国会質疑 > 児童ポルノ法 > 1999-05

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衆議院・法務委員会(1999/05/12)/上田勇議員(公明党所属)

○上田(勇)委員 公明党・改革クラブの上田勇でございます。
 きょうは、参議院の先生の皆様方には御足労いただきまして、まことに御苦労さまでございます。大変要請の強かったこの法律案が、参議院で皆様の共同提案という形で提出されまして、参議院を通過、そして衆議院の審議がきょうから開始されたということは大変すばらしいことでございまして、この間の先生方の御努力に対しまして最大限の敬意を表するものでございます。
 本法律案は、平成十年五月に衆院に同じ名称の法案が提出されまして、当時の与党、自社さの共同提案という形で提出された法案と、目的、趣旨はそれを踏まえたものであるというふうに理解しておりますが、内容におきましては相当修正されている箇所もございます。
 きょうは、この点を踏まえまして、限られた時間でありますが、皆様が共同で修正をされたその理由を具体的に何点かにわたってお伺いをしたいというふうに考えているところでございます。
 まず最初に、先ほどの枝野委員の質問でも触れられた箇所でございますが、法案の第二条第三項、児童ポルノの定義でございますが、これを変更した理由につきまして、特にこれは昨年の五月の日本弁護士連合会の意見書の中にも示されている点、例えば、衆法にありました「絵」を削除した理由、あるいは衆法ではこういう表記になっておりました、「性的好奇心をそそる」といったものが今回の法案では「性欲を興奮させ又は刺激する」という表記に変更になっておりますが、そうした形に定義の部分を変更された理由につきまして、御説明をいただければというふうに思います。
    〔委員長退席、山本(幸)委員長代理着席〕
○大森参議院議員 自社さ案と比べまして、児童ポルノのところの定義については非常に大きく変わっております。
 これはやはり限界事案につきましては、表現の自由をいたずらに規制することがあってはいけない、萎縮効果等も生じさせてはいけないということと、それから構成要件そのものの明確性ということから再検討をいたしました。
 それで、具体的にどのような経過で自社さ案を変えていったかということですけれども、まず、自社さ案の場合には、二条三項第一号におきまして、児童ポルノの定義につきまして、「性交等に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したもの」、こういうふうに規定しておりました。これは一号です。
 それで、この「性交等」という三文字について、これをどう解釈するかといいますと、自社さ案二条二項、児童買春の定義のところで出てまいります「性交等」、この後に続きます「性交等」の意味についての言葉ですが、「性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、性器、肛門若しくは乳首に接触することをいう。以下同じ。」とありますので、この「性交等」を受けて解釈することになります。
 そうなりますと、児童ポルノの定義につきまして、いろいろな児童の姿態のうち、性交または性交類似行為以外の行為につきましては、画面に描写されている行為者自身の性的好奇心を満たす目的が必要になるという非常に奇妙な形になります。そして、その目的が立証されなければ「性交等に係る児童の姿態」という構成要件を満たさないことになるのではないか、こういう疑問点が勉強会で出されました。
 ポルノかどうかを判断するにつきましては、その描写物から客観的に判断されるべきでありまして、該当性の判断を行為者の目的に係らせるべきではないということからも、もう一度検討を加えようということになりました。
 児童ポルノにつきましては、むしろ見る側の性的な感情がどうなるかが問題ですので、その点から児童ポルノを改めて定義したのが本法案の二条三項の各号であります。
 それからもう一点、先にお答えしようと思ったのですが、自社さ案には「絵」がありましたけれども、「絵」を例示から除いております。これは、先ほどの枝野委員の御質問にもお答えしたのですが、コミックとか想像した漫画とか、そういうものも入るのか、こういう問題、議論がありましたので、そういうあいまいさをなくすということで一たん例示から外しました。その上で、実在する児童の姿態を描いた絵につきましては「その他の物」に入り得る、こういう解釈をしております。
