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<div class="datebody"> <h2 class="date">July 26, 2004</h2> </div> <div class="blogbodytop"></div> <div class="blogbody"> <div class="titlebody"> <h3 class="title">購入書籍</h3> </div> <div class="main"> ジーン・ウルフ「ケルベロス第五の首」2520円。<br> <br clear="all"></div> <a name="more" id="more"></a> <div class="mainmore"> 現在読んでいる「アステカの世紀」読み終わったら読みます。「アステカの世紀」は読了後に感想を書きます。今第2章に入ったところ。改変歴史小説でアステカ帝国がスペインに滅ぼされず世界の最大勢力となり英国を占領したという設定。リアルで面白い。<br> なお、「SF雑誌の歴史」は値段が高すぎるため古本屋待ちに決定。あるいは、原書を買ったほうがよいかも。ただし、巻末索引の作品名には邦訳出典が併記されており、これは原書では得られない情報だから、できれば邦訳書が欲しいのだが。<br clear="all"></div> <div class="posted">silvering at 00:40 │<a href= "http://blog.livedoor.jp/silvering/archives/4897916.html#comments"><font color= "#87614C">Comments(20)</font></a> │<a href= "http://blog.livedoor.jp/silvering/archives/4897916.html#trackback"><font color="#87614C">TrackBack(0)</font></a> │<a href= "http://blog.livedoor.jp/silvering/archives/cat_70845.html"><font color= "#87614C">読書</font></a></div> <div class="menu"><a href="http://blog.livedoor.jp/silvering/"><font color= "#87614C">このBlogのトップへ</font></a> │<a href= "http://blog.livedoor.jp/silvering/archives/4793903.html"><font color= "#87614C">前の記事</font></a> │<a href= "http://blog.livedoor.jp/silvering/archives/5078530.html"><font color= "#87614C">次の記事</font></a></div> <div id="ad"></div> </div> <div class="comblogbodybottom"></div> <div class="trackbackurltop"></div> <div class="trackbackurlbody"> <h3 class="trackbackurlttl">トラックバックURL</h3> <div class="trackbackurl"> <table cellspacing="0" border="0"> <tbody> <tr> <td width="99%"><input class="trackbackbox" value= "http://app.blog.livedoor.jp/silvering/tb.cgi/4897916"></td> <td align="right" width="1%"><input onclick= "quickTrackBack('http://blog.livedoor.jp/silvering/archives/4897916.html'); return false;" type="button" value="クイック"></td> </tr> </tbody> </table> </div> </div> <div class="trackbackurlbottom"></div> <a name="trackback" id="trackback"></a><a name="comments" id="comments"></a> <div id="commenttop"></div> <div id="comment"> <h3 class="commenthead">この記事へのコメント</h3> <div id="commentbody"> <div class="commentttl">1. Posted by ひねもす   <span>July 26, 2004 23:35</span></div> <div class="commenttext">出たのね。<br> ここは金の使いどころ。<br> 通販できるのかね。<br> 忙しいのと早寝早起きで優先順位が下がってしまうのだけど、キミの評価待ちで買うか。</div> <div class="commentttl">2. Posted by ひねもす   <span>July 26, 2004 23:37</span></div> <div class="commenttext">出たのね。<br> 君の評価待ち。その後、買おう。<br> 現在仕事優先モードなの。</div> <div class="commentttl">3. Posted by silvering   <span>July 27, 2004 02:33</span></div> <div class="commenttext"> 通販OK アマゾンコムでも何でも。<br> 今のアステカが、多分今週中くらいには読み終わるので、ちょっと待ってね>ケルベロス<br> 「SF雑誌の歴史」のほうは店頭で見たが、時代を追って丁寧に説き起こしているし、1号1号の内容の紹介にも結構ページを割いていたので、読み物としても情報源としても、なかなかいいのではと思う。特に巻末索引の作品リストは有用。ただ、お値段がね&&</div> <div class="commentttl">4. Posted by silvering   <span>July 29, 2004 00:04</span></div> <div class="commenttext">アステカの世紀面白すぎ。<br> もうちょっとで読み終わる、あと100ページ弱。</div> <div class="commentttl">5. Posted by silvering   <span>July 29, 2004 07:46</span></div> <div class="commenttext"> 参った。新規記事がアップできなくなっている。5回連続失敗だ。</div> <div class="commentttl">6. Posted by silvering   <span>July 29, 2004 07:52</span></div> <div class="commenttext">何回やっても駄目だ。<br> 畜生、仕方がないのでここにアップする。<br> <br> アステカの世紀 クリストファー・エバンス<br> <br> 第1部 悲しみの家<br> 1<br> 主人公(私)が見るのは燃えているロンドンの夢。実際の状況はもっと平凡で、夫アレクスと主人公はマルボロの家で戦火にあい避難、オケハンプトンでビクトリアと合流、ウェールズ国境へ行き、ウェールズ人の右翼に助けられ邸宅に保護された。だが、アステカ軍はロンドン、サザンプトンを落とした。更にノッティンガムとブリストルに侵攻。父と兄が戦死したか捕虜にされたかで消息不明となる。マーガレットはモスクワでツァー・ミハイルと無事だった。一定地点でアステカと休戦協定。モテクーゾマ皇帝のいとこノウヨトルがロンドン総督となり、三年経過。<br> ある朝、アレクスが私に「モスクワのマーガレットと連絡が取れ、助けの船が来ることになった」と話す。更に、コンピュータネットワークに入り込み情報窃取や破壊の出来る寄生虫ソフトのフロッピーディスクを見せ、「これでアステカ人に一泡ふかせられるぜ!」と吹聴する。ビヴァンは故障した太陽熱発電機の修理をしている。修理はうまくいかない。私がビクトリアと荷造りをしているとビヴァンが来たので、今日船で行くことを話し、来たければ母もつれてきてもよいと話す。ビヴァンは考えさせてくれと言って下がる。<br> その夜、アステカ軍の戦闘機三機が襲ってくる。彼らは逃走。アレクスは私にフロッピーを渡し家に戻るが、銃撃戦のあと、家は爆破される。わたしとビクトリアはビバンに案内され排水パイプ?に隠れるが、敵に見つかり拉致されてしまう。ビバンはアズテックのスパイだった?<br> <br> 2<br> 私は気を失い、起きると医師とチコメツリと言う男がいる。男によるとアレクスらは死んだとのこと。医師は英語を解しないが、男は英語を話す。また、私は妊娠しているようだった。やがて、ビバンとビクトリアが通され、私(実はイギリス国王の娘キャサリン=ケイス)は、ビバンが隠れ場所を密告したと詰り、ビバンは否定する。