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LIVE FOR YOU (舞台) 20

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LIVE FOR YOU (舞台) 20



 ・◆・◆・◆・


吾妻玲二は逃げている。
無論、玲二とてただ逃げている訳ではない。
無為にしか見えなかった数々の攻撃も、それぞれにちゃんと意味があったのだ。

後ろを窺えば疲れを知らぬオーファンが変わらぬ速度で追ってきている。
負傷を覚悟で用いたダイナマイトにしても、多少の足止めにしか効果のほどは見られなかった。
これも予想の通り、やはり遠距離からの攻撃ではあれを沈めるのは難しい。
あるいは、このまま逃げながら攻撃すれば塵が積もるようにいつかはあれが沈む可能性もなくはないが、
しかしそれだけの長い時間を逃げ切る体力が玲二にはない。
仮にあったとしても、それだけ逃げればまた振り出しだ。時間的な、機会的な意味でも玲二にはもう猶予がない。

だから、玲二はそこで足を止めた。

オーファンが迫る。
背の上にいる九鬼を模したアンドロイドの表情に変化はない。
生き物ですらないオーファンの表情など玲二にはわかるはずもない。
ただ迫り来るそれらを見ながら玲二は息を整える。

「…………………」

この戦闘が始まってより常に抱えていたM16を鞄に収め、代わりに何振りかの刃物を取り出した。
握りも、柄も黒い、細身の長剣。
抜き身の刀身だけが照明の光を反射して銀色に輝く。
玲二は一本を右手に握り、二本を左手に持った。

巨大なオーファンを相手にするにはあまりにも儚い武装にしか見えない。そう、玲二は自嘲する。

これは、一応としてこういった状況の為に用意されていた武器である。
黒鍵――そんな名称を持つ”霊装”などという代物。
大層な風ではあるが、性能としては特にたいしたことはなく見た目通りの剣である。
だが、神秘側の属性を持つ故に”そういうもの”に対しては有効だ。
という訳で、霊的な攻撃手段を一切持たない玲二にこれが用意されたのである。例により、あのカジノの景品から。

しかし、当然のことながら玲二には霊装を扱った経験などない。
そんな不確実なものを、構える。

本来、これを使う予定など一切なかった。
正確に言うならば、玲二としては原理のわからないものなどプロとしては使いたくなかったのだ。
だが、これまでの戦闘の結果により、これを試す理由が生まれていた。

迫るオーファンの首筋付近。
煤と弾痕に汚れたその装甲に、一箇所だけ他とは違う鮮やかな切り傷が残っていた。
これまでに試したあらゆる攻撃手段。どれがあの傷を生み出したのか、玲二は正確に記憶している。
ダーク――刃が黒く塗られた暗殺用の短剣だ。
これも霊的な力があるとの話だが、玲二はただの刃物としてしか考えていなかった。
だが、何百発と放たれた弾丸よりも、たった一本の短剣がオーファンに有効なダメージを負わせているという現実。
プロフェッショナルである玲二に心変わりを起こさせるのには十分な事象だ。

玲二は迫るオーファンに黒鍵の切っ先を向けた。
レイピアやフルーレほどではないにしろ斬りつけるには向かない細い刀身。必然的に、攻撃方法は刺突が主となる。
預けられた時に聞いた話では、この黒鍵は本来投擲用武器らしい。軽く振って重心を確かめる。確かに投げやすそうだった。

「……ふっ!」

右手から一本。
続けて、もう一本を連続で投擲する。
矢のように飛んだ黒鍵は、意外に容易くオーファンの装甲を切り裂いた。

「…………む」

玲二の口から声が漏れる。
まさかこれほど容易くあの装甲を貫くとは、彼にしても予想外だったのである。
とはいえ、状況が好転したというほどでもない。
装甲を切り裂いた、と言っても人間に例えるならば紙で指を切ったという程度。オーファンの進撃を止めるには遠い。

なので、玲二は予定通りにオーファンの突撃を回避した。
ついでとばかりに黒鍵の最後の一本を投げつけ、オーファンの横を通り抜ける。
狭い通路に巨大なオーファン――とは言っても、まったく隙間がないわけでもない。
相手の虚を突くことに練達している玲二ならば、この程度造作もないことだった。

そして、こうして潜り抜けてしまえば、

「…………じゃあな」

後に待つのは、無人の野。
ただまっすぐ進むだけで、目的地にたどり着ける。
危険を犯してでもわざわざ接近した甲斐があるというもの。
無論、相手も玲二の意図には一瞬で気づくだろうが、

そうでなくては、困る。
その為にわざわざ判り易い言葉まで発したのだから。

これまでに逃げてきた距離は1キロメートルを越えている。
既に消耗している現状。それだけの距離を再び追いつかれることなく走りきるのは不可能だ。
それに、例え本拠地にまで辿りついたとしても、そこに他の敵がいれば挟み撃ちとなってしまうしその可能性は大だろう。
故に、元よりここから逃げ切るつもりは玲二自身にはない。
これだけの距離を逃げてきたのは、単純に他の敵からの干渉を嫌った結果にすぎない。

