で/ほか(ベンフォード)もし星が神ならば(ベンフォード&エクランド)鳥の歌いまは絶え(ウィルヘルム)スターダンス(S&Gロビンソン)チャイルドサイクル・シリーズ(ディクスン)サイティーン(チェリイ)無眠人3部作(クレス)寓話2部作(バトラー)終わりなき平和(ホールドマン)コンパス・ローズ/風の12方位/世界の合言葉は森/内海の漁師/語り(ルグィン)死への通路(ウィリス)キャリー(キング)確率人間/内死/どくろの書/われら死者とともに生まれる(シルヴァーバーグ)エンベディング(ワトスン)フィーメールマン(ラス)スパイダ-ワールド(ウィルスン)キャンプ・コンセントレーション(ディッシュ)パラサイト・イヴ/BRAINWAVE(瀬名秀明)
<破滅・終末>
無常の月(ニーヴン)巡礼の道(ディクスン)スタンド(キング)スワン・ソング(マキャモン)草の死(クリストファー)ポストマン(ブリン)リンカーンの夢(ウィリス)エイリアン・ウェイ(シルヴァーバーグ)
<冒険・ミステリ>
ファファード&グレイマウザ-・シリーズ(ライバー)雪の女王(ヴィンジ)ヴォルコシガン・シリーズ(ビジョルド)落ちゆく女(マーフィ)IT/暗黒の塔シリーズ(キング)ハイペリオン4部作(シモンズ)少年時代(マキャモン)スローリバー(グリフィス)氷と竜の書6部作(マーティン)眩暈/水晶のピラミッド/アトポス(島田荘司)夏と冬の奏鳴曲(麻耶雄高)リング/らせん/ループ(鈴木光司)ウロボロスの偽書(竹本健治)京極堂シリーズ(京極夏彦)
<風刺・ユーモア>
ヘミングウェイごっこ(ホールドマン)わが愛しき娘たちよ/リメイク(ウィリス)ロデリック/チックタック/スラデック言語遊戯短編集(スラデック)1ダースの困難な仕事(ウォルドロップ)つぎの岩につづく/どろぼう熊の惑星(ラファティ)スラップスティック/母なる夜/チャンピオンたちの朝食(ヴォネガット)愛なんてセックスの綴りを間違えただけ/「悔い改めよ、ハーレクィン!」とチクタクマンはいった/声なき絶叫/死の鳥その他の物語(エリスン)
こうしてみてみると、最近の「破滅・終末」ものはホラー作家が書くようになり、SF作家はあまり興味を示していないのがわかります。

さて、「緑」また少し進みました。パート5「帰る家はない」読み終わりました。アートを救出したレッズたちが、拉致され記憶抽出処置を施されそうになっているサックスを陽動作戦で救出するまでのくだりです。ミシェルとマヤが「出来て」しまいます。また、サックス救出時にスペンサーも合流します。マヤは、フィリスを殺害してしまいます。結びの部分、

「済んだことはしようがない。さあ、家に帰ろう」
「わたしたちに、帰る家なんてないわ」マヤが吐き捨てるように言った。

というわけで、レッズたちは完全に追い詰められてしまいます。

次いでパート6に入ります。Tariqatって何ですかね? いきなり冒頭で、「小さな緑の人たち」「<カ>」が表にあらわれる日が来た、というくだりがあります。寓話っぽくも読めるのですが、よく分かりません。多分、重要なパートだと思いますが。275ページ以下は、明日以後読みます。多分、本作のテーマが表れるパートのような気がします。