やがてビバンだけが連れだされ、英国諸島の司令官マクシクスカが入ってくる。この男によると焼跡からアレクスの死体は見つからなかったから生きているはずだと言うことだった。チコメツリによると、フロッピーを入れたジャケットは燃やされたらしい。<br> <br> 飛行艇はロンドンに着陸し、わたしは窓からセントジェームズパークやモールを見た。わたしはまだ、ディスクをなくした自分に怒っていた。荒れた気分を最高に高めるのには、怒りこそうってつけに思えた。<br> <br> ロンドンで弟リチャードと再会。父は四日前心臓発作で死去。ビバンは私が落としたと言ってディスクを渡す。私らは各自部屋を与えられる。ビクトリアは父の葬り方についてアステカ人への宗教的懸念を示す。<br> <br> 3<br> ビバンにディスクを渡し自分の部屋の端末で使ったところ、アレックスのシミュラクラが現れた。<br> <br> 4<br> 父の葬儀。父の閣僚には死者や追放者もいたため欠席が目だった。英国国教会の協会長はアステカに協力し、弔辞を読み上げた。その後、リチャードの部屋で儀式が行われた。リチャードは次期国王になる気まんまんだ。アステカの傀儡なのに。アステカはカトリックに表面的には従っていたが、実態は雑婚、犬食いと言った風習を残している噂だった。次期首相候補はパークハウス。私は傀儡政権などごめんだというが、リチャードに止められる。<br> アレクスのソフトの解読は難航の末、ようやくアステカ軍の大量の情報引き出しに成功する。ビバンが味方の一味に渡してみるといい、私は迷った末任せることにする。<br> <br> 5<br> 複合庁舎を案内されたあと、エステパンと会見。リチャードをアステカのシンパ国の外交官に会わせていることや、マクシクシカを北部軍の整備に向かわせていることを認めた。エステパンの母ドナ・マリアの絵や映画の話題も出た。<br> <br> 6<br> 妹と墓参りのあと、エクステパンに町を案内され、パブで放置され屈辱を味わう。アレクスから引きだした情報を伝えたかとビバンにきくが任せろとしか言わない。最終的にビバンは、アレクスのシミュラクラに軍隊の配置情報を書きかえさせようと言いだす。<br> <br> 7<br> リチャード、王になる。クリスマスパーティ。マクシクシカは私がナフアトル語を解するのを知らず暴言を吐き、恥をかいて席をはずし、異母兄弟のチマルコヨトルがフォローする。アステカはスコットランド制圧準備を進めているらしい。ビクトリアはトラカヒューペンという男に襲われそうになり私が助ける。エクステパンはクリスマスプレゼントに子馬二頭をくれた。<br> <br> 8<br> 馬にのって帰る途中、エクステパンが車できて急ぐように言う。行ってみると、夫アレクスの遺体が待っていた。エジンバラ城攻撃中に岩の下敷きになったらしい。<br> <br> 第二部 黒曜石の鏡<br> 1<br> 私はスコットランドの視察に行った。病院は負傷者と病人だらけ。特に、ニューインドポックス(ヨーロッパで大流行し、アステカの繁栄の一つの要因となった)のワクチンの不足による流行は深刻だ。エクステパンによると新しい立法で優先的に抗体が入手されることになったらしい。更に、エクステパンの伯父でアステカのナンバー2の地位にあるテッァフイトルが訪英するということで、私も半ばロンドン帰還を強制される羽目になった。<br> <br> 2<br> ロンドンに戻りビバンに不在中の状況をきく。マクシクシカがコンプレックスの中を家探ししまくったこと、ロシア侵攻計画中であること、エクステパンがメキシコに一時帰国したこと、リチャードとビクトリアがモナコ休養中であること。<br> <br> 「メキシコに一月いて、三月に帰ってきました」<br> 「あら。何をしに?」<br> 「さあ、知りません。みな、彼が戻ってきて喜んでいましたよ。いわば巨悪より小悪がましといったところでしょう。彼の兄にはみなびくびくしていましたから」<br> 「リチャードとビクトリアはどこ?」<br> 「聞いていなかったのですか?」ビヴァンはトレイからケーキを一切れとった。「休暇です。モナコへ」<br> 「不満の遠まわしな表明かしらね」<br> 「私の知ったことではありません」<br> 無作法なビヴァンがまたそばにいることが自分にとっての慰めになることに、私は驚いていた。<br> 「他には何か?」<br> 「どういうことで?」ケーキを口にいれたままビヴァンが言った。<br> 「どんなことでも」<br> 「ロシアへの侵攻の機が熟していると思いませんか」<br> 私はティーカップを取った。「今夜、アレックスに相談しましょう」<br> <br> 即席のアレックスがスクリーンに現れると、私は視線から身を引いた。ばかげているとわかってはいるが、本能的な反応を抑えることはできない。私はまだ彼に「見られる」ことへの心の準備ができていない。<br> 私はビヴァンにID確認をさせた。<br> 「ようこそ」とアレクスが答えた。<br> アレクスの電子イメージは以前と同じく都会的で、陽気ですらあった。その姿に私はいいようもないほど胸の痛みを感じた。<br> ビヴァンは私を振り返り、マイクを示した。私は首を振った。<br> 「あなたが話して」私は小声で言った。<br> ビヴァンは驚いたかもしれないが、表情に出さなかった。彼はスクリーンに向き直った。<br> 「いくつか知りたいことがあります」ビヴァンはアレクスに言った。<br> 「お役に立てるとうれしいです」答えが返った。<br> 「アステカがロシアを侵攻するという複数の噂があります。この件に関し、情報は?」<br> 長い間があった。アレクスは明らかに考え込む表情だった。誰かが耳打ちしているかのように。<br> 「陸軍と空軍は中央ヨーロッパと中国北西部全体に展開しています」と答えが返ってきた。「海軍はベーリング海とバレンツ海で作戦遂行しています。全体の状況を見ると、侵攻は差し迫っているように見えます。しかし、目的は、ロシア共和国連邦の軍をトルコとメソポタミアから撤退させ、パレスチナとアラブへの攻撃の不安を払拭することです。実際にロシア国境への侵攻が行われることはないでしょう」<br> アラビアとパレスチナはアステカの影響下にあり、数年来緊張が高まっている。アステカは太陽熱発電をものにしてはいるが、未だに産業やプラスチック製造の動力源を大きく石油の供給に頼っているのだ。とはいえ、専守防衛主義のロシア帝国による攻撃を本気で恐れているなど、今までとても信じられなかった。<br> 「間違いないかどうか、きいてみて」私はビヴァンに小声で言った。<br> ビヴァンがきくと、アレクスは答えた。「確実です。アステカは、西ヨーロッパで奇襲を成功させるに足る兵力も装備も備えていません。手持ちの情報によると、モテクーツォマがあからさまにそれを禁じたとか。アステカは、連邦との間で国境線の攻防を演じるよりも、むしろ、連邦を中立化させることを望むでしょう。西ヨーロッパを征服して間がなく、必要以上の軍事行動は、帝国の資源の浪費になるでしょうから」<br> アレクスの画像は一瞬点滅し、安定した。ビヴァンは私を振り返った。<br> 「どう思う?」私は言った。<br> 「ご自分でお考えになったほうがよいでしょう」ビヴァンは答えた。<br> 私は考えた。「マーガレットにメッセージを送れるかときいてみて。ロシア皇帝に」<br> 今度はビヴァンも興味を示した。「ご自分でおききになったらいかがです?」<br> 「お願いよ、ビヴァン」<br> ビヴァンは肩をすくめ、言われた通りにした。驚いたことに、アレクスはこう答えた。「ケイトがご一緒ですか」<br> 「メッセージを送れますか」ビヴァンがなおもきいた。<br> 「私の力の及ぶ範囲内であれば」<br> ビヴァンが私に言った。「何と伝えたいのです?」<br> 「アレックスがいった通りのことを伝えて」私は答えた。「私からの私信として。私がアステカの極秘ファイルにアクセスした結果、アステカは侵攻を完遂できる資源を持たないと。メッセージは『シャーロット』のサイン付で」<br> ビヴァンは怪訝に見た。<br> 「そうすればわかるから」<br> <br> マーガレットへのメッセージを託したあと、アレックスは「盗聴されているから今夜は止めたほうがいい」といい、アクセスを切る。<br> 二時間後私は待ちきれずアレクスにアクセス。テツァフイトルの来る理由をきくが、定かでないという。アレクスの意見は単に統治の状況を知るためだというが、チマルコヨトルが(ドイツへの用のついでとはいえ)来た直後で納得できない。しかし結論は出ず、アクセス切る。<br> 翌日、エクステパンに呼ばれ、テノクティトランが明日来るので姉妹で迎えてくれと言われ、私は引き換えに苦情処理センター設置を求めると、意外にも承諾された。<br> <br> 3<br> 船でテツァフイトル来る。私達は紹介される。テツァは私にあとで個人的に話したいという。<br> マクシクシカの私への抑えた敵意は相変わらずで、彼はアレクスを処刑していながら誤って死んだと嘘をついているという私の疑念は深まった。<br> テツァと食事後に、私は散歩に誘われた。テツァは、私が敵意をあからさまにするからこそ信頼できるといい、帝王の息子二人についてきく、エクステパンの治世ぶりはどうかと。私は、マクシクシカと交代させようとしているのではと敏感に感じ、「他の人よりはよくやっている」と答える。<br> 私とビクトリアとリチャードは翌日のイングランドとアザニアのクリケット試合観戦に招待されるが、戻るとビヴァンに殺されるからやめろと止められる。