国会質疑 > 児童ポルノ法 > 1999-07

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衆議院・法務委員会(1999/05/14)/池坊保子議員(公明党所属)

○杉浦委員長 次に、池坊保子君。

○池坊委員 公明党の池坊保子でございます。
 昨年の十一月、ストラスブルグのEUの会議に出席いたしました折に、イギリスの議員より、今東南アジアは大変な貧困にあり、生活のために子供たちが売春を強いられている、そしてそれを買う外国人もいる、これは憂慮すべきことなのではないか、東南アジアのリーダーにある日本人としてそのことについて何らかの手だてをしてほしいという要望を私はいただきました。
 私も、速やかにそれは善処できるよう努力いたしますと答えました。と同時に、そういうことが行われている、そして、買う外国人がいるんだということは日本人を指しているのかなと思って大変に恥ずかしい思いがいたしました。そういう面から考えますと、むしろ遅きに失したのではないかというぐらい、私は、この法案ができますことを強く望むとともに、発議者の御努力に心から敬意を表するものでございます。
 日本は、世界で最も富裕な国、経済大国と言われ、日本が風邪を引いたら東南アジアすべてが風邪を引くのだと言われるほど非常な影響力を持っております。ですから、経済のみならず、本来、東南アジアにおいて日本はすべての国の見本にならなければならない。にもかかわらず、日本は先進国の中で唯一、児童ポルノを製造、売買、保有することが違法でない国でございます。その結果、今まで世界じゅうに日本製のものが出回るという結果になったんだと思います。
 カナダの税関当局の調査によると、カナダに入る児童ポルノの八〇%が日本製であるとの報告をしており、それを裏づけるかのように、アメリカの税関当局が、アメリカに入ってくる児童ポルノの出版物などのほとんどが日本のものであるという確認をしております。本当にこれは、私恥ずべきことなのではないかというふうに思っておりますので、今回の法案は、そういう意味で、児童買春、ポルノは犯罪だという、極めて当たり前のことですけれども、日本人の認識は大変希薄である、これを規定しているということを私は高く評価したいというふうに思っております。
 他方、公序良俗の維持、子供の健全育成だけでなく、子供の人権を第一の目的としているのが、現行の刑法や児童福祉法などと大きく異なる点ではないかと思っております。
 現在の青少年保護育成条例の取り締まりでは、買った大人だけでなく、児童も非行少女として扱われることがございます。本法案では、児童を犯罪者扱いしたり、傷を深くしたりしないよう警察官や検察官などに配慮を求めているとともに、身体的、精神的ケアやリハビリの必要性も織り込まれている点は、やはり女性でなければわからない細やかな配慮、それからいたわりがなされているのだと私は思っております。この提案理由説明の第五、第六、第七にもそのようなことが書かれておりますけれども、他方、私はこんなことも考えております。
 私は文教委員をいたしておりまして、この中には当然援助交際ということも入ってくると思うんです。今、子供たちは、援助交際がふえておりますとともに、それに対しての罪の意識というのが全然ございません。私は、学校現場の中で、援助交際というのは犯罪であるんだという認識を強く持たせるよう努力しております。大阪でも、援助交際は売春ですときちんと教えております。今の子供たちは、物を盗むのは悪い、でも自分の体をどう使おうとそれは自分の勝手じゃないかと考えているような子供たちもいるわけでございます。
 十八歳未満と申しますと、十六、十七はある意味でもう大人に近いのではないかと思いますときに、自己責任ということもあるのではないかというふうに考えております。本法案ではその辺のことはどのようにお考えなのかを、ちょっと発議者にお伺いしたいと思っております。

