国際人権条約


説明及び注意事項(最終更新日:2009/06/06)

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目次(関連ページ一覧)

テーマ別まとめ
国会・国会議員情報

国際条約全般に関する整理

国連が中心となって作成した国際人権条約

名称 採択年月日 発効年月日 締結国(1998) 2005 批准した年月日
1 社会権規約(国際人権A規約) 1966.12.16 1976.1.3 138 151 1979.6.21
2 自由権規約(国際人権B規約) 1966.12.16 1976.3.23 140 154 1979.6.21
3 自由権規約第一選択議定書(個人通報制度) 1966.12.16 1976.3.23 92 104
4 自由権規約第二選択議定書(死刑廃止条約) 1989.12.15 1991.7.11 33 54
5 人種差別撤廃条約 1965.12.21 1969.1.4 151 170 1995.12.15
6 アパルトヘイト犯罪の禁止及び処罰に関する国際条約 1973.11.30 1976.7.18 101 102
7 スポーツ分野における反アパルトヘイト国際条約 1985.12.10 1988.4.3 58 58
8 女子差別撤廃条約 1979.12.18 1981.9.3 162 180 1985.6.25
9 女子差別撤廃条約・選択議定書(個人通報制度) 1999.10.6 2000.12.22 - 71
10 集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約 1948.12.9 1951.1.12 136
11 戦争犯罪及び人道に対する罪に対する時効不適用に関する条約 1968.11.26 1970.11.11 43 48
12 奴隷改正条約 1926.9.25 1927.3.9 - -
13 奴隷制廃止補足条約 1956.9.7 1957.4.30 117 119
14 人身売買及び他人の売春からの搾取の禁止に関する条約 1949.12.2 1951.7.25 72 78 1958.5.1
15 難民の地位に関する条約 1951.7.28 1954.4.22 132 142 1981.10.3
16 難民の地位に関する議定書(対象となる「難民」の範囲の拡大) 1967.1.31 1967.10.4 132 142 1982.1.1
17 無国籍の削減に関する条約 1961.8.30 1975.12.13 19 29
18 無国籍者の地位に関する条約 1954.9.28 1960.6.6 44 57
19 既婚婦人の国籍に関する条約 1957.1.19 1958.8.11 66 72
20 婦人の参政権に関する条約 1953.3.31 1954.7.7 111 118 1955.7.13
21 婚姻の同意、最低年齢及び登録に関する条約 1962.11.7 1964.12.9 48 51
22 拷問等禁止条約 1984.12.10 1987.6.26 110 139 1999.6.29
23 拷問等禁止条約選択議定書 2002.12.18 2006.6.22 - 6
24 児童の権利に関する条約 1989.11.20 1990.9.2 191 193 1994.4.22
25 児童の権利に関する条約・選択議定書(武力紛争への関与) 2000.5.25 2002.2.12 - 122 2004.8.2
26 児童の権利に関する条約・選択議定書(児童買春及び児童ポルノ) 2000.5.25 2002.1.18 - 128 2005.1.24
27 全ての移住労働者及びその家族の権利保護に関する条約 1990.12.18 2003.7.1 9 37
28 障害者権利条約 2006.12.13 2008.5.3 - 34
29 障害者権利条約選択議定書 2006.12.13 2008.5.3 - 20
30 強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約 2006.12.20 - 4

