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国会での審議の中継


田中康夫議員/新党日本所属(参議院法務委員会(2008/11/27))

田中康夫 - Wikipedia
○田中康夫君 参議院における統一会派、民主党・新緑風会・国民新・日本の一員であります新党日本代表、私、田中康夫でございます。
 通常は、国土交通委員として、脱ダム宣言は脱ムダ宣言ということで既得権益と闘い続けておりますが、本日は、理事の千葉景子さん、松岡徹さん、また委員の松野信夫さんの御配意の下、法務委員会で質疑に立つ機会をちょうだいいたしました。改めて感謝申し上げます。
 最初に私の立脚点を申し上げます。
 私は、今回の国籍法、いわゆる「改正」に疑義があると考えております。そして、DNA鑑定制度を導入するべきであり、そのことを明記すべきであると考えております。実は、人権保障を尊重するならばなおのことこのDNA鑑定の導入が必要である、こうした立脚点に立って御質問いたします。

「小児性愛黙認法」と呼び得る危険性

 まさに法律のはざまに留め置かれた罪なき子供を救済せよと、第百七十回国会に提出されたはずの今回の国籍法の一部を改正する法律案は看過し得ぬ瑕疵を内包していると、このように考えます。
 すなわち、新たに別の罪なき子供を奈落の底へと突き落とす蓋然性が極めて高い、当初から偽装認知奨励法にほかならぬと懸念されておりました本法案は、人身売買促進法、ないしは小児性愛、ペドフィリアと呼ばれますが、小児性愛黙認法と呼び得る危険性をはらんでいると私は思います。
 たとい閣議決定しようとも、至らなさを改むるにしくはなし、それが考える葦であります私たち人間の目指すべき場所でございまして、Uターンする決断こそ政治であると考えます。手続も結果がねじれていては成果になりません。附帯決議や附則というものは、これは往々にして官僚行政の中における単なる恣意的な、効力のない裁量行政に陥りがちでございます。
 今この瞬間も、日本の各地で真っ当に働き、学び、暮らす人々の悲しみや憤りを誇りと希望に変えてこそ政治でございます。信じられる日本へと向けて、おかしいことは一緒に変えていこうと、これは私が代表を務める新党日本の結党の精神でございます。
 では、法務大臣の森英介さんに御質問に入らせていただきます。

合成写真について

 まずは、こちらのパネルを御覧くださいませ。(資料提示)お手元の方にも皆様に資料がお渡ししてございます。
 これは十一月七日付けの英国のザ・タイムスという新聞、御存じのようにザ・ガーディアンと並んで英国を代表する日刊新聞でございます。ここに見出しが付いております。「ハズ ディジタル トリッカリー ヘルプト キム オーバーカム ア ストローク」と書いてございます。
 皆様のお手元のパソコン等で御覧になれるデジタル版のところでは、「キム ジョンイル ディジタル トリッカリー オア アン アメージング リカバリー フロム ア ストローク」と書いてございます。
 これは、写真はロイター通信の配信でございまして、記事はリチャード・ロイド・ペリー記者が書いております。
 この見出しの意味するところは、また本文は、これはデジタル写真の合成なのかと、それとも脳卒中からの驚異的生還のあかしかという皮肉でございます。中に、よく見てごらんと、足下の影の具合が彼の周囲の同志とは彼だけ違うよ、これはフェイク、偽造の写真かい、それとも北朝鮮の偉大なる上から目線の領主様の場合は我々下々とは異なる影が写るのかと、このように書いてございます。
 森さんのお手元の方にも今資料をカラーでお届けをしております。森さん、この写真、またこの記事を御覧になっての御感想をまず冒頭にお聞かせください。

○国務大臣(森英介君) ちょっと今の委員の御質問の趣旨がよく理解できませんし、それから、その前提となりました本法案についての疑義、委員の疑義ですね、それについても最高裁の判決で御判断が示されたところで、その違憲状態をなるべく早く解消するために法案を国会に提出いたしているところでございまして、現に衆議院においては全会一致で附帯決議を付した上で御賛同をいただいたところでございまして、今参議院に議論をお願いしております。
 この写真について何を申し上げればいいんでしょうか。

○田中康夫君 この後、私が、法務省が新たに方針としてお出しになっていることを踏まえてでございます。
 でも、森さん、このやはり写真、そのほかの写真が合成であると、全世界でいろいろ報じられているスポーツ観戦をしているところ、これは森さんも恐らくそういうお考えを、御懸念をお持ちですよね。