○清水(澄)参議院議員 大変すばらしいお考えで、私たちがこの法案をつくることになりましたその趣旨を全く御理解いただいていて、私は非常に感謝をいたします。
 そして、今おっしゃいましたところは、実はこの法案には啓発、教育というのが第十四条にございます。これは、刑法の特別法に教育まで入るというのはどうなんだろうというのがあったんですが、しかし、先ほどおっしゃいましたように、これまでの性風俗の問題ではなくて、本来、子供をそういう大人の性的な対象物として扱ってはいけないという、子供の人権の保障という視点から出発をしております。
 そのためには、特に児童買春、児童ポルノをなくすためには、ただ取り締まるというだけではこの問題はなかなか解決できない。ですから、こういうことは今おっしゃったように、人間としての犯罪なのだ、そういう意識が、親も含めて社会全体の多くの人々の意識を変えていく必要があるという形で、教育の果たす役割という点でこの十四条に規定をしているわけでございます。
 しかし、これらをもっとさらに未然に防止していくときに、もちろん親や社会的な教育はあるんですが、やはり子供自身に、自分の性的自己決定権というのはこれは人権ですから、その性的自己決定権が、今日のような非常に性情報がはんらんしている中で、本当に自分の性というものを、意思なきそういう性を強要されるということとか、また、そこに深い自分の権利としての性という問題を自覚できるような性教育、そういうものをもっと徹底していかなきゃいけない、これが非常に日本では欠けているのではないか。
 そういうことで、ここではやはり、十分な論議をしてまいりましたけれども、この法律が通った後これらがどういうふうに具体化されるか、そこで今後私たちはフォローアップしていかなきゃいけないんじゃないか。特に、自分がそういうものを要求されたときにはノーと言える権利、子供自身に子供にはこういう人権があるんだという子供の権利の教育を徹底しよう、そういう意思がここに込められております。
 以上です。

○池坊委員 十八歳未満と申しますと、私なんかが考えますと、十六、十七はもう大人なんじゃないか。十六歳で結婚することができるわけですから、十七歳だったら子持ちのお母さんもいるということで、私は、むしろもうちょっと低く下げた方がいいんじゃないかと思ったぐらいなんですけれども、児童福祉法も、それから子どもの権利条約も十八歳未満までを児童とみなしますから、それに準じておつくりになったというふうに認識しております。
 例えば、小さな、十四、十五ぐらいの子供で、今、児童虐待ということが盛んにございます。それで、その中には性の虐待というのがございます。お母さんがあっせんしたり、あるいは義理のお父さんに犯されたりということがございます。その辺のことはこの中には含まれないんでございましょうか。

○堂本参議院議員 優越的地位ということで、例えば施設の施設長とか学校の先生、あるいは親というのを本当に議論してまいりました。しかし、今回の法律の中にはそれが規定されていないという状況です。
 それから、先ほどおっしゃいました、援助交際は悪いということで大阪でそういうふうにしていらっしゃると。私も文教委員をしていたものですから、援助交際についてはさんざん議論してまいりましたけれども、十八歳未満でもこの法律の場合にはあくまでも買春で、対価を得た場合のみ罰則の対象になっておりまして、十八歳以下の子供たちの性的な自己決定権という領域ですべてが悪いというように規定していないということをちょっとつけ加えさせていただきます。

○池坊委員 これは施行後三年に見直すというふうに書かれてございますけれども、この点においては見直さないでこのままにするのでしょうか、あるいは、買春だけでなくて援助交際なども含め、それから親たちのそういう指導とかあるいは教育の面までも拡大していらっしゃるおつもりか、ちょっと将来的なことを一言伺いたいと思います。

○円参議院議員 今の御質問に即答えになるかどうかわかりませんけれども、先ほどの援助交際のことでちょっとあいまいだったので補足させていただきますと、まず、いわゆる援助交際は、対償、すなわち児童に対して性交等をすることに対する反対給付としての経済的利益を児童に供与し、またはその供与の約束をして当該児童に対して性交等をするものであると認められる限り、いわゆる援助交際において、児童と性交した者の方が、十八歳未満の児童ではなくて、いわゆる買うというかその買った人の方が児童買春罪に該当するわけです。ですから、大阪府などで子供の側が取り締まられるというようなことは、今回の児童買春の法律とは全く逆になるわけです。
 それから、今先生がおっしゃった優越的な地位のことは、先ほど堂本議員からもお話がありましたように、さまざま議論されましたけれども、入れませんでしたのは、もともと性的搾取と申しますのは、性的に大人が子供を物として使用するということが含まれております。その使用する性的搾取や性的虐待ということは、いわゆる年少者で力のない子供たちを大人が利用するわけですから、そこに既に優越的地位等が入っているのではないかと私は考えております。

○池坊委員 次に、児童ポルノの単純所持についてお伺いしたいと思います。
 先進国、イギリス、オランダ、ドイツ、カナダなどでは、これを処罰するところが多くなっております。スウェーデンもことしから単純所持を処罰対象にするといたしております。つまり、児童ポルノの存在自体が子供の人権侵害だという考え方なんだと思います。日本では、プライバシーの介入といった意見が強く、この法案では外されていると思います。そのことについて、いろいろな議論がなされた結果だと思いますので、どのような経過を経たかを簡潔にお答えいただきたいと思います。