玲二は足を止め、巨体を振り返らせて再び向かってくるオーファンへと対峙する。

化生とはいえ獣は獣。その身体からは明らかな怒気が立ち昇っていた。
深手ではない。いや、だからこその怒り。
己の装甲に傷をつけたちっぽけな生き物に対する確かな怒り。

頬……胸……、そして最後の一投で負わせた右前足。

迫り来るオーファンの傷を確かめる。
黒鍵は鋼鉄の装甲に傷を負わせている。
問題はその深さだ。いかに鮮やかに切り裂こうとも相手はあの巨体なのだ。薄皮一枚では意味がないのは前述の通りである。
頬の傷は浅い。胸の傷はそれよりかは深いがまだ浅い。右前足の傷は、前の二つよりも明らかに深い。剣が突き刺さっていた。
そのせいだろうか、右前足の動きが僅かではあるがぎこちないものになっている。
ここにきてようやくダメージらしいダメージが与えられたと言えるだろう。

だが、まだそれだけだ。

不慣れな投擲武器とはいえ既に3度投げた。おおよその感覚は掴めている。
しかし逆に言うならば、捨て身に近いかたちで3本消費しても負わせた手傷はひとつだけ、ということだ。
用意された黒鍵の残りは17本。
これから先、狙いが正確になっていったとしても、負わせられる傷の数はおそらく10にも届かないだろう。
それだけでは、打倒には達しない。

いや、例え黒鍵が50本あったとしてもこのオーファンを打倒しうることはできまい。
腕を使って投げるものである以上、銃のように離れてとはいかず、これから先攻撃を避け続けなくてはならない。
だが、何十度とそれを繰り返すことはさすがに不可能であるし、
よしんば成し遂げたとしても、表面的な傷でしかないのならば50本や100本刺したとしても決着には至らない。

あらゆる意味において玲二の勝利はまだ遠い。
そして、だからこそ、玲二は近接戦闘を挑むしかない。



黒鍵を両手に掴み、同時に投擲。
投げられた黒鍵は吸い込まれるようにオーファンへと向かうが、しかし僅かな傷をつくったのみで弾かれる。
2本同時では1本を投げるより力が篭らないのだから当然の結果だ。なのに玲二はそれを繰り返す。結果も繰り返される。
そのような攻撃にオーファンが臆すはずもない。投げつけられる黒鍵を弾き飛ばしながら突進してくる。

そして、その勢いのまま、三度玲二が投擲した物体を弾き飛ばした。
だが様子が違う。弾かれたのは黒鍵ではない。キラキラと破片が散らばるそれは――ガラス片?

「…………!?」

言葉にならぬ驚き、それはオーファンのものか、あるいはアンドロイドのものか。
投げつけられた何かは弾き飛ばしたが、その”中身”がオーファンの表皮をべっとりと濡らしていた。
きつい臭い。だがそれが何かと考えている暇はない。玲二よりの次弾がオーファンに迫る。
今度のそれは、オーファンにはなんだかわからなかったが、より警戒を高めたアンドロイドには正確に認識できていた。
だが何かと判ったが故に、アンドロイドは対応することができなかった。

なぜ、拳銃を投げるのか?
拳銃は引鉄を引いて弾丸を発射するものであり、それそのものを投げつけるものではない。
確かに金属の塊である以上、当たれば衝撃があるだろうが、そんなもの石を投げるのと変わらない。
どうして、そんな不条理なことをするのか?

判別が理解へと届かないアンドロイドが困惑の中、拳銃はオーファンの身体に命中。
直後。響いたのは銃声と、

「■■■■■■■■■■■■■■■■――――!?」

声にならない、オーファンの悲鳴であった。


 ・◆・◆・◆・


頑丈すぎるというのも時には害となる。
玲二が三度目に投げたのは、ナイフや空のマガジンなどではなく、火炎瓶であった。
火をつけずに放り投げたのはアンドロイドに対処させないためで、その前の二投げもこれの為の布石である。
たいしたダメージがないと確信したアンドロイドはオーファンを突進させ、結果、オーファンが油を浴びることを許してしまった。

弾丸やダイナマイトの爆風すら通じなかったオーファンに火炎瓶など効果があるのかという疑問がある。
確かに装甲の上に炎をつけてもさしたる効果はなかったかもしれない。
だが、垂れた油がその装甲の隙間より内側に浸透していれば?

そして、玲二が投げつけた拳銃。
念のためにと用意しておいた特製の武器。
見た目にはただの自動拳銃であり実際にそうでしかないが、銃身には道中で食べていた握り飯と土を混ぜて詰め込んでいる。
その状態で引鉄を引くとどうなるか?

