ギャルゲ・ロワイアル2nd@ ウィキ

Symphonic rain

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Symphonic rain ◆AZWNjKqIBQ



雨が、雨が降っていた――――



それはこれまでと変わらず、クリス・ヴェルティンの世界は今も雨に包まれている。
一軒の山小屋の一つの部屋の中で、彼はやはりこれまでと変わらずその雨の世界に浸っていた。


クリスがぼうっと見つめる窓の外は日が明けてきたからか薄ら明るくなっている。
しかし硝子の上を止め処なく垂れる雨粒のせいでその向こう側は朧とはっきりとせず、景色は曖昧だ。
まるで、涙で目が霞むがごとくに。

うすぼやけた世界を静かなノイズが包み込んでいる。
クリスの世界の中で無限に広がる雨が彼を覆う屋根を叩き、外に広がる果てない地を叩く。
ポツポツと、ピトピトと、天上から直に落ちてきた粒や、何かを伝って地に辿りついた粒や、無限の種類を持つ音たち。
それぞれ一つずつに意味は持っているが無数に混ざり合ったそれは耳にはノイズとしてしか届かない。
まるで、喧騒の中で言葉の意味を捉えられないように。

雨に包まれた世界は孤独の世界だ。誰からよりも遠い世界。曖昧な境界で遮られた世界。


しかし、クリスは決して孤独ではない。


古ぼけたベッドの上。その淵に腰かけるクリスの隣には蒼い髪の少女がいる。
彼に肩を抱かれ、胸に顔をうずめてただしとどに泣き濡れる彼女の名前は玖我なつき。
親友を失い、戻るべき極上の日々を見失い、終局した哀しみの連鎖に透明な涙を流している。
一つの、彼と彼女が止めようとしていた哀しみの連鎖を、彼らは遂に止めることに成功した。

だがしかし、それは決して哀しみが消えてしまうということではない。
むしろその逆で、終わらせた彼らはその哀しみをその身に背負い続けなければならいのだ。
それまでの哀しみを後に続けない為に――それが、哀しみの連鎖を止める、とそういうことだった。

そして、彼らはそこから先に進まなくてはならない。
哀しみを錘に其処に留まり、ましてや底に堕ちて行くことなどは決して――
背負った哀しみをいつか昇華できる、希望の陽が昇る明日を迎えるまでは、決して挫けることは赦されない。
それが、想いを背負うということなのだから。
想いを託されるということなのだから。

繰り返しの哀しみに最早戻るべき極上の日々は失われてしまった。
だから、道行は不明で雲に光を閉ざされ雨粒が身体から力を奪っても、先に――
新しい極上の日々が待ち受けている未来へ、曇天の空のその先に進まなくてはならないのだ。


しかし、今の一時だけならば、彼らが歩を止め休息をとったとしても誰も咎めはしないだろう――……


 ◆ ◆ ◆


聞いてもらってもいいか?


クリスの胸の中で彼女はそう呟いた。
冷たい髪をひと撫ぜしクリスは、いいよ――とあたたかく応えた。

「……――私は、静留が大好きだったんだ」

優しい手の中でなつきはクリスに滔々と語る。失われた静留が自分にとってどういう存在だったのかを。
とりとめもなく、思いつくがままに彼女と何があってどこが好きだったのか。
言葉にすればそれは想いの外に強いもので、今更ながらにどれだけ魅かれていたのかが解った。

「静留の淹れてくれるお茶はおいしかったぞ。とっても……、また……飲みたい――……」

一つ言葉を零す度に一つ涙も零れ落ちる。なつきの頬を伝い、クリスの胸を濡らした。
重なるごとになつきの言葉は幼稚なものに、唯純粋な想いの形に変わる。
もう一度話したい。もっと、もっと、したいことがあったはずなのに、気付いたのは今だから、もう遅かった。

「――私が馬鹿だったばかりに、静留にばかり気を使わせて……なんで気付けなかったのか」

なつきの言葉は想いから悔恨と懺悔に、しかしクリスはそれを優しく受け止める。
リセの墓の前で彼女からそうしてもらったように、今は彼がそうしていた。
言葉が再びただの泣き声に変わっても、優しく頭を撫ぜ続け、