参考サイト

国際条約の留保と解釈宣言

 留保
 多国間条約には留保の制度がある。国家は、条約全体の趣旨、目的には同意するが、条約中の特定の条項には拘束されたくない、という場合がある。二国間条約の場合は当該条項について当事国が交渉すればよいが、多国間条約の場合、そうした交渉をすべての国に認めるのでは条約そのものの成立が困難になる。
 留保は、こうした問題を、諸国がすべての個別条項への同意を回避しつつ条約全体の当事国になることを可能にするかたちで解決する法技術である。留保は、条約法条約で、条約の特定の規定の自国への適用上法的効果を排除・変更することを意図する声明のことで、名称の如何を問わないと規定される(2条1項(d))。
 条約法条約は、留保は条約の趣旨および目的と両立する限り許されるとした1951年のジェノサイド条約の留保に関するICJの勧告的意見を踏襲して、一般的には趣旨・目的との両立性の原則を採用した(19条)。他方、同条約は、留保表明国は、しかも、他の締結国が一国でも受諾すれば留保を表明した条約の当事国となることができるとした。他の締結国は一定期間内に異議を表明しない限り留保を受諾したものとみなされ(20条)、事実上条約の趣旨・目的に反する留保を阻止することは困難である。これは条約法条約の大きな欠陥である(大沼保昭「国際法」p.79-80)。

 解釈宣言
 国際海洋法条約など、一部の多数国間条約は、こうした事態を防ぐために留保禁止の条項をもっている。しかし、国によっては、条約の署名や批准の際に、建て前上は規定の枠内の解釈をとるにとどまるが事実上は留保にあたる解釈宣言を付している。事実上、条約規定の法的効果を変更・排除しようというわけである。
 たとえば、フィリピンは国際海洋法条約の署名に際して、条約への署名はフィリピン憲法に基づく同国の主権的権利を害するものではないとの宣言を行った。こうした広範で一般的な留保は、国家の主権的権利を一定程度制約しようとする国際海洋法条約の趣旨・目的に明らかに反するものであり、「宣言」とはいうものの、許されない留保である。事実、この留保には他国から異議が申し立てられた。
 米国は、自由権規約をはじめとする人権条約を批准する際、多数の条項に「留保」「宣言」「了解」を付して、総体としての人権条約の国内的適用を事実上不可能にしている(脚注30)。
 米国による広範な「留保」「了解」「宣言」の多くは人権条約の効力を制限するものであり、条約法条約上の留保にあたると考えられる。このため、未成年者への死刑判決の禁止(自由権規約6条5項)に対する米国の留保や、非差別規範(同2、26条)への「了解」に対しては、西欧諸国を中心に自由権規約の趣旨と目的に反する留保であり許されない、という異議が申し立てられている。
 ただ、人権条約は諸国内の個人の権利を保護するものであり、相互主義的な条約と異なり、ある締約国が人権侵害的効果をもつ留保を行っても、他の締約国は自国の利益が直接害されるわけではない。このため、諸国は、人権条約の趣旨・目的に反する留保に対して異議申し立てをすることなく、事実上違法な留保を黙認してしまいがちである(大沼保昭「国際法」p.80-81)。

※脚注30
 事実上の国内的効力の否定という事情のため、米国内の人権訴訟に自由権規約はほとんど使われていない。世界人権宣言などを根拠に、「慣習国際人権法」という法的構成をとることが多い。条約に対する米国議会の異常なまでの警戒心(ヴェルサイユ条約をはじめ数々の条約を葬り去った米国上院は「条約の墓場」といわれる)と、とくに人権条約への米国議会の敵意が生み出した異様な状況といわなければならない。

人権諸条約の実施機関と政府報告制度

条約名(根拠条文) 審査機関 勧告の性格 報告書提出の頻度 日本への適用
社会権規約(16条) 社会権規約委員会(18名) 一般的性格の勧告 最初:2年以内、その後:5年ごと
自由権規約(40条) 規約人権委員会(18名) 一般的性格の勧告 最初:1年以内、その後:5年ごと
人種差別撤廃条約(9条) 人種差別撤廃委員会(18名) 一般的性格の勧告 最初:1年以内、その後:2年ごと
女子差別撤廃条約(18条) 女子差別撤廃委員会(23名) 一般的性格の勧告 最初:1年以内、その後:4年ごと
拷問禁止条約(19条) 拷問禁止委員会(10名) 一般的性格の勧告 最初:1年以内、その後:4年ごと ×
児童の権利条約(44条) 児童の権利委員会(10名) 一般的勧告 最初:2年以内、その後:5年ごと
アパルトヘイト条約(7条) 3人委員会(3名) 定期的:頻度不明 ×
出展:上田正昭「国際化のなかの人権問題」p.26