 それからもとに戻りまして、児童ポルノの要件で、自社さ案の第二条三項二号の方では、「衣服の全部又は一部を脱いだ児童の姿態であって性的好奇心をそそるものを視覚により認識することができる方法により描写したもの」と規定してございました。言ってみれば、キーワードというのが、「性的好奇心をそそる」ということとなっていたわけであります。これにつきましては、本当にこの文言でよいのかどうか、もっと厳格にする必要があるのではないかということを議論いたしました。
 そして、ここの「性的好奇心をそそる」という文言ですけれども、これはいわゆる風営法、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律にも類似の文言が用いられております。
 例えて言いますと、二条六項五号の、これは店舗型の性風俗特殊営業を規定しましたもので、「店舗を設けて、専ら、性的好奇心をそそる写真、ビデオテープその他の物品で政令で定めるものを販売し、又は貸し付ける営業」、こういう条文の中で出てまいります。そしてこの営業につきましては、同法二十七条で届け出制になっておりまして、営業届け出の基準と同じ文言を果たして刑罰法令の構成要件に用いてよいのかどうか、また表現の自由との関係からもより厳格にすべきではないかということ、これらのことを検討いたしまして、「性的好奇心をそそる」という言葉にかえて、「性欲を興奮させ又は刺激する」、こういう要件を用いました。
 また、自社さ案の第二条第三項第三号では、「専ら児童の性器又は肛門を視覚により認識することができる方法により描写したもの(専ら医学その他の学術研究の用に供するものを除く。)」こういう規定もございました。これについて、児童ポルノというのは、ポルノの語源がポルノグラフィーですから、何らかの形で見る側の性的な感情に影響を与えるものをとらえるべきではないか、こういう意見もございました。
 このような議論を勉強会の方で重ねまして、この法案の第二条第三項各号に当たるもののみを児童ポルノとしたものでございます。
○上田(勇)委員 次に、法案の第十三条、記事等の掲載等の禁止の項目でございますが、これも変更がされております。衆法案の中にありました「みだりにその情報を他に提供してはならない。」という事項が削除されておるわけですが、これを変更しました理由、それからあわせまして、この第十三条と少年法第六十一条に定めております少年のプライバシー保護との関係につきましても、あわせて御答弁をいただければというふうに思います。
○清水(澄)参議院議員 ただいまの御質問に対しましてお答えいたします。
 まず、この自社さ案の第十三条は、この事件に係る児童については、「その氏名、年齢、職業、住居、容ぼうその他当該児童が当該事件に係る者であることを推知することができるような事項を、新聞紙その他の出版物に掲載し、若しくは放送し、又はみだりにその情報を他に提供してはならない。」ということで、厳格な規定になっておりました。
 そこで、この本法案では、それが一部修正をされて、事件に係る児童については、「その氏名、年齢、職業、そして就学する学校の名称」というのが入っております。そして、「住居、容貌(ぼう)等により当該児童が当該事件に係る者であることを推知することができるような記事若しくは写真又は放送番組を、新聞紙その他の出版物に掲載し、又は放送してはならない。」というふうな規定に変わりました。
 この法案では、ある児童が事件に係る者であることを推知することができるような記事等を構成する要素をどうするかということで、この児童の氏名等を例示しております。この点が自社さ案との相違点の一つであるわけです。
 つまり、この例示した事項を報道いたしましても、それによって特定の児童が事件に係る者であることが推知されない限りそれは許されるものである。例えば、十四歳の児童を相手方とした児童買春をした者が逮捕されたというような報道は適法であるということが一点でございます。
 そして、二つ目の相違点といたしましては、自社さ案にありました、「又はみだりにその情報を他に提供してはならない。」という部分を削りました。この点につきましては、外部への公表行為のみを問題とすればもうそれで事足りるのではないかとの意見もありまして、そして少年法第六十一条の規定ぶりに合わせたものでございます。さらに、ある児童が事件に係る児童であることを推知させるような事項の例示として、就学する学校の名称を掲載してはいけないということを追加したわけでございます。
 二つ目に、少年法六十一条との関係でございますが、少年法第六十一条は、これは家庭裁判所の審判に付された二十歳未満の者及び二十歳未満のときに犯した罪により公訴を提起された者について、その者が事件の本人であることを推知することができるような記事または写真の出版物への掲載を禁ずるものであるという、こういう規定になっております。
