国会質疑 > 児童ポルノ法 > 1999-11

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衆議院・法務委員会(1999/05/14)/坂上富男議員(民主党所属)

○坂上委員 強くは言いませんが、この抵触する部分が、こういう場合、どこが無効になるんだろうということを私は捜査当局から実はお聞きをしようと思ったら、立法者が判断すべき問題だ、こういう御指摘があったものですから、私はわざわざ、私の質問事項の中に、活字が打てなくて、書いてお届けをしたわけでございますが、ぜひひとつ整合していただきたい、こう実は思っておるわけであります。これは本当に、きのう午前中だか、おとといだか出したわけでございますので、ぜひこの点も御検討をいただかないと、やはり県の実施の機関の中であいまいになって、いや、これは抵触して無効だとか無効でないんだとか何だかということになって、結果的にまた県民に影響を及ぼすことが大きゅうございますから、きちっと整理をしておいていただきたい、こう思っておるわけでございます。
 さて、ちょっとまたお聞きをしますが、「日本女性の外性器」、これは医学大学の先生が書かれた書物であります。これは先生方、ちょっと先生方が見て、提案者に見てもらって……。

○杉浦委員長 どうぞ。

○坂上委員 見ていますね。ひどいんですがね、これは。
 そこで、先生方も見ていただいているんですが、これはわいせつ物に当たるとして告発された事件です。それから、地検はこれを不起訴にしました、わいせつに当たらぬという。法務省の中でも、人権擁護局、人権侵害であるとして著者に警告を発しました。
 まず、人権擁護局はどういう点で警告、どういう警告を出したんですか。

○横山政府委員 お答えいたします。
 委員御指摘の書物につきましては、担当の法務局におきまして調査しました結果、産婦人科医師であります当該書物の著者が、診療行為中に、患者の同意を得ずにその外性器を写真撮影していたことが認められました。その写真が当該書物に掲載されているかどうかまでは確認できませんでしたが、このような無断写真撮影という行為そのものが患者の人権に対する配慮を著しく欠くものでありますので、平成九年七月に、担当の法務局長から著者に対し、行為の不当性を強く認識し自戒するとともに、人権について正しい理解を深めるよう説示したところでございます。

○坂上委員 法務省の方、第一次の不起訴理由を、ちょっと簡単でいいです。

○松尾政府委員 お尋ねの書籍につきましては、平成九年九月三十日に嫌疑不十分ということで不起訴にしていますが、その内容は、本件書物がわいせつ文書図画に当たると認めるに足る証拠がなかったという記載でございます。

○坂上委員 今度は裁判所にお聞きします。
 私のところに検察審査会の議決書が来ております。大変検察審査会、御努力をいただきまして、理由をきちっと書かれております。ちょっと問題点を指摘しますが、間違いないかも確認してください。
 これは不起訴にした検察の理由だそうですが、「医師が著した専門書、医学書と評価できる体裁を有しており、ことさら、読者の情緒感覚等に訴える手法は認められない。」それから、「支配的効果が読者の好色的興味に訴えるものとの評価はできない。」「本件書籍には、女性器の露骨な写真が掲載されているとはいえ、記述内容は、医学的解説、説明文や統計学的解析結果であり、性的刺激が相当減少、緩和克服されて」いるというようなことが書かれている「目的から、それなりの思想的、学問的な社会的価値も認めざるを得ない。」こう言っているんですね。まだもっといろいろ理屈を書いてありますが、結果的にわいせつ文書図画に当たらない、こういうようなことで嫌疑不十分とした、こう言っているんですね。
 そして、検察審査会は、これまた的確に指摘しています。「本件書籍の発行に当たって産科婦人科学会や、性科学会で発表したかどうかは不明である。」そして、「かつ、興味本位の部分もあって専門書としての評価は相当低い」ものと言わなければならない。あるいは、まだいっぱいあるんですが、「露骨な女性器写真が多数掲載され、学術的に優れているとも思われず、セックスカウンセラーなどの専門家は別として、一般の者が見た場合、普通人の性的羞恥心を著しく害し、」わいせつであることは明らかである、こう言っているんですね。そこでさらに、「パソコン通信ネットの売買欄に、本件書籍の掲載写真を売る広告を掲載し、電子メールで注文を受けて販売した者が逮捕されるという事態も発生している。」
 以上のようなことから、いろいろ書いてあって、結局当「審査会は、市民感覚として本件書籍についてわいせつ性を認めたが、わいせつの判断基準である社会通念については司法によって判断されるべきであると考える。」「よって、検察官の再考を求めるため前記趣旨のとおり議決する。」
 これは、今言ったようなこと、間違いございませんか、まだ大変省略していますが。

