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vol.2③Failure

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taka18r

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vol.2③Failure


 その日は薄曇りで、少し肌寒かった。新しい下着を身に着ける。胸がドキドキする。脱がすのにあまり手間取らせないように気を使いながらの服選び。そんなことを考えると、ますます胸が高鳴る。最後に、うぐいす色のスプリングコートを着て家を出た。
 2人とも家族と一緒に住んでいるのだから、どちらかの家で、というわけにはいかない。都合よく留守番、なんてことはないのだ。泊まりがけの旅行なんて無理。
 となると。
(ホテル、かなあ。アイツ、そんなとこ知ってるのかな。まさか、経験あるとか…ないよね?)
 待ち合わせ場所に向かう電車の中でも、頭の中はそのことでいっぱい。テニスの試合のほうが全然緊張しない。
「…初めては一回しかないんだもの。だから、今のその緊張も、ちゃんと覚えておくといいよ」
 1年半前、初めてレギュラーに選ばれた公式試合の前に言われた浅岡先輩の言葉を思い出す。
(いじめのこと、意識不明の文和のこと…、あの時はいろいろ大変だったけど、う~、今のほうが緊張するぅ~)
 いつものように先にきていた彼。いつもと同じように手を振って近づいてくる。そして、いつもと同じやさしい笑顔を見たら、緊張がほどけていく。
「どこ、行く?」
 そう聞く晶良の声は少し震えている。
「合格祈願のお守り、天神様に納めに行きたいな」
「あ、うん」
 新宿とか渋谷とかって言ってくると思っていたから、拍子抜けする。でも、気持ちはやわらいだ。
 電車の中。いつもと違って口数が少ない2人。少し混んできた電車が揺れたとき、いつもならドアに腕をたててかばってくれる彼が、この日は一瞬強く抱きしめてきた。
 駅に着いて、彼が
「先にお昼食べて行こう」
「…あんま食欲ないんだ。朝、しっかり食べちゃったから…」
 ウソ。トースト1枚だけ、それも無理して胃に入れただけ。
「うん。ぼくもそんなにお腹減ってるわけじゃないから…。行こうか」
 目的地まで、何もしゃべらず、無言で、突き進む。
(うわぁ…こーゆー雰囲気、苦手なんだけどぉ…。手はつないでいるけど…けどね、アンタ、女のコのこと、わかってないよ…)
 中学を卒業したばかりの15歳、女心をわかれというのも酷な気はするが…。これまでは、しっかりしていて頼りになる彼氏だっただけに、つい多くを望んでしまう。


 お守りを納め、2人並んで手を合わせてお礼を言う。梅はもう終わりに近づいていて、まもなく桜が咲くだろう。
(アタシはきょう、散らされるわけだけど…)
「ちょっと待ってて」
 と彼が言って、走っていく。取り残されて急に心細くなる。すぐに戻ってきた彼から小さな袋を渡される。
「はい、これ」
「えっ? 何」
「合格祈願のお守り。今度は速水さんが受験生でしょ」
「あっ! あ、あの…えーと…、…ありがとう」
 余裕をなくしていた自分が恥ずかしくなる。
(ちゃんとアタシのこと、考えてくれてたんだ…)
「それじゃあ、行こっか…」
「…うん」
 鳥居をくぐって出てみると、そのてのホテルが建ち並んでいるではないか。
「…アンタ。こーゆーの、あるって知ってたの?」
「えっ」
「よく知ってるじゃないの」
「…前に速水さんとお守りもらいにきたときに気づいて。その…、いつか、こんな日もくるかなって」
「お祝い、そのころには決めてたってわけ、ね」
「まあ…。だから、受験勉強、頑張れたっていうか…」
「そんなに、したい?」
「そんなに、したい。速水さんと」
「アタシのこと、好き?」
「大好き」
「大事にする?」
「もちろん!」
「ん。は、入ろっか…」
「うん」
 手をつなぐ代わりに肩を抱いてくる彼。アタシは彼の腰に腕をまわす。一番近くのホテルに俯いて入る。
 いよいよ、だ。