起こるのは”暴発”。そう呼ばれる現象。

スライドを引いた状態の自動拳銃は、落とす、投げる等の強い衝撃を与えてしまうと発射されてしまうことがある。
そしてこの場合。発射の際に生じる圧力は詰められたものにより逃げ場を防がれている為、銃全体に負荷をかけることになる。
具体的には、小爆発が起こり、スライドやバレル、スプリング、プラグ、ガイド、ストッパーやハンマーなどが弾け飛ぶ。
いわば金属片を撒き散らす即席の爆弾であると言えるだろう。
無論、本物の爆発物に比べればその威力や使い勝手は雲泥の差であることは明らかだが、
しかし今回の場合のように相手の目を欺き奇襲するための爆発物としては中々に優秀だ。

そして、これらの結果。

身体を包み込む炎に焼かれオーファンはのたうち暴れる。
しかし暴れたところで炎は消えない。燃えているのは調合された燃料だ。例え水の中に飛び込もうが消えはしない。
とはいえ、これでオーファンが消滅するかというとそうとも言えない。
あくまで動き封じているにすぎず、それももって1分ほどか、多めに見ても2分がいいところだろう。

だから、その2分の間にこの状況を解決しなくてはならない。

オーファンが復活してしまえば、今度こそ玲二の勝ち目はゼロになる。
手持ちの装備の半分ほどを使って、ようやく訪れた好機。
火炎瓶は使いきり、自動拳銃をひとつ潰してしまった。
残るは、わずかな爆発物にこれだけは大量に持ち込んだ小銃と弾丸。霊的な武装に関しては黒鍵が残り13本だけだ。
そして吾妻玲二自身の肉体。これらを用いて、この状況を解決しなくてはならない。

つまり――

玲二は右に身を翻した。
一瞬の後、玲二が立っていた場所を旋風のような突きと蹴りが通り抜ける。
当たり所が悪ければ一発で戦闘不能にまでにある威力を持つ一撃。

オーファンの操り主であるアンドロイド――九鬼を、2分の間に倒さなくてはならない。


 ・◆・◆・◆・


頬を炙る熱の火照りと、地に響く轟音を背景にして両者は向かい合った。
いや、向かい合ったのは一瞬。

玲二は先んじて九鬼に攻撃を仕掛けた。

無謀、と言うより他はない。
玲二とて近接戦闘は十分に行えるが、目の前の相手はあの九鬼。以前、完膚なきまでに敗北した相手である。
総合的な戦闘能力なら兎も角、こと近接戦闘においては勝ち目など微塵も存在しない相手。
なのに、玲二はあえて近接戦闘を選択した。
いや、選ばざるをえなかった。

馬鹿正直に真正面から向かうのではなく、距離を置いて銃を用いれば九鬼を撃退することは十分可能だろう。
以前は完敗したが、しかし玲二も以前の玲二ではないのである。
だが、それは敗北に等しい。
現在。九鬼が立っているのは一番地本拠地へと通じる方向だ。ここで距離をとることは、また後退することを意味する。
背後には炎にのたううオーファン。これを避けて通り抜けるというのがそもそも至難。
そして根本的な問題として、後退は相手側に時間を提供することに他ならない。それではこれまでの手が全て無為と化す。
仮に、玲二が逃走できたとしても、九鬼は復帰したオーファンを連れてまた最初の場所に戻ればいいだけなのだ。

なので、――やはり、玲二は九鬼を撃破しなくてはならないのだ。
この短い時間で、それも、勝ち目の薄い近接戦闘において、だ。



玲二の先制打は眼球を狙う左拳の突き。
アンドロイドのつけている眼帯に意味などあるのかという疑問もあるが、眼球により視認しているのは人間と同じだ。
ならば、片方しか曝されていないその眼球を破壊すれば圧倒的なアドバンテージが得られることになる。

とはいえ、相手はそのような攻め手が通用するほど容易い相手ではない。
左拳の突きは当然のように払われる。
だが、それは最初から織り込み済み。本命は、死角より繰り出される右手のナイフ――

――が、それすらもあっけなくいなされる。
タイミングもスピードも絶妙だった奇襲がなんの痛痒も与えることができなかった。
僅かな焦燥に舌打ち。
しかし、次の瞬間にはそんな感情は捨て去る。

ナイフを弾かれた右手でそのまま眼球を狙う。
届かない。
元より当てる気のない間合いを維持する為の左ジャブ。
腕を取られそうになり慌てて引く。
上半身の引きに合わせてカウンター気味にローキックを繰り出した。
簡単に防がれるどころか、逆に足に衝撃が走る。

攻撃の速度、そして手数で見れば玲二の方が上をいくように見える。
九鬼は未だ玲二の連続攻撃に対し守勢に回るばかりだ。
だが、それは見た目だけのもの。

(くっ……!!)