○大森参議院議員 まず、この法律は、児童ポルノの頒布や頒布等目的での所持等の行為が、児童ポルノに描写された児童の心身に有害な影響を与えるのみならず、このような行為が社会に広がるときは、児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長することになるとともに、身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長に重大な影響を与えるものであり、また、児童ポルノに係る行為については国際的な対応が強く求められていることから、かかる行為を処罰するものであります。
 この趣旨から考えて、いわゆる単純所持というものを処罰するかどうか、非常に大きな問題となりました。自社さ案の方には出ておりました。
 それで、ほかの諸外国の例がございますけれども、ただ諸外国で、みんな同じ形で処罰しているところもあるし、処罰していないところもある。また、処罰しているところも、特に違法性の強いものに限って処罰するもの、あるいはその所持する主体が親とか監護者でないものとか、こういう違いがございます。それから、スウェーデンの場合も、たしか既にこの児童ポルノ禁止法案というのがありまして、その議論から続いて単純所持に至ったというふうに聞いております。
 今回、自社さ案では明文がございました。「何人も、自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持してはならない。」という規定がございました。刑罰法令でございますから、禁止行為というもの、特に違法性を問題として処罰するのであるならば、罰則を設けるだろう。そして、罰則を設けないのであれば、いたずらにこういう規定、特に「自己の性的好奇心を満たす目的」という、その所持している者の内心にまで入り込む文言がございますので、処罰しないのであれば規定を設けるべきではないだろう、こういうことになりました。
 それで、いろいろ議論しまして、まだこの段階では、例えば、それがいいか悪いかは別としまして、銃器とか薬物とか、こういうのは所持自体禁じておりますけれども、これと同じような禁制品、極めて違法性の強いものという社会通念が今の日本社会に出ているかどうかということが問題になりまして、やはり刑罰を科すということは重大な問題ですので、もう少し様子を見て、三年後の見直しのときに検討しよう。
 私たちが望むことは、この法案の成立、施行によりまして、児童ポルノは非常に違法なものなのだということを広く啓発して、また皆さんにこういう意識を持っていただいて、そして国民一般の皆様が、こういうものは個人であっても所持させるべきではないという社会的合意といいますか、これができましたときには処罰すべきであろう。その場合には、目的を余り記入しないで、何人も所持してはならない、こういう形になるのではないかというふうに考えております。

○池坊委員 私も、そういう意味では、まず意識変革というのが必要と思います。
 先ほど申し上げたように、児童ポルノの存在自体が子供の人権侵害だという考え方は、日本人の中には全然ないと言ってもいいと思うのですね。ですから、まずそれを浸透させることが必要なのではないか。法律というのは、いろいろな段階を経なければ日常生活の中で機能をしてまいりませんから、今大森発議者がおっしゃったように、三年後に見直すことの一つに入れていただけたらなというふうにも思っております。
 それから、国際的には、コンピューター合成の疑似ポルノというのも規制の対象になりつつございます。日本では、コミックは、実在の児童が被害者でなければ対象外になっていると思うのです。
 インターネットなどで、頭部は実在の児童で、裸の体の部分をコンピューターグラフィックスでつくり、合成したものなどが流れておりますけれども、このような行為は、この法案ではどのように処理されていくのでしょうか。

○大森参議院議員 ちょっと整理させていただきます。
 まず、コンピューターグラフィックスなどの合成写真ということですね。これは、児童の姿態そのものは存在するという前提でございましょうか。

○池坊委員 つまり、顔はその少女である。つまり、全体が写された場合には、これは当然に対象になりますよね。ただ、それが合成されていて、顔は少女の顔だけれども、体がちょっとグラフィックになっている、だからそのものではないということ。あるいはその逆で、顔はちょっとぼけていて、体が全部その少女の体。いろいろな合成がこれからできると思うのですけれども、そういう場合には、この処罰の対象というのになるのでしょうか。これから巧妙にいろいろな策を弄してくると思いますので、それについてちょっと御説明いただきたい。