 部屋の写真を飾ったパネルが2人を出迎える。彼はそれをひととおり見て、とある写真の横にあるボタンを押した。こんなとき、どこがいいかな、とか聞かない彼を頼もしく思う。
 どんな部屋があるのだろう、興味はあるが恥ずかしさが勝って上を向けない。
 落ちてきたキーを手に、彼がこちらを見やる。その目に促されてエレベーターに乗る。どうやら3階の部屋らしい。エレベーターのドアが閉まるなり、彼に抱きしめられる。強引に唇を重ねられる。
 2つ年下だが、いつも落ち着いている彼にしては性急な行動。もちろん、いまの晶良にそんな彼の変化を理解できるわけがない。ただただ、恥ずかしさが先にくる。
「やっ!」
 拒否してしまう。悲しげな彼の目。何か言おうとする彼の唇が動く前に3階に着く。
 薄明るい部屋に入り、コートをかける。振り返って彼のジャケットを脱がせて、それもかける。部屋を見まわす余裕なんてない。
 見つめ合って、彼の胸に体をあずける。彼の心臓の音を聞く。いつもなら、それで心が落ち着くのだが、きょうは違った。彼の鼓動はいつもより速くて、そして大きくて、それに併せるかのように自分までドキドキしてきてしまう。
 おもむろに抱き上げられ、ベッドに運ばれる。寝かされると、すぐに彼が覆いかぶさってくる。唇が重なる。
「…ん…」
 右手に少し力を込めて彼の肩を押す。それに気づいて体を起こす彼。
「?」
「ねぇ、重いよ」
「あっ、ご、ごめん」
 起き上がって、彼の首に腕をまわす。
「アタシ、どこにも行かないよ。だから、ね。やさしく、して…」
「うん、わかった。速水さん」
「…ねぇ、名前で呼んで、いいよ。ううん、晶良って呼んで」
「晶良、さん」
 彼が口にした自分の名前。頭の中がポ~っとする。腕を引き寄せると、力強く抱きしめてくれる。
「好きだっ。大好きだよ。晶良さん!」
「アタシも!」


 彼が、着ていたトレーナーとTシャツを一緒に脱ぐ。子供みたいと思って、くすっと笑う。
「どおしたの?」
 と聞く彼に、
「いつも、そんな脱ぎ方してるの? 子供ぉ」
 からかってみる。やや間を置いて
「きょう、大人になるよ」
 怒るわけでも、不満そうにするわけでもなく、彼は静かに言った。
「…うん…」
 彼の手が伸び、ベストの裾にかかる。アタシは腕を上げて彼に任せる。続いてシャツのボタンをはずそうとする。一番上から、ゆっくりと、ゆっくりと。
 彼の首に手を当てなでてみる。その腕をとられ袖のボタンがはずされる。シャツを脱がされる。彼の視線が真っ白なブラに注がれるのがわかる。恥ずかしくなって、彼の胸に逃げる。
 いつもなら抱きしめてくるのに、彼の右手はブラのホックに移動し、少し戸惑うような動きをした後、それを解除した。脱がすのに、晶良を裸にするのに夢中になっている。
 両肩をつかまれ、引き離される。そうして肩紐に指をかけ、ブラを落とす彼。慌てて両手で隠す。
 彼はやさしく腕にキスして、力が抜けるように仕向けてくる。その愛撫が首筋へと移動してくる。
「…あっ、う、ぅ~ん」
 ダメ押しに唇にキスされたら、腕のガードはあっさりとほどけた。彼の右の掌が胸に当てられ、うれしさに震える指がゆっくりと揉み始める。
「ぁん…」
 声が漏れてしまう。彼はかがみこんで胸に唇を押し当て、続いて舌を使ってきた。いきなり乳首を嘗められ、晶良の声はますます大きくなる。
「あっ! あんっ、あ~」
 寝かされる。右、左の胸を交互に揉みしだき、そして舌を這わせてくる彼。乳首を吸われるたび、声が漏れる。そして、彼の興味は下のほうへと移っていく。スカートのジッパーが下ろされ、脱がされる。
 彼が慌ただしくGパンを脱いでいる。上と同じ、パンツまで一緒に脱いでいる。今度は笑う、というわけにはいかない。ちらっとのぞいた"それ"は想像をはるかに超えて巨大だったからだ。
(あんなの、ほんとに入るの?)