少女が泣き止むまで、彼はそうしていた。




「私は、もう強がったりはしない……。そのせいで誰かを悲しませたり、苦しませたりはしたくないからな」

だからと、なつきは抱かれた腕の中からクリスを見上げた。
今初めて彼女から彼の瞳を覗き込み、頬を薄紅色に染め、涙の跡はそのままにしかし笑顔で、そう言った。


「私はお前が――クリスが好きなんだ」


ひとつの音霊により錠を外されていた心の檻は柔らかく優しい白い手でその扉を開かれ、
言葉と想いが奥に隠れたそれを誘い出し、遂に今秘められていた彼女自身の想いを――ここに、
なつきは光に自身の姿を見出し、その想いを光へと――彼へと打ち明けた。


「お前の、その翠色の瞳がとても綺麗だと思う。
 そう……そうだったんだ。私はお前のことが好きになっていたんだ。
 あの時に、初めてお前のその瞳に見つめられた時から――……」


一目惚れはおかしいか? と、なつき。
そんなことはないよ――と、クリス。


「お前の柔らかい手が好きだ。その透き通った声も。きっと他の全部も。
 どうしてだろう? こんなに頼りないやつなのに、それなのにお前といると不安がないのは?
 それは――」


お前が綺麗なものだからなんだろうな――と、なつき。
僕が綺麗なもの? と、クリス。


「ああ。きっとそうなんだ。まだはっきりとその意味を言葉にはできないけど――……」


そして、なつきはゆっくりと預けていた身体を離すと、クリスへと正しく向き直る。
クリスもなつきの方へと向き、互いにそれぞれの翠色の瞳を見つめあった。


「これが、……私の素直な気持ちだ。これを、今、お前に聞いてもらいたいとそう思った」


なつきの顔が僅かな不安に陰る。受け入れてもらえるのかわからなかったから。
彼女はその方法を知らないからこれが正しいのかわからなくて。


「聞いてもらえたならそれでいいんだ。もしお前が――」
「――僕も好きだよ。ナツキ」


あ、と息が零れ……次いで涙も零れる。
その滴が頬を伝い顎の先より滑り落ちるより前に、優しい手がその滴を掬い取っていた。


「もう、ナツキを一人にはしないって決めたから……」
「む、無理に優しくなんてしなくて……いいんだぞ……?」


止め処ない涙は全て優しい手の中へと。
その涙――想いはは決してもう地に落ちることはなく、孤独はもうなく、彼に……受け止められる。


「ナツキとずっと一緒にいたいと、そう思ったんだ――」
「――私も、そうしたい」


一緒に。
翠の視線と視線を重ね、白い手と手を重ね、想いを重ねるために、二人は近づいてゆく――


「ひとつ、お願いしてもいいかクリス?」
「何かな、ナツキ?」


限りなく近いところでなつきは言い、同じぐらい近いところでクリスは問い返した。
言葉は、意味をもった吐息の振動は直に触れ浸透してゆく。


「なつき――と、そう呼んでくれ」
「うん。大好きだよ。――”なつき”」


薄い色の肌と肌を重ね、淡い色の唇と唇を重ね、心を重ねるために、二人は二人を重ねてゆく――


愛してる――と、



その言葉を



なんどもねだりあった――……



◆ ◆ ◆


雨が、雨が降っているようだった――




そよぐ朝の風が葉を揺らすサァサァという静かなノイズが、それを聞く九郎の耳には雨音の様に届いていた。
震える葉の先から零れ落ちる朝露を昇ったばかりの日の光がキラキラと輝かせ、そこに幻想の雨を降らせている。


土を掘る手を休め山小屋に備え付けられていたスコップを地面に突き刺すと九郎は一息ついて朝日を振り返った。
白い太陽はその姿を全て現し空を透き通ったブルーに染めている。
海から山へと登ってくる風は一仕事して火照った身体にはとても気持ちよく、今は清涼な朝だと確かにそう思える。

それでもそこに雨を幻視するのは何故だろうか?

誰かの涙の代わりなのかもしれない――そう思うと、九郎は無言で山小屋の中へと戻った。



洗面所で顔を洗い、残っていた食料の中からおにぎりをいくつか取るとそれを簡易な朝食として済ませる。
一通りの身支度を終え、時計を見てみれば次の放送までには20分足らずといったところであった。

「――あいつら大丈夫……だよな」

九郎は天井を見上げ、心配そうな表情をつくり……しかしそれは杞憂だと首を振った。
クリスもなつきも自分も含めて皆、弱い。
けど、一人ではないのだ。
倒れても、もう一度立ち上がることができるのならそれでよかった。繰り返せば、いつかはどこかに辿り着くのだから。