○大森参議院議員 児童ポルノとは、実在の児童の姿態を描写したものであります。したがって、絵の場合にもなり得る場合もあるというのは、それが実在する児童の姿態を描写したものであり、性欲を刺激もしくは興奮せしむ、これに当たる場合に、「その他の物」に入り得ると理解しております。
 それから、今おっしゃったように合成写真等とかですが、実在の児童の姿態が頭部のみである場合には、その頭部の部分のみでは、第二条第三項各号の児童の姿態に当たると認められない限り、児童ポルノには当たらないというふうに考えております。
 それから、この問題につきまして、前回、実は木島委員の方から質問をいただきまして、合成写真を利用したいわゆる疑似ポルノについては児童ポルノには当たらないというふうなお答えをいたしました。それで、一部正確でありませんでしたので、改めて述べさせていただきます。
 この法案では、児童ポルノとは児童の一定の「姿態を視覚により認識することができる方法により描写したもの」をいうとされておりまして、ここに言う児童とは、十八歳に満たない者、すなわち実在する児童を意味します。
 今回の法案の中では、外国の立法例にあるような、疑似ポルノについて明文の規定は置いておりません。したがって、写真等が実在する児童の姿態を描写したものであると認められない限り、児童ポルノには該当しないことになります。
 ただ、合成写真等を利用しました疑似ポルノの中には、実在する児童の姿態を描写したものであると認定できるものもあると考えられ、このようなものについては、今回の法案の児童ポルノに当たり得ると考えます。
 ですから、先ほどの御質問ですと、顔が少女で、体が何か全然違うもの、これは各号に当たりにくいと思います。
 それから、体がまさに実在する児童の姿態でありまして、多少手が加えられている部分があるかもしれませんが、その描写物が実在する児童の姿態と認められる場合には、このポルノに当たり得る場合もあるというふうに考えます。
 それから、どういう場合がというのは、具体的な事案における証拠に基づく事実認定の問題となりますが、実在する児童について、その身体の大部分が描写されている写真等を想定いたしますと、そこに描写された児童の姿態は実在する児童の姿態に該当いたします。その写真に描写されていない部分に他人の姿態をつけ加えて合成したとしても、ある児童の身体の大部分を描写した部分が実在する児童の姿態でなくなるわけではない。当たる場合もあり得る。
 非常に複雑な説明になりましたが、こういうことです。

○池坊委員 何で細かいことを伺ったかと申しますと、これから業者はいろいろな法の目をくぐって巧妙なことをつくり出していくと思います。このような場合、例えば、顔の部分だけかわいらしい少女が使われた、その少女の心身に大変に深い傷を負わせるのではないかと思いますので、こういうことも含めましてインターネットの規制というのはこれからも必要になってくると思いますので、三年後の見直しの中に私は入れていただきたいというふうに望んでおります。
 次に、警察の方にちょっとお伺いしたいのですが、この法案をつくるきっかけの一つとして、スウェーデンのECPATというNGOがあると思います。これはユニセフからも大変な信頼を得ているNGOでございますが、これに協力するインターポールを通じて警察とも交流があったかのように聞いておりますけれども、これまでにどのような協力をしていらしたかを伺いたいと存じます。

○小林(奉)政府委員 ECPATとの交流についての御質問でございますが、警察庁におきましては、本年四月にインターポールが主催いたしました未成年者に対する犯罪に関する会合に、ECPATを初めとしますNGOとともに、その会議に参加させていただいているという状況でございます。
 また、一九九六年八月に、ECPATを含むNGOとユニセフ、スウェーデン政府との共催によりストックホルムで開催されました児童の商業的性的搾取に関する会合に警察庁の職員を派遣しております。また、その会議のフォローアップの会議が東京等でも開催されておりますが、その会議はユニセフ、ECPATが主催しておるということで、私どももそういう会議に積極的に参加しておる、こういう状況でございます。

○池坊委員 ECPATの書類を詳しく読みまして、NGOが果たす役割というのは大きいのだなということに感慨深い思いをいたしました。
 では、ついでにと言ってはなんですが、もう一つ警察の方にお伺いしたいと思うのですが、これから、国際的な協力ということなくしてこの児童買春の法を施行することはできないと思います。アジアにおいて日本人が児童買春などを行ったり、児童ポルノを製造した場合に、日本においてこの者たちを処罰するためには、現地の警察と密接な協力というのが必要である、つまり、証拠を集めなければだめであるというふうに思っておりますので、これはどのような計画をしていらっしゃるかをお聞かせいただきたいと思います。