 恐怖心が湧き起こるが、彼は気づかない。太ももに右手を這わせてくる。
「ああ…」
 吐息に反応する彼。
「いい? 気持ちいい?」
 と聞いてくる。ちょっと集中が途切れる、が
「う、ん。もっと、気持ちよく、して…」
 と答えている。彼がパンティを脱がしにかかる。少し腰を浮かし、恥ずかしいけど協力する。もう、身につけているのは靴下だけ、だ。彼が秘所に触れてくる。思わず太腿に力が入る。
 ぴたっと閉じた両足に焦れたような表情を見せる彼。
「恥ずかしぃ、よお~」
 その声にますます興奮したのか、彼が太腿に顔を近づけ、キスの雨を降らせる。足の間に体を入れようとする彼。少しずつあらわになっていく晶良の秘所。彼が両膝を持ち上げる。
「あぁ…、あんまり、見ないでぇ」
 彼は黙って秘所に頭を沈めた。ちゅっと音をたてて、そこにキスをする。
「あっ! だめぇ、やぁ」
 割れ目をなぞるように舌を使う彼。晶良の上半身が弓なりにのけ反り、激しく暴れる。
 ついに、彼の舌が敏感な突起に押し当てられる。
「! んあぁ! あぁぁん」
 声が大きくなる。しかし、その"口撃"は思ったより長く続けられることはなかった。彼が体を起こし、のしかかってくる。
 晶良にしても、これでいいという状態などわからない。ただ、なんとなく、もう少し前戯に時間をかけてほしい、という気持ちは頭の片隅にあった。
 彼が自分のモノを握り、秘所に押し当ててくる。
(ま、まだっ)
 そう思っても、それを言葉にすることはできなかった。発せられたのは、
「ぃやっ! 痛いっ! やめてっ! だめぇぇぇ!」
 悲鳴に近い訴えだった。でも、彼はそれを聞いてはくれなかった。というより、もう進むことしか考えられなくなっていた。
 処女は痛がる、としか彼の頭にはインプットされていなかった。知識のなさ、未熟な愛撫、そして得体のしれない焦り…。


 2度、3度押し入れようとした彼が、うめくように
「ぁあ、あ、あっ!」
 と声を出した。と、熱い液体の感触がお腹から胸にかけて走る。
 頭を持ち上げて、自分の体を見る。白い液体がかけられている。
(あっ…、失敗、しちゃったんだ…)
 悲しい気持ちになる。少し目線を上げると、彼が少し下がって正座し俯いたまま呆然としているのが見えた。
 体を起こす。何か言わなきゃ、と思っても言葉が出てこない。どんな言葉をかけていいのか、わからない。それがいっそう悲しくさせた。
 彼が顔を上げ何か言おうとしたそのとき、涙が込み上げてきて声を出して泣いてしまった。ごめん、という言葉を彼の口から聞きたくなかった。
「あ~ん、はぁ~ん、えぐっ、ごめんね、ごめんね、えぐっ、ひぃ~ん」
「晶良さん…」
 彼が声をかけてくれるが、彼も何を言っていいのかわからない様子だ。
「ごめんね、お姉さんがちゃんと…、ひっ、えぐっ、ごめん、ね」
 自分でも何を言ってるのか、なんで謝っているのか、全然わからない。
 ひとしきり泣いて、しばらくして少し落ち着き、シャワーを浴びにいこうとしたのと同時に、彼がこちらに腕を伸ばしかけた。気まずい沈黙。
「ごめん」
 目を合わせることもできず、小走りにバスルームに走る。彼の精液が流れ落ちていく。
 バスルームから出ると、籠に服が入れてあった。彼が持ってきてくれたのだ。ちくんと胸が痛む。
 彼は服を着て待っていた。
「出ようか…」
「うん…」
 沈黙が支配する悲しい帰り道。乗り換えの駅で、
「速水さん、いや、晶良さん…」
「きょうは帰る。じゃあ、ね…」
「…うん」
 振り返らずに歩く。彼の顔を見たら、また涙がこぼれそうだったから…。