5/21
「緑」パート6、しっかし、退屈だねえ、今度は化学用語だけでなく岩の名前かよ、勘弁してほしいです。レッズの連中が夜の間ひたすら放浪して避難所を渡り歩いています。何のために放浪しているの?という感じで、冗長な感じがします。ただでさえ風邪ぎみでのどが痛いのに、何か恨みでもあるの?という感じです。
SFが何でつまらなくなったか、ニューウェーヴのせい、と言われるけど、こういう作品を読むとうなずかざるを得ません。アイデアよりも小説としての書き込みや心理描写、という発想は、もともとニューウェーヴが持ち込んだことは間違いないですから。しかし、主犯格のバラードの作品は、確かに内面を向いていますけど内宇宙の方向に突き抜けている作品ばかりで、退屈とは無縁です。他方、ポストニューウェーヴの連中は、内面を突き詰める能力もないのに表面だけバラードらの要求にこたえようとして、つまらないちまちましたディテールにかまけてアイデアやパワーをおろそかにするようになってしまったのではないでしょうか。この「緑」も、技術的ディテールは凄いけど人間の心理についてはいかんせん浅く、この程度のみすぼらしい描写しかできないのなら最初から娯楽に徹したらどうなの、とどなりつけたくなります。
パート1で結構いい感じだったナーガルのキャラも、ここではただの「人」になってしまいあまりインパクトを感じない。はっきりいって、印象は急?です。とにかく延々とつづく岩石用語を駆使した地形描写が、退屈極まりない。ここまで綿密に書く意味は何なの?といいたいです。だんだん腹が立ってきました。


5/23
昨日は(略)にて世界SF全集22、31、32ゲット。しかも安い。短編集1000円、作家別700円。激安といってよい。しかも品揃えはよいし、いい古本屋を見つけたぜ。
しかし、SF全集の短編集は凄いね。これはという名作(有名作)がかなりの密度で網羅されている。最後がバラードの「終着の浜辺」というのが渋い(現代編)。このまま復刊しても十分読むに耐える、というか、最近出ているのより100倍いい。古典編も、ワインボウム「火星のオデッセイ」が入っているし。他の巻も揃えたくなりますね。

昨日は今日の(略)。

「緑の火星」あまり進まず。パート6やっと読み終わりました。タリクアットって、「真理への道」というような意味らしい、何語か知らんけど。で、ストーリーも尋問の準備とかごちゃごちゃやっているうちに、わけが分からなくなってきた。レッドがいったんヒロコの避難所ジゴートまで戻った後、また出発していろいろな避難所を訪ねているというところだったと思ったけど。あと、脳に自白処置を施されて唖になっていたサックスが回復して少しずつしゃべれるようになった。

