国会質疑 > 児童ポルノ法 > 2009-03

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衆議院・法務委員会(2009/06/26)/丸谷佳織議員(公明党所属)

○山本委員長 次に、丸谷佳織君。

○丸谷委員 公明党の丸谷佳織でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 本日、与党案そして民主党案がこの法務委員会で審議入りをしましたこと、また、この審議入りをするまでに、それぞれのいろいろな意見をまとめてそれぞれの案をまとめてこられました皆様に心から敬意を表したいと思いますし、また、質問の時間を与えてくださいまして、心から感謝を申し上げます。
 今回の法務委員会での審議入り、本当に待ちわびていた方がたくさんいらっしゃいます。私も、被害者の方ですとか、あるいはNGOの団体の方とか、いろいろかかわらせていただきました。その中で、本当に切実な思いで、被害に遭っている児童の皆様、あるいは被害に遭ったという経験を持っている方々からも、お手紙を拝見しております。
 被害を拡大させないためにも、大まかな御紹介をさせていただきますけれども、大学生の女性、小学生のころから親戚のおじさんによって性的な虐待を受けていた、それを写真に撮られていた、しかしながら、自分は何をされているのかわからないから、本当に笑顔でその写真に写っている、今、自分はインターネットを使えるような世代になって、自分で、もしかしたら自分の写真がインターネットの中であるんじゃないかと毎日インターネットを検索せずにはいられない、本当に自分の将来がつぶされたような思いがするといった声も届いております。世の中を変える力のある人がいるのであれば、どうか助けてくださいというお手紙も。
 本当に、きょう、ようやくこの審議に入れたこと自体をこの方たちがどんな思いで喜んでいただいているのか、また、ではこの被害に遭った自分をこれからどのような形で法律は救ってくれるのかという期待を持って見ている、そういった方たちのためにも、この法務委員会の審議が本当に、机上の空論で終わることなく、充実したものになるようにという思いで私も質問をさせていただきたいと思います。
 まず、与党の提案者にお伺いいたします。
 九九年に議員立法でようやくこの児童買春、児童ポルノ禁止法が成立をいたしました。実際には、この法律が成立をしたことで、コンビニですとかあるいは書店で児童ポルノの購入ができなくなったわけでございますけれども、今は、それから十年たちまして、インターネットあるいは携帯での技術が格段にアップいたしまして、より秘匿性を高くした中で、個々人のレベルに児童ポルノ画像がおりてきているという状況でございます。そういった国内の状況、また、この十年間、国際社会は児童ポルノへの取り組みを一層深めておりまして、日本に対する取り組みの不足というところが指摘をされているところでございます。
 まず、この法の改正の理念ともつながると思いますけれども、改めて、今回の法改正で何を変え、何をしようとしているのか、この点について御説明をしていただきます。
    〔委員長退席、大前委員長代理着席〕

○富田議員 今、丸谷委員が最初にお話しされましたように、被害に遭われた方の思いというのは本当に大変なものがあると思います。いつ自分の映像が他人に見られるのか、それをずっとおびえながら暮らしていかなきゃならない、この思いというのは多分我々の想像を絶するものだというふうに思います。そういった意味で、委員会の審議が始まって、一刻も早い改正案の成立を、被害者の方、また、それを支援されているNGOの皆さんが望んでいるというのは気持ちとしてもわかります。
 我々自民党、公明党、与党は、昨年の六月十日に改正案を提出させていただきました。それまで公明党としてもプロジェクトチームで議論をしてきました。丸谷委員がその中心。また、与党としてプロジェクトチームで議論させていただいて、森山先生の方から提案理由の説明でお話ありましたけれども、最初の成立からもう十年たってきている、インターネット社会が進展して、当時とまたかなり状況は変わってきています。そういった中で、どういうふうに被害者を救っていくのか、また被害の蔓延を防いでいくのか、そういったことを考えたときに、単純所持が禁止されていない、そういった状況が被害を蔓延させている一番の原因になっているのではないかというところを、特にNGOの皆さんから与党PTにも御意見をいただきました。
 そこをどうにかしなきゃいけないというところで今回の法改正の議論が始まったわけでして、十六年改正時にも、三年を目途として改正しようというような規定がされております。先ほど来、葉梨委員の方からその経過もお話ありましたので、我々としては、何とか単純所持をきちんと禁止して、また、自己の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノの所持に対して刑事罰もきちんと置かせていただいて、児童ポルノについてさらに厳格な規制を設けて、児童の権利の擁護に資する法律にしていきたい、そういう強い思いで今回の改正案を出させていただいて、今審議しているところであります。

○丸谷委員 一方、民主党案には、先ほど来議論になっておりますけれども、単純所持ということではなく、反復あるいは有償での取得というところで規定をされました。
 枝野議員も、この法律に当たっては最初からずっとかかわってこられて、何が問題で、何をどうしていかなければいけないのかというところを踏まえて十分に議論をしていらっしゃると思うわけですけれども、二〇〇七年の内閣府の世論調査では、単純所持を規制すべきだ、あるいは、どちらかといえば規制すべきという世論が九割を超えております。また、昨年リオで行われました第三回の児童の性的搾取に反対する世界会議では、各国に、児童ポルノの製造、販売、配布、所持のみならず、インターネット上のアクセスや閲覧さえ法的に禁止や罰則の対象とするよう求める宣言も採択をされております。
 昨年、ユニセフ協会あるいはNGOの皆さんが中心となりまして、児童ポルノに対する働きかけの署名を集められました。実に全国で十一万人を超える方が署名に賛同してくださったわけですけれども、そこのイの一番、一丁目一番地が単純所持の禁止の法制化でございました。
 こういった国内外の声にどういうふうにこたえていこうとしているのかが、今の議論を聞いていても私にはわかりません。この点についてお伺いいたします。