 これに対しまして、この本法案に規定する児童買春等の犯罪の対象になった児童の氏名等が公表されますと、これが当該児童がだれであったかということが広く知られることになって、さらにこの被害児童に対して二重三重の被害を与える、そういう意味からも、この十三条の記事等の掲載等の禁止の規定は、第四条から、いわゆる子供買春を含めたポルノ、人身売買等第八条までの罪に係る事件に係る児童についての規定でありまして、その目的とするところは、当該児童の名誉とかプライバシーの保護という意味でも、児童の権利を守るという点においては、少年法第六十一条の規定の趣旨と同様であるという認識に基づいております。
    〔山本(幸)委員長代理退席、委員長着席〕
○上田(勇)委員 それでは次に、法案の第七条、児童ポルノ頒布等でありますが、これにおいては、自社さ案第六条と比較をいたしますと、「広告」という項目が抜けておりますが、これを除外された理由につきましてお尋ねいたします。
○大森参議院議員 自社さ案の六条二項から「広告」というものを除外しております。これは勉強会の方でも、ここに言う「広告」というのはいかようなものなのか、映像、写真等を使うものもありますし、文字だけのものもありますし、いかなるものを前項と同様に処罰すべき広告ととらえるか、さまざまな議論がございました。
 それで、「児童ポルノの頒布、販売、業としての貸与、又は公然陳列に係る広告」、これについて、意義とか適用範囲についてさまざまな角度から検討した結果、児童ポルノの頒布等に係る広告につきましては、その大半のものについて、児童ポルノの頒布等の罪、これの共犯、これは刑法の総則規定でありますけれども、この共犯として処罰し得ることから、あえてその共犯形態のものを独立した犯罪として構成する必要はないと考え、処罰規定を設けなかったものであります。
○上田(勇)委員 何点かにわたりまして質問させていただきましたけれども、当初衆議院の方に提出されました法律案について、若干あいまいであった点、不都合であった点、皆様方大変勉強会等を熱心に重ねられまして、そういった点を改善されたということがよくわかりました。刑罰法規であるだけに、そうした熱心な御討論によって修正が行われたということは大変評価すべきことでありますし、今日に至るまで、提出者の皆さん、また関係の皆様方の御努力に対しまして敬意を表するものでございます。
 多少時間が余っておりますが、私の方からの質問はこれで終わらせていただきます。
○杉浦委員長 次に、木島日出夫君。
○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。
 発議者の皆さん、本当に御苦労さまでございます。私自身も皆さんと一緒にこの法律作成過程に携わった一人として、日本が世界のポルノの発祥地だなんて言われないように、そしてまた、今の日本の子供たちを性的搾取から守るため、本当に立派な法律をきっちりつくるということが大事だと思っております。そんな立場から質問をさせていただきます。
 しかし、この法案は、基本的には刑罰法をつくるというわけでありますから、やはり二つの側面からきちっと審議するということが非常に大事だと思います。
 第一の側面というのは、何といっても脱法行為を許さない、法律の実効性をきっちり高める、そういう側面からこの法律は大丈夫だろうかという視点と、もう一つは、逆の立場でありますが、捜査当局、取り締まり当局の濫用によって、被害者であるべき子供がセカンドレイプのような、逆に加害者として扱われてしまったり、十八歳未満の子供たち、男性の中学生、高校生が逆に加害者として不当な捜査を受けるようなことがあってはならぬ、その歯どめをどうきちっとつくるかという、やはりこれは相反する立場なんです。そういう二つの側面から、児童買春、児童ポルノについて質疑が必要だと思いますので、基本的には賛成なんですが、そんな立場から、時間の許す限り幾つか質問をしてみたいと思います。
 最初に、児童買春の問題であります。
 もう同僚委員からいろいろ聞かれておりますから、重複すること全部はしょりまして、私が一番心配しているのが、この法律が成立した後、十八歳未満の子供たち同士、中学生同士、高校生同士の男女の性的交際が、果たして性交、性交類似行為、わいせつ行為として――当然対償の供与というのが必要なんですが、それはあり得ると思うんですね。お金にしろ、利益供与にしろ、チョコレートにしろ、あると思うんです。そういう子供たち同士のこのような性的行動が果たしてこの法律によって児童買春としての適用を受けないという保証があるのだろうか、その問題であります。