○国務大臣(森英介君) この写真が合成の可能性があるんじゃないかという御指摘であるとすれば、そうかもしれないなと思います。

犯罪捜査の際のDNA鑑定

○田中康夫君 こちら、皆様御存じのように、凄惨なテロとも呼ばれた事故があったときに、警察庁、警視庁あるいは埼玉県警はDNA鑑定をするというような記事が載っております。(資料提示)
 皆様のお手元の方にお配りしました読売新聞の二十五日付けの夕刊、「親子の確認厳格化へ」、「国籍法改正で偽装認知防止」と。「法務省は二十五日、今国会で予定されている国籍法の改正により、外国籍の女性の子供に日本国籍を取得させる目的で日本人男性が偽装認知する事件が増えることを防ぐため、親子関係の確認を厳格化する方針を固めた。」と。これが火曜日の夕刊でございます。私は、こうした方針自体は大変に結構なことであると思います。その後に、「関係を証明する書類や写真を法務局に提出するよう求める考えで、年内にも省令改正や法務局への通達を行う方向だ。」と記述されております。
 森さん、こうした動きは御存じでいらっしゃいますね。

○国務大臣(森英介君) はい、承知しております。

○田中康夫君 ありがとうございます。
 この記事の中では、「参院での慎重審議を求める声もあるため、法務省もできる限りの偽装認知防止策を取ることにした。」というわけでございます。これは、具体的に、「法務局に子供の国籍取得届を提出する際、父親の戸籍謄本や両親と子供が一緒に写った写真などの添付を求める方針」と。「戸籍の住所や写真を、両親が知り合う機会の有無や子供が幼いころから一緒にいたかどうかなどを判断する材料にしたい」というふうに報じられております。
 今はデジタルな時代でございます。一般の方々でも写真は容易に様々な編集ができる、もう皆様御存じのとおりでございます。こうしたことを、法をつかさどる法務省が情念や情緒のようなお話をなさっているということは、私は大変に憂うべきことではないかというふうに思います。これは、先ほどの金正日領主様にお仕えする方々の写真又はそれと同様の頭の中の思考回路に法務省は残念ながらなってはいないかということです。
 こうした点で、この後の記事は、「DNA鑑定を義務付けるべきだとする意見も出た。」が、「法務局の窓口で鑑定の信用性を判断するのは難しいうえ、母親が外国人の場合だけ鑑定を求めるのは差別につながるという指摘もあり、」と。私は、読売新聞の記事ではなく、思わず人権を声高に語る朝日新聞の記事かと勘違いしちゃったわけでございますけれども。
 つまり、窓口で写真の信用性を判断するのは簡単であるというふうに書いてございます。DNAの鑑定というのは逆に難しいと言っているわけですが、森さん、この御認識でよろしゅうございますね。

○国務大臣(森英介君) 窓口で判断をするのは、何も写真だけじゃなくて総合的に判断するわけでございます。
 先ほどの三人殺傷した人をDNAで立証したと、これ犯罪者をDNAで鑑定して立証したんでございまして、それは確かに悪い人もいるかもしれないけれども、基本的に、新たな日本人を日本国に迎えるに当たって、犯罪を立証するときと同じようにDNA鑑定を付与するということは、私は余り芳しいことじゃないと思います。

○田中康夫君 森さん、DNA鑑定は犯罪の捜査の場合には適するけれども、こうした国籍の問題、また婚姻をしていない場合でございます、この最高裁の事例の場合には、家族を大事にということを自由民主党を始めとする方々はおっしゃっています。私も家族が大事だと思っています。しかし、今回の事例は、最高裁で扱われた、あるいは同様のことを求めている学者の方は、家族としての婚姻関係はしないけれども認知だけは認めさせろよというお話なんでございます。ここを誤解なきようにいただきたい。
 そしてその上で、なぜDNA鑑定を私が求めるのか。今、森さんは犯罪者を挙げるためならば許されると言いました。私は違うと思うんです。仮に、もうあろうこと、とんでもない事件を引き起こした者、しかし、そういうふうに供述している者がうそをついているかもしれない。DNA鑑定をするのは、冤罪を防ぐために犯罪捜査の場合にも行っているのです。とするならば、国籍を付与するかしないかという場合においても、まさに法のはざまにいる罪なき子供あるいはその周囲の者が冤罪のような不幸に巻き込まれない、悲劇に巻き込まれないためにDNA鑑定が必要だということでございます。