○白木最高裁判所長官代理者 検察審査会の議決の要旨は委員仰せのとおりでございます。

○坂上委員 それにもかかわらず、検察庁は再度また不起訴処分にしたそうですが、理由は何でございますか。

○松尾政府委員 本年の四月一日に、検察審査会の不起訴処分が不当であるという決議を受けた後、再捜査を経まして、再度不起訴処分にしておりますが、理由は第一次の不起訴処分と同様でございます。

○坂上委員 大変私はこういうものを本当に見るに当たって、このうち何ページかわかりませんが、物すごいページ数の、三分の二がこういう写真でございます。まさに、本当に女性、私らもそうですが、激しい私は怒りを覚えているのでございます。
 こういうようなものが、例えば児童の性器がこんなような形の中で書かれたような場合は一体これはポルノに当たるということになるのでございましょうか。お答えいただければお答えいただきたい、強要はいたしません。

○大森参議院議員 当該描写物が児童ポルノに当たるかどうかにつきましては、繰り返し述べておりますけれども、この二条三項一、二、三号、性器だけの部分でしたら三号になるのでしょうか、これが実在する児童の姿態であるということが要件となります。それから、それが「性欲を興奮させ又は刺激するもの」に当たるかどうか、こういう総合的判断によって当たるか当たらないかということが決まる、こういうお答えしかできません。

○坂上委員 さっき、学問、学術、医学的な理由は違法性阻却理由にならないという御答弁でございますから、私は当然だと思いますし、私は、本来、そこから追及していっても、こういう成人の性器の掲載というのはまさにわいせつ物そのものなのではなかろうか、こう思っておるわけでございますが、こんなものが平気に社会に頒布されたら大変なことになって、せっかくの目的が達せられないんじゃなかろうか、こう実は思っておるわけでございますもので、不起訴処分になった以上どうしようもありませんけれども、今後の児童ポルノにもこういうようなものが生きてくるようだったら大変だなと私は実は直感をし、私は、この問題、長い間対応してきたものでございまするから、いまだもって怒りがおさまらないという感じではあるので、ちょうどこういう機会に問題点を提起させていただいて、御意見も賜ったわけでございます。
 さて、最後でございます。
 大臣、本犯罪を国外犯に指定をいただきました。一部、わいせつ物に関しては、刑法上は国外犯に指定のないのもあるわけでございます。しかし、大変な決意を持って国外犯の指定をしたわけでございます。これは大変なことでございまして、検察、捜査当局は本当に本腰を入れてやっていただきませんと、私は、国外犯の実効がないんじゃなかろうか。でありまするから、今までも皆様方が切歯扼腕しておられたのでございますが、相手は外国である、単なる共助だけでは、これはとてもじゃないが間に合わぬというのがどうも実情でございます。
 例えば、外国にいる人に訴状を提出いたしますと、大体どれぐらいかかるかといいますと、今変わったかどうか知りませんが、私の経験でございますが、送達まで約三年間かかったんです。そんなようなことでございまして、外国との共助問題というのは、これはもうなかなか容易じゃないんですね。
 確かに、今の答弁を聞いておりますと、外務省も運輸省も、外国共助をよくやります、こうはおっしゃっておりますが、果たしてどれだけ実効性があるか、また、相手方の主権にもかかわることでもございますものですから、私はなかなか容易じゃないと思うのでございます。
 そこで、本当にこの法律が成立し、国外犯の指定をするならば、これは非常に画期的なことでもあるわけでございます。でありまして、予算の上からも、人員の上からも、大変な力を入れていただかなければ、この法律は死んでしまうだろうと思うのであります。特に私は、立法者は、外国における日本人がいわゆるこういう国外犯犯行行為をやった場合に対するものが一つの大きな目的にもなっているのだ、こう思っておるわけであります。
 そこで大臣、いわゆる国外犯の適用についての大臣の御決意を私は特に伺いたいとも思いますし、また、この中に「国際協力の推進」という言葉も入っておるわけでございますので、一体、どの程度の見通しが立てられるのか、これからどうするつもりなのか、大臣から全体的な御決意をいただきたい、こう思っております。