○枝野議員 単純所持を違法化し、それに罰則を加えなければならないという意見、そして思いというものは私も共有をいたします。
 ただ、問題は、まさにネット社会ということの中では、本人の知らないうちに、あるいはほとんど気づかないうちに、いわゆる児童ポルノに該当するような映像を自己の所持のもとにしてしまう、あるいはさせられてしまうというケースは簡単にできる、こういう状況にあります。
 そうした中で、みずからそうしたものを集めて、そういったものにお金を出して、そういったものにアクセスをするという人については可罰性があるというふうに思いますけれども、どこかから勝手に一方的に送りつけられてきた、その映像について、しっかりと完全に消去して除去しないと処罰をされる可能性がある。しかも、それをおれは勝手に送りつけられたんだとかということを抗弁するといっても、結局それは主観的意思、目的と故意という、密室の中で行われる自白によって実は大部分証明せざるを得ない要素である。
 そういった現実を考えたときには、一方で刑事法は、処罰すべき人間をしっかりと処罰しなければならない一方で、処罰に値しない人間を処罰してはいけないということがあります。その両面を両立させようということの中で私どもは苦慮をいたしまして、最終的に、今回提起をいたしましたとおり、その取得のプロセスを客観的に立証するということによって、販売目的等の目的を有さない所持の大部分といいますか、ほとんどはきちっと処罰することが可能であり、なおかつ、処罰してはいけない人が間違って逮捕されてしまうなどということがないように、両面を両立させることができる、そういう知恵を絞ることができた、こういうふうに考えています。
    〔大前委員長代理退席、委員長着席〕

○丸谷委員 通告をしていないんですけれども、今出てきた議論についてちょっと与党の提案者にお伺いをしたいと思います。
 今、目的所持ということで、自白の強要あるいは冤罪に対する懸念という意見が出てまいりました。しかしながら、既に刑法の中には目的所持の罪というのはございます。例えば刑法百七十五条のわいせつ物販売目的所持の罪というものがございます。これは、実際には、自白に頼ることなく、外形的な理由から判断しているわけでございまして、今までのそれぞれの刑法に照らし合わせても、しっかりと、自白に頼ることなく、また強要することなく、冤罪をということの懸念なく運用されている、私はこのように思うわけでございまして、児童ポルノに限って、この所持の目的について、自白の強要、冤罪というところでのこの目的所持というものが制定されないというのはちょっと違うのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○富田議員 今、丸谷委員がおっしゃるとおりだと思います。
 枝野先生の御答弁を聞いていますと、所持の故意と性的好奇心を満たす目的というところが、あたかもすべて内心の問題であって、それが自白として強要されるんだというような御答弁に、ちょっと後ろで聞いていると思えるんですが、所持をしているという故意も、その目的も、それぞれさまざまな客観的状況から認定されるものであって、すべて内心で決まるわけではありません。
 これまでのいろいろな刑法犯、またそれぞれの司法の過程においても、客観的な事情から認定される内心の問題だと思いますので、今、枝野先生の答弁を聞いていますと、やはり可罰性のある所持というのもあるといいながら、冤罪を生む可能性があるからそれは防がなきゃいけないんだ、その防がなきゃいけないというのはわかるんですが、可罰性がある所持を認めておいて、その所持が違法でないというのは、ちょっと我々与党からしたら理解に苦しむなというふうに思います。
    〔委員長退席、大前委員長代理着席〕

○丸谷委員 民主党案では、有償または反復の取得罪がございます。逆に言えば、有償または反復でなければ児童ポルノの取得というのは合法だというお墨つきを与えるように私には思えますが、これについての見解はいかがでしょうか。

○枝野議員 まず、先ほどのお話で、販売目的所持という場合には、販売目的というのは、販売をしようとしていたというような客観的な事実から、その目的を類推することが容易です。ただ、しかし、今回のような、性的好奇心を満たす目的ということについては、それこそ入手のプロセスとか、大量に持っている、大量に持っているということは、逆に言えばその入手のプロセスを立証することが容易です、いずれにしても、その取得のプロセスを立証しないと、性的好奇心を満たす目的ということを客観的に立証することはほとんど不可能であると私は思っています。
 したがって、結局は、取得の部分のところをしっかりと処罰することができれば、自白に頼らずに立証可能、事実、単純所持については処罰可能であるというふうに考えています。
 一方で、今のお尋ねですが、一回限りだったらいいのかと。一回限りの取得というのもいろいろあります。つまり、例えば、皆さんもほとんどの方がインターネットをお使いだろうというふうに思いますが、メールで勝手に送られてくるケースだけではなくて、インターネットのいわゆるネットサーフィンをしていますと、わけのわからないクリックボタンがたくさんあって、そこを知らないうちに、間違ってクリックをしてしまって変な映像が飛び込んできていたなんということは、皆さんも御経験あるんじゃないかと思います。それも、取得ということからいえば取得に当たってしまいます。では、その中に児童ポルノが入っていましたということが可罰的な行為か、違法な行為かといえば、それはそうではないというふうに思います。
 なおかつ、これも、間違ってクリックしたのか、それとも、なるほど児童ポルノだと思ってクリックしたのかなんということは、そのクリックをしたという客観的な事実の立証だけではわかりません。つまり、主観的な要因、つまり自白に頼らざるを得ない部分で、意識的にそのボタンをクリックしてしまったのか、それとも、何かよくわけのわからないところで間違ってクリックしてしまったのかということが分かれてくるという話ですから、やはり、これを処罰対象にするということは、処罰範囲が広きに過ぎることになるというふうに思います。
    〔大前委員長代理退席、委員長着席〕