○小林(奉)政府委員 御指摘のように、児童買春等は国際的な問題となっております。そういった意味で、国外犯についても我々として積極的に対応しなきゃいけないと考えておるわけでございます。そういった観点で、私どもといたしましては、都道府県警察とともに、外国捜査機関等との連携強化を図りつつ、情報の収集、捜査の推進等、積極的な対応に努めてまいりたいと考えております。
 具体的に申し上げますと、私どもといたしましては、都道府県警察を指導いたしまして、国内におきまして、そういった国外犯が行われたんじゃないかという、そういう情報を積極的に入手するようにいたしたいと考えております。また、警察庁の職員を随時海外に派遣いたしまして、外国捜査機関等に対しまして、この法律案の、できますれば法律になりますが、その内容を周知徹底しますとともに、外国捜査機関やICPOルートを通じてその情報を収集して、積極的な事件化に努めてまいりたいと思います。
 そういった観点で、私どもにおきましては、この種事犯の国外犯捜査の体制強化を図るため、今春、生活安全局の少年課に少年保護対策室を設置したところでございます。この保護対策室を中心にいたしまして、こういった事案に対して対応してまいりたい、このように考えております。

○池坊委員 現実の問題として、東南アジアで児童ポルノを製造し、これをヨーロッパで販売した者は、もちろんこの本法案では処罰されるのですけれども、そういう人を摘発することができるというふうにお考えですか。可能ですか。

○小林(奉)政府委員 この法案によりまして国外犯の処罰規定ができるわけでございます。したがいまして、そういった国外犯について、我々としては全力を挙げて摘発するように努めてまいりたい、こう考えております。

○池坊委員 処罰はできる、だけれども摘発はなかなか現実にはできないということになりますと、この法案があっても生かされないということになりますので、あとはもう警察の方のお力にかかる部分が大であると思います。こんなにいい法律ができましても、ざる法と言われないために、細かいことをやはり私は詰めていきたいなと思いますので、法務省の方にもちょっと伺いたいと思います。
 この児童買春についての刑は、「三年以下の懲役又は百万円以下の罰金」というふうに書かれて定められております。百万円以下と申しましても、何千円から九十九万円までありますので、安いお金だったら罰金ぐらい払ってもいいよという人も私はいるのではないかと思います。具体的な事件でどのようにしてその刑は決められるのか。刑罰の決め方とかいうことも頭の中におありかどうかをちょっと伺いたいと思うのです。

○松尾政府委員 一般に刑の決定、これは具体的事件では裁判所が最後に決するわけでございますが、その決定に当たって、通常どういうことが考慮されるかということですが、例えばその犯罪の性質それから軽重、動機、方法あるいはその結果、それから社会的影響及び犯罪後の被告人の態度並びに被告人の年齢、性格、経歴、環境その他の事情が総合的に考慮される、これがいろいろな判決の中で触れられている事項ということができると思います。
 今回の、児童買春をした者あるいは児童ポルノを製造した者等についてでございますが、例えば犯罪の性質でいいますと、これらの罪が、児童の心身に有害な影響を与える、あるいは児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長するということになりかねない性質を有するというような、今回の法案の立法の目的といいますか、趣旨、こういったことも、この犯罪の性質を考え、処断刑を決定する上では重要な事項というふうに考えております。

○池坊委員 私は、処罰は厳しくしないと、そういうことにかかわります当事者も、多少の罪、多少の罰金ぐらいはいいとかいうことで、いろいろな法の網の目をくぐり抜けることを考えてくると思っておりますので、細かいことを言い過ぎだとお思いかもしれませんけれども、現実には法を施行するには、細かいことの周辺整備ということがなされてこそ初めて法は生きていくというふうに私は思っております。
 これは、世界の中で、日本が経済のみならず、良識ある国民だということを認知されるためにもぜひ必要な法律というふうに私は認識しております。そして、それがただ成立されるということだけでなくて、細やかに実行されるということを願って、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

衆議院・法務委員会(1999/05/14)/福岡宗也議員(民主党所属)