○陣内国務大臣 本法案に国外犯処罰規定が設けられた趣旨は、児童買春、児童ポルノにかかわる行為等については、国の内外を問わず、日本国民によるこれらの行為を禁止し、処罰する必要性が認められ、かつこの法案が目的とする児童の権利の擁護についても、国内にいる児童に限定する必要はないと考えられたためであると承知いたしております。
 したがって、法務省といたしましても、このような立法趣旨や児童買春、児童ポルノについては、国際的な対応が強く求められている現状を踏まえまして、緊密な国際的連携の確保に努め、諸外国との間に必要な情報交換や捜査共助を実施してまいり、この趣旨がしっかりと生かされるように努めてまいる覚悟でございます。

○坂上委員 ひとつ大臣以下皆様方の御協力もお願いをいたしますが、しばらくの間、まだ私の首もつながっているだろうと思うものでございますから、成果をお聞かせをいただきますので、どうぞ御努力のほどを期待いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
 以上でございます。

衆議院・法務委員会(1999/05/14)/森山眞弓議員(自民党所属)

○杉浦委員長 次に、森山眞弓君。

○森山委員 きょうは、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律案の審議の最終段階を迎えつつあるわけでございまして、そのようなこの委員会に私も質問の機会をいただきまして、まことにありがたく、うれしく、また感無量の思いでございます。
 ここに至りますまでのいろいろな経過は既に審議の中で出ているかと存じますけれども、ちょっと私の立場から復習をさせていただきますと、一九八九年の児童の権利条約の採択、そして、特にその第三十四条で、あらゆる形態の性的搾取、性的虐待から児童を守ることを約束するということが示されておりまして、その三十四条を具体化する選択議定書を採択しようという動きが起こってまいりまして、児童の権利条約の十周年、それがちょうどことしでございますが、一九九九年のその十周年を目指しまして、世界的に作業が進められてまいったわけでございます。
 そのことを頭に置きまして、欧米諸国では、一九七〇年代以降、児童買春、児童ポルノ等を厳しく取り締まる法の改正や、新しい法律の制定などが次々に行われまして、今では、ほとんどの国でそれなりの法律、制度が整っているという状況でございます。また、いわゆる買春ツアーと言われるものを受け入れる国々におきましても、フィリピンとかタイとかにおきまして、このようなものを規制する法律が既に整っているわけでございます。
 このような買春とか児童ポルノのような、商業的な性的な搾取を受けている子供たち、被害児童というのは、全世界に百万人から百五十万人いると言われておりまして、その地域も各地に広がっているわけでございますが、最大の被害地はアジアだと言われております。その加害者の方は、日本、ヨーロッパ諸国、オーストラリアの男性というふうなことが言われておりまして、特に日本は、タイ、フィリピンなどの児童買春のアジア最大の加害国であるというふうに言われておりまして、欧米諸国が児童ポルノの規制を強めております中で、世界の児童ポルノの製造、流通基地であるとさえ言われて、非難が集中しているのが現状でございます。
 このようなことは、もちろん日本の私どもも非常に心を痛めていたわけでございまして、特に国際的なNGOでありますECPATという団体が大変このことを心配されて、児童買春の実態を知らせたり、児童買春のツアーの送り出し国や受け入れ国双方での法改正を促すというような国際的な運動を先導しておられまして、日本にもそのグループがございまして、いろいろな形で運動を展開してこられました。
 このECPATが九六年の八月にスウェーデンで、児童の商業的性的搾取に反対する世界会議というものを開催され、そこに百二十二カ国の政府、二十の国際機関、多数のNGOの関係者など、約千人が参加されまして、宣言と行動のための課題を採択されました。その段階では、まだこれという目立った動きをしておりませんでした無策の日本ということで、大変な批判と早急な対応を求める声が厳しく出されたところでございました。そこに出席されました日本からの参加者は、顔を上げることもできないほど非常に恥ずかしい思いをしてこられたというお話を後ほど聞きまして、私も大変心を痛めていたわけでございます。
 日本の場合は、国際的な条約であります児童の権利条約、これをたしか五、六年前に批准をいたしたと思います。そして、そのときに、日本の法律制度がこの条約を批准するのに適当であるかどうかということも検討されたはずでございましたが、その時点では、批准しても差し支えない状態であるという判断をなさったようでございますが、その後、国際的な情勢が急速に変化してまいりまして、日本の対応がおくれにおくれてしまったというのが現状でございまして、何とかしなければならないという状況に差し迫られておりました。
 日本でも、そのことに多大の関心と憂慮を持ちましたNGO、さらに、そのような方々と大変深い関係を持ち、連携しながら活動しておられました各党の女性議員を中心とする皆さんが、何とかしなければいけないということで、それぞれ独自の活動、研究をしておられたわけでございます。
 私の属します自由民主党におきましても、野田聖子代議士などがその一人でございまして、その呼びかけによりまして、党の女性問題特別委員会という場で勉強会が何回か開かれましたのが、もう二、三年前になるかと思います。
 党の幹部もその話を聞き知られまして、事の重大性を大変憂慮され、何とかしなければいけないという気持ちになっていただきまして、今から思い起こしますと、一昨年の夏でございましたが、当時の山崎政調会長から私が命令をいただきまして、当時の与党三党のプロジェクトチームを始めてほしいという御指示をいただき、記録を見ますと、一昨年の六月十八日に最初の会を始めたのでございました。これが、政治の公的な舞台で取りかかった最初の第一歩であったと思うのでございます。
 そのプロジェクトチームには、今ここにもおいでになる社民党の清水澄子先生、同じく社民党の辻元清美先生、やはり今ここにいらっしゃる、さきがけの堂本先生、そして、自民党からは谷垣禎一さん、小野清子さんなどが参加していただき、私がまとめ役ということでお預かりをしたわけでございますが、皆様の御経験を伺い、知識を披瀝していただきまして、また、法律的な勉強も少しやっておりますうちに、これは大変なことをお預かりした、難しいことだなというふうに思ったのが率直なところでございました。