ストーリーがわかんなくなってきたが、要するにレッズがトランスナッツに巻き返すという話だと思う。パート7以下でもう少し面白くなるだろう。とにかくこのシリーズ、ディテールにこだわり過ぎ、無駄な中だるみがある点で、結構興味を持続するのがきつい。ストーリーテリングは、うまいという評もあるけどはっきりいって下手だと思う。現に退屈しているんだから。基本的に革命とか内部抗争とか抵抗とかの話はあんま好きじゃないってこともあると思うけど。ハインラインの「月は無慈悲な夜の女王」だって、ヒューゴー賞受賞作中のワーストといいたくなるぐらい読むのが苦痛で、未だに既訳作品中唯一読み終わっていないし。何ていうか、革命とか内部抗争とかって、要するに上と下、中の右と左とかいう話で、外側にベクトルが向かわないんだよね。だからすごく閉塞感というか、だから何なのという気持ちがある。要するに中で喧嘩してるだけじゃんという。同じ革命でも抑圧されている状況が凄く異常であるとか、SFを感じさせられるのであれば、そちらの方で興味が持続できる。しかし、本作やハインライン「月ムジ」とかは、設定されている社会組織自体が地球のそれとそんなに違わないだけに、そういう意味の興味も持てないということだ。本作で唯一興味を持てるのは、テント型の避難所内の生活ですかね。トランスナッツとかUNOMAとかは、既に誰かが書いたものの焼き直しで新しさがないし(ブラナーとか、チェリイの会社戦争とか)現在ある多国籍企業や国連をそのまま拡張して権力化しただけという気がする。レッズというレジスタンス組織についても陳腐で、あまりオリジナリティが感じられない。軌道エレベーターだってそのまんまクラークやシェフィールドのパクリに過ぎず、新たに何かを付け加えているというわけでもない。この作品の新しさは、病的なディテールへのこだわりという一点に尽きる。執拗な心理描写にバラードを思わせる部分もあるが、バラードに比べると類型的でかなり浅い。これで「凄い」とか「最高」とか思う人種もいるのかも知れないが、わたしはアンチです。わたしの印象は失敗作に近い「怪作」というものです。今の段階ではね。まあ、どんなつまらなく思える作品も最後の逆転があるから(例「エンダーのゲーム」「雪の女王」)、まだ決めつけるには早いけど。
でも、これを読み始めてから体調が悪くなったし、ミステリや山田正紀や世界SF全集に浮気したくなってきているしなあ。やはり因果関係は明白なのではないだろうか。何といっても、面白くない。小説も売り物なんだから、やっぱり面白くないとねえ。娯楽作ではなくシリアスな文学作品や前衛作品とかであっても(バラードやオールディスとかの作品ですら)、扱われているテーマや手法の斬新さがあれば、下手な通俗作品より遥かに「面白い」んだよねえ。その点からいうとこの作品は、今のところ「失格」です。