「出歯亀は探偵の仕事じゃないし、な――」

何かに気付いたのか、九郎は天井を見上げるのを止めると席を立ち部屋の端へ、
そこの簡易ベッドに寝かされていた藤乃静留の遺体を抱き上げると静かに山小屋の外へと向かった。

「とはいえ、埋葬も探偵の仕事じゃないんだけど……サービスしておくか」

苦笑し、再び幻想の雨を降らせる光の中へと出る。



「――泣いているのは、あんたなのかい?」

赤い土の上に横たえられた静留に九郎は問う。
勿論、自らの手で己の命の灯火を消してしまった彼女が応える訳もなく、その静かな表情が変わることもない。
聞こえるのはただ風の音だけ。涙雨の様な、小さなノイズが耳に届くだけだった。

「本意じゃないかもしれないけどさ。ゆっくり休んでくれよ」

スコップを手に取ると、九郎は穴の中の静留へと少しずつ土を被せてゆく。
彼女が何者なのかを九郎は聞かされた話にしか知らない。
だがしかし、彼女がどれだけこの島の中で必死だったのか、なつきを想っていたのかはよく理解していた。

今は胸を紅く染めている白い着物の下。そこに美しい外見からは想像もつかないような傷があるのを九郎は見た。
手首を抉られたせいで手に力は入りづらかっただろう。
太腿に深く穿たれた傷のせいで歩くのもままならなかっただろう。
脇腹にあった一際大きな痣はきっと身をよじるたびに彼女を苛めたに違いない。
元は真白だったはずの身体に浮かんだいくつもの赤と蒼と黒の痣は常に彼女の意識を奪おうとしていたはずだ。

なのに、あの時蛇頭の上に立っていた彼女はそれを微塵とも感じさせることなく、一人毅然とそこに存在していた。
想いを秘めるが故に、決して誰も頼ることができなかったのだろう。
それは想いを向けるなつきに対してもそうで、彼女は彼女自身であり続けなければいけなかったのだ。
弱みを見せず、挫けず、しかも孤独に。
島中を奔走し傷だらけになっても、決して屈せず、愛しい人を想い続けた。

それは哀しくて、そしてどこまでも美しい姿だったに違いないだろう。

その姿も今、暗い土の下へと消えようとしている。
しかしそれでいいのだと九郎は思う。もう彼女が哀しむ必要はないのだから。

「なつきを護ったのはあんただよ。静留さん」

静留が必死だったからクリスと出会い、そしてその想いはなつきへと伝わった。
だからこそ二人は再会を果たし、想いを通じ、受け渡すことができたのだ。
それは結果論か、またはロマンティシズムに寄りすぎているのかも知れなかったが、それでも九郎はそう思う。

「これからはクリスがなつきの隣にいる。勿論、俺もあの二人の傍にいる。だから――」

もう休んでくれ――と九郎は最後の土を掬い上げ、
眠るように安らかな彼女の上に帳を下ろし、藤乃静留の物語をそこに閉じた。



強い風が大きく葉を揺らし、撥ねた朝露が降りきるかのようにそこを濡らすと、朝の風景はようやく静寂へと包まれる――……


 ◆ ◆ ◆


――しかし、それを許さないかのように静寂は容易く破られる。



死者に想いを馳せるべき静寂な時を破ったのは、時に正確なその死者の名を告げる審判者の声だった。
その声に、まどろみの中で彼女の姿を見ていたクリスとなつきは現実へと引き戻される。

「なつき。今の――」
「――ああ、わかっている。九郎を待たせているし、急ごう」

二人、大きくはないベッドの上で一枚のシーツに包まっていた彼と彼女は甘い夢の残滓を振り切り動き始める。
最初にクリスがベッドの上から降りると、露になった肌に当たる冷たい朝の空気に身体を大きく振るわせた。
気だるげななつきはそれを見てかシーツの中からは出てこず、腕だけを突き出して自身の荷物を指差す。

「新しい服を取ってくれ……着替えたい。下着もあるはずだから一緒に――」

今は適当でいいからと、それだけ言うとなつきは包まったままの姿でまた瞼を閉じる。
それを振り返ったクリスに思うところは色々とあったが、しかし仕方がないので素直に従いなつきの鞄を開いた。

「――はい。じゃあここに置いておくよ、ナ……なつき」
「ん。悪いな、お前……いや、クリスにばかり働かせて……」

いいよと小さく笑うと、シーツの中に衣装を引っ張り込みその中で着替え始めたなつきに背を向け自分のための服を探し始めた。
とりあえずは着れそうなものをと手早く一着を取り出すと、次いで先程まで身につけていた下着はどこかと首を振る。