 しかし、皆さんが大変御熱心に協力をしていただき、大変激しいやりとりもあったのでございますが、三十回に及ぶ勉強会の結果、ようやく何とかまとまりまして、それが平成十年、昨年の三月三十日でございました。大変苦労をいたしましたけれども、それが一つの大きな山を越えたときであったかなと思います。
 これを各党の御了解を得まして、関係三党の提案によりまして、五月の二十日に衆議院に提案させていただきました。これがこの法務委員会でお預かりいただきまして、そして折々、私、杉浦委員長によろしくお願いしますと申し上げたのを記憶しておりますけれども、お預かり願って間もなく参議院選挙があり、そしてその後政変があり、また、緊急金融対策などに国会が忙殺されたということもございまして、そのままに推移してまいったのでございます。
 しかし、これはいつまでもそのまま置いておくわけにもいかない、何とかしなければいけないという焦る気持ちもございましたが、片や、政局の方は与党の組み合わせも変わるというようなこともございましたので、思い切ってこれは全党の皆様にお呼びかけをして、そして皆さんで相談に乗っていただいて、そして、みんなが賛成できるようなものができればそれが一番いいのではないかということに思い至りまして、昨年の末に、たしか十二月の十一日に、第一回の全党による勉強会をお呼びかけしてやらせていただきました。もう年末も近いところでありましたが、お正月もほとんど休まないぐらい熱心に皆様が御協力いただきまして、結局、七回の勉強会をさせていただきました。
 民主党は、既に、前の私どもの提案した案についての御意見をまとめて別案をおつくりいただいているというような進展もございましたので、最初のプロジェクトチームの勉強会よりは、ある程度具体的な議論にいきなり取りかかるということができたせいもありまして、このたびは七回ほどやらせていただいた結果、去る三月の十二日に、ようやく全党何とか一致できるというラインをまとめることができたわけでございます。
 そして、三月三十日でしたか、今度は参議院の方に提案をさせていただくということにいたしたのでございます。
 と申しますのは、私どもは、一刻も早い成立が望ましい、ぜひそうしたいということが何よりも私どもの強い願いでございましたので、いろいろ国会関係の方々の御意見を伺いますと、参議院先議の方が早く成立する可能性が高いから、その方がよろしいんではないかというアドバイスをいただきましたので、参議院の先生方に大変御苦労いただきまして、参議院の方から先に取りかかっていただいたわけでございます。
 そして、参議院では四月の二十八日に本会議でこれを通過させていただきまして、今衆議院の方でこのように皆様が御熱心に議論をしていただいている。この場に私も先ほど来おりまして、御熱心な質疑の様子を拝見し、大変心強く、またうれしく、最終段階を迎えているということについて感無量の思いがするというのは、そのような立場からでございます。
 ぜひ、この衆議院の法務委員会におきましてもできるだけ早い通過、そして、衆議院における成立を一刻も早くあってほしいと願っている一人でございます。
 ここまで来ましたこの法案は、実は、かかわってまいりましたすべての人がみんな一〇〇%満足しているわけではございません。今までの審議の経過をお聞きいただいてもおわかりのように、せっかく法律をつくるんだから、あれも入れたらいいのに、これも欲しいのにというような議論が、勉強会の途中もさんざん出たわけでございます。
 しかし、そういって、ある一つのことについて甲論乙駁、延々とやっておりますと、一番大事な願いの一つである早く成立させるということができなくなってしまう。とにかく、みんなが今一致できる最小限度必要で可能なものをまとめていこうということで、それを条文化したというのがこの法案でございます。
 そうすることによって、少なくとも、世界的に大変悪名の高い日本の現状、例えば、これもその一つですけれども、タイムという世界的に流通しているこの雑誌、四月十九日号ですが、ここに「ジャパンズシェイム」と書いて、こういうのが載っております。これはタイムですから、世界じゅうの人が見て、ああ、日本はこういう状況なんだときっと見ているに違いないと思いますと、私どもは本当に身が縮む思いなのですが、こればかりではありません、ほかのところにもいろいろと書かれております。
 また、私自身も外国のメディアの取材を大変たくさん受けました。私は、日本がただ放置しているわけではない、しっかりやっておりますよということをPRしたいと思いまして、どんな取材にも応じましたので、随分いろいろなところに書かれましたが、それはすなわち、日本が努力しているということを知らせるだけではなくて、その前に今まで野方図であったということが知らされるというわけでございます。
 そのようなことを考えますと、ともかく早くこの法案を成立させなければいけないというふうに思いましたので、決して一〇〇%満足しているわけではございませんけれども、何とか正していくという方向への第一歩ということで、評価したいというふうに思うのでございます。
 そこで、これが最小限度必要で可能なことを条文化したものだというふうに私申しましたが、ですから、それであればあるだけ、これが成立しました暁にはきちんと施行されなければ困るわけでございます。そのために、私は、一つ二つ気になる点を確認の意味で、特に政府に御質問したいと思うのでございます。
 ただいま坂上先生の御質問にもございましたけれども、私からも念のためお聞きしたいのですが、第十七条の「国際協力の推進」というところでございます。これには「国際的な緊密な連携の確保、国際的な調査研究の推進その他の国際協力の推進に努めるものとする。」というふうにございますが、これを具体的にどのような手順でどのような内容の協力をなさる、あるいは求めるというのか。この立法の目的の大きな一つは、世界的に悪名の高い、非難の的となっている我が国の国際的名誉の回復ということでございますので、大変重要な点だと思います。警察及び法務省から伺わせていただきたい。お願いします。

