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国会での審議の中継


参議院・法務委員会(1999/04/27)/林芳正議員(自民党所属)

145-参-法務委員会-8号 平成11年04月27日
○委員長(荒木清寛君) 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律案を議題といたします。
 まず、発議者林芳正君から趣旨説明を聴取いたします。林芳正君。

法案の提起理由

○委員以外の議員(林芳正君) 自民党の林芳正でございます。提案理由の説明をさせていただきます。
 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明いたします。
 平成六年に批准されました児童の権利に関する条約では、児童はあらゆる形態の性的搾取及び性的虐待から保護されることが定められております。
 しかしながら、国内における援助交際あるいは東南アジアにおける買春ツアーのように、対償を供与して児童と性交等をすることが社会問題となっております。また、児童の性的な姿態を描写した写真、ビデオテープ等の製造及び販売も問題となっているところであります。
 諸外国の多くは、立法によってこれらの行為を厳しく処罰しております。しかしながら、我が国の現行の法律では、刑法の強姦罪、強制わいせつ罪またはわいせつ図画頒布罪によって一定範囲で処罰されることもありますが、対償を供与して児童と性交等をすることは、十三歳以上の者に対しては暴行または脅迫を用いていない場合には原則として処罰対象となっておりませんし、児童の性的な姿態を描写した写真等であって諸外国において児童ポルノとして取り締まられているものすべてが刑法上のわいせつ図画に該当するものではないのが現状であります。
 そこで、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害していることの重大性にかんがみ、児童の権利の擁護に資するため、児童買春、児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、児童の保護のための措置等を定めるこの法律案を提案した次第でございます。
 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。
 第一に、この法律で保護される児童を十八歳未満の者としております。
 第二は、児童買春の処罰であります。
 児童等に対償を供与して児童と性交、性交類似行為または自己の性的好奇心を満たす目的で児童の性器等、すなわち性器、肛門または乳首をさわり、もしくは児童に自己の性器等をさわらせることを児童買春として処罰するとともに、児童買春の周旋や周旋目的での勧誘を処罰することとしております。
 第三は、児童ポルノに係る行為の処罰であります。
 児童ポルノとは、写真、ビデオテープその他のものであって、児童を相手方とするもしくは児童による性交もしくは性交類似行為に係る児童の姿態、他人が児童の性器等をさわる行為もしくは児童が他人の性器等をさわる行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させもしくは刺激するものまたは衣服の全部もしくは一部をつけない児童の姿態であって性欲を興奮させもしくは刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したものをいい、児童ポルノの頒布、販売、業としての貸与、公然陳列またはこれらの目的での製造等を処罰することとしております。
 第四は、児童の人身売買の処罰であります。
 児童を児童買春における性交等の相手方とさせまたは児童の姿態を描写して児童ポルノを製造する目的で児童を売買した者等を処罰することとしております。
 第五は、捜査及び公判における配慮等であります。
 この法律で処罰される犯罪の事件の捜査及び公判に職務上関係のある者は、児童の人権及び特性に配慮するとともに、その名誉及び尊厳を害しないよう注意しなければならないこととしております。
 第六は、記事等の掲載等の禁止であります。
 氏名、年齢、職業、就学する学校の名称、住居、容貌等により児童がこの法律で処罰される犯罪の事件に係る者であることを推知することができるような記事もしくは写真または放送番組の出版物への掲載または放送を禁ずることとしております。
 第七は、児童の保護のための措置であります。
 児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童に対し、関係行政機関は必要な保護のための措置を適切に講ずるものとしております。また、このような児童の保護を専門的知識に基づき適切に行うことができるよう、国及び地方公共団体は必要な体制の整備に努めるものとしております。
 第八は、国際協力の推進であります。
 国は、この法律で処罰される犯罪の防止及び事件の適正かつ迅速な捜査のため、国際的な緊密な連携の確保、国際的な調査研究の推進等の国際協力の推進に努めるものとしております。
 第九は、検討条項であります。
 児童買春及び児童ポルノの規制その他の児童を性的搾取及び性的虐待から守るための制度については、この法律の施行後三年を目途として、この法律の施行状況、児童の権利の擁護に関する国際的動向等を勘案し、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとしております。
 なお、この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。
 以上がこの法律案の提案理由及び内容の概要であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いいたします。
 以上でございます。