「……クリスは、こういうのが好きなのか?」

と、そこでなつきからかけられた声にクリスはきょとんとする。”こういうの”とは何を指しているのか?
細かく震える華奢な肩を抱きながら一秒、二秒……と考えて、気付いた。

「……いや、それは、別に……適当に取っただけで…………趣味とかじゃなくてね……うん」
「そうか……、うん……それならそれで別に……」
「あのあの、でもさっきのだってすごく……かわいくて……よくわからないけど、僕は……」
「ま、ま、待てクリス。もういい、もういいから! …………恥ずかしいじゃないか」

クリスは窓から射す白い光の中で、なつきはシーツの中の暗がりで、それぞれに顔を赤く染めていた。
それは不思議なもので、亡くなっていった者達のことを言葉にした時と同様に、それと気付けばとても大きなものになっていた。
同時に、何もかもが当たり前のように感じられてそれでいて全くの未知だという心地よさがある。


視線を交わすことも、言葉を重ねることも、手をつなぐことも、唇を触れ合わすことも、心を解かし合うことも――その先の全ても。


「……と、とりあえず早く着替えよう。九郎を待たせるのは悪いしな」
「あ、うん。そうだね……えーと……」

浮き上がりかかった心を落ち着け、クリスは再び下着の捜索に乗り出す。
女性用の下着ならなつきの鞄に山ほど入っていたが、それを履くわけにもいかないので元よりあったものを探さないといけない。
ベッドの脇に散らかっている、泥や血――死闘の跡に塗れた衣装をかき分け、クリスは何時の間にかになくなったそれを探す。

――と、それはほどなくしてベッドの下に見つかった。
何時の間にそんなところへ入ってしまったのかは不思議だったが、それはともかくとしてクリスは姿勢を低くして手を伸ばす。
まだ裸のまま、頭と胸を床につけお尻だけを突き出した格好はひどく滑稽で、もしこんな姿を誰かに見られたらと思うと――……





……――思ったが、どうやら今回ばかりは神様もそうは意地悪ではなかったようだと、下着を片手にクリスは安堵した。


 ◆ ◆ ◆


しばらくの後。
朝の光がそろそろ空気を暖め始めた頃、クリスとなつきと九郎の3人は山小屋の一階で今後の方針について話し合っていた。



「シズルは…………?」
「ああ、お前達と一緒にした方がいいのかもと思ったけど、手が空いていたんでな」
「いや感謝するよ九郎。静留に代わって私から礼を言わせてくれ」

なつきからの素直な感謝にくすぐったいものを感じつつ、九郎は3人が囲む机の上に名簿と地図を取り出す。
名簿の上には新しい印が8つ増えており、その中には彼らの知る名前も存在した。

「マコトの名前が呼ばれたよね……」

死んだ――とは言わないクリスの格好は放送前までとはまた変わっている。
ストライプ柄のタンクトップに、大きな皮製の襟がついたチェック柄のベストを羽織っており、ボトムはソフトデニムのホットパンツ。
足には滑車付のウエスタンブーツを履いていた。
所謂カウボーイスタイルだが、華奢なクリスが着ると余計に子供っぽく、しかしアイドルの衣装ならそういうものかと九郎はそう思った。

「つまり、アルや羽藤達に何かあったということになるな」

神妙な顔でそう言うなつきの格好もまた変わっている。
白い半袖のカッターシャツに、水色のチェックのプリーツスカートと同色のネクタイ。紺のハイソックスに黒のローファー。
所謂学生服といった感じで、その姿に九郎は一度出会いそしてはぐれた美希が似たような格好をしていたなと思い出した。

「――で、だ」

青色のジャージのままの九郎は声を大きくして二人に注意を促すと、予め用意していた案を述べ、広げた地図の一点を指差した。

「教会……?」

クリスの言葉に九郎はそうだ、と力強く頷く。

「アル達がどこかで何らかのトラブルに巻き込まれたってのは多分間違っちゃいないだろう。
 んで、それがどこかってのがとなると、取り敢えず一番可能性があるのはここなんだ」

アル一行が目的地としていたのは教会で、彼女達はそこに主催者への手掛かりがあるかも知れないと考えていた。
それは件の菊池真が体験した不思議な出来事からの推論であるが、正しかったとするならばそこで”何か”があった可能性は十分にある。