「レッドマーズ」も同じような印象だったから、英語で読んでいることがつまらない理由ともいえない。やはり作品自体に問題があるということだ。むしろパート1、2に限れば「レッド」より段違いに面白かったからね。「レッド」よりはましだと思うけど。「レッド」もほんと、最後までつまらなかったからねえ、終盤の大カタストロフとキャラの死は、だからSFを感じるという類いのものでもなかったし(あの程度なら、地球を舞台にした冒険小説や災害小説でもっと面白いものがたくさんあるだろう。まあ、ハリウッド風SFスペクタクル映画が好きな人にはこの程度でも受けがいいんだろうけど、俺はあの手の映画は大っ嫌いだし。寝てしまうんだよねえ)。
はぁ、地獄の苦しみってこのこと?

5/24
「緑」少し面白くなってきました。レッドたちが「寂椎」、ボグダノビストやアラブ人たちとドーサブレヴィアに結集し、61年の革命はなぜ失敗したのか、いかにすれば革命は成功するのかについて激論を戦わせます。いやな予感は的中してまたもや革命小説になってしまいそうな雲行きでがっかりで、先行きも読めましたが、そう分かって諦めてしまえば読むほうも開き直って期待せずに「革命小説」を読もうというスタンスになれますので、多少印象が逆にましになってきました、皮肉ですが。
で、革命に関する議論の内容は結構面白いのよね。皮肉なことに。多分実際に戦う場面は面白くないんだろうなあ、「レッド」やハインラインが面白くなかったように。どうせ革命小説をやるなら最初から最後まで理屈詰めの作品にしてくれればそれはそれで逆に面白いのに。

でも、逃避願望はいかんともし難く、90年代アメリカSFそのものに対する拒絶反応に近い心理状態にまで進行し、とうとう今日は国産SF、ミステリの文庫本を本屋で漁り、「ウうっ、神林長平! 大原まり子! 栗本薫! めちゃめちゃ面白そう!」と発情しまくった挙げ句、最近出たのに既に品切れ状態のような感じになり怯えていた山田正紀「神曲法廷」(講談社文庫)をついに買ってしまい、禁断の果実を食べてしまいました(笑)。帰りの電車で読み始めたら止まらず2時間で200ページ突破。おっ、おっ、面白すぎるっ。今まで読んでいた本格ミステリは何だったんだろうというぐらい面白い。しかももともと本格SF出身の作家だけに、その幻視能力がそこらの三下ミステリ専業作家とは比較にならないぐらい桁違いに凄い。格の違いを見せつけるというか。マルゼンスキーとアラブ馬を一緒に走らせるようなというか。何といっても主人公がよい(笑)。(略)
いつも我慢して苦手で難解な何が面白いのかさっぱり分からないスペースオペラや土木革命SFを読んでいるんだから、たまにはこういう読み易く分かりやすい娯楽思弁SFを読んでもいいでしょう?<自分への言い訳  なおわたしは幻視性の強い本格ミステリはSF(思弁小説)に分類しているので、上の表現は誤記ではありません。