○丸谷委員 私の質問は、有償または反復でなければ児童ポルノの取得というのは合法ということですかという質問でございました。
 例えば、ただで一回に百枚の児童ポルノを取得した、これは有償でもございませんし、反復でもございません。これは民主党案では合法になるわけですか。

○枝野議員 刑罰法規を科するに値をする違法ではないというふうに思います。
 というのは、百枚といっても、例えば雑誌のようなものを百冊だったら、それは違法性があるかもしれません。しかし、まさにインターネット上などでは、一度に百枚の映像がどんと送られてくるとか、クリックしたらどんと来てしまうなんということは日常的にあり得るケースでありますから、量が多いか少ないかということでは一律にはいけない。一回だけだったら、よくわからないうちに何か手に入ってしまった、自分の管理下に入ってしまったということは十分あり得るというふうに思いますので、そこは量ではなくて、やはり、ああ、この人は意識的にこれを集めているんだなということが客観的状況から類推できる、そういう要件を課さなければならない、こういうことです。

○丸谷委員 わかりません。
 今、枝野議員は、送られてきた、送られてきたという前提でしか御答弁していただかないんですね。
 見たい、自分が児童ポルノを見たい、なぜなら自分は児童の裸体あるいはそういったものが好きだからということで見たい人が、今回、民主党案が成立した場合、ああ、これは民主党案であれば、だれか小児性愛のグループの皆さんから、見たいものに関してただで一回に百枚送ってもらう。送る方に関してはこれは罪に問われるわけですけれども、では、取得した人はこれは合法行為になるということですね。

○枝野議員 議論がかみ合っていない理由が大体わかってきたんですが、自分が見たいと思って所持に至った人なのか、それとも間違って所持に至った人なのかということの区別は、それは客観的には、一義的にはすぐにはわからない。わかりませんよね。
 それは、特にネット上などが一番典型ですけれども、自分が小児性愛の趣味があって、そういった児童ポルノを見たいという意思でネット上から例えばそういったものを取得した人と、何か知らないボタンを押してしまったらそんなものが送られてきてしまった人というのはどうやって区別をするのか。結局は、その区別をする方法がないじゃないですか、自白以外に。
 自白以外にあるとすれば、この人はお金を払ってでも手に入れたということは、それは少なくともかなり違法性の高いかもしれない、お金の価値のあるものかもしれない、そういったことについての推定が働きます、意識的に入手をしたということが働きます。あるいは、同じようなことを繰り返していれば、間違って何かボタンを押しちゃってということではないということが類推できます。
 でも、一回に大量に入手をした、入手をしたというのは、手元の、自分の管理下に入ったという人が、そのことだけで、小児性愛者だからそういったものを大量に入手したのか、それとも間違って自分の管理下に入ってしまったのかということはわからないじゃないですか。どうやってわかるんですか。だれがどうやって判断するんですか。わかりようがないんですよ。
 それは、この人は小児性愛者、自分で私は小児性愛者だと言えばわかりますよ、だけれども、それ以外に何か区別のしようがない。結局は、繰り返し取得をしたり有償で取得をしたりすることによってという要件をかけることによって、ああ、なるほど、この人は間違えて手元に入ったのではなくて、本人の意図で手元に入ったということが客観的証拠から判明できるというふうに考えているんです。

○丸谷委員 私もちょっと理解のスピードが遅いのかもしれないんですけれども、今の御答弁を聞いていますと、結局、何の目的で取得をしたのかというのはわからない、自分で取得をしたのかもわからないし、送られてきたのかもわからない、なので、例えば一回に百枚児童ポルノを取得したとしても、それは刑罰を科すに当たらないということを御答弁されたということですね。

○枝野議員 正確に答えれば、刑罰を科すに当たらないのではなくて、刑罰を科するに当たるものかどうかが判断不可能であるというふうに判断しています。

○丸谷委員 そうしますと、そういうことは、児童ポルノの存在そのものを肯定するものにつながってしまうんだと私は思います、その法改正によりますと。だって、見たい人にとっては、反復で有償でなければ、取得をしても、それはどうなのかわからないから国はノータッチだよ、逆に、一回に百枚だったら取得できるよということを指南するような法改正につながってしまうというふうに私は思います。
 また一方で、単純所持というものに関して、警察権力が悪用されるという可能性への懸念をそこまでお示しになるのであれば、警察権力の悪用に対しては、それ自体真っ正面から取り組むべき問題であって、所持というものを容認することで懸念を払拭するべきではないと私は考えます。別の問題だというふうに思いますが、この点については御答弁いただけますでしょうか。