攻め、きれない。

玲二の突きは、肩、肘、手首の動作のみで最短距離を通る突き。
威力ではなく、速さと鋭さを重視した急所のみを確実に狙う必殺の攻撃。
極めて洗練されたそれを、九鬼は全て的確に捌いている。
どれだけの手数を重ねたとしても、玲二の一撃が九鬼の防御を抜けられるようには感じられない。

玲二の両腕に鈍い痛みが蓄積されてくる。
打拳を払われるということは、同時に腕を打たれているということだ。九鬼の僅かな動作でしかない払いが、重い。
既に突きを放つ度に無視できない痛みが玲二を苛んでいる。だが、攻撃の手を休めることはできない。
攻撃を途切れさせれば即座に反撃が来る。

見た目とは裏腹に、追い詰められているのは玲二の方であった。



拳法。いや、おおよそ現存する打撃系格闘技において、その運動の基本は円にあるとされる。
例えば、直線的な攻撃ばかりだとイメージされるボクシングにおいてもそうだ。
基本のジャブやストレートの軌道そのものは直線だとしても、それがコンビネーションとなれば両の腕は円の軌道を描く。
円とは途切れがないことを意味する。
つまり、一撃必殺でもない限り、組み立てられる攻撃は効率化と洗練の過程で当然の帰結として円に行き着くのだ。
また、円とは運動と加速を意味する。
組み立ての上でロスの少ない円は、同時に運動量という意味でもロスが少ない。円は人が力を効率的に振るえる所作なのだ。
そして突き詰めた結果。拳法は円により使われ、円により支配される。あるいは円が限界だと言えるかもしれない。
極論してしまえば、拳打による攻撃とは拳士の正面に浮かぶ三次元の円――”惰球”の範囲にしか発生しえないのだから。

無論、拳法の種別や流派によりその制空範囲は変化するが、しかしその範囲内でしか攻撃できないことは変わらない。
中にはそのお約束を外す為の技も存在するが、所詮奇策は奇策、裏技は裏技。決定打とは成りえるものではない。
つまるところ、打撃による応酬戦とはいかに相手の浮かべる惰球を回避し、相手をこちらの惰球の中に収めるかという話である。
勿論、これは理屈でしかないが、逆に言えばこれを完璧にこなせるのであれば打撃戦において敗北は存在しない。

そして、玲二と九鬼の今の状況はまさにその通り。
確かに放つ時には九鬼を捉えているはずの玲二の拳が、まるで騙し絵を見てるが如く空を切る。
おそらく、九鬼はこのまま5分でも10分でも玲二の打拳を受け続けることができるだろう。
しかしそれほどの猶予は元より存在しない。果たして、玲二に残された時間は後どれほど残っていただろうか。

終わりは、それよりも早く訪れた。

僅かだが速度の落ちた左の突き。これを九鬼に捕まえられた。
恐ろしい力で腕を引かれ――がら空きになった胸部に九鬼の掌打が叩きつけられる。

一瞬。視界が白色に占領される。
鈍い音が響き、次いで衝撃が身体を走り抜けた。
僅かに身体を引くことは成功。骨折は免れた、はず。が、それでも確実にヒビは入っているだろう。
喉の奥に血の味――どこか内臓が破けたか――溢れ出た血が口から零れそうになる。

だが、それはまだ一撃。これだけでたった一撃。
当然の如く第二撃が、追撃の拳が身をよじる玲二へと迫る。



最初から武道の腕において勝ち目などなかった。
片や人の身でありながら化物を屠る域にまで至った達人。
片やあくまで人の身の中で人を殺すことに特化した道具。

吾妻玲二が九鬼耀鋼に打ち勝つ可能性など最初から存在しなかった。






 ・◆・◆・◆・


――否。

そんな程度のものに、あの妄執の塊である変質者が納得するであろうか?

断じて、否。

確かに、吾妻玲二は格闘戦において九鬼耀鋼に遠く及ばない。
シリーズ最高の狙撃能力を持つアインとて、オリンピックのメダリストと比べれば見劣りする。
ツァーレンシュヴェスタンの連携など、本物の軍隊に比べれば鼻で笑われるものにすぎないのだろう。

ああ、だが、…………そんなものが劣るからどうだというのか?