世界各国でのDNA鑑定について

 お手元の資料の中に、各国で既にDNA鑑定をしているのがございます。(資料提示)これはヨーロッパ各国、ヨーロッパ十一か国でございます。調査をいたしましたのは、こちらに記してございますように国立国会図書館の調査の部門が行ったことでございます。
 これをごらんいただきますと、十一か国では皆、イギリス、デンマーク、ノルウェー、オランダ、フィンランド、ベルギー、ドイツ、イタリア、スウェーデン、オーストリア、フランス、DNA鑑定というものを実施をしているわけでございます。この場合、フランスの場合には、議会の側からこれは憲法違反ではないかという形の話が出ましたけれども、最後のところにも書いてございますように、付託された憲法院で合憲判断というものが出ております。
 先ほど民事局長はそのDNA鑑定が正確なものであるのかどうか分からないと言いましたが、これはあほなお話でございまして、例えばベルギーならばエラスムス研究所という歴史的な研究所、あるいはスウェーデンの場合は国立法医学研究所、イギリスは政府から権限を付与された研究機関、こうしたところを法律できちんと定めて、省令においてですね、しかし、まず法律を定める、その上で省令等でこうした具体的規定をしております。
 十万円掛かると言っておりますが、ほとんどの国は申請者負担、あるいは国の負担もございます。あるいは申請者負担で、一たびきちんとDNA鑑定で認められた場合には、そのお金はきちんと戻すという形にもなっているわけでございます。
 実際には、日本の最高裁判所においても、認知訴訟におけるDNA鑑定、これは訴訟上の正式の鑑定を、認知訴訟でございます、実施している事例は既に三割近くもございますし、当事者が任意で実施をした鑑定結果等が証拠として提出をされると。この事件等も含めますと、かなり多くの認知の訴訟事件においてDNA鑑定は資料として採用されているわけです。
 これは、今回の問題が違憲であると述べた最高裁判所も、冤罪という不幸や悲劇を防ぐためにDNA鑑定を用いているということであります。ですから、今回の判決にDNA鑑定をしなさいというような文章が付いていなかったからそれは入れなかったというような弁明が仮にあるとするならば、それこそは視野狭窄な法律を作成をしていくということに私はなると思います。

「闇の子供たち」という映画

 実はもう一つ、こちらは最後に資料を付けました。(資料提示)「闇の子供たち」という映画でございます。桑田佳祐さんが音楽を担当しまして、宮崎あおいさん、江口洋介さん、妻夫木聡さんが出演をされました。原作は梁石日さんで、そして監督は阪本順治さんです。八月に公開された映画でございます。これは、幼女売買春、臓器密売の知られざる闇が今、明らかになる、値札のついた命というようにここのポスターにも書いてございます。
 私も鑑賞いたしましたが、この中で扱われているのはペドフィリアと呼ばれる小児性愛の被害者、犠牲者の東南アジアの子供たちを描くものでございます。この中では、日本あるいは欧米の人たちがこうした東南アジアの子供を買い求める、そして国に連れていくというような形がございます。その中には、それを養子縁組という形ではなく、婚姻もせずに、あるいは日本の場合にはアジアの方々の顔と似通った相貌の方もおります。こうした中でこうした子供たちが新たな奈落の底に落とされるような小児性愛の対象となるようなことを私たちは法治国家の一員として防がねばならないと思っております。その意味において、私はやはり、従来の一たび決めたというようなことのメンツにこだわってはいけないと思っております。
 私が一月三十一日の予算委員会で、輸血製剤に関してのウイルス感染対策の不活化技術の導入というものを提唱し、当時の福田康夫さんが早急に行うべきであるということで厚生労働省が動くようになりましたのも、転ばぬ先のつえということです。あるいは今社会で大きく問題になっているような事故米を始めとする様々な偽装は、転ばぬ先のつえのシステムをきちんとつくらず、そして現地機関の人たちにその認知の部分の仕事を押し付けるというような形はリーダーシップではありません。すなわち、今のばらまき行政でお金を配って、市町村の現場で判断してくださいと言っているのと同じ、丸投げのような談合のような話でございます。
 ですから、私が田崎真也さんというソムリエの方と一緒に、原産地呼称管理制度というような農作物や農産加工品の日本酒や米やワインやしょうちゅう等の生産表示、情報開示と品質評価の客観的、具体的制度化をしたのも、そうしたことです。

DNA鑑定を明記する気があるか?