反アステカ派がテロを計画しているらしい。私はリチャードに言うがリチャードは行くと言う。ビクトリアは不在でつかまらない。ビヴァンに爆破の場所を教えろと言うと「小耳にはさんだだけで知らないが、推論では広場だろう」と答えた。<br> <br> 4<br> 結局二人はつかまらず、私は試合観戦する羽目になった。ビクトリアも途中で来た。何も起こらないまま午前の部が終わり、昼食になる。そこで、実はリチャードの告げ口で爆弾は撤去され容疑者を逮捕していたことがわかる。私は容疑者をどうすべきか、知っている人だがときかれ慈悲を請うしかないと答えざるを得ない。試合はイングランドがかろうじて勝った。(アザニアは英国の植民地でアステカが解放)<br> <br> 5<br> 戻るとビヴァンは母が危篤でスコットランドに帰ったと言われ、アレクスのディスクもなくなっている。エクステパンはテツァと一緒に帰国し、マクシクシカが代行する。翌朝、ビクトリアは爆破未遂事件でクリケットのキャプテンと共謀したかどで逮捕され国外追放となる。<br> <br> 6<br> ビヴァンは10日後帰ってくる、ディスクを持っていた。本当に母が亡くなったといった。私はディスクでアレクスにアクセスし、真相をきくが、アレクスの答えは表面の事象をなぞるばかりだ。諦めて切ろうとすると後ろにマクシクシカがいた。ディスクは踏みつぶされた。<br> <br> やばいわこれ、面白すぎてやめられん。もう朝だ。<br> <br> 7<br> エクステパンは帰ってきた。実は縁談で戻っていたことを告白する。しかし自分には他に意中の人がいるといい、エクステパンは私に求婚した。私が驚き、政略結婚はごめんだというと、エクステパンは、違う、リチャードとチマルコヨトルの娘が婚約したからその必要はないんだ、自分の自由意思なんだといい、私は二度びっくり。リチャードに翻意を迫るが、リチャードは娘にぞっこんで意思を曲げない。<br> <br> ヤヴァイ、面白すぎる。<br> <br> 8<br> エクステパンは結局私にふられ、北米の娘と政略結婚する。リチャードとチマルの娘の挙式。前日、ビヴァンから、式の宮殿の近くに新しい設備ができたから機会があれば見よ、と言われる。式の途中で、私はアステカのザカトラトアに連れだされ、その直後宮殿が爆破される。私はフローターに乗せられ、付近のアステカの円錐型の建物に連れこまれる。その中央には不可思議な鏡のようなもののついた機械があった。ザカトラトアはアステカに滅ぼされたテキサスの民族の生き残りで反アステカ派だった。彼は機械の写真を撮りまくりながら、これをロシアに送れという。しかしその際中追っ手の飛行艇の音が聞こえ私は先に逃げるが、彼は逃げ遅れ爆殺される。私は敵が去ったあと宮殿に戻る。驚いたことに死者はなかった。更にエクステパンによると、ロシアがアステカ側に侵攻したため、アステカもロシアへの侵攻を始めたということだった。<br> <br> 第三部 火の蛇<br> 1<br> エクステパンはロシア戦争で不在がちとなり、その妻プレシャスクラウドは妊娠したまま置き去りにされ、侍女のミアと夫の関係を疑う。アステカは元来多婚文化であり、カトリックの妻に合わせ一夫一婦の形をとるようになったとしても安心はできないのだ。そんなクラウドを私は乗馬に誘う(ちょうどビクトリアが追放され、馬が空いていた)。私はクラウドの不安を払おうとするがうまくいかない。ロシア戦役は、南方では侵攻が進むものの、北方のモスクワやペテルスブルグ侵攻に失敗したまま冬に突入し、難航していた。フェツァルコートルの建造物の目的は未だにわからない。マクシクシカは全アイルランドを制圧するが、ロシア侵攻の沿え物扱いでメディアの耳目を集めるには至らない。ロシアの版図は次第に狭まり、ついに降伏は時間の問題という状況になってきた。ロシアが降伏すればアステカは事実上世界を征服し、それを阻む見るべき存在はない。エクシテパン不在のロンドンには母方に英国人の血を引く穏健派の代行が統治し、不干渉政策で民衆に受容されている。日本人大使の交代レセプションが行われ、私はその場を利用してエクステパンにクラウドに気を遣えといさめるが、彼は戦争でそれどころでないとにべもない。そこへ緊急の知らせが入り、エクステパンは席を立つ。パークハウスによると、南方のアステカ2軍の合流地点で戦勝パレードの最中にロシアが都市を抹消する超強力爆弾を落としアステカ軍を全滅させたのでないかという噂だった。<br> <br> 2<br> 私は週に一回ほど市民相談所で苦情をきく。その日、シンシアという老女の教育に関する苦情をきいていた。アステカの圧力で愛国心や自由意思を抹殺するような偏った教育がなされているという。私が調べてみると答えると、突然爆発音がしてエクセルシオルホテルに爆炎が上がる。私は救助活動を指示し、翌日の新聞で賞賛の扱いを受け、ビヴァンにからかわれる。爆発に関してはロシアの遠距離ミサイルだと報じられるが、内側から爆破されていたことから英国人のパルチザンによるテロと見るのが自然だろうと私は思った。この点に関して私はエクステパンに苦情を言ったが、エクステパンはそれどころではなかった。二人の兄弟をロシア戦役で亡くした彼は、直にロシア遠征軍の指揮をとるべき命を受けたというのだ。<br> <br> 3<br> クラウドの出産。私は本人の希望で立ちあう。ミアに立ちあわないでほしいといわれ、私はミアを呼びクラウドが恐れているというが、ミアはそれはおかしいと冷たい。エクステパンと結婚したかったのかときくが、立場上そんなことは言えずミアは立ち去る。その間にクラウドは男児を出産する。私はエクステパンに早く伝えねばというが、エクステパンのメッセージは、敵襲を懸念し早くロンドンから避難せよ、というものだった。<br> <br> 4<br> 私はクラウドらと郊外に移動する。主にクラウドのリハビリのためであったが、自分が子供のための道具にされているという疑念に囚われたクラウドの精神状態は日増しに悪化し、ついには腹に女の子がいるという妄想に囚われる。私は赤子とクラウドを別室に移動させ、クラウドは少し落ち着き、私に乗馬に行きたいという。医師は止めるが私は応じる。クラウドは途中で馬を全力疾走させ森に消え、追って行くと馬だけ見つかり、湖の氷に穴が空いている。しかしそれは偽装で、湖の中にクラウドはおらず、やがて別の場所で、手綱で首をつっているのが遺書とともに発見される。責任を感じた私は、ロシアの前線のエクステパンのもとへ、自ら出発する。<br> <br> 5<br> 私は小型艇でモスクワ近郊の前線の町に着き、ある邸宅に案内される。迎えた文官パクトリ(メキシコ人ではない)によるとアステカが落とし市長を殺害した、市庁舎であるとのことだが、嘘臭い。市長や市民は真っ先に逃げ出していたようだ。アステカはロシアの爆弾より強力な兵器があるから勝てるというが、その兵器が何かは言わない。夜、向かいの建物で物音がしたのでこっそりいってみると、教会で、中央のろうそくのともったついたての向こうには、アステカの神の絵に、アジア人ロシア兵の心臓のえぐられた死体がいけにえにささげられている。私は慌てて館に戻る途中、数人の兵士が現れるが、どけと叫び館に入る。パクトリに何をしていたかときかれ、散歩と答え自室に戻るが、先の敵か味方かわからない兵士が拉致に来るのを恐れて、徹夜してしまう。<br> <br> 6<br> 翌朝、エクステパンが到着し、私はニュースを伝える。エクステパンは既に知っていたようだが、息子誕生の知らせに喜び、妻の訃報に悲しんだ。そして愛のない結婚をした自分の責任だと言った。またロシアの兵器は核兵器だということを明らかにした。アステカも昔開発していたが、荒廃しかもたらさない兵器だという理由で禁止され、爆弾以外で同じぐらい強力な兵器を開発した、ロシアが核でヨーロッパを滅ぼす恐れがある以上、威嚇のため局所的に使わざるを得ない、モスクワ近郊の都市に使うことを予告し避難を勧めてある、という。私は一緒に前線に行くことを申し出、列車で出発し、前線につく。その途中、前夜見た生贄の儀式のこと、エクステパンが宗教学校出身であることを指摘し、アステカはクリスチャンに改宗した今も古い信仰を引きずっているのでないか、生贄はエクステパンの指示でないかとの疑念を提示するが否定され、戦時中に虐殺を正当化するため宗教が利用されるのはキリスト教なども同じであると反論され、インド戦役で英国軍にアステカ兵士が大量虐殺され腹を十字型に切られたことなどを指摘される。現地につくとマクシクシカが前線を指揮していた。まもなく、秘密兵器のビームが使用され、天に強烈な光輝が走り、しばらく続いたあと終わる。エクステパンはターゲットの町が消滅したと告げる。<br> <br> 7<br> 秘密兵器とは人工衛星で太陽光線を収束し、都市を一瞬のうちに溶解させるものだった。しかし、ロシアは無条件降伏せず核兵器使用を公言したため、マクシクシカの上申を皇帝が容れ、第二弾のビームが使用された。これによって私の姉マーガレットらも死亡した。ついにロシアは白旗を上げ、われわれはモスクワを制圧した。私は、あの円錐建造物の奇妙な装置はビーム兵器のミニチュアだったのではないか、と思った。<br> <br> 第四部 代弁者<br> 1<br> 我々は英国に戻り、リチャード夫妻のところへ行く。王妃は妊娠した。エクステパンは、ミアや息子とともにメキシコに戻らねばならぬが、私に一緒にきて皇帝に会って欲しいという。私が答えかねていると、ロンドンで爆弾テロがあり、首相他の閣僚が死亡したのですぐに戻れ、という連絡が入る。