格闘戦で打ち勝たなくてはならない道理がどこにある。
金メダルなど額縁どころか、家屋ごと粉みじんにしてしまえばいい。
規律よく勝つことが目的ではない。何人死のうが目標を殺しきればそれでいい。

彼らは、闘士でも選手でも兵士でもない――暗殺者だ。

それは、標的を確実に殺すという意志。
過程も関係なければ、結果の先を考える必要もない。
腕を千切られようが、仲間を殺されようが、ただ決められた標的を殺す。

たったひとつの凶器。

だからこそ、サイス・マスターは彼らを至高の芸術品と呼んだのだ。


 ・◆・◆・◆・


吾妻玲二が九鬼耀鋼に打ち勝つ可能性など最初から存在しなかった。



そんなことは判りきっている。
敗北するのは当然の帰結でしかありえない。
わかっていて格闘戦を挑んだのだから。

なにも、雪辱を晴らすなどといった無意味な感情があったわけでもない。
完膚なきまでに敗北したとはいえ、吾妻玲二は今ここでこうして生きていて、九鬼耀鋼は既に死した身なのだ。
感情ではない。あるのはただ障害を取り除くという目的のみ。

格闘戦で敗北する。それがなんだ? 勝利などくれてやれ。
玲二がアインより学んだのは、誰かに打ち勝つ方法ではない。

人を殺すことなのだ。



九鬼の第二撃が玲二の胸へと突き刺さる。今度こそ、折れた。
玲二の口から鮮血が溢れる。
だがこれも、手段。過程。道具。玲二は血を吐くのではなく、噴きつける。
九鬼の顔面へと。
無数に飛び散る飛沫を避ける方法など皆無。
いや、避ける方法を奪われている、と言うべきか。

九鬼の右手は玲二の左腕を掴み、左の拳は玲二の身体へとめり込んでいるという現状。
噴きつけられる飛沫を払うことはできない。
目を瞑れば眼球が血で濡れることは防げるだろう。だが、それでは視界を奪われるという結果を変えることはできない。

飛び退ればどうか。一度、大きく距離をとってからゆっくりと血飛沫を拭えばいい。
だがそれも、この一瞬に限れば不可能。
九鬼――正確には九鬼の真似をしているアンドロイドが彼と同じく着込んでいるオーバーコート。
高い防弾性能を誇るが故に通常のものより遥かに重いそれが、この一瞬の時間を奪う。

ファントムである玲二を相手に九鬼のコピーを送り込んだのは正解だ。
その上で、狙撃や銃撃を警戒して九鬼本人と同じく防弾コートを着せたのも正しい選択だろう。
実際、いくつもの銃弾をこのコートが受け止めていた。いや――受け止めさせていた。決して九鬼がこれを脱がないようにと。

繰り返した銃撃。重ねた奇策。払った代償。――今、全ての行動が実を結んだ。

九鬼の時間を一瞬とはいえ奪った。
たった一度きりのチャンス。たった一撃だけ与えられたこの機会。この一撃で決着をつけなくてはならない。

そしてひとつだけ、九鬼の不意をつける攻撃が存在した。
正確に言うならば、この島で戦っていた九鬼のデータをインプットされたアンドロイドに存在する隙。

この島での戦闘において玲二が一度も使用しておらず、また九鬼も使用されたとは考えづらいもの。
二日足らずの殺し合いの中で何をどれだけ使ったなど細かくは覚えてないが、確実に使用していないと言える攻撃手段。
そして誰にとっても使う機会はなかったと断言できる攻撃手段。

別に複雑な動作ではない。
むしろ玲二にとっては基本中の基本。

人体急所のひとつ。首を狙う、突き。

だいたいの拳法では禁じ手とされる手段だが、逆にそれは殺傷能力が高いことを保証する。
数ある急所の中でも狙いやすく、また即効が期待できる急所中の急所。
それなのにも関わらず、今まで使用していないと断言できる。

――なぜか?

危険だからだ。
相手が、ではなく。繰り出す側が。
この島で殺し合いに参加させられている者は皆、首輪をしている。

命を縛る枷。常に傍にある死の気配。当てられたままの死神の鎌。
誰しもが好んでつけていた訳ではないが、それでもたったひとつだけ利点があった。
すなわち、金属製の首輪は急所のひとつを防護するガードとなっていたこと。

防御する物質的な堅さと共に、首輪には爆弾が内臓されている故に攻撃側にも躊躇いを生じさせる心理効果もある。
故に、あの殺し合いの中で首という急所を狙いあう格闘戦はないと想像できた。
その者が練達者であればあるほど、それはないと断言できた。

あの殺し合いの中。そこだけに状況を限定すれば首への攻撃は存在しないも同じだったのだ。
そして、目の前にいるのはその”殺し合いの中だけの九鬼耀鋼”をインプットされたアンドロイド。


故にこの攻撃は空白。データにはない死角からの攻撃。


本物の九鬼耀鋼相手ならばこんな攻撃は通用しないだろう。
そういう意味ではやはり玲二は九鬼より劣るのかもしれない。
だが、やはり、そんなことはどうでもいいのだ。
玲二にとっての基準はいかなる時も、死んだのか、死んでいないのか、である。


玲二の手刀が繰り出される。


必殺の一撃。






――だが、その必殺の一撃は、掻い潜られる。

視界を奪われた状態で、物理的心理的な死角よりの高速の突き。
それを、九鬼のデータを持つアンドロイドは回避してみせた。
払いや受けといった拳法の動作でなく、ただ危険から身体をよじっただけであるが、それでも避けた。
さらには、その崩れた体勢から反撃の蹴りすら放ってきた。
全霊を一撃に乗せていた玲二はこれを回避することができない。
絶好の好機は逆に最大の危機へと反した。