 森さんにもう一度お伺いをしたいと思いますが、ヨーロッパの国が優れているということじゃなくて、このように新たな法律のはざまに、子供を奈落の底に落とさないための具体的制度というものの中でDNA鑑定制度を明記をする、修正をするお考えがあられるかどうか、お聞きしたいと思います。

○国務大臣(森英介君) DNA鑑定については、先ほど私の意見を申し上げた、私のというか、法務大臣としての考え方を申し上げたところでございます。
 いずれにしても、そういった様々な問題も起こり得るということで、そういったことがないように関係部門を督励いたしまして、しっかりとした調査を個別にするように指示をいたします。

○田中康夫君 しかし、先ほど白さんもおっしゃったように、指紋に関してはプライバシー侵害ではなくてDNAはプライバシー侵害だというのは、これはダブルスタンダード、二枚舌であるということで、法治国家というものへの信頼感を著しく損ねることに私はなると思います。
 いずれにいたしましても、私は国立国会図書館の意欲あるメンバーの調査データも踏まえた上で、私たちは今回のこの法律というものを、第三条第二項のところに以下のような文面を追加すべきと考えております。
 すなわち、前項の規定による届出には、父又は母が認知したこと、当該父又は母との間の親子関係の存在について、法務大臣の指定する者が人の個体のデオキシリボ核酸、これがDNAでございます、の塩基配列の特徴により鑑定した経過及び結果を記載した書面を添付しなければならない。

手続民主主義ではなく成果民主主義

 これは、繰り返しますが、一たび閣議決定の手続を踏んだ事柄とて、至らなさを改むるにしくはありません。一たび動き出したならば、もはや止められない変えられないでは、これは諫早湾の悲劇や戦争の悲劇と同じでございます。永田町や霞が関という村社会のメンツを超えて、私たちは至らなさを改むるにしくはない。でなければ、私は一体何のための政治かと、森さん、思うわけでございます。
 僣越ながら、私は真のこうした手続民主主義ではなく成果民主主義を勝ち取るべく、私が発議者としてただいま読み上げた修正の実現に必要な十名の賛同者を求めたく、お声掛けをさせていただいております。既に、心ある複数名の参議院議員から賛同者としての署名をちょうだいするに至っております。
 幸いにして、国民新党代表代行の亀井静香さんからも、また民主党幹事長の鳩山由紀夫さんからも、是非とも、いささか形骸化しつつある良識の府参議院で法案修正を勝ち取って衆議院に差し戻してほしいと、私、昨日、直々に、直に激励を受けました。
 幸か不幸か、いや、これは幸いにしてだと私は思いますが、民主党では、今国会、この今改正案を役員会での議論を経ていないと、このように聞いております。
 つまり、真の国民益を創出する上では、私たちは、言葉、ロゴスというものを駆使して公論するべく全国各地から選び出された一人一人でございます。こうした私は決断をなし得てこそ国権の最高機関にして唯一の立法機関と日本国憲法でうたわれる国民の負託にこたえる考える葦が集う国会たり得るのではないかと、このように考えております。
 ねじれたピサの斜塔は世界遺産にはなりますが、目先の誘惑に惑わされての傾城は国家を滅ぼすわけでございます。往々にして形骸化しがちな手続民主主義の末にねじれた中身の法律が成立したなら、それこそは匿名性に守られた官僚政治が跳梁ばっこする官僚統治の官治という弊害であろうかと思います。
 私は、より良き成果をバイネーム、自分の名前を、的確な認識、迅速な決断、明確な責任を持って国会議員が集う、そうした気概と行動を生み出してこそ真の民主主義と呼び得る民治の社会が実現すると思っております。是非とも御賛同いただける参議院議員の諸兄諸姉が一人でも多からんことを願うところでございます。
 そして、まさに今この瞬間も、この質疑をかたずをのんで見守ってくださっている、おかしいことは一緒に変えていこうと、そういう思いのあられる全国の皆さんと一緒に信じられる日本を形作るべく、私は是非ともこの法律案、これは本当に後世のみならず現世においても大変な看過し得ぬやみの底へと子供たちを追い落とす法案であると考えております。
 是非ともDNA鑑定制度の導入ということを明文化する修正がこの良識の府において実現することを願って、私、田中康夫の質疑を終わります。
 ありがとうございます。

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最終更新:2009年01月09日 06:49
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