○小林(奉)政府委員 児童買春等の事案につきましては、今後、国際的な協力が極めて重要だ、このように考えております。
 そういった観点で、私どもといたしましては、職員を随時海外に派遣させまして、当該外国の捜査機関との情報交換、こういったものをしたいと思います。また、その前提といたしまして、この法律の内容を外国の政府の方に理解していただかなければいけませんので、そういった連絡、こういうものも緊密化してまいりたいと思います。
 また、事件化に当たりましては、従来から、刑法で定める罪の国外犯捜査について、外交ルートあるいはICPOルート等、こういったものがございますので、そういった捜査共助要請等により外国の捜査機関と連携して行ってまいりたい、このように考えております。
 また、児童買春、児童ポルノ等の犯罪防止のための国際的な連携や調査研究の推進につきましても、外国政府との協力関係を構築してまいりたいと思います。
 また、国内的に見ましても、私どもにおきましても、生活安全局にその専属の体制をこの四月から発足しておりますので、その効果が上がるように運用してまいりたいと考えております。

○森山委員 ありがとうございます。どうぞ、もう一人、お願いします。

○松尾政府委員 基本的には、今警察庁から御答弁いただいたとおりでございます。
 さらに一言つけ加えますと、こうした国際協力というのは、今、捜査共助法あるいは逃亡犯罪人引渡法というのがございますが、そのほかに、例えば、今、韓国との間で逃亡犯罪人引き渡し条約も結ぼうということで協議を始めています。こうした二国間の条約で、捜査内容を相互情報交換を含めまして高度化していくということも、この法案の実施に当たっては有効なことになろうかと思っております。

○森山委員 ありがとうございました。
 第十二条に、捜査及び公判における配慮というのがございます。「児童の人権及び特性に配慮するとともに、その名誉及び尊厳を害しないよう注意しなければならない。」云々というふうに書いてございますが、これは具体的にはどのようなことを考えていらっしゃるのでございましょうか。
 また、児童の人権、特性に関する理解を深めるための訓練、啓発ということもございますが、これは具体的にはどういうことを考えていらっしゃるのでしょうか。