○委員長(荒木清寛君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。

参議院・法務委員会(1999/04/27)/千葉景子議員(民主党所属)

千葉議員についてのWikipediaの解説
○千葉景子君 民主党・新緑風会の千葉景子でございます。
 提案者の皆さん、大変御苦労さまでございます。何点か質問させていただきますので、よろしくお願いをいたします。

現行制度での児童買春等に対する規制の確認

 まず、児童買春等に対しては現在の制度でもさまざまな規制が加えられていようかというふうに思いますが、まずこの法案の前提といたしまして、児童買春等に対する規制は現行制度ではどのようになっているでしょうか。

○円より子君 千葉委員の質問にお答えいたします。
 現在、児童買春や児童ポルノに係る行為については、刑法、児童福祉法、地方公共団体の条例等の法令により一定範囲で処罰されております。
 例えば、刑法では、十三歳未満の女子を姦淫した場合には強姦罪として、また十三歳未満の男女にわいせつな行為をした場合には強制わいせつ罪として、それぞれ相手方の同意の有無にかかわりなく処罰されることとなっております。また、わいせつな文書、図画その他のものを頒布、販売、公然陳列または販売目的で所持した者もわいせつ物頒布等の罪で処罰されることとなっております。
 さらに、児童福祉法では、十八歳未満の者に淫行をさせた者が処罰されることになっております。
 条例の規制につきましては、条例が個々の地方公共団体によって制定されるため、すべての地方公共団体で共通というわけではありませんが、一般的には十八歳未満の者に淫行、わいせつな行為をした者や十八歳未満の者に有害な図書を販売した者を処罰する規定が設けられております。
 以上が現在の児童買春の規制であります。

○千葉景子君 現在も今説明をいただきましたような規制がございますけれども、この現在の児童買春等に対する規制ではどういうところが問題になるんでしょうか。

○円より子君 お尋ねのように、大変問題がございます。
 現在の児童買春等の規制の問題として、まず刑法による処罰につきましては、千葉委員よく御存じだと思いますけれども、十三歳以上の者に対する買春そのものは処罰の対象とされていないんです。これはつまり、十三歳以上の者に対しては金銭の授受があっても同意があれば強姦、強制わいせつは成立いたしません。そのことがまず大きな問題として挙げられます。
 また、わいせつ図画の規制は、性的な秩序、道徳、風俗の維持をその目的としておりまして、児童の権利の擁護に資することを目的とするものではありませんので、わいせつ図画に当たらない児童ポルノもあると考えられます。そこで処罰の対象となる範囲も異なります。
 児童福祉法による児童に淫行させる罪につきましては、させた者が処罰の対象とされておりまして、買春をした者すべてを処罰の対象としているものではありません。
 条例による規制につきましては、各地方公共団体によってこれも規制内容が異なっていることなどが問題として挙げられるかと存じます。

○千葉景子君 今お話がございましたように、現在の規制ではなかなか十分に防止できにくい部分があるということがわかります。
 先ほど趣旨説明をいただきましたけれども、この法案の提案の理由、国際的にも、あるいは今の日本の社会状況などを含めていろいろ理由があろうかというふうに思いますけれども、改めまして提案の理由をちょっと詳しく御説明いただきたいと思います。