○枝野議員 私、理事じゃありませんので、理事の方から間接的に伺っているので正確ではないかもしれませんが、だから可視化法の審議を少なくとも同時並行でやるべきだと。つまり、これは主観的な要素の問題が問われているので、基本的には自白をとる、主観的な要因は自白をとることが一番簡単なんですから。自白をとった上に、それに合ったところで、客観的な状況があったとしても、それに合わせた自白をとらないと、故意とか主観的な性的好奇心を満たす目的というのはなかなか立証は困難ですから。
 いずれにしても、自白が大変大きな問題になる構成要件に与党案ではなっている。その自白がなぜ例えば強要されたり、あるいは事実と違う自白がなされたりするのかといえば、自白をとるための捜査が密室の中で行われているからである。だから、この部分のところを世界的なグローバルスタンダードにまさに合わせましょうよということで可視化の法案を出しているにもかかわらず、こちらの審議には入らないでこちらだけやる。少なくとも同時並行することが必要だというふうに思います。

○丸谷委員 私も、法務委員ではございませんし、理事でございませんので、委員会の運営についてはよく存じませんけれども、今おっしゃったこととこの法律の審議というのは別問題だと思います。いろいろなことを背景にして、この単純所持についての前進あるいは解決を図れないということ自体が、先ほど質疑の冒頭で申し上げました彼女たち被害者の声にこたえることになるのか。今、例えば可視化法案が同時並行で入らないからということで、あなたたちの写真を今所持している人は合法なんですよ、あるいは、これからあなたたちの写真を一回に百枚取得すること自体は法で規制されませんでしたという説明で彼女たちの思いにこたえることができるのかというと、私はやはりそこにはかなり大きな違和感を覚えるところでございます。
 民主党案で、有償または反復での取得罪というのを制定されました。この罪が制定されても、過去に所持をしているものは破棄はしなくてもいいわけですね。この点を確認させていただきます。

○枝野議員 児童ポルノということで取り上げられている、まさにおぞましいといいますか、児童に対する性的な虐待、ひどい虐待に当たる典型的な児童ポルノだけが対象であるならば、それは過去にさかのぼってすべて廃棄をしろということもあり得るかというふうに思いました。
 しかしながら、少なくとも、現行法の要件などを考えると、本法施行前には、十八歳前後の、特に女性の乳首等が露出をした例えば雑誌のグラビアや映画や、あるいは一般の書店で並ぶような書籍、それも大手出版社から、具体的に言いますと、これが出版時は十八歳でしたが、撮影時は十七歳なのか十八歳なのかわかりませんが、宮沢りえさんの「サンタフェ」などは典型だと思いますが、こうしたものが過去にさかのぼってたくさんあります。
 これらをすべて、持っている人たちに、これが現行法の、先ほど来、ある意味ではどちらの定義だとしてもあいまいさが若干残る、その定義の児童ポルノに当たるかどうかを判断して、持っているものは全部捨てろというのは、これはやはり無理を強いるものであるというふうに判断をいたしまして、それを仕分けして、もしも捨てろということが可能な法律構成ができるならばそれを否定するものではありませんが、やはり残念ながらそれは不可能であろうというふうに思っています。
 少なくとも、これから提供だけではなくて取得なども処罰をされるということになれば、こうしたものが流通をして広がっていくということについては十分に抑えることができると思っています。

○丸谷委員 これからの取得は防げる、一回に百枚の取得は防げないけれども、これから反復をして有償での取得は防げる、しかしながら、今までの児童のポルノについて、被害者に対して、今までの持っているものは防げませんよということだと思います。これでは私は、児童の権利を守る、児童ポルノを撲滅するという視点からは全く不十分だというふうに考えます。
 また、次の質問に移りますけれども、今回、民主党案では、法律の「児童ポルノ」という名前を「児童性行為等姿態描写物」という変更をされました。私は、これは国内外ともに誤った政治的なメッセージを与えてしまうのではないかということを懸念しております。
 国際会議の場におきまして、今、現在法の公定訳というのは、チャイルドポルノグラフィーというものが使われています。最近、国際社会の中では、チャイルドポルノグラフィーにスラッシュ、そしてセクシュアル・アビューズ・イメージという形の表現になっておりますけれども、例えば、児童性行為等姿態描写物、これを国際社会で議論する際に、日本はこういった法律になりましたということで、タイトルをどのように英訳されるかわかりませんけれども、全く今まで使っていた児童ポルノというところからかけ離れてしまって、日本は何をやっているのか、後退してしまっているのではないかというイメージを与えることになるかと思いますが、いかがでしょうか。

○西村(智)議員 児童ポルノの名称の変更でございますけれども、児童ポルノに係る犯罪が被害児童に対する性的虐待行為であると冒頭申し上げました。これは委員共通の思いだと思いますが、そういう認識のもとで、児童ポルノがなぜ悪質な犯罪なのかという根拠を明らかにするために行うものであります。むしろ、児童への権利侵害行為である児童ポルノへの取り組みの必要性を強調するためのものであって、この点は強調をさせていただきたいと考えております。
 個別の児童の権利擁護だけではなく、全体としての児童とか風潮といった趣旨を盛り込んで考えていこうという方向もあるようではありますが、民主党としては、あくまでも実在の児童の保護のための政策を充実させていこうという考え方でありまして、児童ポルノの名称の変更、既存の罰則の引き上げ、そして、ここは重要なところだと思いますが、被害児童の保護の充実など、すべてこのような考え方に基づいて改正案を提出しているところであります。
 また、国際的にも、先ほど委員おっしゃったように、セクシュアル・アビューズ・イメージズ、チャイルド・アビューズ・イメージズなどという児童虐待画像という言葉が用いられるようになってきております。この言葉は、児童ポルノが児童に対する犯罪行為を記録したものであるという現象の深刻さを反映しておりまして、また、そのことを強調するために使われる言葉です。
 民主党案においては、このような国際的動向も踏まえて、定義規定の内容を正確に反映する趣旨を含めて、用語の改正、見直しを行ったものでございます。

