SF百科図鑑 竹本健治『ウロボロスの偽書』★


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1999年

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竹本「ウロボロスの偽書」読む。大がかりな冗談小説。したがって謎は解かれず、犯人/トリックを見破ろうという全ての試みは徒労に終わることが予定されているのだが、全体の実験的構成だけではなく、サブストーリーであるトリック芸者の話がむちゃくちゃ面白いので、少しも退屈しない。確かに、もう少しシリアスな悪夢小説のスタイルをとれば鬼気迫る破壊力を獲得できたのでは、という気もするが、こういう奇抜なアイデアをユーモラスな筆致で書くのが竹本のスタイルなのであろう。ただ、ラストはもう少し論理を鮮明なまま残しつつ循環地獄へと落ちていく構成をとったほうが印象は良かっただろう。この終わり方ではいかにも予想された安易な結末のような気がする(筒井の「虚人たち」ともかぶるのでは)。
しかし、この作品はミステリ作家の実名小説の部分、トリック芸者の連作短編的な部分、そして連続殺人鬼の犯行記録の部分という3重構造をとり、かつ、そのそれぞれが単独でも十分面白いため、3つのストーリーが相互浸食を始め、しまいには渾然一体化して「大文字の作者」の意識の中に解消されていくというメタストーリー部分にひねりがなくても、全体として十分楽しめるものになっている。特に私はトリック芸者が気に入った。こんな芸者がほんとにいたら、あたしゃ毎日通ってしまいますぜ(金があればだが)。特に毎日高度な数学のことばかり考えているまり数ちゃんと、格闘技の練習ばかりしているプロレス芸者の2人には参った。
続編らしき「基礎論」にとりかかったが、そこではますます悪のりし、冗談に拍車がかかっている。同時平行して「失楽」も読んでいるが、こちらのほうは同じメタミステリでも文体が格調高いのにねぇ。もうあのころの初々しさは戻らないのかね。まあ、面白いからいいけど。