○円より子君 千葉委員も御存じのとおり、我が国は平成六年に児童の権利条約を批准いたしました。この権利条約の中では、児童はあらゆる形態の性的搾取及び性的虐待から保護されるということが定められております。そこで、児童の権利条約の精神を踏まえまして、より一層児童の保護を図るためにこの法案を私どもは提案したわけでございます。
 すなわち、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性を考えまして、児童の権利の擁護に資するため、児童買春、児童ポルノに係る行為等を処罰する、そしてこれらの行為等により心身に大変有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることといたしました。
 また、御存じのように、東南アジアにおいては大変問題となっておりますのが児童買春でございます。また、国際的な規制の動きがある児童ポルノ等、そういったものも今回の法案は視野に置いております。
 なお、児童に対する淫行やわいせつ行為を処罰している地方公共団体の条例は、各地方公共団体によって規制内容が異なっていることを踏まえまして、今回、新たにこの法案を作成するに当たりましては、現在生起しております社会事情に着目し、処罰対象となる行為をより具体的に表現するべく、淫行、わいせつ概念を使用せず、最大限の努力をいたしました。

○千葉景子君 今回の法案で幾つかの処罰対象が明確にされております。
 まず、今回の法案の中で、児童買春、これが処罰の対象になるわけでございますけれども、これを犯罪として処罰の対象にするという理由はどういうことでしょうか。

○円より子君 お尋ねの、児童買春が処罰されるのはどうしてなのかということでございますけれども、まず、金銭等の対償を供与し、または供与の約束をして児童に対し性交等をする児童買春は、児童買春の相手方となった児童の心身に有害な影響を与えるものであって、断じてしてはならないことではないでしょうか。
 さらに、このような行為が社会に広がるときには、児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長することになりますし、身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長にも重大な影響を与えるものであります。
 また、児童買春につきましては、国内の児童の問題だけではなくて、国外の児童に対し我が国の成人が性的搾取及び性的虐待を続けていることに大きな非難がございます。こうしたことに対して国際的な対応が強く求められてまいりました。そこで、かかる行為を規制、処罰することとし、かつ、日本国民については国内外を問わず罰則の適用を認めることとしたものでございます。

○千葉景子君 さらにこの法案では、児童ポルノに係る行為がやはり同じように規制そして処罰の対象になります。この児童ポルノに係る行為、これも処罰の対象にするということにはどのような理由があるでしょうか。

○円より子君 同じように、性交または性交類似行為に係る児童の姿態等を描写したもの、これが児童ポルノでございますが、その児童ポルノを製造、頒布する行為は、その児童ポルノに描写された児童の心身に長期にわたって有害な影響を与え続けます。また、このような行為が社会に広がるときには、児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長することになるとともに、身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長にこれもまた重要な影響を与えるものと思われます。
 そして、御存じのように、これは本当に残念なことなんですけれども、世界に出回っている児童ポルノの実に八〇%が日本製であると言われております。こうした行為につきましては、本当に国際的にも非難があり、対応を大変強く求められておりますので、このような行為を規制、処罰することとしまして、かつ、日本国民については国内外を問わず罰則の適用を認めることといたしました。

○千葉景子君 私も、それから提案の趣旨説明でも、既に児童買春という言葉を使いながら今質疑を始めさせていただいているわけでございますけれども、この児童買春、よくいろいろな方から、何と読むのかという御質問があったり、あるいは多少耳なれないという御意見などもございます。これは、字で書きますと買う方の春ということになります。一方、売る方の春、これも読み方としてはバイシュンですね。買う方も読み方によってはバイシュンと読むこともできるわけです。しかし、この児童カイシュン、こういう読み方をもってこの法案の大きな基本にしているということはどういうことでしょうか。読み方を含めて改めて御説明をいただいておきたいと思います。