○丸谷委員 例えば世論調査を今後行うとしても、児童性行為等姿態描写物に対する質問ということを言われても、国民の皆さんは、何なんだろうと、全くわからないことになってしまうのではないかと思います。こういった定義も非常に狭めたものに今回民主党案はなっていますし、この法律の「児童ポルノ」という名前も取って違うものにしてしまう、非常に私にとっては目くらましをされたような法改正になっているのではないかというふうな感想を持っている次第でございます。
 最後に質問をさせていただきたいと思うんですけれども、民主党の提案者の方に質問をさせていただきたいんですが、ちょっと通告をしていないので申しわけないんですが、今、児童ポルノに対する取り組みの国際的なスタンダードと、我が国の議論の基準というか、法律に対するこの差異というものは感じていらっしゃるんじゃないかというふうに私は思います。この点についてお伺いをさせていただきます。
 児童ポルノというのは、簡単に今インターネットで国境を越えていく犯罪ですので、一国だけでは解決しません。だからこそ、国際スタンダードに合わせる必要というのがあります。その大きな一つが単純所持の規制というものでございました。
 児童ポルノ自体が悪であるという国際スタンダードの今、キーワードはゼロトレランスでございますので、つくる人もだめ、売る人もだめ、ただで上げる人もだめ、もらう人もだめという、その存在そのものがだめというゼロトレランスで取り組んでいる。しかしながら、きょうの答弁を聞いていますと、では一回で百枚取得するのはいいのか、あるいは、今まで持っていたものは破棄されないということを考えますと、トレランスだらけという感じになりまして、国際スタンダードとはかなりかけ離れることになると思います。最後にこの点についてお伺いをさせていただきたいと思います。

○枝野議員 まず、各国ごとに児童ポルノの定義が違っています。少なくとも、私どもが認識している限り、アメリカの児童ポルノの定義は、もしかすると、私どもが今回提起をしているものよりもさらに狭い定義で児童ポルノということになっています。
 それから、先ほど来申し上げておりますが、各国ごとに刑事司法手続が違っています。アメリカはかなり捜査の可視化が進んでいますし、あるいは、弁護人立ち会いでなければ取り調べができないというような州もあると聞いておりますが、そういった形で、自白の強要に対する予防、防止策というのが十分にできている国とそうでない国と、刑罰法規において同じでなければならないということにはならない。むしろ、そうであるならば、アメリカなどで取り入れられている可視化や、弁護人立ち会いでなければ取り調べができないということを一刻も早く日本に入れて、そちらも同時にそろえなければいけないというふうになります。
 それから、では日本が国際社会の中でどれぐらい、児童ポルノが世界じゅうに蔓延していることの中で、日本の法律がいわゆる単純所持が規定されていないことがそのことの大きな要素になっているのかということを見れば、単純所持が規制をされているとされているアメリカにおいてむしろ多数の問題が生じている、製造あるいは提供のもとになっているというようなことなどを考えたときには、むしろ、そちらのこと以上にやらなければならないのは、各国の協力をして、例えば日本における現行法においても、幾らでも取り締まれるところがまだ取り締まれていないところもたくさんある、そこのところの努力を怠らずにしっかりとやっていく、あるいは、アメリカとかロシアとか、提供をたくさんしている国の取り締まりをしっかりやらせるというようなことこそが、むしろ現実問題として児童ポルノによる被害を防ぐということにつながっていく、こう考えています。

○丸谷委員 ありがとうございました。
 児童ポルノに関しましては、無関心こそが最大の敵だと思っておりますので、その意味で、この委員会において審議をしていることは非常に重要だと思いますけれども、見直しされるべき時期からもう二年も過ぎておりますし、充実した審議とともに、院の決断がされますように、採決が行われますことを期待しまして、私の質問とさせていただきます。
 ありがとうございました。

衆議院・法務委員会(2009/06/26)/枝野幸男員(民主党所属)

○山本委員長 次に、枝野幸男君。

○枝野委員 まず、所持の故意と、性的好奇心を満たす目的というこの主観的要件について、特に今回、このいわゆる単純所持罪について、自白以外にどういう客観条件、つまり、自白を得られないときにどういう客観条件があればこうしたものの立証が可能なんでしょうか。

