SF百科図鑑 Keith Roberts "Kaeti & Company"


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October 31, 2005

Keith Roberts "Kaeti & Company"

受賞作のみを読んだ短編集の残りの収録作をぼちぼち読んでいく。とりあえずロバーツのケイティ・シリーズ。「絞首刑執行人」「飛行船」のみ既読。残りを読んだ端からコメント欄に感想を書いていく。
silvering at 23:49 │Comments(6)読書

この記事へのコメント

1. Posted by slg   November 02, 200512:56
「ケイティの夜」★★★ ケイティの父親の一人称による、ケイティが病に死んでから幽霊として現われるまでの物語。手堅く感動系の話にまとめている。
「大地の沈黙」★★ ケイティの家に立ち寄った二人の客が語る謎の国の戦争話。オチがあるわけでもなく、今ひとつ印象にのこらない。
2. Posted by slg   November 07, 200520:00
「ケティと飲み仲間」★★ ケティに昔話をする男は車に轢かれて死んでいたという話。よくわからん。
「ケティと空の人」★★ ケティと女友達は空の人と会い危難に遭うが助かる。これもよくわからん。
「ケティとビル」★★1/2 上司を嫌っていたケティは職場のビルで女友達と知り合い、ビルで起こった火災で助かる。
「ケティと木」★★1/2 ボートで川を下りコンサート会場に行ったケテイが木の精から昔話を聞く。
「ケティと絞首刑執行人」はレビュー済み。
以上、全部ファンタジー。相変わらずロバーツの英語は俗語が多くプロットも不明確で読みにくい。作者が幽霊娘ティと酒場で話しながら、ケティを主人公のした短編小説を書いてケティに見せるというエピが挿入される。
3. Posted by slg   November 09, 200500:41
「時計塔の少女」★★★ アマリリスと名乗る売春少女と知り合ったケティは次第に彼女に魅かれる。分裂病の悪化したケティは<竹馬乗り>の幻覚を見、アムと部屋に立てこもる。相変わらずまともなプロットのない奇妙な幻想小説。
4. Posted by slg   November 09, 200501:00
「夢機械」★★★ ケイティが出演する映画の撮影シーンを見ながらタイムスリップを繰り返し、5つの異なる世界を経験するSF作家。最後のタイムスリップでケイティは「休み」をとり、作家はSFを書くことにする。本書全体の〆に書き下ろされたような話だった。
5. Posted by slg   November 09, 200501:05
「ツェッペリン」は既読のためとばす。
***
全体として
幽霊少女ケイティを主人公とする異なる設定、題材の様々な連作短編集。プロットが不明確な夢のようにぼんやり、淡々としたファンタジーが多く、訛りの口語英語で記された会話文が非常に読みにくい。説明が少ないので話の筋をとらえるのも難しい。いかにも「スタイリスト」といった感じの地味な作風。SFとはいえないだろう。玄人受けのする幻想作家という位置づけが最もしっくり来る。日本で人気が高いが、わたしは「パヴァーヌ」を含め、苦手なタイプ。
6. Posted by slg   November 09, 200501:07
テーマ性 ★★
奇想性  ★★★
物語性  ★★
一般性  ★
平均   2
文体   ★★
意外な結末★
感情移入 ★
主観評価 ★1/2(18/50)
■2004/04/07 (水) 00:19:00 ロバーツ「ケイティと絞首刑執行人」

面白かった。後半、息をもつかせぬどんでん返しの連続。ラストは一種の「夢オチ」に近いが、救われないラストよりはよっぽどいい。作者気に入りの女性キャラだけに、(仮想の物語という設定ではあれ)すんなり殺してしまうのは惜しいのだろう。この第7話の前書きで、作者がケイティのファンに「ケイティを殺さないでくれ」と言われるくだりによく表れている。
内容は、何やら政治犯を思わせる連続殺人事件で逮捕され死刑判決を受けたケイティの、刑が執行されるまでの数日間の出来事、夢と現実が交錯しながら最後の瞬間に向かう盛り上げ方がうまい。ケイティらのセリフは「訛っている」という設定で、文法や語彙が崩壊しているため最初は非常に読みにくいが、次第に話の中身に引き込まれるにつれ気にならなくなってくる。さすが英国協会賞受賞作である。SFマガジンに載った「ケイティとツェッペリン」よりも数段面白く、分かりやすい話であり、こちらを訳すれば星雲賞も夢でないと思うのだが如何だろうか。

本作を含むケイティシリーズは、短編集が2冊でているが、本作は1冊目の「ケイティと仲間たち」に収録。各話の冒頭に、作者がケイティと話しながら、「こんな話に出てみないか」と持ちかけ、ケイティが同意して、話がスタートする、というスタイルを取っており、各作品は主人公が「ケイティ」という名の娘であるという以外に設定やテーマに共通点がないというのがユニークである。いわば、作者なじみの幽霊少女・ケイティが作者の作る空想小説の主演女優を次々と演ずる、という一種のメタフィクション構成をとっている。そして、個々の作品の筆致は普通小説的であり、架空の設定であるのにリアリティがある点は、「パウ゛ァーヌ」などとも通ずる。
「パウ゛ァーヌ」は優れた作品だと思うが、これといった「萌えキャラ」を欠く点でやや地味な印象がある。むしろ、本作のような魅力的なヒロインキャラを核にした連作を翻訳紹介した方が、売れるのではないだろうか。基本的にSF味は薄く、小説としての練度を重視する作風はプリーストにも通ずるので、一般読者にもアピールすると思う(じっさい「パウ゛ァーヌ」の復刊版はミステリファンにも好評であった)。創元推理文庫のファンタジーシリーズあたいから宮崎駿系の絵柄の表紙で出せば、好評を博するのは間違いなかろう。