5/25
山田正紀「神曲法廷」★★★★★
面白かった~。島田荘司系で、島田荘司より面白い。欲をいえば「青蓮佐和子」のキャラクター描写をもっと綿密にしてほしかったけど、それ以外は文句のつけようがありません。最後に残った謎まで解決され、「過剰なもの」が消失したと見せかけておいて、このオチもいい。本格ミステリでありながら社会派入っているところもいいし。哲学や芸術、日本文化/国民論が随所に入っているのは京極あたりを思わせるし、全体が「神曲」の「見立て」的な構成になっているのもいい。見事なメタフィクション、スペキュレイティヴフィクションの傑作といえましょう。

山田「宝石泥棒」「宝石泥棒2」「夢と闇の果て」「ブラックスワン」購入。「神狩り」「彌勒戦争」「火神を盗め」「地球精神分析記録」「最後の敵」「女囮捜査官」「人喰いの時代」「終末曲面」「螺旋」「エイダ」「妖鳥」「阿弥陀」等も全部読まねば。

90年代(特にアメリカ)SFの面白くない理由は、「過剰なもの」がなくなっているせいではないだろうか。つまり、ディテールを細かく詰め込んだり、あれこれと凝った趣向を凝らそうとするあまり、話のスケールが小さくなる上、読者が無理やりつきあわされてしまい、肝心の想像力を自由に遊ばせる余地がなくなっている気がするのだ。ロビンスンの火星三部作をその悪しき代表格として、ウィリスの「ドゥームズデイブック」もそうだし(サスペンス小説としては面白かったが)、ビジョルドのヴォルコシガンシリーズだってそうだ。遊びがないのである。これだけでもうヒューゴー長編賞受賞作の6/10を占めている。シモンズの「ハイペリオン」とヴィンジの「遠き神々の炎」「天空の深淵」のような作品がメインを占めれば、「90年代アメリカSFは面白い!」という印象になるはずなのに。また、ウィリスのもう1作の「犬についてはいうまでもなく」はSF的な「過剰なもの」がかなり復活しており、作品そのものとしては大傑作だが、しかし、その面白さのかなりの部分はミステリ部分と英国文学のパスティーシュ部分が占めており、SFが全部こんな作品ばかりになったら、ジャンルの衰退といわざるを得なくなってしまう。スティーヴンスンは未読なのでまだわからないが。ホールドマンの「終わりなき平和」は前半の普通小説的な書き込みと後半の強引な飛躍の対比が面白く、後半部分にSF的過剰さが感じられるが、やはり変格SFといわざるをえず、ウィリス同様これが主流になったらSFは死んでしまうだろう。
そういうふうにみてくると、日本のミステリが社会派の流行で一度死にかけたのと似ているかも知れない。ハードボイルドとトラベルミステリーの流行はSFでいうとホラーやファンタジーといったサブジャンルや、ヤングアダルト物、アニメ等の流行に対比できるのだろうが、その反面ジャンルの核の消失をもたらした。広がり過ぎて自分を見失うというやつである。SFの場合は、ニューウェーヴ以後の主流文学や他ジャンルへの接近が、難解なものと娯楽一辺倒のものとの2極分化を生んでしまったというわけである。他ジャンルへの接近はやがて他ジャンルに取り込まれてしまうし、流行の娯楽ものは、ブームが過ぎれば簡単に捨てられてしまう。必然的に、残るものは何もない。SFのよさは、知的にエキサイティングな部分と娯楽性とをあわせもっているというところにあったはずなのに(SFで名作といわれるもののほとんど全てがこの両面を持っていることに驚かされる。これこそ、「過剰性」なり「センスオブワンダー」と感じられる部分なのだ)、それが「本格SF」であるべきだったのに、この「家」を守るものが誰もいなくなり、誰もが出稼ぎしているうちに、いつのまにか家庭崩壊していた、というわけである。
そうするとやはりSFとミステリは、ポオという同じ始祖を持つことに象徴されるように、よく似ているのであり、SFの活路は、ミステリがいかにして巻き返したかに学べば見出せるのではないか。ミステリ復活の最功労者は、新本格派宣言であおりまくった島田荘司であることに異論はないだろう。新本格派がないということは、綾辻、麻耶、我孫子、有栖川、京極、折原らが存在しないということだから(これらの作家が、島田のあおりたてた土壌が存在したがゆえに世に出て来えたということに異論の余地はあるまい)、そうなっていたとした場合の現在のミステリを想像するだけでも寒気がするだろう(「メフィスト」も、ノヴェルズ隆盛も存在しない)。まさに、SFは今そういう状況にあるのである。だから、そっくり真似をするだけでいいはずだ。「新本格」SF作家が出てきて、「新本格」SFの傑作を書きながら、アジればよい。(これは日本についてだけど)アジる人もいないのに、また根拠となる作品もないのに、いくら「SFが読みたい!」という真似本を出したり(これ著作権の侵害じゃないか?)、大森がホラーやミステリ作家の取込みを図ったりしても駄目じゃないか? それじゃ乞食みたいじゃん。「知的に刺激的で、かつ、面白い小説」といえば、やはり小松左京のような小説が王道でしょう。だから小松タイプのスケールを持った作家が出てくればよい。そしてアジらなければダメである。その可能性があるのは、日本でいうと山田正紀か神林長平ぐらいだろうが、山田は気が多すぎるし、神林は今一つスケールが物足りない気がする。しかも、どちらも書くだけでアジらない。謙虚すぎるのである。
アメリカでも幅をきかせているのは変格タイプか娯楽タイプの作家ばかりで、本格SFを書くのはジャンルミックス作家(シモンズ)という皮肉な構造になっている。唯一期待できるヴィンジは寡作な上にアジらない。いい打開作はないもんだかねぇ。