○葉梨議員 答弁に入ります前にちょっと、先ほど来、この議論のやりとりを聞いていまして思いましたことは、この所持の禁止とも関連するんですけれども、まさにその肝になるところですね、枝野委員が御懸念されているのは、インターネットで勝手に送りつけられてしまう場合がある、それについては、自白以外に立証するすべがないから、そういったものは、もしかしたら可罰的なものはあるかもわからないけれども禁止すべきではないというような御議論なわけですけれども、世の中がどんどん進んでまいりまして、自宅に勝手に、郵送ではなくて何か物がどんどんどんどん届くというような、魔法の穴みたいなものができまして、そういうのができて麻薬もどんどん送りつけられてくる可能性があるという場合だったら、やはり麻薬のそういった所持というのも禁止すべきじゃないということになるのかどうか。
 そこら辺のところで、世の中が進めば、そういったものに対して対抗する姿勢というのをリトリートすべきであるというのはやはりちょっといかがかなというふうに思うんですが、ただ、捜査自体を恣意的に行わないというのは明らかに大事なことですし、また、ちゃんと立証していくということも大事なことです。
 そこで、今、枝野委員からお話のありましたのは、所持の故意と、自己の性的好奇心を満たす目的、この二つですけれども、まず所持については、まず、所持をしているという事実は、通常、所持罪の場合ですと、やはり物がないと捜査というのはなかなか難しい面はございます。それはもう御存じのとおりだと思います。ですから、現行犯的に物がありますよ、それから、パソコンの中にそれが保管されていますよと。
 そして、それについて、やはり所持については故意が必要です。実際にそれが児童ポルノであります、あるいは児童ポルノである可能性がありますということを本人がちゃんと認識している必要があるわけです。ですから、単にパソコンを開いただけで、メールが送りつけられてくる、どんなメールが送りつけられてきたかわからないというような状況のパソコン、これが未必の故意に当たるとはちょっと思えないなというふうに私は思います。
 それで、その部分が、必ずしも自白だけではなくて、実際にそれをクリックして見たかとか、そういった記録というのはあるわけですから、必ずしもそれは自白だけではなくて、とれるものだと思いますし、また、送信をいろいろなところから受けているわけですね。ですから、そういったような記録というようなものと客観的に合わせていくということがあれば、それは相当客観的な捜査はできるんじゃないかなというふうに思います。
 次に、自己の性的好奇心を満たす目的、これについてもお答えをしなければならないというふうに思います。
 自己の性的好奇心を満たす目的犯。目的犯が、全部これが自白によらなければいけないというのは、これは相当な誤解であろうかというふうに私は思います。ここは目的犯という形でしていますけれども、販売目的あるいは公然陳列目的、これについてはより重い罰則をかけるという形で、すべてこの所持の関係は、提供目的、販売目的、公然陳列目的といったような目的犯になってくるわけです。
 翻って、自己の性的好奇心を満たす目的というのは、自分が自白して、私の性的好奇心を満たす目的でしたというふうに自白をしなければそこのところは出てこないのかどうか。
 目的犯といいますのは、ちょっと故意とダブってきてしまいますけれども、先ほどちょっと例として申し上げましたが、殺人をする、殺意があるというようなことが、内心の意思ですけれども、果たして自白がなければそれが立証できないのかどうか。そんなことはございません。人を殺す器械であるけん銃、これを相手に向けて撃てば、まさか死ぬとは思いませんでした、そういった抗弁はなかなか通用しないわけです。
 ですから、例えば、自宅を捜索したところが、自宅の中にたくさんのポルノビデオがあって、そしてその中に児童ポルノもありましたというような場合は、相当、自己の性的好奇心を満たす目的ということが立証できる場合がやはり多いだろうというふうに思いますし、また、自分の自白だけじゃなくて、その方のいろいろな周りの方、そういったようなお話から、その人の生活行動、どういったような行動をしていたか、よくよく児童ポルノの店に出入りしていましたとか、あるいは、その方が児童ポルノを取得するためにいろいろな形で、手紙を書いたりあるいはメールを書いたりする、そういう中で、提供してくださいというような依頼をしたとか、そういったことも、やはりもろもろの要素というのを客観的に捜査した上で、相当客観的に立証はできると思います。自白だけということはないと私は思いますよ。

○枝野委員 まず最初の、覚せい剤みたいな話との違いは、物と情報との違いというのは決定的に違うと思っていまして、どんなに科学が進んでも、ドラえもんのどこでもドアができるわけは物理的にあり得ませんから、まさに今回、情報は勝手に飛び込んできて勝手にパソコンなどに落ちる話があるということですし、それから映像、例えば郵便で送られてくる場合であっても、例えば、それなりの容積のある物と、紙一枚でも児童ポルノに当たるということで、厚い雑誌の中に一ページそんなものが入っているかもしれないということとの違いは決定的にあると指摘をしておきたいと思うんです。
 私は、今伺っても、結局、単純所持罪をつくっても、故意とか性的好奇心を満たす目的ということを立証しようと思えば、その取得のプロセスをそれなりに立証せざるを得ないということになるのではないのか。
 例えばパソコン上に映像があった、パソコン上に映像があったことだけで所持の客観的要件は満たします。でも、そこに所持の故意や性的好奇心を満たす目的ということを立証しようと思ったら、なるほど、本人がこれを積極的に手に入れようとしていた、あるいは繰り返し手に入れていた、お金を払っていた、こういったことが立証されて初めて所持の故意が認められる、あるいは、そういったことが立証されて初めて性的好奇心を満たす目的が立証されるということであるならば、実は両案は余り変わりはない。そして、むしろ欠けるところがなくて、与党案の方がいいのかもしれません。だけれども、そのことはどこにも担保されていないんですよ。
 逆に言えば、自白さえあって、自分の占有下に当該物があったときに、裁判官は無罪にしますか。明確な自白があって、客観的な証拠、物として、その人のパソコン上に児童ポルノの映像が残っていました、所持あるいは保管に当たるんでしょうね、そういう証拠はちゃんと出ていますと。そして、取り調べの中で、例に余り出すなとおっしゃいましたが、それこそ足利事件のように、本人は全くやっていなくても、まさに一種迎合的に、全部つじつまの合うような自白をしていますと。その二つの証拠を出されて、そして、あの足利事件だって、一審の途中までは本人は認めていましたよね。裁判でも争わなかったらそういう人は有罪になりますよね、当然、客観的に、裁判所は。
 逆に言えば、そのときに必ず入手したプロセスを証拠として挙げろということであるならば、我々の案と変わらないじゃないですか。だとすれば、冤罪を防ぐ見地から考えれば、取得のプロセスについてちゃんと立証する、そのこと自体が構成要件であるという制度にした方が安全じゃないですか。