<br> <br> 2<br> 私はビヴァンから、爆破はアステカが英国テロ集団と密通の噂のある首相を葬るための謀殺の噂があることを知らされ、エクステパンに疑問をぶつけるが、エクステパンは、閣僚に多数のアステカ人がいた、自国人を殺すような冷血扱いされるのは侮辱である、証拠を示せと反駁する。一部の異民族嫌いの高官の陰謀の可能性があると指摘すると侮辱の上塗りになると思った私は、それを自制する。エクステパンはメキシコに出発する。<br> <br> 3<br> 結局私は最後の最後でメキシコに同行する決断をした。ビヴァン、弟夫婦も同行。メキシコの首都、湖上の人工都市に到着する。我々は皇帝に会う。私は皇帝に父のペンを献上し、ビクトリアとの連絡を請い認められる。車椅子の皇帝は我々を散歩に誘う。<br> <br> 4<br> ビクトリアの映像が届く。元気そうだが、せりふはシナリオを与えられているようだ。ビヴァンは、ビクトリアの電話番号を盗めないかやってみようという。ビクトリアに返事を出したいという願いは却下される。私はエクステパンにメキシコの名所旧跡を案内してもらう。ピラミッドの頂上で、エクステパンは私に再度求婚し、私は「ビクトリアの釈放」と「円錐建造物の装置の目的を教えること」の二点を条件に承諾する。<br> <br> 5<br> アパートに戻るとビヴァンが話があるというが、私は疲れていたので後にしてくれといい入浴して寝てしまう。ビヴァンは休暇に出かけてしまう。私は翌日、皇帝とその弟(副皇帝)の前で結納を済ませ、エクステパンは亡妻のことを詫びに北米に赴く。私はその後、ミアやエクステパンの親族と観光を続けるが、旅先で、エクステパンの交渉が決裂し北米がポトマックに侵攻し、エクステパンはアステカ軍を前線で指揮しなければならなくなったとの報を受ける。途方に暮れ毎日のニュースを見るが戦況は芳しくなく、北米諸国が次々寝返りエクステパンは補給路を立たれ窮地に陥る。私はチコメツトリに何故ビームで脅さないのか尋ねるが、それは双方にとって屈辱である、アステカは不名誉よりも死を選ぶという。ロシア戦役でも現れたアステカの特異な精神性をまたも思い知らされる。そこへビヴァンが休暇から戻る。ビヴァンは、ビクトリアが北京ではなく、メキシコ首都の南方の町に監禁されており、私のよく知っている人物と一緒であることを告げ、私は衝撃を受ける。<br> <br> 6<br> アレクスは生きていた、しかもビクトリアと夫婦同様の生活をしている。私と夫婦生活をしていたころから関係していたのでないか。アレクスが死んだというのは私をエクステパンと結婚させるために仕組まれたのではないかとすら私は疑う。私はチコメツトリに頼んでアレクスとビクトリアのいる宮殿に連れていかせ、ビクトリアの出かけたすきに訪問し、アレクスと対峙する。そこで、ビクトリアと同棲していることを知らないふりをして、アレクスに嘘をつかせ、皇帝がエクステパンと私の結婚をいやがっておりアレクスと会いたがっているとのつくり話でアレクスを連れだすことに成功する。<br> <br> 7<br> 私はアレクスを部屋に連れこみ、盗聴されていることを期待しながら、アレクスと寝る。翌朝、私の期待通りに、マクシクシカが証拠のテープをつきつけ乱入し、副皇帝の下に連行する。皇帝は前日に死に、エクステパンはポトマックで包囲攻撃を受けている。戦争終了後に処分決定することとなり二人は地下房に収容される。その直前にアレクスが真相を語る。件のディスクははじめからアステカに嗅ぎつけられ、アレクスがアステカと取引して、私を通じて嘘の情報をロシアに流し油断させるために私に渡したこと、ロシアの船がくるというのも全員を館に集めて逮捕しやすくするための嘘だったこと、しかし予期に反して爆撃が行われたこと、メキシコにきたら女が欲しくなりビクトリアを要求し、ビクトリアも応じたこと、自分は女好きで最初からビクトリアと寝ていたこと。<br> <br> 8<br> 私の独房にビクトリアも収容される。ビクトリアもアレクスの証言を裏付ける罪を告白する。アレクスには最初に酒を飲まされて犯され、脅されて関係を続けたが途中から快楽に変わったこと。アレクスが生きていることははじめ知らなかったこと。アステカの男たちと関係を持ったことをマクシクシカに写真などをつきつけられ脅されて、爆破事件の濡れ衣をかぶってアレクスと一緒になる道を選んだこと、しかしアレクスと一緒になってもやはり愛せなかったこと、ただ単に独りでいられなかっただけのこと。私はすべて副皇帝とマクシクシカが仕組んでビクトリアを誘惑させたと指摘し、ビクトリアも納得する。<br> <br> 9<br> 数日後私達は連れだされ、乗り物で地下奥深く運ばれた後、上に運ばれる。そこで入浴した後、個室に入れられ、そこで食事を提供され再び監禁される。食事を食べ、酒を飲むうちに酔ってしまう。ビクトリアととりとめなく話しているうちに、エクステパンが現れる。そして二人を連れて別室に行く。そこには副皇帝がいて、エクステパンに皇帝就任の儀式を行う。足元で怪物のように無残な姿になったアレクスが這ってくる。ビクトリアは連れ去られ、エクステパンは、私を連れ円錐型寺院の頂上に出る。そしてあの黒い鏡の機械。エクステパンはそれが、別の地球への入り口であると明かす。私とビクトリアは姦通の罪で、別の地球への追放を言い渡される。私は口に何か甘いものを飲まされる。取り囲む人影の中に、ビヴァンがいたような気がする&&<br> <br> エピローグ<br> 私はもう一つの地球の故郷に相当する地の家で、ビクトリアと目覚める。一見元の地球と似ているが違っている。アステカは滅んで伝説の存在になっている。環境の違いにビクトリアは絶叫し、ショックで話せなくなる。どこまでが現実でどこまでがドラッグによる幻覚なのかもわからない。数日後、ビヴァンによく似た男が食料を配達に来る。何でも私たちの口座が開設されそこからの支払いの形で、何者かから注文があったという。男はアステカについては何も知らないようだ。私は少しずつ行動範囲を広げ、アステカの痕跡を探すが見つからない。例の鏡機械の建造物のあった場所に行くが、それと同じ物も、トンネルの出口らしきものも見つからない。一方通行なのかもしれない? 失意のうちに家に戻る。そこで、エクステパンからもらった結納品を見る。エクステパンはなぜこれを残したのか? そもそもビヴァンに似た男に食料を配達させるのは何故だ? 我々にまだ利用価値があるということではないか? 恐らく彼らはそのうちこの世界との間に次元の大きなトンネルを空け、侵攻してくるのではないだろうか? 私は来る日も来る日も空を見上げ、それを待ち望んでいる。<br> <br> (終わり)<br> <br> いやあ面白かった。ラストが「えっこれで終わり?」という知りきれとんぼなものなのが欲求不満だが&&。つうか短編のようなおちだな。でも面白かったから許す。<br> <br> テーマ性★★★★<br> 奇想性 ★★★<br> 物語性 ★★★★★<br> 一般性 ★★★★<br> 平均4・0点</div> <div class="commentttl">7. Posted by silvering   <span>July 29, 2004 17:27</span></div> <div class="commenttext"> 「ケルベロス」読み始めた。平行してメアリ・ジェントルの改変歴史ファンタシイ、アッシュシリーズ第1弾「アッシュ:秘密の歴史」も読んでます。</div> <div class="commentttl">8. Posted by silvering   <span>July 30, 2004 01:59</span></div> <div class="commenttext"> ケルベロス、訳文判りやすいんだが、ちょっと無味乾燥かな。内容的に、もうちょっと格調高い文体のほうが雰囲気出るんだが&&。平井呈一風擬古文体なら言うことないんだけど。まあそこまで望むのは贅沢だろう。翻訳出ただけありがたいと思わねば。<br> あと、ちょっと誤植多いかも。「味あわせる」は気になった。校正者のレベルが落ちてるのかな。</div> <div class="commentttl">9. Posted by silvering   <span>July 30, 2004 22:06</span></div> <div class="commenttext"> 第2話まで読んだが、あんまおもんない。<br> 確かに難しい。<br> プルーストの「失われた時を求めて」に影響を受けているらしいが、それも読んでないのでよくわからん。</div> <div class="commentttl">10. Posted by 手下母艦   <span>July 30, 2004 22:22</span></div> <div class="commenttext">&gt; あんまおもんない。<br> <br> ということは相当つまらんと考えていいよね。<br> 結論を待ちます。</div> <div class="commentttl">11. Posted by silvering   <span>July 31, 2004 13:15</span></div> <div class="commenttext"> ストーリーテリングで読ませる作品でないことは確か。書かれた時期からしても、英国ニューウェーヴの影響顕著なりし作品なのではないかと推測される。難しいです。「難解なものを読み解く」ことにカタルシスを覚える、マニア向けの作品であることは間違いないでしょう。