「……確かに、時間を考えれば到着しててもおかしくないしな」

肩を並べ寄せ合うクリスの隣でなつきは納得といった風に頷く。
何かあったと考えられる以上、合流を急ぐのは当然だし、その何かがあった可能性が高い場所を目的地とするのは当然だ。

「けど、もしアル達がツインタワーの方に行っていたら……?」

クリスは不安げな表情で一つの可能性を示唆する。
トラブルに遭遇したであろうアル一行。彼女達もまた合流を優先し待ち合わせ場所へと戻っていたとしたら、というものだ。

「確かにその可能性も否定できないが……」

九郎は腕を組み、眉根を寄せて唸り声を漏らす。
そもそも考えうる可能性の数に比べて情報が少なすぎた。
与えられた情報に固執すれば、他の可能性を見失うことになるが、逆に可能性を広げてしまうと何も選ぶことができなくなってしまう。

単純に道中のどこかで誰かに襲われただけかも知れない。
何らかの要因で心理が変化し、仲違いしたのかも知れない。
または、菊池真の死は単なる事故だったのかも知れない――とも考えられる。

「九郎。この場で答えを出せるのはお前だけだ。お前が知るアル・アジフがどう動くのか、それを教えてくれ」

なつきの言葉に、九郎はハっと我を取り戻す。
まさしく彼女の言うとおりで、これは情報の信頼性の問題で、この場合はアルの行動がどうだと信じられるかだった。
自分の知っているアル・アジフは何かあったとしても教会に向かうのか、それとも合流を優先して道を引き返すのか……?

しばらくの逡巡の後――

「教会に向かおう。
 そこに脱出の鍵があるかも知れないなら諦めるはずはないし、
 仮にもう立ち寄った後だったとしても、そこからツインタワーの方へ向かえば入れ違いは防げるはずだ」

――九郎は、そう決断を下した。


 ◆ ◆ ◆


雨が、雨が降っていたとしても――





死者を弔い送る音の中で、なつきは親友の眠るささやかな墓の前で手を合わせていた。
思い返せばまた涙が目の中に溢れる。
しかし、もうそれを我慢することはなく、なつきはただ溢れるままに、流れるままに涙を頬に伝わせていた。

その表情は笑顔だ。

哀しみの終わりを苦しみにしてはいけない。そう今はもう舞台より下りた彼女はそう言ったのだ。
一つの終局がもたらしたものは決して哀しみだけではなかった。
何故なら終わりを演じた彼女は微笑んでいたのだから。

無言のままになつきは心の中でそれを誓う。
友に望まれたとおりに幸せになろうと。
彼女より受け取った想いを胸に、形はなくとも決してなくなりはしないそれを抱えて進もうと。
いつかまたどこかで彼女と会えるとして、その時に彼女が好きだった玖我なつきとして胸を張れる様に。



たとえ、雨が降っていたとしても――雨が降り止む空の彼方まで歩いてゆこう。



ありがとう。さようなら――言葉にして、なつきは立ち上がる。
その隣には演奏を終えたクリスがいて、彼女の涙を拭ってくれた。
そして、その後ろには仲間である九郎が明るく力強い笑顔を見せていた。



道行は不明で雲に光を閉ざされ雨粒が身体から力を奪っても、先に――
新しい極上の日々が待ち受けている未来へ、曇天の空のその先にへと――彼女らは歩み始める。




去り行く3人の背。そこに今はただただ静かな風が彼女らを送るように吹いていた――……





【E-5 山小屋付近/2日目/朝】

【クリス・ヴェルティン@シンフォニック=レイン】
【装備】:カウガール(真)@THEIDOLM@STER、
【所持品】:
 支給品一式、ロイガー&ツァール@機神咆哮デモンベイン、アルのページ断片(ニトクリスの鏡)@機神咆哮デモンベイン
 フォルテール(リセ)@シンフォニック=レイン、ピオーヴァ音楽学院の制服(ワイシャツ以外)@シンフォニック=レイン
 刀子の巫女服@あやかしびと-幻妖異聞録-、防弾チョッキ、和服、情報の書かれた紙、アリエッタの手紙@シンフォニック=レイン
【状態】:Piovaゲージ:50%、疲労(弱)
【思考・行動】
 基本:哀しみの連鎖を止める――だけどクリスができる力で。目の前の哀しみを。仲間とともに。
 基本:なつきとずっと一緒に、そして彼女と幸せになる。
 1:アル達との合流を優先し教会へと向かう。
 2:ユイコやドクター・ウェスト、また他の誰かと出会えれば保護。仲間になってもらう。
 3:教会でアル達と会えなかったら待ち合わせ場所のツインタワーへと向かう。(約束の時間は正午)
【備考】
 ※原作よりの登場時期は、リセルート-12/12後からになります。
 ※西洋風の街をピオーヴァに酷似していると思ってます
 ※『情報の書かれた紙』に記されている内容は、「MightyHeart、BrokenHeart」の本文参照。
 ※ユイコの為の”クリス君”である事を止めました。
 ※なつきと強く結ばれました。

