よく「私は身体が曲がっているから・・・」という患者さんがみえます。写真をとると身体が歪んでいるといわれたとかカイロプラクティックへ行ったら背骨が歪んでいるといわれた等々・・・
これには意味があるのでしょうか?
- 身体が歪んでいると駄目なのか・・・
- 高齢者で腰が曲がっている人をみるがそういう人は不健康なのか・・・
- 身体が歪んでいることで起こる弊害とは・・・
等々疑問が残ります。
それでは身体が歪んでいるのを自分で確認することができるでしょうか?
しかもそれを筋力検査で簡単に行えるのでしょうか?
簡単に見分ける方法があります。それは左右の足で片足立ちをしてみる実験です。
- まず身体を真っ直ぐして右足で片足立ちします
- 手でバランスをとらずに膝を僅かにまげてみます
- この時に身体をまっすぐして顎をひくのが重要です
- 次に左足も同様の方法をやってみます
こ の方法で左右どちらの足で立った方が不安定になるかを調べてみて下さい。必ず右か左のどちらかが安定し、どちらかが不安定になるはずです。股関節を90度 まであげるとそのバランスのとりかたは極端に違うのがわかります。また身体を前のめりにならず真っ直ぐするとバランスの違い右と左で違うのを感じるはずで す。
実は誰しもが右足か左足のどちらかが安定し、他方は不安定になるのです。つ
まり左右同じということはないのです。右が安定し、左が安定していなければ、当然歩行時に安定する方の足を軸にして歩行するはずです。その結果、安定しに
くい側の足の歩幅と安定している歩幅に違いが生じます。
例えば捻挫をした時を考えてみてください。左足を捻挫をしたとすると左足の地面着地時間を短くする為に右足の方が左足より前にでなくなり、右足は左足についてくるような形でしか歩くことができなくなります。
つまり捻挫をしていない正常に見える人であっても右足と左足の安定度が違う為に歩幅に僅かな違いが生じるのです。この事実によって立ち方や歩き方が違って
くるのです。立ち方や歩き方が違えば、何らかの歪みや傾きがでてくるのが当然なのです。歪んでいる又は傾いている=身体にとって悪とはいいきれないという
ことです。
二足歩行ロボットを作った研究者が左右の足の長さを同じにしたらなかなか歩行をさせることができなかったという事実があると聞いたことがあります。実は僅
かな足の左右差を作ることによって歩行がスムーズになったということです。
身体が歪んでいると駄目なのかという答がここにありました。それでは身体の歪みはあっても良いものなのでしょうか?
実は身体が歪んでいる範囲に問題があるのです。僅かに歪んでいるぐらいが人間の身体は正常であり、殆ど変わらないけどやや右足、やや左足という不安定度ぐ
らいが丁度良いのです。治療によってバランスをとるということは身体の大きな歪みがあればそれを治し、僅かな不安定度に修正することです。またその癖を知
ることで生活様式に気を付けることで身体の自然治癒力を高めることができるのです。
大きな歪みや傾きは駄目であるが、完璧な姿は逆に不自然であるということです。身体は歪んでいても大丈夫です。逆に歪んでいない人はいません。しかしその許容量に問題があるのです。
次に高齢者で腰が曲がってきている人の場合です。高齢者で腰が曲がってきている方の場合、今日まっすぐで明日急に腰が曲がってしまったという人はないと思います。年齢と共にそれが進行していったと考えるのが普通でしょう。
こ
こで重力と二足歩行、四足歩行の違いを考えなければなりません。二足で歩くことができる為には強力な背筋力がいります。また腹部の筋力も必要です。大雑把
ないいかたですが、まずこのような筋力がなければ正しい二足歩行は不可能です。高齢化してくると背筋と腹筋が弱体化することで身体が前に曲がってきてしま
います。実はこれは進化の過程を逆行していると考えれば良いのです。
進化を逆行している・・・。つまり赤ちゃんの時はハイハイから立位になり、老齢化することによってまたハイハイに戻っていくという一つの当たり前の結果な
のです。よって自然な形であり、決して異常であるとはいいきれません。
しかしここにもその許容量というのがあります。許容範囲を超えることで腰痛や膝の痛みがでたりします。またこれは前後の動きの話ですが、これに左右の捻れ
や傾きが加わった場合、年相応の前傾以上に身体に負担がかかることがあるのです。これも人間の身体は僅かずつ年齢を重ねると共に身体を前傾させていくのが
自然な姿なのです。
しかし今の子供達をみると70歳ぐらいの高齢の方と同様に身体を前傾させる子達がいます。肩凝りや腰痛を訴え、左右のバランスが悪く捻れや傾きがでてきて
しまっている子供達です。これは成長段階であるにも関わらず、身体の傾きは許容量以上に歪んだり傾いたりした結果起こった現象です。当然、片足で立つよう
に指示するとふらついて立てない子供達も沢山います。このような状態では正しい歩行などできるはずもありません。また歩行が正しくできないから身体の歪み
を生じ、正しい筋力の発達不足につながるのです。そして余計な筋力に負担がかかるのです。
そして小さいときからスポーツをしている子供達にこのような変化がよくみられるのは驚きです。子供の頃は様々な運動をする必要があり、特定のスポーツを大
人の目線だけから試合の勝ち負けに拘った指導をしてはいけないと私は考えています。スポーツを一生懸命やっている子供であればあるほど、このような不安定
な筋力におけるアンバランスが生じているのは指導する大人の責任です。
子供は技術云々より、自由に色んな動きをさせる必要があり、ここにもバランスをとることの難しさがあります。
ライダーがコーナーを曲がっている図を書いてみました。
コーナーの出口を見つめているので、真っ直ぐではないように見えますが、車体が傾いて、身体もバイクと一緒に倒れているのですが、頭だけは重力軸に沿って真っ直ぐになろうとしています。
実際には捻れる力が働いて、目の位置がコーナーを見ていますので、完全に重力軸に沿っているようには見えませんが、微妙なバランスを頭でとっているのがわかります。
このことからもわかるように、身体の傾きを吸収するのは最終的に首なのです。首には全身のアンバランスがあらわれてきますので、首の筋肉の緊張や皮膚張力を観察していると、その人のどのあたりが緊張しているのかがわかるようになってきます。
前頚部の緊張があれば、腰をひく形になり、側頸部が緊張をしていれば、身体が緊張した側に傾く傾向になります。後頚部の緊張は、前頚部の緊張とともにあらわれ、足腰への影響をあらわしています。
首の緊張とともに目の緊張によっても身体の位置が変化します。それはバイクを操縦しているライダーがコーナーの出口を見ることによって、その方向へバイクを走らせようとします。
私もバイクに乗っていたことがあるのでわかりますが、自分が思っているところとは違うところを見つめてしまうと、自然にそちらの方へ、バイクがすすもうとしてしまいます。
これと同様に目の動きや位置によって、身体全体の動きが変わってしまいます。
目の緊張によって、身体全体の動きが変わってしまうということがあるということです。
つまりバランスといっても様々なバランスがあり、目と身体ぜんたいとの関係であったり、手足だけの問題であったりします。
左足に体重をかけようと思っても上半身が後ろに沿っていたら体重はうまくかかりません。
大股歩行をさせると抜き足、差し足で歩いてしまい、うまく大股歩行することができない人があります。
これは身体全体を使って歩行するためには、直立になった状態から腰を曲げないで、前に倒れるようにしながら我慢できない状態になってから足を出すのが一歩の大きさです。