○松尾政府委員 確かにセカンドレイプの問題というのは大変重要な問題だろうと思います。
 検察官におきましても、被害児童から事情聴取を実施するに当たりましては、児童の受けた心身への有害な影響あるいはその精神状態等に十分配慮するとともに、個々の事件の当該児童の特性に応じまして、例えば、その児童の保護者を立ち会わせたり、あるいは調べる場所についても、児童の自宅でこれを実施するなどしてきております。
 また公判におきましても、刑事訴訟法三百四条の二の規定に基づきまして、裁判所に対し、被害児童が証言しやすいように被告人を退廷させて証人尋問を行うよう意見を述べる、あるいは不適切な尋問に対し異議を申し立てるなど、個々の事案に応じて適切に対応してきております。
 さらに、検察官に対しては、研修を初めとする教養訓練の機会を通じまして、その人権意識を高めているところでございます。本法案が成立後は速やかに、このような機会を通じまして、本法案の立法趣旨及び内容はもとより、本法案十二条の趣旨も踏まえまして、児童の人権及び特性に配慮すべきことなどについて、周知徹底を図ってまいるつもりでございます。
 なお、本年三月に、犯罪被害者の保護に関する法整備に向けての検討を早急に行えという法務大臣の指示がございました。これを受けまして、性犯罪の被害者や年少者等の、公開の法廷で尋問を受け、証言することに大きな心理的な負担を余儀なくされるわけでございますが、その心情、名誉等を著しく害される結果となることがあることにかんがみまして、例えばビデオ証言制度など、その負担をできる限り軽減するための方策について、現在検討を進めております。
 以上でございます。

○森山委員 私どもが昨年提案いたしましたいわゆる自社さ案には、児童ポルノの単純所持というのが、罰則はないのですけれども禁止されておりました。しかし、今回はこれを削除したわけでございます。いろいろな配慮からいろいろな問題を考えまして、とりあえずこの案からは削ろうということになりまして、私もそれを納得しているわけでございますけれども、ただ、私個人といたしましては、結局、最終的に、所持をするということがいけないとされなければ根絶はできないのではないかという思いが残るわけでございます。発議者のお気持ちはどのようなものでございましょうか。お聞きしたいと思います。

○林(芳)参議院議員 お答え申し上げます。
 森山先生御指摘のとおり、また森山先生御自身が一番よくおわかりだと思いますけれども、いろいろな議論の結果、こういう結果になったわけでございますが、午前中の質疑でもありましたように、この処罰規定を設けないでおくことに対してのいろいろな議論があったことは、御承知のとおりでございます。
 そこで、せっかくの御質問でございますから、午前中の質疑でもありましたように、これは所持自体がいけないことであるという認識がもっと広範に広まることによりまして、将来的にはこういうことも検討に上がっていかなければならないのであろうというふうに我々も考えておりますし、またそういうことに対する教育啓発を行っていくことが必要であろう、こういうふうに思いますし、また、一部では、指摘されておりますように、民間の団体等が自発的にこういうものを回収していっていただける、こういうようなことも大変に有意義であるというふうに考えております。
 いずれにいたしましても、この法律案が成立し、実際に運用され、児童ポルノに係る犯罪の摘発が進んでいくことによりまして、国民の意識を高める有効な方途になっていくのではないかというふうに期待をしておるところでございます。

○森山委員 発議者のお気持ちを伺いまして少し安心いたしましたが、やはりこういうものを持つこと自体がいいことではないのだ、好ましくはないのだということを徹底したいものだと思います。ですから、この法律は、法律が成立しさえすればそれでいいというわけではございませんで、むしろ今まではいわば当たり前と思われていたものをいけないということで厳しく罰するということになるわけですので、一つの大きな意識革命の手段だというふうにさえ思うわけでございます。ですから、この機会に社会のその問題に対する認識を深めて理解を進めるという、幅広い、強力な啓発活動が一層重要であろうと思います。
 そして、さらに考えますと、既につくられて多く出回っております児童ポルノを持つことによりまして、それを放置しますと、その被写体となって、法のできる前に被害者となっていた子供の人権はずっとこれからも侵害され続けるということになるのではないか。そこまで考えますと、やはりこれは相当ゆゆしい問題である。この法律の趣旨からいいましても、そのようなものが一刻も早く皆様の、国民全体の意識として、好ましくないというふうにみんなが思うような、そういう社会にしていかなければいけない、そういうことを強く申し上げたいと思うのです。
 このようなことについて、発議者の皆さんも御賛成いただけるかと存じますが、念のためもう一度伺いたいと思います。