5/27
ダービーがジャングルポケット。

山田「神狩り」「彌勒戦争」SFM6月号購入。ブレッドベスト購入。

「緑」読み進む。パート7「何をなすべきか」。レッドや火星第一主義者、ボグダノビストといった党派が合同で革命後の火星の運営や地球との外交等についてワーキンググループを実施しています。途中、アートが雇い主のフォートを呼んでしまいます。フォートは地球のトランスナッツならぬメタナッツの話などをします(メタナッツはトランスナッツよりもスケールが大きい企業群で、金の力でUNなどの国際組織をも操っている)。ナディアは「アートはスパイだと忠告したでしょう」などと言いますが既に地球人たちは入ってきてしまっておりなし崩し的にワーキンググループで一定の地位を占めることになってしまいます。
完全に政治スリラーです。ブラナーに似ていますね。これはこれで結構好きです。今日中にパート9にまで入る予定です。現段階でアートら地球人の位置付けがまだ不明確です。今後の展開の鍵を握るでしょう。

ちなみにちょっと辞書で遊んでみます。
An aardvarg popped out from the cell. Aaron was taken aback anddroppedanabacus. He ran abaft, found a clump of abalones in a bucketandabandonedhimself to despair. Then he abased himself. He was abashed, abatedhispain. Hethought, "This beast is an abator. Go to the abattoir!" His fatherwasthe abbe(i.e. abbot) of the abbey, his sister was the abbess. Heabbreviatedtheabbreviation abbriviated, and found it as easy as ABC. He decidedtoabdicatefrom his post. The abdication from the post was painful to hisabdomen.Theabdominal support was too tight. He thought he should have abductedthegirl.Abduction was illegal. But it was fun. He looked over the sea where abirdwasflying abeam. My brother was lying abed, he said to himself, andAbelwasn'tAbelard. He took out an aberdeen from the box. He was a littleaberrant,hisaberration had abetted him in killing the abettor. But the accidenthadcausedit fall into abeyance.
辞書の三ページまでの単語を無理やりつないで文章にしてみました。
「一匹の土豚が部屋から飛び出した。アーロンはびっくりしてそろばんを落とした。彼は船尾に走り、バケツの中のたくさんのアワビを見つけて絶望に身を委ねた。そして彼はへりくだった。彼は恥じ入り、痛みをやわらげた。そして思った、「この獣は不法侵入者だ。と殺場へ行け!」彼の父は大修道院の大修道院長(大修道院長)、姉は女子修道院長だった。彼は短縮型を短く短縮していったが、やけに簡単だった。彼は今の地位を辞する決意を固めた。今の地位からの辞職は腹に痛かった。腹のコルセットがきつすぎた。彼はあの子を誘拐すればよかったと思った。誘拐は違法だが、楽しい。彼は鳥が横に飛んでいる海を見渡した。兄はベッドで寝ている、と彼はひとりごちた、そしてアベルとアベラ-ルは別人さ。彼は箱から釣り針を出した。彼は少し異常であり、彼の異常さが彼に扇動者を殺すようそそのかしたのだった。だが、その事故のせいで中断していたのだ。」
面白いので、またやろうっと(笑)。

ブレッド「ベスト」★★★★★
粒ぞろいだがやはり「イフ」の歌詞は凄い。アンナ・カヴァンの「氷」にも匹敵する内宇宙の極限、精神の消失点への逃避行。凄すぎて鳥肌が立つ。他の曲も少し落ちるが全部凄い。
デペッシュ・モード「シングルズ81ー85」★★★★★
初期のシングルが全部入っている。アルバムに入っておらずこのベスト盤でしか聴けない曲やアルバムとシングルのアレンジの違う曲が沢山入っているので必聴でしょう。やはりPeopleArePeopleとMasterAndServantの2曲が凄い。アルバムに入っていない名曲ShakeTheDiseaseとIt'sCalled A Heartも最高。
ELO「Strange Magic」★★★★★
2枚組ベスト。最近美メロに枯渇しているせいか、ジェフ・リンのメロディメイカーとしての天才ぶりには全く圧倒される。出世作のチャックベリーのカヴァ-がまず素敵だが、超有名な名曲群(Can'tGetItOut Of My Head、Evil Woman、Telephon Line、Don't Bring MeDown、HoldOnTight、SweetTalkin'Womanなど)はもちろんのこと、それ以外の曲も屑がない。それにしてもCallingAmericaって良い曲だなあ。

山田正紀「神狩り」★★★★★
これぞスペキュレイティヴ・フィクション! という感じですね。わたしがSFに求める全てがある。想像力を刺激し形而上的な妄想をかき立てること。これがわたしがSFを読む理由だが、この作品はそのお手本だ。これに比べると90年代のアメリカSFが面白くない(というかわたしの主観でいうとSFではない)のは、読者が想像力を刺激されたり形而上世界へ行き先の分からないまま連れ去られる感覚を味わえないためだ。ビジョルドのヴォルコシガンシリーズなんて、この観点からするとSF的な部分は全くない。単なるキャラクター小説だ。だから退屈なのだ。今読んでいるロビンスンの火星三部作だって、形而上のケの字もない。ノンフィクションのように、あまりに具象的すぎる。だからつまらない。まあ、火星三部作は別の意味で凄いけど、でもわたしが求めるものとは違う。もはやこのような凄さを今どきのSFに求めるのは無理なのだろうか?

