愛の手料理

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匿名ユーザー

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今日はメイコお姉ちゃんがいないのであたしとミクちゃんで夕食を作ってる。
お兄ちゃんが作るって言ったんだけど、いつもお兄ちゃんの好意に甘えていちゃいけないしやっぱりお兄ちゃんに私たちの手料理を食べて欲しいよねってミクちゃんと意気投合したから。レンがいるけどあいつはどうでもいい。犬の餌でも食わせとけばいいんだ。犬の餌なんかないけれど。
「うーん、どうしてこうなっちゃうかなぁ…」
ミクちゃんがお味噌汁をおたまで掬って小皿から舐めて難しい顔をしている。
あたしも肉じゃが作ってるはずなんだけど…なんかそれっぽくない。
「お兄ちゃんもお姉ちゃんもどうしてあんなに料理上手いんだろ」
お味噌汁にお味噌を足したミクちゃんが溜息をついて呟いた。
「経験ですよミクちゃん!私たちは経験不足を愛で補いましょう!」
励ますように言ったけど、正直あたしもお兄ちゃんが無理して「美味しいよ」って言ってくれるところを想像して溜息をつきたくなった。ああん、なんで料理ってこんなに難しいんだろう…。
「これじゃお兄ちゃんのお嫁さんにはなれないなぁ…」とミクちゃんがぽそっと呟いた。
「ミクちゃんはお兄ちゃんのお嫁さんになりたいの?」
「うん」とミクちゃんがはにかむように微笑んだ。
「リンちゃんは?」と聞かれて、しばし間を置いて「お兄ちゃんのお嫁さんになりたくないの?」と聞かれているのだと悟る。
「リンもお兄ちゃんが大好きです…お嫁さんになれるならなりたい…」
だけど、お兄ちゃんの好きな人をあたしは知っている。
お兄ちゃんがバレンタインにこっそりチョコを買いに行ったのを知っている。
誰の手に渡されたのかも、多分知っている…。
あのオクテのお兄ちゃんが自分から意中の人のためにチョコを買うなんてびっくりしたし、渡す時にどんな顔をしていたんだろうと思うと胸が痛む。
優しい優しいお兄ちゃん。
だけど、お兄ちゃんが本当に好きな人はあたしでもミクちゃんでもないのだ。
「お兄ちゃん真ん中にして三人で赤い絨毯の上歩きたいねー」
なんにも知らないミクちゃんは顔を赤らめて笑う。
そんなミクちゃんが少し羨ましいと思ってしまった自分を殴りたくなった。
「ぐっ!」
「リンちゃん!?」
あたしは実際に自分の頭を握り拳でガツンと殴っていた。
「どしたの?」とミクちゃんはおろおろしている。
「なんでもないですー。ちょっと気合い入れようと思ってー」とあたしは笑った。
ミクちゃんもホッとした顔をしてから「もう、脅かさないでよー」と笑った。

好きな人には好きな人がいます。
そいつはどうしようもなくバカでだらしがないヤツだけど、お兄ちゃんが好きだというのなら、あたしはお兄ちゃんの気持ちを応援するしかありません。
お兄ちゃんが泣いたり心痛めたりするのは嫌だからです。

お夕食は肉じゃがとおひたしとサラダとご飯とお味噌汁。
「これ、食えんの?」と聞いてきたレンの頭を思いっきりぶん殴った。
「お味噌汁…なんか味が濃くなっちゃって…」
「肉じゃがもなんかしょっぱくて固くなっちゃいました」
「ごめんなさい!」とミクちゃんと二人で手を合わせてお兄ちゃんに謝った。
お兄ちゃんは覚悟はしていたらしく、「少しくらい味が濃くても大丈夫だよ」と苦笑して、「頂きます」と言ってお味噌汁に口をつけて、少し固まった後、「そんなでもないよ、美味しいよ」と笑った。…けどちょっと困ってるみたい…。
だからお兄ちゃんの分は少なめによそっておいた。
「なんでオレの分だけこんなに大盛りなの?」とレンが頭を押さえながらぶつぶつ文句を言っている。犬の餌よりはましなはずだ。黙って食え。豚め。
「お兄ちゃん、もっとお手伝いして料理上手くなるように頑張るから!ほんとにごめんなさい!」とミクちゃんが半泣きで謝るのをお兄ちゃんは困ったような笑顔で見つめて「今度一緒に姉さんがいない時に作ろうな」と優しく声をかけた。「リンもね」とあたしのほうも見て笑ってくれた。
大好きな人が慰めて微笑んでくれているのに悲しい。
テーブルの隅で露骨に嫌そうな顔をして肉じゃがをつついている奴にどうしたって勝てないんだから。
優しいお兄ちゃんが大好き。
…だけど、その優しさがちょっと悲しくもあるのです…。

 

 


自ブログでレンカイを描いていますが、リンもミクもお兄ちゃんが好きなのでこのふたりのSSを書きました。
ところどころ当ブログの小説を読んでいないとわからない個所もありますが、お気になさらず読んでください。

 

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