○林(芳)参議院議員 お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおりでございまして、先ほども御答弁申し上げましたけれども、この法律が成立していくことによりまして、委員御指摘のような、国民全体に認識が浸透してまいって、国民全体の御理解の中でそういう規定を検討できる状況が来ることを我々も望んでいることを改めて申し上げたいと思います。

○森山委員 発議者の皆さんに大変心強い御答弁をいただき、またお役所の方からも新たな事態に対処する決意を伺いまして一安心いたしましたが、大臣からも一言ちょうだいしたいと思いますので、御決意のほどを伺わせてください。

○陣内国務大臣 この大事な法案については、時間をかけて、大変な御努力の結果、こういうふうな立派な法律案の提出となったということをただいま伺わせていただきました。その御努力に心から敬意を表し、一日も早く、一刻も早く成立させていただいて、私どもとしてもこの趣旨がしっかりと生かせるように努めてまいりたい、このように思っております。

○森山委員 ありがとうございました。
 では最後に、発議者の先生方、そしてプロジェクトチームで御協力いただきましたたくさんの議員各位、また激励し、支持してくださいました各党の幹部の皆さん、また裏方で苦労してくださいました各党事務方の皆さん、情報を提供し、専門的な知識を持ってお助けくださった衆参両院の法制局及び関係各省の皆さんに心から感謝申し上げます。ここまでの活動の原動力となられましたNGOの皆さんにも心から敬意を表しまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

衆議院・法務委員会(1999/05/14)/木島日出夫議員(日本共産党所属)

○杉浦委員長 次に、木島日出夫君。

○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。一昨日に続いて質問をしたいと思います。
 最初は、児童ポルノ頒布等の、児童ポルノに係る罪についての質問でございます。
 日本が児童ポルノの世界最大の供給国、この不名誉から脱したい、そのために、脱法行為を許さないという観点からお聞きをしたいと思うのです。先日の私の質問も途中で時間切れとなってしまいましたし、きょう午前中以来、同僚委員からの質問もこの点について続きましたが、重複はあろうかと思いますが、整理して手短に幾つか聞きますので、簡潔にお答えいただけたらと思います。
 まず第一に、児童ポルノ頒布等の犯罪と刑罰を新設する基本目的は何か、整理してお答えいただきたい。

○林(芳)参議院議員 お答え申し上げます。
 頒布等の罪を新設する目的というお尋ねでございましたが、この法案は、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害するということの重大性にかんがみ、児童の権利の擁護に資するため、児童ポルノに係る行為を処罰することにしたものでございますことは質疑の中で明らかになったところでございますが、そういう意味で、刑法のわいせつ図画の規制は、性的な秩序、道徳、風俗の維持をその目的としておりまして、児童の権利の擁護に資することを目的としておりませんことから、一般に言われますわいせつ図画に当たらない児童ポルノもあるというふうに考えられるところでございまして、頒布等の罪を新設することによりまして、この当たらない児童ポルノについても処罰の対象とするということにした次第でございます。

○木島委員 続く質問でありますが、今の答弁の中にももう既に半分くらい出ているのですが、児童ポルノ頒布等の罪の基本的な保護法益は何か、健全な性秩序の維持なのか個人の性的自由の保護なのか、これもひとつ簡潔に整理してお答えいただきたい。

○林(芳)参議院議員 お答え申し上げます。
 性交または性交類似行為に係る児童の姿態等を描写した児童ポルノを製造、頒布等する行為は、児童ポルノに描写された児童の心身に有害な影響を与えるということのみならず、これはもうたびたび御答弁申し上げてきたところでございますが、このような行為が社会に広がることによりまして、児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長することになるとともに、身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長に重大な影響を与えるということにかんがみ、また、数々の御指摘をいただいたように、児童ポルノに係る行為については国際的な対応も強く求められておるところでございまして、かかる行為を規制、処罰することにしたところでございます。そして、かつ日本国民については、国内外を問わず、罰則の適用を求めるところにしたというところでございます。