「緑」パート7「何をなすべきか?」読み終わる。ワーキンググループの会合が終わり、革命後の体制についてアートが7つの原則を取りまとめて発表しますが、「どうやって実現するの?」という問題が残っています。この点についての議論をして、何らかの結論が出たのかどうかは分かりませんが、最後に池に全員で裸で飛び込んで打ち上げの儀式?をします。このあたりが、火星人独自の文化というか、火星化された人間=火星人の精神形成をうまく描写しています。
いよいよ次のパート8「社会工学」から、実践編でしょうかね?(パート9は「時の滑車」パート10は「時代は変わる」)

世界SF全集短編集古典編より、
ワインボウム「火星のオデッセイ」★★★★★
面白いっ! 石原藤夫「ハイウェイ惑星」、ブリン「知性化戦争」を思わせる、奇妙キテレツで滑稽な火星生物たち。爆笑に次ぐ爆笑です。90年代SFに欠けているのはまさにこういう、おおらかな面白さ、想像の限界を飛び越えてしまう楽しさなんだよね。で、評論家連中が、アンソロジーを編むときに、こういう作品を「既に今の火星についての最新知識を前提にすると古くなっている」とか何とかいう理由で除外してしまい、「リアルな近未来小説」しか入れなかったりする。そうすると一般の読者どころか旧来のファンすらよりつかなくなる、というわけだ。つまり、想定している読者が、相当読み込んですれていて、科学的厳密さに過敏というような連中で、なおかつ編者と同じ趣味を持っている、という極めて狭いものになっているため、普通の人が読んでもつまらない本になってしまうわけだ。これが、「SFが売れない」理由である。反省してほしい。30年代の古い小説でも、こんなに面白くて、科学的厳密さなんか糞くらえで読めてしまうんだから。

5/29
山田正紀「弥勒戦争」★★★★★
もー最高っ! かっこいいっっ! 素敵っっ! 「神狩り」より思弁性が後退したのは不満だけど、このネタでこれだけ面白ければいいでしょう。山田流仏教解釈と日本の戦後史を重ね合わせて描く超能力アクション青春SF。90年代SFの窮屈な小説を読んでいると、これらの古い作品群が余計に魅力的に見えてしまいます。ワインボウムもそうだけど。どうして今時のSFってあんなに退屈なんでしょうね。

「緑の火星」パート8「社会工学」です。最初に、誰だか分かりませんが、二人の人物の対話。心理学は科学か、という対話です。AがBに昔の話などをきいています。Bは、そんなことをきいてどうする、心理学は科学ではない、と反論します。しかしAは、精神が複雑なのは宇宙と同じだ、複雑だから探究しないのでは科学の進歩はすべて否定されることになる、と述べます。Aは気質4元説を信じていることから、恐らく精神科医のミシェルなのではないかと思われます(「レッド」上巻でミシェルが4元説と論理学の4項図式を対比させるくだりがありました)。相手が誰かは分かりませんが&&。

本文は、強制尋問による超音波刺激で言語中枢を破壊され失語症になっていたサックスがだいぶ回復しており、デズモンドにピーターのことを尋ねる場面から始まります。サックスがこのパートのキイパースンのようです。今から寝るまでに読みます。

6/1
「緑の火星」542ページまで。
「時の滑車」マヤのパートです。マヤがアラブ人一団から、フランクがジョン殺害の原因を作ったことを知らされ、ショックを受けます。度々、パソコンでフランクのことを調べます。フランクの生い立ちが分かります。不幸な家庭に生まれ親戚の家を転々とし、一時第三世界で政治活動らしきことをして注目されますが挫折して火星植民者になったというのです。そのために火星では人生を悟ったような超然としたところがあったのです。マヤはジャッキーらとも仲が悪く引っ掻きあいの喧嘩をしたりもします。また、寂椎やオデッサが襲撃されオデッサのヒロコやコヨーテが命からがら地下道を通って逃げ出したりもします。いよいよ地下組織がボグダノビストたちとともに立ち上がって革命を起こすべきときなのか? マヤの考えは、トランス(ウルトラ?)ナッツ同士の内紛で連中が潰しあった後に革命を起こせば61年の二の舞いにはならないという意見です。火星の水圏形成は太陽光を利用した二酸化炭素による温室化や帯水層(アクワファー)開放作業(自動パイプライン使用)によって着々進み、ヘラス盆地は完全に海と化して行きます(「青い火星」についている地図では海の面積が広がっている)。この描写は見事です。作中最もバラ