○葉梨議員 まず、自己の性的好奇心を満たす目的ということについての立証の仕方ということですが、先ほども申し上げましたけれども。
 ほかの法律にも同じような用語は多く使われていまして、その中で冤罪というような事例が起こっているということを私は承知はしておりません。
 そして、必ず取得の過程というのを立証しなければならない、これはちょっと違うんじゃないんですか。例えば、パソコンで、自分の外づけのHD、ハードディスクにある画像がありました、それを自分がダウンロードした、どこから取得したかわかりませんね。外づけのHDの中にある画像、もとはどこから取得したかというのは立証しないでも、自分のHDに、ハードディスクにそれをみずからダウンロードして、それを何回も何回も自分が開いて見ているということであれば、相当これは、自己の性的好奇心を満たす目的というのが立証の大きな材料になるんじゃないですか。そこにおいては、どこのサイトからとりましたということまで構成要件上必要はないというふうに思いますよ。ですから、必ず取得の過程というのを立証しなければならないということではないわけです。
 それと、先ほどからパソコン、インターネットの世界のことをずっと言われていますけれども、どこから入手したということは全く問題ないけれども、実際、有体物だったらどうでしょう。有体物として児童ポルノを持っている、それは、どこで買いましたということを立証しなければ、自己の性的好奇心を満たす目的というのは立証できないんですか。そんなことはありませんでしょう。自宅の中にたくさんの児童ポルノのビデオを持っていて、それをどこから買ったなんて関係ないですよ。そんなこと立証できなくたって、何回も何回も見て、にやにや笑っていれば、それは自己の性的好奇心を満たす目的で所持しているということになるでしょう。
 必ず取得の過程を捜査で立証しなければならないということは、それはちょっと違うと思います。

○枝野委員 本棚にたくさん児童ポルノの映像が、ビデオが並んでいたというケースは、それは可罰性があるケースがほとんどでしょう。だけれども、逆に、この法律、与党案が通れば、一つでも持っていたら処罰されるんですよ。一つでも机の引き出しに何か入っていたら、あるいは本棚の本のすき間に入っていたら、あるいは自分の持っている雑誌の中に一枚でも入っていたら、客観的要件を全部満たすんですよ。パソコンの中で何度も何度も見ていなくたって、一度見ただけでも客観的構成要件は満たすんですよ。そのときに、それに自白がくっついてしまったら有罪になるじゃないですか。なりますね。そのことだけ。

○葉梨議員 可罰性があるけれども、民主党案で、たくさんの児童ポルノを蔵書として所持している場合は罰せられないんですよ。そのことを踏まえて議論をしてくださいね。
 そして、一つの例として、それをとりました、自白がございましたと。でも、やはりその周りの状況というのは、つまり、それを開いてもいないというような状況であれば、果たして性的好奇心を満たす目的であったというふうなことが言えるのかどうか。あるいは、そのサイトの名前を、私は実はそのサイト、どこも全然知りません、知りません、知りません、けれども性的好奇心を満たす目的でしたというような自白、それにはやはり捜査の過程においても合理的な自白というのは必要だと思いますよ。
 ですから、一概にすべて、さっき、すべてということは言えないということを枝野委員もおっしゃられましたけれども、自白プラスそれがつけば必ずイコールということじゃなくて、やはりそれは外形的にいろいろな状況の中から、自白というのはもちろん証拠の王者ですから、大きな要素として判断されるだろうというふうに思います。

○枝野委員 やっていないのに、合理性の、つじつまの合う自白をとっているじゃないですか、現実に足利事件で。そういうケースが起こり得るんでしょう。開いたのだって、一回しか開いていなくたって、開いたら見ていますよ。見て、何だこんなおぞましい映像はといって、パソコン上のごみ箱に捨てているかもしれませんよ。それでも、それに自白がくっついたら有罪になるんですよ、与党案では。
 それが本当に自分の意図で取得をしている人だったら、それは処罰に値すると思いますよ。変なボタンを間違って押しちゃって、送られてきて、あけてみたら、何だこれはといってごみ箱にほうり投げる。でも、ごみ箱にほうり投げても、これは保管に当たりますね、映像が残っているんですから。あるいは、パソコン上のごみ箱に捨てたらいいんだということになれば、逆になれば、悪質な人が、自分が見たい映像を全部ごみ箱に残しておけばいいんですから、ごみ箱に入れたかどうかは全然関係ないですね。処罰される可能性があるんですよ、そういったことを。そして、残念ながら、今の日本の刑事司法の現状からすれば、そういった自白がとられる可能性というのは相当ある。
 しかも、なぜか自分の知らないうちに自分の管理下に入ってしまったというのを、郵便であれ、メールであれ、第三者が陥れるために勝手に送りつけることは可能なんですよ。それこそ、政権を持っている権力が野党の議員のところにそういうものを送りつけておいて、それで令状をとって入っていって、実物があるといったら逮捕できますね、まず物があるんだから。それで、自白をとったら起訴できるんですよ。私のそこのかばんの中に知らないうちに入れられていました、それで、あ、一枚入っていましたと、逮捕されるんですよ。別に政治家じゃなくたって、みんなそうですよ。
 それが果たして、それは、そんなむちゃなことを警察はやりませんとおっしゃるのかもしれない。でも、やっているんですよ、足利事件で。現にやっているという現実を考えたときに、そういうことが起こらないような制度をつくるのは立法府の責任だというふうに私は思いますが、確認はいたしません。
 もう一点、法務省、わざわざ大臣に来ていただいたので、現行の児童ポルノ提供罪における十八歳未満であることの認識の必要性は、現行法であるんでしょうか。