一般性は皆無。SFオタク以外では、一部のへそ曲がりの本格ミステリおたくには向くかもしれないが&&。<br> この手のタイプの作品はラストのどんでん返しで評価が一変することがあるから、まだ逆転の可能性はあるが、正直、平行して呼んでいる改変歴史ファンタシイ「アッシュ・秘密の歴史」の方が面白くて、ケルベロスの第三部のほうをなかなか読む気にならない状態ですので、最終評価はもうちょっと待って。できれば今日中には読み終わりたい。</div> <div class="commentttl">12. Posted by silvering   <span>July 31, 2004 17:27</span></div> <div class="commenttext"> プルーストに影響どころか、カキダシぱくりやないか。呆れた。</div> <div class="commentttl">13. Posted by silvering   <span>August 01, 2004 01:42</span></div> <div class="commenttext"> ケルベロス読了。結構いいかも。途中を斜め読みしたのを悔やんでいる。今頭を整理するため、部分部分を再読中。最終評価はもうちょっと待って。</div> <div class="commentttl">14. Posted by silvering   <span>August 01, 2004 15:47</span></div> <div class="commenttext">ケルベロス。<br> 1回目に読み飛ばしてたところにも深い意味があったことがわかり、要所要所を再読する。肝心のところをぼかしてあるので(わざと?)、明確にはわからないが、すりガラス越しに見える世界像は強烈だ。しかしそれも全て嘘かもしれないことは、作中人物(この人物自体架空かもしれない)の言葉が代弁している通りである。<br> 本作は表層的な物語3編と、そのさりげないフレーズの部分に埋め込まれた背後にあるより深くあいまいで巨大な物語の多重構造をなしている。更に厄介なことに、この奥にある物語は不定形で真実がいずれであるのかが判然としない。というよりも真実を特定することなど無意味だというのがこの作品の主張ですらあるようだ。<br> 1回目に読むときは、表層的な物語を普通に楽しむことが自然にメインとなる。その表層的な物語は&&<br> 第1話は、一種のマッドサイエンティスト物で、ディック的な自己認識の崩壊と再構築を、実験材料の視点からその記憶を一人称語りで語る、というスタイルで提示している。ネタをバラすと、ウェールズ出身の生物学者が、舞台となる惑星に殖民し、自己の知識と記憶をアンドロイド(ミリオン氏)に移植して教師役に仕立て、自分のクローンを大量に作成し、失敗作は売ったり改造して奴隷にしたりしながら、自己に似た成功作を自分の跡取りにして同様の実験を続け、自己のアイデンティティを探求するという話。語り手は、何代目かの成功作であり、比較の対象として通常の子として生れたディヴィッドと全く同じ環境、条件で育てられながら、「父」に比較研究される。この館は、売春宿の上がりで成り立っており、館の主はそれをほとんど自己の研究につぎ込んでいる。真相を知った「わたし」は父と対決する&&<br> 第2話は二重惑星のもう一つの星の原住民の民話。同じ母から生れた東風と砂歩きの兄弟のうち、砂歩きの視点から書かれた神話風の物語である。「マーシュ」という第1話で館のヴエール博士を訪れた(自称)地球人学者が採取した民話という位置づけである。表面的にはこの砂歩きの求道の旅をファンタシイ風の筆致でつづったものであるが、そのスタイルを通じてこの姉妹惑星と原住民の驚くべき実質が象徴的に語られている。<br> 第3話は、政府諜報員殺害容疑で逮捕された「マーシュ」から政府が没収した記録を担当者が読むというスタイルのコラージュ作品。この第3話で全体の視点が統合され、第1話、第2話で埋もれていた裏の真相が徐々にかつ曖昧に明らかにされるという最も重要なパートである。表面的には、(ネタバレしてしまいます)現地人と地球人のハーフの少年が地球人学者になりすまし、人類学を学び、大学で政治に手を染め姉妹惑星を訪れ「第1話」の館を訪れた後、事件で逮捕され獄中で日記をつづる、という話。スタイルはまさに叙述トリックの本格ミステリだが、明確な「探偵による解決編」がないという点で、アンチミステリである。それゆえに、視点人物の担当官も結局、「マーシュ」が地球人なのか原住民なのか結論が出せず、永久投獄という結果になってしまう。<br> <br> とにかくこの第3話が曖昧にして秀逸であり、凡百のミステリにありがちな「せっかくの異常にして過剰な謎が、安易な現実的で明確な解決によって貧相なものに変貌してしまう」という弊害を、結論の意識的な不確定化(話をまとめきれず放置というのではなく、「作者には全てが見えているのにわざと語らずに手がかりだけを提示し、読者の想像に任せる」という形での)によって見事に免れているのだ。それによって、第3話の真相自体が効果的に妄想をかき立てる曖昧なものとなっているし、恐らくマーシュは原住民とのハーフの若者だとしても、作中でおびただしく引用される手記の、どこからどこまでが真実なのかそれとも改竄ないし創作なのか、その判断は読者に委ねられている。普通のミステリならば、「この文章のこの部分は誰それが本人になりすまして書いたもので&&」などと種明かしするところだが、それが(明らかにわざと)ないのだ。<br> <br> そしてこの第3話はそれ自体一個のアンチミステリとして秀逸であるばかりでなく、一応話として独立して成立しえたかに見えた第1話、第2話の裏に隠れた、SFならではの驚くべき真相を、逆照射する視点を提供しているという点で更に決定的に重要である。第1話で紹介された「模倣能力を持った原住民が地球人類に乗り代わり、自分を人類と信じて生活している」というヴェールの仮説、第二話の「影の子」と「沼人」と「星船」の伝説(最後に落ちた星船に乗っていたたぶん地球人とおもわれる人々が降りてくるシーンがある)、こういったものがつなぎ合わされ、アンフェアにならない程度に明確と不明確の瀬戸際あたりで論理的説明を与えながらフランスの殖民隊がくるはるか以前にも地球から「星船」がきたのではないか、真の原住民といえる影の子は、その段階で、自由を捨て、人類を模倣しアボとなったのでないか。ちなみにフランス殖民隊がそれぞれの星でアボと戦い敗れ、違った形態で共存するようになったという話も語られる。第1話、第2話に関連する形で様々なありうべき真相がこの第3話で語られる。それらは相互に符合するようでいて、矛盾するようでもある。<br> しかし、それら諸々の「ありうべき真相」は全て、自称地球人学者「マーシュ」の「騙り」である可能性を常にはらんでいる。第2話全体が「マーシュ」の作品であることも同様である。<br> <br> 本書はこういった形で、SFとしては「クローン、脳内情報の転写とアイデンティティ」「完全擬態能力を持ったエイリアンとアイデンティティ」「超古代文明と宇宙殖民」「異星の特異な生態系とそこで構築された宗教や伝承」「音による暗号コミュニケーション」「進化と痕跡器官」といった多彩なネタを詰め込みながら、全体を壮大かつ巧妙な重層構造物に組み上げる離れ業を演じている。<br> <br> 結論
<div class="datebody"> <h2 class="date">July 26, 2004</h2> </div> <div class="blogbodytop"></div> <div class="blogbody"> <div class="titlebody"> <h3 class="title">購入書籍</h3> </div> <div class="main"> ジーン・ウルフ「ケルベロス第五の首」2520円。<br> <br clear="all"></div> <a id="more" name="more"></a> <div class="mainmore"> 現在読んでいる「アステカの世紀」読み終わったら読みます。「アステカの世紀」は読了後に感想を書きます。今第2章に入ったところ。改変歴史小説でアステカ帝国がスペインに滅ぼされず世界の最大勢力となり英国を占領したという設定。リアルで面白い。<br> なお、「SF雑誌の歴史」は値段が高すぎるため古本屋待ちに決定。あるいは、原書を買ったほうがよいかも。ただし、巻末索引の作品名には邦訳出典が併記されており、これは原書では得られない情報だから、できれば邦訳書が欲しいのだが。