国際人権条約に関する整理及び検討(別ページでの詳細検討)

国際法(国際人権)の実現過程


国際人権と国内人権の関係(国際人権の裁判規範性)

 人権条約の直接執行性
 従来の国際法の考え方や、国際社会での取り扱いによれば、条約は国家間の約束であるから、条約は当該締約国政府だけを拘束し、国民に対して直接に権利義務を生づるものではなく、人権条約についても、条約に定められた人権の保護の方法は、締約国政府の裁量に委ねられ、政府が、いつ条約内容を実施するか、また法律制定の方法によって行うか、行政手続樹によって条約内容を実施するかは、政府の自由とされていた。その結果、人権条約を批准しても、人権を侵害された故人が裁判所に救済を求めた場合、その条約を援用することが出来なかった。つまり、人権条約を批准しても、政府がそれに従った国内法律を制定せず、胃tまでも条約内容を実施しなければ、人権条約は「絵に描いた餅」に終わってしまうおそれがあった。そのために、人権条約の内容を、直接に、つまり改めて国内法律を制定することなしに、国内に適用することにし、国内の裁判所に人権救済を求める個人が、その人権条約を救済根拠規定として直接に援用できるようにすることが行われるようになった。このような条約を「自力執行的条約」self-executing treatiesとよんでいる。人権条約の中では、「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(B規約)が、典型的な「自力執行条約」と解されている。しかし、「自力執行条約」であるというためには、(1)条約の規定形式として、従来の条約のように「この条約の締約国は○○○の義務を負う」というような国家だけを義務づける規定方式をとらず、「何人も○○○の権利を持つ」「何人も○○○」されることはない」というような、国内法律と同様な、個人に権利を与える規定方式をとっているほかに、(2)当該締約国が、国内法体系の中で、このように条約によって個人が直接に保護され、個人が条約を裁判規範として援用しうる規定を受容していることが必要であると考えられる。我が国においては、この二つの条件がすでに具備されているものと認められる(宮崎繁樹「現代日本の人権状況」p.14-15)。

 憲法上の人権を争う訴訟に比べるとまだまだ数は少ないとは言え、原告や被告人が人権諸条約などの国際的な人権基準を援用する訴訟、いわゆる国際人権訴訟が増えている。国際人権訴訟には、難民認定、出入国管理、社会保障(国籍条項)などに関する外国人によるものや、人身の自由や刑事手続き上の権利を争点とする被拘禁者よるものが多い、という特徴がある。これらの分野では憲法学の議論の蓄積が薄いという事情もあるためか、日本の裁判所は、人権条約違反を認定することに極めて消極的であり、強い批判を受けている(須賀博志「Jurist増刊 憲法の争点」p.342)。

 国際人権法は、国際社会において頒用される有力な国際法の行為規範であり、正当化規範だが、ICJで裁判規範として適用されることはほとんどない。これに対して、各国の国内裁判所で適用されることはかなり一般的になっており、この傾向は今後ますます強まるだろう。
 ただ、20世紀を通じて各国の国内裁判所は国際法を根拠とする人権保障に消極的であり、国際人権法違反を訴えた個人が国内裁判所で勝利し、その判決が執行されるというかたちで国際法規反が実現することはすくなかった。しかし、国際人権法に関するう国内裁判官の知識が増加し、裁判官の過剰な警戒心が緩和されるにつれて、国際人権法を根拠として勝訴する例は徐々に増加している。その場合、国際人権法は国内裁判所を舞台として実現される(大沼保昭「国際法」p.55)。

憲法と条約とどちらが優先するのかについては、議論のある所ですので省略します(実務・通説では憲法優位説になっているようです(「ジュリスト増刊憲法の争点」p.335))。
単純化した結論としては、 日本国憲法の趣旨に反する条約は、日本政府は条約を批准する際に当該部分について留保をつける義務があるとされています。日本国憲法の趣旨に反しない部分については、批准した条約を(「遵守」ではなく)尊重する義務があります。


関連項目

参考サイト

個別の条約別まとめページ(別ページでの詳細検討及びQ&A)

女子差別撤廃条約・選択議定書


国際人権条約に関するQ&A

国連の○○委員会の「見解」や「一般的意見」というのは、どういうものなのでしょうか?