○杉浦委員長 次に、福岡宗也君。

○福岡委員 民主党の福岡宗也でございます。
 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護に関する法律案について御質問を申し上げたいと存じます。
 この法案の問題は、一九九六年にストックホルムにおいて開催をされました国際会議において、我が国が児童ポルノ製造販売の輸出国であるとして、また子供買春ツアーをアジアに多数送り出している加害国として指摘をされました。そして、これらの行為が子どもの権利条約に違反をする行為で、これを是認しているんではないかという国際的な大きな非難をこうむることになったわけであり、我が国としましては、国際的な信用を回復するためにも、我が国の児童の権利を守るという立場からも、早急にその対応が迫られていた問題であるというふうに理解をしておるわけでございます。
 その意味におきまして、このたび、発議者の皆様方が中心となりまして、研究調査をされまして、本法案が提案をされ、参議院で可決をされましたること、心より敬意を表するものでございます。
 ただ、問題は、この法案を子細に検討しますと、若干いろいろな問題があるわけでございます。そして、その問題につきましては、いろいろな角度からもう既に同僚議員の方から御質問がございました。しかし、私といたしましては、本法案が、刑罰法規の新設という、国家が国民に対する最も重大な人権制限、また侵害ともいうべき刑罰を適用する、こういうような内容を含んでおりますので、罪刑法定主義の要請を十分に充足をしておるか、その他、人権上の配慮は十分かという点、さらに、被害者である児童というものは当然捜査の対象にされてくる、また公判などでも証人等に呼ばれる、それが大きく報道されるという第二次的な被害というものが当然に予想されるわけであります。したがって、この問題については万全であるかどうかということであります。
 さらに、これらの問題については、処罰するための法益、目的こそ違いますけれども、他の法律によっていろいろと規制があるわけであります。例えば売春防止法、刑法の強姦、わいせつ罪というような刑罰法規というのが既に存在をしているわけでございます。これらの法規との間の整合性、それから構成要件の相違点、刑の均衡というようなものについて、その違法性の程度に均衡しておるかどうかなどについて十分に討議がなされなければならないなというふうに考えているわけであります。したがって、この点について、ちょっと私が気がつきました点だけ、二、三御質問を申し上げたい、かように存ずる次第でございます。
 そこで、まず第一番に、いずれの法規も、法律の目的というのは、その法律の理念というもの、さらには運用を決定づける最も重要な基本的なものであるというふうに考えております。そこで、本法案におきましても、第一条において目的が明記をされておりますので、この目的の内容、ちょっとわかりにくい点もありますので、まず簡単に御説明をいただきたい、こういうふうに思います。

○円参議院議員 お答えいたします。
 この法律の目的は、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性にかんがみまして、児童買春、児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることによって、児童の権利の擁護に資することでございます。
 ただ、児童買春や児童ポルノに係る行為を放置しますことは、児童買春の相手方となり、児童ポルノに描写された児童の心身に有害な影響を与えるのみならず、まだそのような対象となっていない児童につきましても、健全な性的観念を持てなくなるなど、その人格の完全かつ調和のとれた発達が阻害されることにつながりますので、そこから児童一般を守ることもこの法案では目的としております。そこで、この趣旨を、児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長することになるとともに、身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長に重大な影響を与えると表現させていただいたものでございます。
 したがいまして、児童の性的自由を保護するというのがこの法案の第一次的目的でございますが、同時に、以上述べたようなことも目的とすべきであると私どもは考えました。
○福岡委員 ありがとうございました。
 今の御答弁をお聞きしておりますと、一言で言いますと、本法案の目的は、あくまでも児童の権利を守る、虐待、搾取から守るというところがまず第一義的なものであって、あとそれにプラスするところは、その被害に遭った児童を救済するためのケアという問題を含んでいる、こういうことで、それ以外の一切の目的は、これはないということでお伺いしていいかということであります。
 といいますのは、売春防止法の目的は健全な性風俗の維持であるとか、刑法のわいせつ罪の目的は善良な風俗の維持確保というようなこと、さらに児童福祉法においては健全育成というように、法益というのがそれぞれ目的の中にもあるわけですけれども、そういった目的というのはこの法案の中にはないので、児童を指導しようとか補導しようとか、それから相手になる者も十分な取り締まりをしようとかというような趣旨は一切含まれていない、かように理解をしてよろしいでしょうか。

○円参議院議員 あくまで児童を性的搾取、性的虐待から守り、その児童の人権を保護するものと考えております。

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最終更新:2008年12月05日 05:48
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