<br clear="all"></div> <div class="posted">silvering at 00:40 │<a href= "http://blog.livedoor.jp/silvering/archives/4897916.html#comments"><font color= "#87614C">Comments(20)</font></a> │<a href= "http://blog.livedoor.jp/silvering/archives/4897916.html#trackback"><font color="#87614C">TrackBack(0)</font></a>│<a href="http://blog.livedoor.jp/silvering/archives/cat_70845.html"><font color="#87614C">読書</font></a></div> <div class="menu"><a href="http://blog.livedoor.jp/silvering/"><font color= "#87614C">このBlogのトップへ</font></a> │<a href= "http://blog.livedoor.jp/silvering/archives/4793903.html"><font color= "#87614C">前の記事</font></a> │<a href= "http://blog.livedoor.jp/silvering/archives/5078530.html"><font color= "#87614C">次の記事</font></a></div> <div id="ad"></div> </div> <div class="comblogbodybottom"></div> <div class="trackbackurltop"></div> <div class="trackbackurlbody"> <h3 class="trackbackurlttl">トラックバックURL</h3> <div class="trackbackurl"> <table cellspacing="0" border="0"> <tbody> <tr> <td width="99%"><input class="trackbackbox" value= "http://app.blog.livedoor.jp/silvering/tb.cgi/4897916"></td> <td align="right" width="1%"><input onclick= "quickTrackBack('http://blog.livedoor.jp/silvering/archives/4897916.html'); return false;" type="button" value="クイック"></td> </tr> </tbody> </table> </div> </div> <div class="trackbackurlbottom"></div> <a id="trackback" name="trackback"></a><a id="comments" name="comments"></a> <div id="commenttop"></div> <div id="comment"> <h3 class="commenthead">この記事へのコメント</h3> <div id="commentbody"> <div class="commentttl">1. Posted by ひねもす   <span>July 26, 200423:35</span></div> <div class="commenttext">出たのね。<br> ここは金の使いどころ。<br> 通販できるのかね。<br> 忙しいのと早寝早起きで優先順位が下がってしまうのだけど、キミの評価待ちで買うか。</div> <div class="commentttl">2. Posted by ひねもす   <span>July 26, 200423:37</span></div> <div class="commenttext">出たのね。<br> 君の評価待ち。その後、買おう。<br> 現在仕事優先モードなの。</div> <div class="commentttl">3. Posted by silvering   <span>July 27, 200402:33</span></div> <div class="commenttext"> 通販OK アマゾンコムでも何でも。<br> 今のアステカが、多分今週中くらいには読み終わるので、ちょっと待ってね>ケルベロス<br> 「SF雑誌の歴史」のほうは店頭で見たが、時代を追って丁寧に説き起こしているし、1号1号の内容の紹介にも結構ページを割いていたので、読み物としても情報源としても、なかなかいいのではと思う。特に巻末索引の作品リストは有用。ただ、お値段がね&amp;&amp;</div> <div class="commentttl">4. Posted by silvering   <span>July 29, 200400:04</span></div> <div class="commenttext">アステカの世紀面白すぎ。<br> もうちょっとで読み終わる、あと100ページ弱。</div> <div class="commentttl">5. Posted by silvering   <span>July 29, 200407:46</span></div> <div class="commenttext"> 参った。新規記事がアップできなくなっている。5回連続失敗だ。</div> <div class="commentttl">7. Posted by silvering   <span>July 29, 200417:27</span></div> <div class="commenttext"> 「ケルベロス」読み始めた。平行してメアリ・ジェントルの改変歴史ファンタシイ、アッシュシリーズ第1弾「アッシュ:秘密の歴史」も読んでます。</div> <div class="commentttl">8. Posted by silvering   <span>July 30, 200401:59</span></div> <div class="commenttext"> ケルベロス、訳文判りやすいんだが、ちょっと無味乾燥かな。内容的に、もうちょっと格調高い文体のほうが雰囲気出るんだが&amp;&amp;。平井呈一風擬古文体なら言うことないんだけど。まあそこまで望むのは贅沢だろう。翻訳出ただけありがたいと思わねば。<br> あと、ちょっと誤植多いかも。「味あわせる」は気になった。校正者のレベルが落ちてるのかな。</div> <div class="commentttl">9. Posted by silvering   <span>July 30, 200422:06</span></div> <div class="commenttext"> 第2話まで読んだが、あんまおもんない。<br> 確かに難しい。<br> プルーストの「失われた時を求めて」に影響を受けているらしいが、それも読んでないのでよくわからん。</div> <div class="commentttl">10. Posted by 手下母艦   <span>July 30, 200422:22</span></div> <div class="commenttext">&gt; あんまおもんない。<br> <br> ということは相当つまらんと考えていいよね。<br> 結論を待ちます。</div> <div class="commentttl">11. Posted by silvering   <span>July 31, 200413:15</span></div> <div class="commenttext"> ストーリーテリングで読ませる作品でないことは確か。書かれた時期からしても、英国ニューウェーヴの影響顕著なりし作品なのではないかと推測される。難しいです。「難解なものを読み解く」ことにカタルシスを覚える、マニア向けの作品であることは間違いないでしょう。一般性は皆無。SFオタク以外では、一部のへそ曲がりの本格ミステリおたくには向くかもしれないが&amp;&amp;。<br> この手のタイプの作品はラストのどんでん返しで評価が一変することがあるから、まだ逆転の可能性はあるが、正直、平行して呼んでいる改変歴史ファンタシイ「アッシュ・秘密の歴史」の方が面白くて、ケルベロスの第三部のほうをなかなか読む気にならない状態ですので、最終評価はもうちょっと待って。できれば今日中には読み終わりたい。</div> <div class="commentttl">12. Posted by silvering   <span>July 31, 200417:27</span></div> <div class="commenttext"> プルーストに影響どころか、カキダシぱくりやないか。呆れた。</div> <div class="commentttl">13. Posted by silvering   <span>August 01, 200401:42</span></div> <div class="commenttext"> ケルベロス読了。結構いいかも。途中を斜め読みしたのを悔やんでいる。今頭を整理するため、部分部分を再読中。最終評価はもうちょっと待って。</div> <div class="commentttl">14. Posted by silvering   <span>August 01, 200415:47</span></div> <div class="commenttext">ケルベロス。<br> 1回目に読み飛ばしてたところにも深い意味があったことがわかり、要所要所を再読する。肝心のところをぼかしてあるので(わざと?)、明確にはわからないが、すりガラス越しに見える世界像は強烈だ。しかしそれも全て嘘かもしれないことは、作中人物(この人物自体架空かもしれない)の言葉が代弁している通りである。