○円より子君 千葉委員の御質問のとおり、ちょっと聞いていらっしゃる方は、カイシュンってどういう字を書くんだろうとか、売春と紛らわしいとお思いになるかもしれませんが、先ほどからずっと私も児童カイシュンと読ませていただいてまいりました。
 子供の性的搾取や性的虐待を大変憂えるNGOの方たちやさまざまな方たちは以前から、児童買春にかかわらず、売春ではなくて、よく売買春という言葉を使っていたと思います。そういう中からまた児童買春というような言葉が出てきたわけで、このあたりの、何と読むのかという御質問、大変いい質問をしてくださったと思います。私どもは、この法案の提案のときに、これを買う春と書きまして児童カイシュンと読むことといたしました。もちろん、これは児童バイシュンと読むことも可能でございますが、一般社会で用いられる際の売春と区別することができるように、あえてカイシュンと読むことといたしました。
 先ほどもちょっとお話しいたしましたけれども、児童の売買春は、仲介する者が弱い児童を強制的に売買することが組織的に行われているなど、大人の優位な立場を利用して行われているという点で、性を売る側の是非を問われがちな売春とは違いまして、買う側の是非を問う問題だととらえております。そのため、バイシュンと読みますと弱い児童自身を犯罪者として扱う懸念がございますので、私ども、買う側の大人の責任を明確にするために買春と表現いたしたものでございます。
 また、従来から、児童カイシュンという読み方をある程度されておりまして、これが定着しているとも考えられますので、法律においても児童カイシュンと読むこととしたというのが今のお答えでございます。

○千葉景子君 この法案では、対象となる児童を十八歳に満たない者にしてございます。他のいろいろなこれまでの法規制などを見ますと、例えば民法などは、婚姻年齢が男性が十八歳で女性が十六歳という規定になっております。また、刑法の強姦罪などを考えますと、いわば性交同意年齢と言ってもいいんでしょうか、これは十三歳という規定になっております。
 多分、これは児童の性的自己決定能力、こういうものとの兼ね合いもいろいろ検討された上でこの十八歳という年齢が定められたものというふうに思いますけれども、改めましてこの法案で児童を十八歳に満たない者にしたという理由はどういうところでございましょうか。

○円より子君 おっしゃるとおり、民法七百三十一条では、婚姻年齢は男子が満十八歳、女子が満十六歳というふうに決められておりますし、十八歳にするということについてはさまざま私どもも検討いたしました。
 そして、一定の年齢に満たない者に対し特別の保護を与えることを定めた先ほど申しました児童の権利条約がございますが、この条約では、その対象となる児童を十八歳に満たない者とすることを原則としております。これも委員御存じだと思います。
 また、我が国におきましては児童福祉法がございますけれども、この児童福祉法では、児童が健やかに成長するように各般の制度を整備するとともに、児童に淫行をさせる行為等、児童買春に関連する行為をも処罰の対象としておりまして、この法律ではその対象となる児童をやはり十八歳に満たない者としております。
 これらの条約、法律の目的と、この法律の目的から考えて、対象とする者の範囲も同一にすべきであるという結論に達しまして、私どもは十八歳未満の者をこの法律に言う児童としたところでございます。

○千葉景子君 法律でございますので、そこに使われている概念あるいはそれぞれの行為類型をやはり明確にしておく必要があろうというふうに思います。
 そこで、この中で規制されるものに性交類似行為というものがございます。これはなかなかこれだけでは十分にわかりにくいところもあるんですけれども、性交類似行為とはどういうことを指すんでしょうか、御説明をお願いいたします。

○円より子君 この性交類似行為とはということに対しまして、またわかりやすい言葉で言うのも大変難しいのでございますけれども、これは法的にやはりきちんとしておかなければいけませんので、短くなりますけれども一応お答え申し上げますと、性交類似行為とは、実質的に見て性交と同視し得る態様における性的な行為をいうというふうになっております。
 そして、例えば、これは異性間の性交とその態様を同じくする状況下における、あるいは性交を模して行われる手淫、口淫行為、同性愛行為などをいう、そのように考えます。