無防備な玲二の右上半身に、九鬼の蹴りが迫り――



――響いたのは、鈍い、生木がへし折れるような音。
間違いなくどこかの骨が、折れた音。

「…………っ!」

吾妻玲二の、”右手”から響く音。
激痛に身をよじったのは、九鬼のほうであった。

九鬼は確かに玲二の突きを掻い潜っていた。
だが、そこで玲二は反射的に手刀から小指を伸ばしていたのだ。
距離にすればたった数センチというところで、また小指一本の威力などたかがしれている。

しかし、相手が達人であったからこそ、その攻撃は効果的であったのだ。
繰り出される攻撃に対し避けを大きくすることは、それだけの無駄を生み相手に余裕を与えることにもなる。
故に、練達者であるほど相手の攻撃をかわす動作は小さくなってゆく。
だからこそ成しえた打撃。ぎりぎり到達した一撃。

もっとも、代償として玲二の小指はあらぬ方向に捻じ曲がっている。
まっすぐ突きこんだわけでなく、あくまで無理に引っ掛けたのだからそれも当然だ。
そして、たったそれだけでしかない小指を有効な打撃に変えるにはそれ相応の力が必要だったこともある。

玲二の顔が激痛に歪む。
だがそれも一瞬。すぐに次の攻撃に移る。

ダメージで言うならば圧倒的に玲二の方が上だ。
九鬼はおそらく10分もあればコンディションを回復させるだろうが、玲二は全治一ヶ月は固い。
しかし、そんな回復にかかる時間などどうでもいい。
重要なのはまだ最後の機会が、この数瞬とはいえ残されているということ。

目の前の九鬼はアンドロイドだが、急所に関しては人間とほぼ変わらないことはすでに九条よりレクチャー済み。
人間もアンドロイドも動作を統括する脳(CPU)の入った頭部と胴体とを繋ぐ首に線が集中しそこが急所であることは変わらない。
科学者でない玲二にそれ以上のことはわからないが、しかしすることは変わらない。

残っている左手で隠し持っていたナイフを抜き――突く。
攻撃の対象は再び、首。ここを落とせば、アンドロイドは死ぬ。

最初から素手のみで戦うつもりなどなかった。
ただ今までは使う機会がなかっただけで、今は絶好の機会とそれだけのこと。躊躇う理由などない。
最初から最後まで徹頭徹尾、冷静な判断と計算に基づいた暗殺。
ファントム・ツヴァイとして学んだあらゆる能力を駆使して生み出された、一撃。


……だが、目の前にいるのは、九鬼耀鋼。


かつて、あらゆる手段を講じてもしかし敗北した相手。
例えその紛い物であったとしても、これが九鬼耀鋼であることにはやはり変わりないのだ。

九鬼の右腕が玲二が繰り出したナイフを防いだ。
いや、防いだという表現が適当かはわからない。何しろナイフはその右腕に深々と突き刺さっているのだから。
おそらく右腕へのダメージは深刻だろう。
ぶつりと何かが切れる感触が伝わっていた。それが何かなど想像できないが右腕はもう動かないと思える。
だが、そんなことはもう些細なことだ。

吾妻玲二がここまで策を重ねて作り出した一瞬の機会が流れ去ったことと比べれば。



「…………なっ!」

驚愕が玲二の思考を支配する。
ここにきて、はじめて玲二の心に空白が生まれた瞬間だと言えるだろう。だが、それは致命的な一瞬だ。



人ならざる化生すら葬る一撃が玲二に突き刺さった。






 ・◆・◆・◆・


一瞬の好機は過ぎた。

惜しげもなく装備品を使い捨て、全身に浅くない傷を負い、ようやく作り出せたたった一瞬の好機。
これをもう一度繰り返せるだけの力は玲二には残っていない。

ファントム・ツヴァイとして習得した暗殺術が、九鬼耀鋼の格闘技術に敗北したということだった。



たったの一撃で壁にまで叩きつけられた玲二は、しかし諦めることなく立ち上がる。

立ち上がったところで何をどうするのかという疑問はある。
今更立ち向かったところで、玲二の打撃力では九鬼相手に二度目の好機を作り出すことなど不可能。
どれだけの攻撃を繰り出そうとももはや苦し紛れにしかならない。

……だが、


(ま…………だ……)


仕切りなおしても、もう一度好機を作り出すことは不可能……だが、今ここからならば、何か方法はないのか?
今現在。玲二は大きなダメージを負っているものの、九鬼にしたって決して低いとはいえないダメージを追っている。
なにより、相手側のアドバンテージであるオーファンは未だ復活していないのだ。

まだ、完全に状況は流れてしまったわけではない。

今なら、まだ倒しうる。

守勢に回ればもう勝ち目はない。
だが、攻撃できれば。

(何…………か……)

左腕は先ほどの攻撃をガードした時に動かなくなった。
右手にしても小指を骨折してしまったために握るのも辛い。
他にもアバラが何本か折れて、内臓に無視できない痛みを感じている。
スタミナの回復もしばらく先の話だろう。もっともここを生き延びればの話だが。
満身創痍もいいところだ。だが、ここを逃せば今度こそ勝機はない。
なんとかしなければならない。

ならば、どうするのか。

殺すことはできなくとも、この一瞬でも相手の戦闘力を奪う方法はないか?