○木島委員 私、答弁がちょっとずれているように聞くのですが。
 基本的に、児童ポルノ関連罪の保護法益は、当該被害児童の権利である、被害児童の名誉である、性的自由である、これが基本である。付随的に、身体的、精神的に未熟である児童一般の心身の成長に重大な影響を与えるから、そういうものを守るためにもこの法律は意味があるのだ、そう聞いてよろしいわけでしょう。
 それで、先ほど福岡先生ですか、要するに、基本は被害児童を守るのだ、当該個人を守るのだ、それが基本だ、そして付随して、身体的、精神的に未熟な児童一般の心身の成長に重大な影響を与えるからそれをも防止するのだ、そういうふうに聞いてよろしいわけでしょう。

○林(芳)参議院議員 改めて答弁させていただきます。
 先ほどるる申し上げましたが、一言で言えば、児童の権利の擁護に資することがこの法律の目的でございます。失礼いたしました。

○木島委員 そこで、どういうポルノ写真等が罪に当たるのか、具体的に聞きたいのです。
 今答弁されたような目的や、この犯罪の保護法益からいたしますと、児童ポルノの被害児童、要するに写真等に被写体となって写し出された児童、この被害児童の特定、これはどこまで必要なのかという質問であります。
 十八歳未満の児童だけで特定が許されるのか、それでもう捜査し処罰できるのか。被害児童の、十八歳未満というだけでなくて、住所、氏名の特定までこの法律は犯罪の立件、起訴、有罪判決を下すために必要なのか、御答弁願いたい。

○大森参議院議員 ここで言います児童の姿態というのは、十八歳に満たない児童の姿態ということになります。構成要件としてはこれを要求しているのみであります。それで、描写されているものが実在する児童、すなわち十八歳未満の者であればこれは足りるのでありまして、これを公判において立証する必要があります。被害児童の特定というのはその立証手段の一つであると考えております。
 したがいまして、その描写物から写されているものが児童の姿態であるということが立証できるのであれば、それ以上、氏名、住所の特定までは必要ないと考えております。

○木島委員 どこのだれそれという、住所、氏名までは要らないと。しかし、児童ポルノ被写体が実在する児童であることは必要なんですね、再三のこれまでの答弁から。その実在する児童が十八歳未満の児童であるということが立証されればこの罪は成立するというお答えでありました。
 さてそこで、私が一番聞きたい点について質問するのですが、せんだっての質問もそうだったのですが、合成写真の問題であります。私は、この児童ポルノ関連犯罪の最大の脱法行為は、合成写真が広範に流布されるのじゃないか。それを取り締まれなければほとんどこの法律は動かすことができない、ざる法になると思うわけであります。こういうことをやろうとする犯罪者、犯罪集団は罪にならぬように考えて動くわけでありますから、そこがポイントだと思うのです。
 私は、合成写真等も、その写真自体から、今御答弁の、被写体の少女があるいは少年が十八歳未満の児童であるという特定さえできれば、それはもうそれ自体で児童ポルノに当たるのではないかと思っているのです、解釈として。児童の特定というのは、基本的には私は顔で特定できる。基本的には顔でのみ、のみと言うと語弊がありますが、基本的には顔で特定するというのが児童ポルノの特定に当たって必要であり、かつ十分ではないかと思うのです。
 それで質問なんです。
 では、ある少女の顔、首から上が写され、首から下が全部全く別の少女の裸体がくっつけられた、そういう場合です。しかし、写真技術は、前回も言いましたが、非常に高度に発達していますから、これは一体として、その顔が写された被害少女に対するポルノとして私は有罪にしてもいいのじゃないかと思うのです。
 そういう観点から、先日来、またきょうの午前中の大森発議者の答弁の中に、前回の私に対する質問から基本的な点で変わっているのでいいかと思うのですが、具体的な事案における証拠に基づく事実認定の問題です。例えば、実在する児童について、その大部分が描写されている写真を想定すると、そこに描写された児童の姿態は実在する児童の姿態に該当しますという御答弁なんですが、私は、大部分ということになるとちょっと問題なので、もう顔でいいのじゃないかと。
 顔だけが実在する少女が写し出されて、首から下は別の少女の写真が、あらわな姿態が、わいせつはその部分かもしれませんが、合成されたときにも、やはり侵害されているのは、その顔から見出される具体的な十八歳未満の少女の権利が侵害されている、それが流布されるわけですから。そういう解釈でいいんではないかというふうに思うので、これは、これから警察がこの法律を使うときには根本的に大事なところなので、ひとつイエスであるという答弁をいただきたいのですが、いかがでしょうか。

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最終更新:2008年12月05日 06:16
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