 家の近くの駅に着いて、携帯を取り出す。気分はさしずめ『選ばれし 絶望の 虚無』といったところか。
「あっ、…翔子?」
「晶良。時間、早くない?」
「…ねぇ、これから、行っていい?」
「うん。いいよ。理沙と美穂は…、呼ばないほうがよさそうね」
「ありがと」
「いいよ。待ってるよ」
 翔子の部屋。何から話していいのかわからず黙り込んでいると、翔子が飲みものを持ってきてくれた。
「何、これ?」
「カクテル。甘くて飲みやすいよ」
「ありがと」
 一口飲む。アルコールが胃に染みる。そういえば、何も食べていなかった。
「で? うまくいかなかったんでしょ」
「…うん。…アタシ、あんま濡れなかったみたいだし。…彼のも大きくって…。それで、アタシ、泣いちゃった」
 ポツリ、ポツリと話す。いちいちうなずいて聞いてくれる翔子。その目はとてもやさしい。
「でね、でね…」
 ひととおり話すと、また涙がにじんでくる。
「彼のこと、嫌いになった?」
「そんなこと、ないっ!」
「でしょ? それなら、だいじょおぶ。次があるよ。まだラヴ・フィフティーン、だよ」
「ほんと? ほんとに?」
「晶良。セックスすることが目的じゃないでしょ。愛し合った結果がセックスなんでしょ」
「うん。うん。そうだよね。アタシ、大事なこと、忘れてたみたい」
 涙がこぼれ落ちる。翔子が肩を抱いてくれる。
「わかった?」
「…あり…がと、う」
 しゃくりあげながら、翔子に抱きついていた。翔子は背中をさすってくれる。


「お腹に出されちゃった、ってことは…」
「…胸にも、かかった…」
「はいはい。そこにこだわるかぁ。若いって、いいよねぇ。はぁ~。…じゃなくって、彼、やっぱりコンドーム使えなかったのね」
「あっ! 忘れてた…」
「ゼリー付きだから、着けとけば入ったかもね」
「…次はそうする…」
「でも、晶良。次の約束、してないんでしょ?」
「…うん」
「まあ、彼からの連絡待ちね。…案外、もう晶良のこと、あきらめちゃったりして」
「えっ!? そ、そんなの…やだぁ」
 ほとんど泣き声だ。翔子はニコッとして
「ごめん、ごめん。そんなことないよ。きっと今夜のうちに連絡入るって。でも、晶良。ほんっと~に彼のこと、好きなんだね」
 泣き腫らした目を気遣って、翔子が食事まで付き合ってくれた。その間に携帯に着信が2回。彼かな、と思ったら…美穂に理沙…。出ないで無視を決め込む。そのたびに翔子は小さく微笑む。
 話して気分が落ち着いたせいか、食欲が湧いてくる。オーダーの追加までしてしまった。それを見て安心したのか、翔子がうなずいている。
(翔子に話して、ほんとに良かった…)
 パスタを頬張りながら、心からそう思った。
 家に帰ったのは日がとっぷり暮れてから。家族の前では、どうやら、いつものアタシを演じることができたみたいだ。部屋に戻って、待つ。
(ただ待ってるってゆーのも、…結構、いいもの、かな)
 両肘を机について、両手の掌に顔をのせる。自然に顔がほころぶ。
(携帯かな、携帯にメールかな、PCにメールかな)
 なんだか、そんなことを考えているのも楽しい。
──そのころ、彼は…

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