○千葉景子君 この法律は、提案の御趣旨から考えても当然であろうかとは思いますけれども、児童買春をした者よりも児童買春の周旋をした者の方が罰金刑が重くなっております。これについてはやはり重い刑罰を科すということになりますので、なぜこれだけ刑罰の差がつけられているのか、御説明をお願いします。

○円より子君 今、千葉委員が御質問なさったものは、この法案の第四条で「児童買春をした者は、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。」というところ、それから第五条で児童買春の周旋のことが書いてございますが、「児童買春の周旋をした者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。」ということで、児童買春をした方は百万円であり、そして周旋をした者は三百万円以下の罰金ということで、この罰金刑が重いことについての御質問だと思います。
 この児童買春の周旋者といいますのは、児童買春をしようとする者とその相手方となる児童の間に立って児童買春が行われるように仲介する者ということになります。その児童買春は大人の優越的立場からの性的搾取という点では処罰の対象として当然ですが、周旋をすることはこのような児童買春を助長、拡大する点でより重く処罰する必要があるというふうに考えます。
 さらに、児童買春周旋罪につきましては、法人等の業務主に対しまして罰金刑を科する両罰規定の適用が十一条にございますので、こうしたことを考慮したことによるものでございます。

○千葉景子君 次にお尋ねいたしますが、刑法などでは強制わいせつ罪は原則として親告罪とされております。これはプライバシーなどに考慮してというところがあろうかというふうに思いますが、今回の児童買春等については非親告罪となっております。これは非常に児童のプライバシーなどとの兼ね合いで難しい部分もあろうかと思いますけれども、本罪を非親告罪とした理由は何でしょうか。

○円より子君 おっしゃるとおり、私どもも親告罪と非親告罪のことについてはさまざまに議論をし、検討をしてまいりました。
 御承知のように、強制わいせつ罪は犯罪の性質上、これを訴追し、処罰することによって被害者の精神的苦痛等の不利益がさらに増すことが考えられます。そうしたことから、被害者の保護の観点から親告罪としているものと解されております。
 しかし、児童買春罪につきましては、加害者やその背後の組織の報復を恐れて告訴できなかったり、また保護者への金銭の支払いで示談をし、告訴を取り下げさせたりするようなことが通常の性犯罪以上に多いことも考えられます。
 そこで、これを親告罪といたしますと、児童買春の相手方となった児童の保護や、また児童を性欲の対象としてとらえる風潮の抑制、児童一般の心身の成長への重大な影響の防止を十分に図ることが困難になると考えますので、このような観点から非親告罪としたものでございます。

○千葉景子君 この児童買春等の規制につきましては、これまでもさまざまな議論が重ねられておりまして、法案としても何回か取りまとめなどが行われてまいりました。その中に、自社さ共同で提案をされました児童買春等に関する規制の法案がございます。この自社さ案では絵が規定をされておりましたけれども、今回はこの自社さ案と異なって絵については特段の規定がなされておりません。この絵というのは児童ポルノには含まれないのでしょうか。その点についてお尋ねしたいと思います。

○委員以外の議員(大森礼子君) 千葉委員の御質問にお答えいたします。
 確かに自社さ案の方には絵というものが例示として明示してありましたけれども、この法案では例示から外しております。これはコミックなども入るのか、こういう議論もありましたので誤解を招かないようにという趣旨もございます。
 絵につきましては、法案に書いてありますように、「その他の物」の中に含まれ得る場合があると考えております。この法案では、児童ポルノとは、「児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したもの」とされておりますけれども、ここに言う児童というのは十八歳未満の実在する児童をいうことになります。したがいまして、絵につきましても実在する児童の姿態を描写したものであると認められない限りはこの児童ポルノには該当しない、こういう考え方をとっております。

○千葉景子君 少し細かい問題になりますけれども、第二条第三項第一号、これは一号、二号、三号と分けてございますけれども、この第二条第三項第一号に当たる児童ポルノというのはどういうものが該当するのでしょうか。