【玖我なつき@舞-HiME運命の系統樹】
【装備】:ELER(なつきのエレメントである二丁拳銃。弾数無制限)、ラフタイムスクール(雪歩)@THEIDOLM@STER
【所持品】:
 支給品一式×2、765プロ所属アイドル候補生用・ステージ衣装セット@THEIDOLM@STER、
 白ドレス@Fate/staynight[RealtaNua]、大量の下着、カードキー(【H-6】クルーザー起動用)、
 七香の MTB@CROSS†CHANNEL~toallpeople~、双眼鏡、クルーザーにあった食料、情報の書かれた紙、首輪(サクヤ)
【所持品2】:
 支給品一式×3、愁厳の服、シーツ、首輪(刀子)
 古青江@現実、虎竹刀@Fate/staynight[RealtaNua]、包丁2本、コルト・ローマン(0/6)
 ビームライフル(残量0%)@リトルバスターズ!、ラジコンカー@リトルバスターズ!
 木彫りのヒトデ1/64@CLANNAD、玖我なつきの下着コレクション@舞-HiME運命の系統樹
【状態】:疲労(中)、頭部打撲(軽)
【思考・行動】
 基本:クリスとずっと一緒に、そして彼と幸せになる。
 1:アル達との合流を優先し教会へと向かう。
 2:ユイコやドクター・ウェスト、また他の誰かと出会えれば保護。仲間になってもらう。
 3:教会でアル達と会えなかったら待ち合わせ場所のツインタワーへと向かう。(約束の時間は正午)
【備考】
 ※媛星の事はアルやウェスト等、媛星への対策を思い付き得る者以外に話すつもりはありません。
 ※『情報の書かれた紙』に記されている内容は、「MightyHeart、BrokenHeart」の本文参照。
 ※来ヶ谷唯湖に対し怒りと憎悪の感情があります。
 ※チャイルド(デュラン)を呼べるようになりました。
 ※クリスと強く結ばれました。また彼がが雨の幻影を見ていることに気付いています。

【大十字九郎@機神咆吼デモンベイン】
【装備】:バルザイの偃月刀@機神咆哮デモンベイン、私立穂群原学園指定体操服+運動靴@Fate/staynight[RealtaNua]
【所持品】:
 支給品一式、ベレッタM92(9ミリパラベラム弾15/15+1)、ベレッタM92の予備マガジン(15発入り)×3
 凛の宝石×6個@Fate/staynight[RealtaNua]、物干し竿@Fate/staynight[RealtaNua]
 キャスターのローブ@Fate/staynight[RealtaNua]、木彫りのヒトデ×10@CLANNAD、
 トランシーバー(故障)、加藤虎太郎の眼鏡、タバコ、虫除けスプレー
【状態】:決意、疲労(中)、打撲(背中/重)、打撲(全身/中)、銃創(肩/深)、銃創(右足/浅)、腹痛(軽)
【思考・行動】
 基本:亡き者達の遺志を継ぎ、希望を実現させる。
 基本:クリスとなつきに同行し、彼らを護り助ける。
 1:アル達との合流を優先し教会へと向かう。
 2:ユイコやドクター・ウェスト、また他の誰かと出会えれば保護。仲間になってもらう。
 3:教会でアル達と会えなかったら待ち合わせ場所のツインタワーへと向かう。(約束の時間は正午)
 4:虎太郎の生徒と出会えたら保護する。
 5:金髪の女(ドライ)とはいずれ決着をつける。
 6:ドクターウェストに出会ったら、問答無用で殴る。
【備考】
 ※クリスが雨の幻影を見ていることに気付きました。
 ※理樹を殺したのはドライだと気付きました。

233:requiem 投下順 235:安易に許す事は、傲慢にも似ている
時系列順
223:かけがえのない想い……すぐそばに クリス・ヴェルティン 237:THE GAMEM@STER SP(Ⅰ)
玖我なつき
大十字九郎


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