今更、急所を狙うというのも難しい話だろう。相手に学習させてしまった。

ならば、急所以外でも十分な威力を発揮する一撃はないか?

必要なのは、打撃力。


そう、例えば。


玲二のアバラを砕いたような一撃。

玲二の意識をほとんど刈り取ったような一撃。

円の動きから全身の体重を一点に乗せ、その衝撃を通すような一撃。

目の前にいる九鬼鋼耀のような、打撃。




「…………っ!」

初めて行うはずの動作にも関わらず、玲二の身体は自然に動いた。
動かされた――というような感覚すら感じていた。

その動きは目の前で何度も見させられたもの。

それまでは、速さとフットワークを重視していた為に、主に肩の先からの力を使って拳を打っていた玲二であったが、
この時は怪我を庇う無意識の動作で重心を落とし、右半身を後方に引いていた。

そこから、まず腰を回転させる。
引かれていた右腕が腰の回転より伝達される力に引っ張られる。
負傷の為に握ることのできない右手は不恰好ながらも掌打の型を取っていた。
腰から背骨、肩、肘にと順に力が伝わり、掌がそれに最後の捻りを加え――突き出された。

眼前へと肉薄していた九鬼の顔面へと掌が触れた。

瞬間。同じく、腰の動きで回転していた右足が地に踏みつけられる。
それにより、玲二の体内より生じた全ての波動が打点に集束し、解き放たれた。

その、一撃。

正式名称は『九鬼流絶招 肆式名山 内の壱 “焔螺子”』と言う。
腕を捻りながら引き、拳ではなく掌打を相手に叩きつけ、命中の瞬間に大きく踏み込みつつ捻りを加える。
通常の打撃が通用しない妖怪や同様の属性を持つ人妖相手に編み出された、波動を叩き込み内部より破壊せしめる技である。

最初の腕を捻りながら引く動作こそ不完全故、本家に比べれば威力こそ落ちるものの、代わりに速さは僅かに上回っていた。
カウンターの形で炸裂した掌打は、九鬼の頭部を跳ね飛ばし、伝達した力は頭蓋の中を揺さぶりそこに甚大な被害を齎す。
たたらを踏み、九鬼の首から股間にいたる前面の急所が全て無防備になる、数秒。

今度こそ、完全に、左の突きが。
軋みと痛みとを一瞬だが完全に無視し、
先の一撃により後方に引かれていた左半身が、同じく、先の形をなぞるように腰からの回転を掌へと伝え、
九鬼の身体そのものを貫かん勢いで放たれた。






 ・◆・◆・◆・


偶然である。


玲二が無意識の内に繰り出した掌打こそ、『九鬼流絶招(奥義) 肆式名山 内の壱 “焔螺子”』であり、
急所突きという形をとって繰り出した二の突きの形は、まさしく『九鬼流絶招 肆式名山 内の弐 “焔錐”』


すべては、偶然の出来事に過ぎない。


偶然。九鬼が死ぬ前に拳を合わせた男が、
偶然。九鬼の能力を再現した人形を前にして矢尽き刀折れた末にその技を模倣した。
それだけの、意味のない、ただの偶然。

だが偶然とはいえ、勝敗は決した。
時間にして2分にも満たない攻防は終わる。



九鬼は……いや、九鬼を模していたアンドロイドは咽喉から顎部を突かれ、ダメージは頚椎にまで達しているようだった。
未だ機能は停止していないようだが、起き上がってくる気配もない。
玲二のほうにしても消耗は甚大だ。
右手の小指はもとより、最後の一撃で左腕も相当に痛めてしまっていた。
折れたアバラは身体の中にじくじくとした痛みを生み、何より精も根も使い果たしている。


そして、2分が過ぎた。


この場にはまだ動けるモノが存在している。

鈍い音を立てながらソレは立ち上がる。

身体にまとわりついていた油はとうとう燃え尽きたらしい。だが、煤に塗れはしていても損傷らしい損傷はないようだった。
立ち上がったオーファンは玲二の姿を確認するとグル……と唸り声を上げた。
もう術者のコントロール下からは脱しているのだろうか、その声には幾分か感情があるように思えた。