 法案の第二条の児童買春の定義、それから第四条の児童買春の基本法文、そこからだとどうもなかなか読み取ることはできないのですが、まず発議者は、その私の質問あるいは心配に対して、どうお答えになるのか。
○円参議院議員 木島委員の御質問にお答えさせていただきます。
 先生のおっしゃるとおり、子供たちを性的搾取する、性的虐待するというような行為はあってはならないことですし、また、その子供たちが犯罪者のような形で取り締まられるようなことがないようにすることがこの法律の目的でございます。そこで私どもは、児童買春という、買春という言葉はまだ皆さんに余りなじみがないかもしれませんけれども、売春でもなく、売買春でもなく、買う春と書きまして買春というような形で今回の法律をつくらせていただいたところでございます。
 先生のおっしゃる子供たち同士の性的交際が適用除外となる保証はあるかという御質問でございますけれども、児童が真摯に交際している場合は、児童と性交等をしていても、そのことについて、反対給付を提供しているとは言いがたいことが多いと思います。それで、対償の供与の要件に該当しない限り児童買春には当たらないと私どもは思っておりますが、交際の間にプレゼントを渡すとか、そういったことももちろんあるかと思います。それが対償の供与になるかどうか、これはそのプレゼントが経済的に見てどれくらいの価値があるかなども総合的に勘案して、対償であると認められる場合に限り児童買春に当たるのかもしれませんが、多分先生の御質問の趣旨の、子供たち同士が恋愛関係にあってという場合には児童買春に当たらないと思われます。
○木島委員 子供たち同士、もう高校生や中学生ですと、当然性的自己決定権はありますし、恋愛感情も生まれてまいります。真摯な男女間の交際というのはあり得ることだし、現にあると思うんです。そういう場合でも利益の供与ということはあり得ると思うんです。
 今の御答弁ですと、対償の供与またはその供与の約束というその概念から、真摯な子供たち同士の恋愛の結果としての性的行為、性交あるいはわいせつ行為、類似行為は対象にならないと解釈できるという答弁でありますが、私はまだそこは大いに心配なところであります。
 なぜ私はこれを言うかといいますと、実は福岡県青少年保護育成条例事件という有名な事件がありまして、最高裁の昭和六十年十月二十三日の判決があるからであります。
 ちょっと御紹介しますが、これは二十六歳の被告人の男性が十六歳の少女とホテルの客室で性交した行為が福岡県青少年保護育成条例で禁じているいわゆる淫行に該当するとした判決であります。何が争われたかというと、中心問題は刑罰法規の不明確性と広範性、非常に不明確だということで幅が広い、これが憲法三十一条の規定などに反するのではないかという上告理由が退けられた判決であります。
 そこで最高裁判決は言っているんです。
 「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である。
 最高裁判所の判決の中に、またこういう言葉もあるんですが、「「淫行」を広く青少年に対する性行為一般を指すものと解するときは、」中略しますが、「婚約中の青少年又はこれに準ずる真摯な交際関係にある青少年との間で行われる性行為等、社会通念上およそ処罰の対象として考え難いものをも含むこととなって、その解釈は広きに失することが明らか」である。
 要するに、そういう広い概念で淫行という言葉をとらえたら、それは憲法上問題だということを言った上で、最高裁判決は淫行という概念について二つの面から絞りをかけたんですね。一つは、不当な手段による場合、二つ目には、男性の方でしょうか、性的満足のための対象としてのみ扱う場合という二つの絞りを淫行という解釈に持ち込んで、それによって辛うじて淫行は憲法違反にならないという判断をしたわけであります。大変画期的で有名な判決なんです。
 そういう青少年保護条例の淫行の解釈から辛うじて合憲にしたんですが、そんな観点からこの法案を振り返って児童買春の定義を見たときに、大丈夫だろうかな。真摯な交際か真摯でない交際かを、対償の供与の概念で区別することはちょっと法的には無理なのじゃないかなというふうに私は思うんですが、いかがでしょうか、率直に。
○大森参議院議員 これは先生、二条、児童買春の定義がこれでは不十分ではないか、青少年に不当な扱いになるのではないか、こういう御質問と理解してよろしいでしょうか。
 もちろん、今先生がおっしゃった福岡の青少年保護育成条例につきましては、先生がおっしゃったとおり、淫行につきまして、性交または性交類似行為という限定解釈を加えた上で憲法三十一条に反しないとしたものであります。それから、青少年保護育成上、ほかにも青少年の性的自由を侵害するおそれがある、運用には慎重な配慮が必要であるとしているような判例もございます。