<br> 本作は表層的な物語3編と、そのさりげないフレーズの部分に埋め込まれた背後にあるより深くあいまいで巨大な物語の多重構造をなしている。更に厄介なことに、この奥にある物語は不定形で真実がいずれであるのかが判然としない。というよりも真実を特定することなど無意味だというのがこの作品の主張ですらあるようだ。<br> 1回目に読むときは、表層的な物語を普通に楽しむことが自然にメインとなる。その表層的な物語は&amp;&amp;<br> 第1話は、一種のマッドサイエンティスト物で、ディック的な自己認識の崩壊と再構築を、実験材料の視点からその記憶を一人称語りで語る、というスタイルで提示している。ネタをバラすと、ウェールズ出身の生物学者が、舞台となる惑星に殖民し、自己の知識と記憶をアンドロイド(ミリオン氏)に移植して教師役に仕立て、自分のクローンを大量に作成し、失敗作は売ったり改造して奴隷にしたりしながら、自己に似た成功作を自分の跡取りにして同様の実験を続け、自己のアイデンティティを探求するという話。語り手は、何代目かの成功作であり、比較の対象として通常の子として生れたディヴィッドと全く同じ環境、条件で育てられながら、「父」に比較研究される。この館は、売春宿の上がりで成り立っており、館の主はそれをほとんど自己の研究につぎ込んでいる。真相を知った「わたし」は父と対決する&amp;&amp;<br> 第2話は二重惑星のもう一つの星の原住民の民話。同じ母から生れた東風と砂歩きの兄弟のうち、砂歩きの視点から書かれた神話風の物語である。「マーシュ」という第1話で館のヴエール博士を訪れた(自称)地球人学者が採取した民話という位置づけである。表面的にはこの砂歩きの求道の旅をファンタシイ風の筆致でつづったものであるが、そのスタイルを通じてこの姉妹惑星と原住民の驚くべき実質が象徴的に語られている。<br> 第3話は、政府諜報員殺害容疑で逮捕された「マーシュ」から政府が没収した記録を担当者が読むというスタイルのコラージュ作品。この第3話で全体の視点が統合され、第1話、第2話で埋もれていた裏の真相が徐々にかつ曖昧に明らかにされるという最も重要なパートである。表面的には、(ネタバレしてしまいます)現地人と地球人のハーフの少年が地球人学者になりすまし、人類学を学び、大学で政治に手を染め姉妹惑星を訪れ「第1話」の館を訪れた後、事件で逮捕され獄中で日記をつづる、という話。スタイルはまさに叙述トリックの本格ミステリだが、明確な「探偵による解決編」がないという点で、アンチミステリである。それゆえに、視点人物の担当官も結局、「マーシュ」が地球人なのか原住民なのか結論が出せず、永久投獄という結果になってしまう。<br> <br> とにかくこの第3話が曖昧にして秀逸であり、凡百のミステリにありがちな「せっかくの異常にして過剰な謎が、安易な現実的で明確な解決によって貧相なものに変貌してしまう」という弊害を、結論の意識的な不確定化(話をまとめきれず放置というのではなく、「作者には全てが見えているのにわざと語らずに手がかりだけを提示し、読者の想像に任せる」という形での)によって見事に免れているのだ。それによって、第3話の真相自体が効果的に妄想をかき立てる曖昧なものとなっているし、恐らくマーシュは原住民とのハーフの若者だとしても、作中でおびただしく引用される手記の、どこからどこまでが真実なのかそれとも改竄ないし創作なのか、その判断は読者に委ねられている。普通のミステリならば、「この文章のこの部分は誰それが本人になりすまして書いたもので&amp;&amp;」などと種明かしするところだが、それが(明らかにわざと)ないのだ。<br> <br> そしてこの第3話はそれ自体一個のアンチミステリとして秀逸であるばかりでなく、一応話として独立して成立しえたかに見えた第1話、第2話の裏に隠れた、SFならではの驚くべき真相を、逆照射する視点を提供しているという点で更に決定的に重要である。第1話で紹介された「模倣能力を持った原住民が地球人類に乗り代わり、自分を人類と信じて生活している」というヴェールの仮説、第二話の「影の子」と「沼人」と「星船」の伝説(最後に落ちた星船に乗っていたたぶん地球人とおもわれる人々が降りてくるシーンがある)、こういったものがつなぎ合わされ、アンフェアにならない程度に明確と不明確の瀬戸際あたりで論理的説明を与えながらフランスの殖民隊がくるはるか以前にも地球から「星船」がきたのではないか、真の原住民といえる影の子は、その段階で、自由を捨て、人類を模倣しアボとなったのでないか。ちなみにフランス殖民隊がそれぞれの星でアボと戦い敗れ、違った形態で共存するようになったという話も語られる。第1話、第2話に関連する形で様々なありうべき真相がこの第3話で語られる。それらは相互に符合するようでいて、矛盾するようでもある。<br> しかし、それら諸々の「ありうべき真相」は全て、自称地球人学者「マーシュ」の「騙り」である可能性を常にはらんでいる。第2話全体が「マーシュ」の作品であることも同様である。<br> <br> 本書はこういった形で、SFとしては「クローン、脳内情報の転写とアイデンティティ」「完全擬態能力を持ったエイリアンとアイデンティティ」「超古代文明と宇宙殖民」「異星の特異な生態系とそこで構築された宗教や伝承」「音による暗号コミュニケーション」「進化と痕跡器官」といった多彩なネタを詰め込みながら、全体を壮大かつ巧妙な重層構造物に組み上げる離れ業を演じている。<br> <br> 結論?再読すればするほど味わいの深まる、稀有な思弁アンチ&メタミステリ進化人類学生物宇宙SFの大傑作。<br> <br> テーマ ★★★★★<br> アイデア★★★★★<br> 物語性 ★★<br> 一般性 ─<br> 平均3点<br> <br> 対象読者?アンチミステリ・メタミステリ好き、エイリアンを材にとった人類学SF好き、マッドサイエンティストおたく向き。</div> <div class="commentttl">15. Posted by silvering   <span>August 01, 200418:57</span></div> <div class="commenttext">追記。<br> 「進化と痕跡器官」について。私の解釈はこうだ。大昔ゴンダワナだかムーだかアトランティスに超高度の文明があり、星間飛行で人類はこの二重星系に到着したが「完全な擬態能力を持った原住民=影の人」に敗れ、取って代わられた。影の人のうち擬態したものは沼人などとなって、人類よろしく定住生活を営むようになったが、自由を徐々に喪失し、擬態能力も退化して「痕跡」となった(だから、マーシュになりすましたハーフの少年は、年齢程度の外見は偽れるが、それ以上の変身能力を有しない。それは進化上の痕跡能力に過ぎない)。擬態しなかった山中の影の人はそのまま自由の民として、これら人類化し枝分かれした種を恐れ、おりてこなくなった。その後、数万年後にフランス人の星船がきたが、戦争の末、共存するに至った(恐らくこの時点でフランス人に擬態した影人もいるかも知れない)。<br> そして、作者の追求したいテーマは、このようにして人類化した結果、原住民が「自由の民」でなくなるというところに象徴的に現れている。その人類化の善悪評価は、悪魔の町、地獄の館、ケルベロスの像、砂歩きの「死」、第三部「わたし自身が・・・だった。今はもういない」発言に象徴されている。人類化自体が進化の袋小路で、その中であがき続けるのが人類である。それを象徴するのが、第1話の生物学者たちであり、第2話の砂歩きであり、第3話のマーシュ=ハーフの少年である。地獄の中であがきながらも、抜け道を抜け出さねばならないと、努力を続けるのが人間存在である。だからマーシュは、地獄の館の主人に共感し近づいたではないか。</div> <div class="commentttl">16. Posted by silvering   <span>August 02, 200400:45</span></div> <div class="commenttext"> 2ちゃんでAIやコピー人格の人権享有主体性を論じるスレ発見。<br> しかし、個人的には、AIやコピー人格に人権が認められるっていう<br> 話よりも、人権とか人格権とかいう概念が、様々な架空のSF的な政治/経済/社会システムにおいて、科学的に普遍的な合理性を持ちうるのか、<br> 持たないとすればどう変容するのか、あるいは上位概念に統合されてしまうのか、といった話の方に興味がある。正直、今の日本の法律学の大半は実学で科学とはいえないし、そもそも法律概念は、政治目的達成のための方便としていくらでもでっち上げられるものだからな&amp;&amp;。<br> <br> その辺は追々、検討してみたい。まずは、政治/経済/社会システムの歴史上存在したもの及び論理的に将来存在しうるもの(SF上現れたものと自分で論理的に存在を推認できたもの)をリストアップし、それが『機械』として優れているのか否かといった比較分析、評価をした上で、その中での法律概念、規制の態様と効用の相関関係を検討する予定。</div> <div class="commentttl">17. Posted by silvering   <span>August 07, 200414:20</span></div> <div class="commenttext"> http://www001.upp.so-net.ne.jp/mercysnow/Reading/fhc/mycerberus.html<br> <br> ケルベロスの解釈例。<br> <br> 後半は違うんじゃないか?