○委員以外の議員(大森礼子君) 二条三項第一号に当たる児童ポルノ、いわゆる一号ポルノという言い方をさせていただきますが、構成要件に書いてありますとおり、「児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した」「写真、ビデオテープその他の物」をいうことになります。性交類似行為については先ほど円委員から説明いたしました。
 ここでの「児童の姿態」といいますのは、児童を相手方とする性交に係るもの、それから児童を相手方とする性交類似行為に係るもの、それから児童による性交に係るもの、児童による性交類似行為に係るものの四種類ということになります。児童のこのような姿態であることが視覚により認識することができるものであれば、性器等が描写されておらず、あるいはその部分にぼかしが施されているものであってもこの児童ポルノに当たることになります。

○千葉景子君 同じく第二条第三項第二号に当たる児童ポルノ、これについても続けて御説明をお願いいたします。

○委員以外の議員(大森礼子君) いわゆる二号ポルノはどのようなものかということですが、「他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した」「写真、ビデオテープその他の物」をいうとなっております。
 ここでの「児童の姿態」といいますのは、性交または性交類似行為には当たらないものでありまして、他人が児童の性器等を触る行為に係るもの、それから児童が他人の性器等を触る行為に係るものの二種類であります。
 「性器等」の意味につきましては、第二条二項を受けまして、「性器、肛門又は乳首」となります。ただし、これらのものであって性欲を興奮させまたは刺激するものでなければなりません。児童のこのような姿態であることが視覚により認識することができるものであれば、一号と同じように、性器等が描写されておらず、またはその部分にぼかしが施されているものであっても児童ポルノに当たることになります。

○千葉景子君 続けて、三号もございます。第二条第三項第三号に当たる児童ポルノ、これも一号、二号とはまた別になっておりますので、この児童ポルノというのはどういうものか御説明をお願いいたします。

○委員以外の議員(大森礼子君) 三号に当たります児童ポルノ、いわゆる三号ポルノという言い方をしますが、これは「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した」「写真、ビデオテープその他の物」をいいます。
 具体的な例としましては、全裸または半裸の児童に扇情的なポーズをとらせた姿態を描写した写真等が考えられ、これが性欲を興奮させまたは刺激する姿態であることが視覚により認識することができるものであれば、児童の性器等が描写されておらず、またはその部分にぼかしが施されているものであったとしてもこの児童ポルノに当たることになります。

○千葉景子君 次に、この規定の中で、先ほど触れられておりましたけれども、「性欲を興奮させ又は刺激するもの」という表現がございます。これと、刑法のわいせつ物頒布罪等ではわいせつということでくくられているわけですけれども、これはどう違うんでしょうか。もし違いがございましたら御説明をお願いしたいと思います。

○委員以外の議員(大森礼子君) いわゆる二号ポルノ、三号ポルノには「性欲を興奮させ又は刺激するもの」という文言がございます。この文言と刑法上のわいせつとはどう異なるかという御質問ですが、刑法百七十五条のわいせつ物頒布等の罪に書かれてありますわいせつの意義につきましては、最高裁の判例がございまして、いたずらに性欲を興奮または刺激せしめ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいうとする判断が出ております。
 これに対しまして、この法案におきましては、「性欲を興奮させ又は刺激するもの」とされていることから、児童ポルノについては刑法のわいせつに該当しないものも含み得ることになります。もう少し詳しく言いますと、最高裁の判例、昭和二十六年五月十日、「いたずらに」それから「普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」、これをこちらの法案では要求しておりません。
 これにつきましては、児童ポルノの性質上、まず「いたずらに」については、これは過度にという意味ですけれども、これを要しないとしております。それから、「普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」であるかどうかについて論ずるまでもなく規制すべきである、こういう趣旨であります。

○千葉景子君 終わります。

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最終更新:2009年03月28日 10:43
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