 こういうことも考えまして、これは売春防止法にもたしか同じような規定があると思いますが、性的自由ということを配慮した規定だと思います。この点につきまして、「適用上の注意」として、我々は第三条で、「この法律の適用に当たっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。」ということで、表現の自由の部分のみならず、やはりこういう性的自由というものを慎重に考慮しなくてはいけないということです。
 それから、この法案では、「対償を供与し、」としてありますから、要するに対償によりまして、これらの行為が反対給付になることと、それによって性交とかがなされることでありますので、通常のおつき合いをしているような場合ですと、いろいろな、先ほど円委員が枝野委員の質問にお答えになりましたけれども、それは本当に性行為等の反対給付と言えるかどうかという、個々の判断になると思います。
 それで、通常、ふだんおつき合いがある場合でしたら、その反対給付として抽出できない場合もあると思いますので、具体的な事案に即しましては、そこの構成要件の該当性の判断を的確にしていけば、さほど不当な結論にはならないというふうに考えております。
○木島委員 実はこの法は親告罪にしていないんですね。被害者の告発を要件にしていないというのが強姦や強制わいせつと決定的に違うところで、私もそれに賛成なんです。それだけに、親告なしに警察が関与できるということですから、心配はきちっと法的に封じ込めておくことがやはり大事だと思うのです。
 私は、一番心配なところなので、全国のいろいろな青少年保護育成条例を調べてみましたら、たまたま当衆議院に設置された衆議院の青少年問題に関する特別委員会の調査室がつくった資料の中の東京都青少年健全育成条例を見ましたら、やはりそれは歯どめがかかっているんですね、東京都条例は。
 十八歳未満の青少年の淫行について法で規制しているんですが、第十八条の二というところで、「何人も、青少年に対し、金品、職務、役務その他財産上の利益を対償として供与し、又は供与することを約束して性交又は性交類似行為を行つてはならない。」これは本法と同じなんです。しかし、その東京都条例の大変すばらしいと思ったのは、第三十条というところに、「この条例に違反した者が青少年であるときは、この条例の罰則は、当該青少年の違反行為については、これを適用しない。」と除外しているんですね。
 ですから、加害者たる男の子が十八歳以下の場合には、この東京都条例の淫行の処罰規定は除外するという、これを入れているのですね。神奈川県条例なんか見ましたら、これは入っていません。これは、歯どめをかけたのじゃないかと私は思うのですね。
 だから、確かに、十八歳以下の子供たち同士の性交または性交類似行為の中にも、私は率直に言ってほとんどが真摯な恋愛感情から発する性交だと思うのですが、中には、それはやはり法で規制しなければいけないような、この法律が処罰を求めているような類型の性交または性交類似行為もあるかもしれませんが、できたら、十八歳未満の子供たち同士の性交、性交類似行為等だけは処罰から外してやった方がいいのではなかろうかなと思います。
 私もこの法案づくりに参画した一人として、そういう発言は余りしなかったので申しわけないのですが、東京都条例なんかにはそういう歯どめがかかっているのを考えますと、やはりそういう点を考えてもいいのじゃないかなと今思っているのですが、これは率直な御意見を聞かせてください。どなたか、だれでもいいですから。
○堂本参議院議員 私も同じようなことを大変危惧しております。
 私は、東京都条例、随分勉強したつもりなんですが、今度の法律の中でそこのところきちっと書き込まなかったということを今指摘されて、三年後の見直しのときに検討すべき事項としてぜひ考えるべきではないかというふうに思います。
○大森参議院議員 答弁者の間で意見が違っているじゃないかと言われると困るのですが、実は意見が合わなかったのでこういう規定がなかったということもございます。
 それから、今木島先生がおっしゃるのは、十八歳未満の児童の真摯な交際までも侵害したのではないかということですが、これは先ほど申しましたように、この二条の児童買春の定義、これを厳格に解釈していけば、物のやりとりによって性行為をするかどうか、こういう行為が決められること自体を真摯でないことも示しておりまして、ここの対償供与、それからその因果関係があって性交という、この構成要件の中で、真摯な交際というものは除外されるものと考えております。