手を怪我した云々のくだりは、明らかに嘘でしょう。もし地球人だとしたら何年も治らないわけないじゃん。<br> あとはVRTが「自己を原住民と信ずる地球人の子」という解釈と、父親が主張するように「母親は原住民でハーフ」という解釈の対立。私は後者が真実と仮定した場合にのみ、本作の全体が最も無理なく説明できると思う(でも結局、士官は聴いてないテープをぶん投げるんだけどさ。そこに違う話が入ってるかも知れないし、全部でたらめの嘘で、部分的に偶然の一致でもっともらしく見えるのかも知れない)。上の解釈では、この点の検討は全然していないようだ。マーシュ博士の手記で「この親子は嘘つき」と紹介されたという部分が冒頭にあるので、鵜呑みにしてしまったのか? しかし、VRTがマーシュに入れ替わったのなら、手記全体に改竄の可能性があるわけだし、マーシュ博士の手記の内容自体、「そのように紹介された」というだけで、事実と確認したわけでもない。<br> やはり字の乱れの点が決定的だと思うよ。もしマーシュだとしたら、腕の怪我が何年も治らないことも、案内役が死んだというのに平気で一人で山に何年もこもっていたのも、その山にこもっていた何年もの間(字が汚いとか紙ぎれとか理由はつけられるだろうが、だったら山から出ろよ、という話)手記を書いていないことも全て不自然である。またVRTの綴り方帳の文字と似ているというのもおかしいよ。マーシュがわざわざそんな綴り方帳の文字と真似て字が下手な振りをするのも、あるいはVRTの綴り方帳を偽造して自分がVRTと見せかけようとするのも不自然である。ということはその綴り方帳はやはり、VRT自身の本物またはVRT自身が自分が昔綴り方で使ったものをマーシュに渡し自分がマーシュに成り済まし持っているという設定で新作したものであるかのいずれかだろう。というか、普通に前者の解釈でいいだろう。<br> ここは明らかにVRTの入れ替わりと考えるのがより確からしい。<br> そう考えることにより初めて、手記の中で「自称マーシュ」が語る原住民の歴史を第2話とつきあわせながら、人類植民と原住民の進化の歴史を類推する楽しみが許されるのだ。何しろ、「母親が大昔地球人に擬態して地球人化した原住民(地球人に擬態したからこそ地球人との交配は可能)で、地球人とのハーフとしてアイデンティティに悩む知的な半原住民」の語る話であればこそ、その内容にリアリティが出て来るのだ。そして、もと擬態種族であるが故に本能的に嘘をついてしまうものの、時々真実も話してしまう不完全さがあるが故に、その語る内容はどの部分も常に真実の可能性を孕んでいる(アボの擬態が完全だったらその能力が失われる、不完全なはずだという第1話の叔母の話、あるいは進化と痕跡器官の関係を「自称マーシュ」自身が指摘している通りである。擬態が完全なら、痕跡など残らないはずだからだ)。<br> VRT=半アボ、入れ替わり肯定。この前提で読んでこそ、この作品は最も真実らしく読めるのだ。そしてそう解釈しないと、第3話の「自称マーシュ博士」の後半の獄中手記で「看守に取り上げられた」がゆえに士官に読まれてしまう手記部分(それ以後は書いて捨てるようにしたようだから、読めない)における独白が胸に迫らない。そこで語られるアボの歴史、半アボ=VRTの苦悩が真実であると考えることにより、初めて「進化の袋小路に入り、人類化により自由を失った種族の苦悩」「人類化は、進化はただの悪ではないか?不幸ではないか?」という本作を真実と解釈した場合における究極テーマが生きて来るのだ(むろん本作のもう一つのテーマは、「小説とはしょせん騙りである。嘘を楽しむものだ。真実よりも嘘の方が価値が高い。真実なんてクソだ、死んじまえ!」というものである。だが、嘘とはすなわち自由であり、真実とはすなわち画一解釈の押しつけであり束縛であると考えると、結局本作の最終主張は、極めて高次元において「束縛はクソ、自由マンセー!!!」という自由主義の思想書、ということになる)。それは、第1話で、自己クローンによるアイデンティティ探究をする人類を地獄に喩えている(人類=進化の袋小路=悪=オワってる)ことにも表れているし、第2話の「自由の民=影の民」が星船できた人びとによって変容を強いられ圧迫を受けるという物語(作者が「半原住民」のVRTであると考えてこそ、その悲痛さは強く感じられる。また、自称マーシュが獄中手記で書きたいぞといっている「小説」こそがこの第2話なのだとも考えられる)ともよく符合する。<br> で、結局、第1話で、「最も可能性が薄い」と主人公が切って捨てられた「フランス移民が来るずっと前にも地球人(ゴンドワナとかアトランティスとか)がきていて、その時点でアボが人類に乗り変わった」という仮説が最も確からしいということになってしまう。そう考えないと現地の建物がフランス人植民がきたとき建てられたにしては古すぎること(それ以前に地球人化して地球人同様の種族として生活していたと考えると、無理なく説明できる)と符合しない。<br> また、「アボは一種類でなく多様なものがいる」という説明が出てくる。アボの表れ方は様々であるが、大半は隠れて暮らしており、人類に混じっているものは人類に似ているが体つきに違いがあるという。目の色が緑とか。これは要するに、太古の地球人に擬態したが故、よりゴリラっぽい姿態になってしまったと考えられる。これが第2話でいう沼人にあたるとも考えられる。<br> で、表面に出てこないアボは人類化を嫌い出てこないが故に、擬態能力を喪失していないアボで、それは第2話の「影の民」を指すと考えるとよく理解できる(最も厳密に考えると、擬態能力がありながら擬態しない生物などありうるのか、そもそもどんな形なんだ!とも思えるが、結局、アボ=星そのものないしそのガイアであると考え、この星がレムの「惑星ソラリス」のような力を持っていると考えれば無理に説明できなくもない)。<br> <br> この解釈が3話を通じていちばん矛盾が少ないし、人類化と自由を喪失したアボの悲劇というテーマを悲痛にできるし、超古代文明による植民という「最もあり得ない」と第1話で否定された解釈が「最も確からしい」という皮肉にもなっていて、かつ、最もSF的イマジネーションも広がる。</div> <div class="commentttl">18. Posted by silvering   <span>August 07, 200414:46</span></div> <div class="commenttext"> アボの歴史は、帝国主義による原住民の文化破壊、ヴァンダリズム批判としても読める。<br> <br> *   *<br> <br> VRT入れ替わりのもう一つの裏付けは年齢で、マーシュとあったときVRTは15歳で、マーシュとは10歳近く年齢が違う、と書かれている。獄中手記の時点での自称マーシュは20を少し過ぎており、「やけに若い」といわれている。実際に経過したと思われる5、6年の時間を考えるとマーシュはおそらく逮捕時点で30歳を超えているはずであり、VRTが入れ替わって老けて見える工作をしたものの能力が不完全なためにその程度しか誤摩化せなかった、と考えると符合する。<br> <br> *   *<br> <br> もうひとつ、肩書きが「哲学」でなく「人類学」になっていること。手記によると、VRTはマーシュが哲学の学位をもっていると父から紹介されている(個人的興味で人類学に興味を持ちフィールドワークに訪れた)ことから、哲学者と名乗るべきなのになぜそんなミスをしたのかとも思われるが、結局、VRTがマーシュから見せられ熱中した本は「人類学」の教科書だった。VRTが3年も山にこもっていたのは、この本に熱中し自ら研究を重ねていたのだろう。というか、本気で人類学者になり切ったのに違いない。恐らく実際に「自由の民」から伝承を聴き取っていたのだろう。自分のルーツを知るという意味も込めて。VRTがマーシュを殺し乗り変わったのはアボの血、本能、自らいう「進化の痕跡器官」のなせる業に違いない。動機は、その本能である。そうやって人類学に熱狂し、アボの歴史の真相を見抜き、二つの星の政治状況の相違を知ったVRTは、政治にも目覚め、大学に入り、人類学の研究をする傍ら政治活動に手を染め、敵の星に訪れたということで、乗り代わり説に興味を覚え第1話の叔母を訪問したのも、それが正鵠を射ていたからだろうと思える。</div> <div class="commentttl">19. Posted by silvering   <span>August 07, 200414:49</span></div> <div class="commenttext"> で、哲学者と名乗らなかったのは、哲学に興味がないために突っ込まれると答えられないからじゃないか? あるいは能力が不完全であるが故の単純ミスかも知れないが。<br> <br> でもこういった明らかな矛盾があるのに、士官はどっちとも結論が出ず、嫌疑不十分なまま永久投獄しちゃうんだよなあ。</div> <div class="commentttl">20. Posted by silvering   <span>August 07, 200414:56</span></div> <div class="commenttext"> そういえば、フランス人がきて次にイギリス人がくるっての、北アメリカっぽいな。いろんな寓意がありそうだよ。マジで凄すぎるわ、この本。</div> </div> </div>

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