SF百科図鑑 島田荘司『龍臥亭事件(上下)』★講談社ノヴェルス


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1999年

2/10-11
(略)さて、そうはいいながら
島田「龍臥亭事件」上下★★★★1/2
一気に読み終える。200ページ超えるころまで難航したが、その後はジェットコースターで、あっという間に結末を迎えた。暗闇坂以後の御手洗もの大作(もっともこれは石岡主演の番外編だが)では「眩暈」に並ぶ出来だ。特に都井睦夫に関する書き込みぶりは「秋吉事件」で開花したファクトノヴェルの書き手としての才能を遺憾なく発揮しており、圧巻。石岡主演は「異邦の騎士」以来であるが、20年を経ても相も変わらぬ純情ぶりがとても素敵(笑)。そして何といっても、里美ちゃんが可愛い。レオナなんかより100倍いいぜ! 是非ぜひ、次作では主役級で登場してほしいものである。
この作品の難点を挙げるとすれば、都井の書き込みに比べると、肝心の「龍臥亭事件」のほうの犯人たちの動機の描写が薄すぎる点だろうが(このへんが、「本格ミステリ」に「社会派」の要素を無理に結び付けようとして、ちぐはぐな印象を与えるなどと批判されるところなのだろう)、恐らくそれは技術的な問題というよりも、作者自身が後書きで述べているとおり、筆が進むにつれて主要な関心が「歪んだ都井睦夫像を改める」ことに移っていったためであろう。しかし、ノンフィクション部分と本格ミステリ部分を切り離せば、この結末の収め方自体は十分「本格ミステリ」の水準をクリアしているのであって、そこに濃密な「実録/都井睦夫」が挿入されたがために、反射的に結末の犯行動機の描写が物足りないとの印象を与えてしまうに過ぎない。それに、作者としては、「龍臥亭事件」の犯人たちの動機にも、都井に匹敵するほどの濃密な描写をしようと思えばできたのであろうが、そもそも作者の「本格ミステリ」像とは必ずしもそのような描写を必須とするものではないのであり、作者の中で「コード多様の館ミステリ」と「実録/都井」は本書の執筆動機として明確に分化していたのであるから、「館ミステリ」部分に関して不必要な人間描写は意図的に避けたと考えることもできる(本格ミステリにおいて不用意に人間を描くことは、トリックの面白さというミステリのセンスオブワンダーを殺ぐことにもなりかねない)。
というわけで祭日は結局読書に明け暮れ、「暗闇坂」に再挑戦(といいつつ「網走発」「御手洗ダンス」に浮気しながらだが)、今250ページ目であるがどうも展開がかったるいのでこちらはもうしばらくかかりそうである。