国際人権条約の自由権規約や女性差別撤廃条約などには、本体の条約とは別個に個人通報制度を認めるオプションとしての「選択議定書」が付属しています(日本は、個人通報制度を認めるいずれの選択議定書も批准していません)。
自由権規約(国際人権B規約)を例にとって説明すると、個人が規約上の権利を侵害された場合、国内的な救済手続きを尽くした後に、規約人権委員会に通報して救済を求めることができます。この通報が門前払いにならず、受理された場合は規約人権委員会は個人及び当事国からの意見を書面で提出させ、それを非公開の会合で検討した後「見解(views)」を発します。

この「見解」は準司法的決定であるといわれ、形式は裁判所の判決のような形をとっていますが、法的拘束力はありません。但し、「見解」は自由権規約の解釈について最も高い権威を有する規約人権委員会の解釈を示すものとして、多くの国は指示された救済措置を実施しているようです。
「見解」は、個人の通報にかかる具体的事件についての規約人権委員会の判断を示すものですが、これが積み重なる事によって判例法のようなものが形成されているようです。

「見解」とは別に規約人権委員会は、「一般的意見(general comment)」といわれる評釈を出していますが、これは個人通報に関わる事件とは関係なしに自由権規約の各条項ごとにその意味と適用範囲を詳論するもので、規約人権委員会の「注釈書」のようなものです。
一般的意見は数自体が少ないですが、個々の条文に時間をかけ、世界中の法制度、文化、慣習に配慮しながら、普遍的な解釈を打ち出そうと努めているからです。

国際条約より(憲法を除く)国内法規を優先させる事は可能なのでしょうか?

入管法等改正案の申入れ - イケイケあかいけ!赤池まさあき (山梨1区)の国政ニュース
http://blogs.yahoo.co.jp/masaaki_akaike/58776806.html
 日本は法治国家であり、「ルールを守る」「遵法精神を養う」ことは教育の根幹です。子供には罪はなくとも、親には罪があるわけです。今回の「入管法等」の改正で在留カードが導入されるのですから、法改正後は、それに基づいて就学案内等の通知を出し、就学手続きを行うべきです。また、導入までは現行の外国人登録法に基づき、各都道府県・指定都市教育委員会教育長はじめ義務教育関係機関への通知を変更し、再通知すべきです。そうでなければ、学校という国家の教育基盤が、不法滞在の温床となり、不法滞在助長拠点ともなりかねません。
何よりも、国際条約より国内法規が優先するのは当然です。
上記の赤池議員の認識ですが、条約法に関するウィーン条約(条約法条約)27条には「当事国は、条約の不履行を正当化する根拠として自国の国内法を援用することができない」という条項が存在するため、国際条約よりも(憲法以外の)国内法規を優先させる事は認められていません(各国が国内法を理由に条約を守らなくても良いという行動を取った場合、条約の存在意義が崩壊してしまいます)。

条約規定の法的効果を変更・排除する方法としては留保・解釈宣言という方法が存在するため、一旦条約から脱退して、ここだけ留保して再度批准するという方法も考えられますが、児童の権利条約第51条2項には「この条約の趣旨及び目的と両立しない留保は、認められない」という条項が存在しますので、その方法も認められません。
また、解釈宣言の方も取りうる解釈にはおのずと限度があり、条約の趣旨と真っ向から反するような解釈は取る事ができません。

関連項目

参考サイト

最近の新聞報道・ブログ記事

条約に関する新聞報道




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最終更新:2009年08月04日 11:13
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