 それからもう一つ、例えば十八歳未満、児童については罰則は科さないというふうな規定を設けるべきではないかということですけれども、実は、この児童を十六歳未満とすべきか十八歳未満とすべきか、こういうこともございました。それから、十八歳未満、例えば十七歳、十八歳に近い年齢もありますが、幅があるわけですね。
 そして、児童の性的搾取及び性的虐待から児童を守るということにつきましては、やはり児童自身もそういう行為をしないように学ばなくてはいけないと思っておりますし、そういう児童を性的虐待とか性的搾取の対象としないような健全な社会の建設につきましては、やはり十八歳未満の児童にも、年長の児童となりますけれども、学んでいただかなくてはいけないし、協力していただかねばならないというふうに考えております。
 いずれにしましても、一応これでスタートいたしまして、三年後の見直しのときに、運用上不当な結論が出るようであれば、そのときに再検討させていただくことになると思います。
○木島委員 今、答弁の中から、発議者の皆さん方は一致して、やはり十八歳未満の子供同士の真摯な恋愛感情とその結果としての性交等についてはこの法は罰則を求めていないという意見であるとお聞きいたしまして、私も大賛成であります。そのようにこの法案が運用されることを、まず私も期待をしたい。
 もう時間が迫っておりますので、次に、逆の立場、児童ポルノについてお聞きしたいのです。
 逆に、児童ポルノについては、やはりきちっと法律の実効性を高めていくということがある面では大事だという点で、一点だけお聞きしますが、私、この法律が成立すると、必ず法律をくぐり抜けようとする者が出てくると思うのです。その一番の手法として、児童の写真の一部だけを切り取って、他のものとの合成写真をつくり頒布する、合成ポルノ写真だと思うのですね。
 さっき、枝野委員からは、顔だけが実在する子供の写真で、下の方は絵という場合が質問されまして、それは当たらないという御答弁をいただきましたが、私は、下が絵じゃなくて、全部写真につくられると思うのです。本当に丸裸の子供の写真がつくられる。わいせつな姿態の写真がつくられる。顔だけが実在する人物で、下の方は別の人物の写真で合成した。今合成技術は非常に進んでいますから、全く区別できない。それはやはり取り締まらなければいかぬと私は思うのですね。
 そこで聞くのですが、これは、保護法益との関係がありまして、参議院の質疑を聞いてみましても、この児童ポルノ罪の保護法益は、決して刑法百七十五条のわいせつ物頒布罪の保護法益である社会的法益としての性秩序ないし健全な性的風俗ではない。刑法百七十六条の強制わいせつの保護法益である個人の性的自由、要するに個人を守る、これが保護法益だと私は思っているわけなんですが、そういう関連で、この合成ポルノを児童ポルノの定義に入れるのか入れないのか。一括して立法者の御意見をお聞きしたいと思うのです。
○大森参議院議員 きょうの絵のところで、それが実在する児童の姿態であり、写真、ビデオテープに準じるものであるならば「その他の物」に入り得るといたしました。
 そのときに、実在する児童の姿態でなくてはいけないわけですから、今先生がおっしゃったような疑似ポルノというのは、例えば首から上が十五歳のAという少女、ここから下が十三歳のBという少女、これを合体したものになると思います。そうしますと、これを全体として一個の人間の姿態と考えてみました場合に、その者は存在しない、実在しない姿態ということになりますので、それがいわゆる疑似ポルノなわけですけれども、この法律の予定する児童ポルノには該当いたしません。
 ただ、その場合でも、その姿態というものが非常に卑わいなものであるならば、刑法上のわいせつ物ですか、わいせつ図画、これに入ることもあろうかと思います。
 それからまた、こういう疑似ポルノで、例えば、実在する少女の顔を使って、下がいろいろな卑わいな姿態、こういうものが蔓延しますと、やはり実在する頭だけ使われる少女といいますか、これは心身に有害な影響を与えるということもあると思いますので、こういうことについてはこれからの課題であるというふうに考えております。
 これは、勉強会の中でも、こういう疑似ポルノをどう扱うかということが問題となったわけですけれども、今回については結論に至りませんでしたので、この法案のような形にさせていただきました。
○木島委員 時間ですから終わります。また金曜日にいろいろ質問したいと思います。

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最終更新:2008年12月05日 05:43
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