対して、玲二は何をするでもない。もはや打つべき手もありはしなかった。
勝敗は完全に決したのだ。

オーファンは足元を一度踏みしめると、玲二に向かって突進を開始し――


――その瞬間。玲二はアンドロイドの脳天を拳銃で撃ちぬいた。


そう、勝敗は完全に決していたのだ。
最後にオーファンが上げていたのは怒号ではなく、悲鳴。己の消滅に対する恐れであった。



オーファンを倒すのが困難ならば主を狙う。それは基本にして唯一の対処法。
最初から最後までこの方針に変化はない。
2分は十分すぎる時間だった。
たった2分しかない時間でも、殺せる可能性があるのならばただその可能性への道程をなぞり達成すればいいだけなのだ。
過程がどうであれ、結果だけを見れば当然のことでしかなかった。

玲二を殺したいのならば、オーファンのみをあてるのが正解だっただろう。
無論、それは不可能な話だが、それならばせめて操り主は逃げに徹させるべきだった。
逆に、玲二以上の戦士である九鬼耀鋼を用いるならば、オーファンを使わせるべきではなかった。
オーファンとの連携が玲二に考える時間を与え、その結果として諸共に撃破されることとなったのだから。

人の動きをし、人と同じ急所を持つ相手を、人を殺す為の最高傑作にあててしまった。
しかも、相手側に戦力の分析をさせてしまう時間まで用意して。


全てが予定の内。何もかもは当然の帰結でしかない。



操り主との中継を切られたオーファンが光の粒となり散ってゆく。

その傍らで、玲二は自身に休息を許した。
地面へと座り込み、ゆっくりと呼吸を整え戦いの熱を身体から引かせてゆく。
そうして、戻ってくる全身の痛みを感じながら損耗の度合いを測り始めた。

一番の重症はアバラの骨折だろう。そのものだけでなく、折れた骨により内臓にもダメージが生じている。
吐血までした以上、常時ならば即入院というところだが玲二はまだミッションを完遂したわけではない。
ひとつ幸いなことは背負っている鞄の容量が無限であることだろうか。治療用具も大量に持ち込んでこれた。

玲二はコルセットのようなものを胸に当てテープで固定してゆく。
多少動きづらくなるが、痛みで動きが阻害されることを考えればこちらのほうがはるかにましだ。
テープを取り出したついでに、玲二はそれを左腕へとバンテージのように巻いてゆく。
まずはボクサーのように拳に、そして肘と肩にも同じようにテープを巻いた。
ぎくしゃくとしか動かなかった左腕もこれでどうにか動くようになる。

最後に利き手である右手へととりかかる。
小さなプレートを取り出し、それを添え木に折れた小指をテーピングして薬指と一緒に固定する。
これで、少なくとも銃を撃つぐらいならば支障はでないはずだ。
ただ、格闘戦は――

「………………」

と、そこで立ち上がり、腕を引き、先ほど繰り出したねじりを加えた掌打を打ってみる。
折れたアバラに響くものの、手にはそれほどの反動はない。

「………………」

この動きを用いるなら、多少は可能かもしれない。
そんなことを考え、玲二は地面の上で沈黙している九鬼の残骸へと向き直った。

「…………餞別代わりだ、勝手にもらうぞ」

言って、乱暴に九鬼からオーバーコートを剥がし、羽織ながら通路を歩き出した。



――餞別。

それがなにに対しても言葉なのか、おそらくは玲二自身もわかってはいないだろう。
いずれにしろ、戦闘は終わった。

もう、振り返ることはない。






 ・◆・◆・◆・


――では、ツヴァイは、吾妻玲二はなぜ傑作と呼ばれるのか?


それは、彼がその為にはあらゆることを行えるからだ。

標的を殺すことは出来ても無駄が多すぎるドライは洗練さに欠けると言えるだろう。
ツァーレンシュヴァスタンは、完全な洗脳調教を実現できたがその分個々の能力は劣る。
アインは最も完成している。だが、彼女はあまりにも完成品でしかなかった。
設計者の思想を完全に再現した物品は、だからこそ設計者の思惑を超えることなどできない。
結果としてアインは自身の限界に対しては無力だった。

ツヴァイは、ある意味では最高の失敗作だと断じれるだろう。
創造主であるサイス・マスターに手を上げたのだから。

だが、それを加味しても、いや、だからこそ彼が最高なのだ。

サイス・マスターを裏切り、ファントムすら裏切った。
そうするしかなかったと言えばそこまでだが、事情は別に彼はそれを達成した。
それが他のファントムシリーズにはない、彼だけが持つ最高の技能。
何を犠牲にしても目標を達成しようとする意志の力。
詰め込まれた最高の戦闘能力と、そして必要が生じればそれすら捨て去れる無意識の反応。

必要とあれば、どのようなことであろうと行える、その性質。


今、彼が吾妻玲二として歩んでいる矛盾じみた事実。それこそが彼が最高たる証なのだ。








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