○森国務大臣 現行法二条一項は、児童の定義について十八歳に満たない者と規定し、二条三項の児童ポルノの定義も、児童の一定の姿態を描写したものであるとされています。したがって、現行法七条の児童ポルノ提供等の罪が成立するには、児童であることの認識、すなわち十八歳に満たない者であることの認識が必要であると解されます。

○枝野委員 この行為も未必の故意でもいいんですよね。これはどちらでもいいんですけれども、提案者でも内閣でも。

○森国務大臣 お尋ねの未必の故意とは、一般に、犯罪事実が存在するかもしれないことを認識しつつ、これをあえて認容していることを意味するものと思います。
 児童であることの認識という点でいえば、十八歳に満たない者であるかもしれないことを知りつつ、あえてそのことを認容しているという場合には、未必の故意が認められることになるものと考えられます。

○枝野委員 先ほど質問にもお答えしました、例えば宮沢りえさんの「サンタフェ」を初めとして、本法施行のずっと前から、十八歳以上なのか、十八歳未満なのか、調べれば「サンタフェ」はわかるのかもしれません、撮影当時十七歳だったのか、十八歳になっていたのか。あるいは、初期の関根恵子の映画とか、いろいろなものがありますよ。十八歳未満の特に女性が裸になっている、しかも、大手の一般の出版社や大手の一般の映画会社から配給されたDVDなどが出ているというものはあります。
 こういったものを、自分の家の中にあるかどうか探して、全部捨てろということを与党案は言うんですね。

○葉梨議員 先ほどから、答弁を求めていないので簡単に申し上げますけれども、自分のかばんの中に入れられたら陥れられる可能性があるといったら、それはけん銃だって入れられるかもわかりませんし、薬物だって入れられるかもわからないんですよ。非常に捜査機関に対しての不信感があるというのはよくわかるんです。よくわかりますけれども、だからといって、やはり実体法の世界でこの規制というのを緩めるとかいうことがあってはならないと思いますよ。
 それから、この法律ですけれども、もう昨年の六月に提出して一年。これは法務委員会の運営ですから、ここで言う話ではないので、もうこれ以上言いません。まあ、一年たつ、やはり早くちゃんとこういう審議をやろうやというようなこと、これが大事なことだと思います。
 そして、今の御質問ですけれども、大手の出版社が出したからといってオーソライズされるわけじゃないんですよ。大手の新聞社だって時々間違いを書くんです。ですから、その意味でいったら、社会の中で、十八歳未満の児童のポルノ、これについてはしっかり廃棄をしていきましょうというようなことがあれば、それは、この一年間の猶予期間があるわけですから、そういったものをやはりちゃんと廃棄していくということは、私は当然のことじゃないかと。
 要は、児童ポルノというものを持っているという状態、これは先ほどの捜査に対する不信とかいうのは別として、子供に対する保護のために、児童ポルノというのを持っている状態はいけないことだというふうに日本国民が考えるのであれば、それが有名な女優であろうが大手の出版社であろうが、それは関係ない話だというふうに思います。

○枝野委員 まず一点目、御指摘をされたことについて申し上げれば、けん銃とか覚せい剤というものと、例えば映像一枚というものとでは、それこそ、それが例えばかばんの中に勝手に入っていたというときに、児童ポルノだったら、自分でどこかで知らないうちに、少なくとも、現状ではネット上とかなんとかで手に入れることが可能なんですよ。だから、持っていることだけで、単純所持を違法にしようと思ったら、何かどこかから手に入れたりしてできるんですよ。
 けん銃や覚せい剤はそんなことできませんでしょう。それこそ暴力団関係とかそういうところとか、何かからどこかから手に入れなきゃ、普通の人はかばんの中に入らないものですよ。そういうものは全然違うわけだから、陥れようと思ったって、けん銃や覚せい剤で陥れるのは簡単じゃないんですよ。だけれども、映像一枚だったら、ネット上かどこかから手に入れたんだろうということで、全然容易さが違うということをまずしっかりと認識をしていただきたいというふうに思います。
 その上で、私も、大手が出したからいいということを言っているんじゃないんです。かつて合法的に製造、販売をされて所持をしているものが世の中たくさんあるんです、いい悪いは別としても。その中には、例えば芸術性もあったりするというものがあると思うんですね。だけれども、これは、お互いどちらの党の案も、芸術性が高かろうと何だろうと十八歳未満の女の子の裸はだめだと。私はこれは正しいことだというふうに思いますが、過去において、芸術性もあったりとかして社会的に容認もされて、合法的に手元にあるものを、全部皆さん探して捨ててくださいということが、例えば「サンタフェ」を初めとして、可能なのか。
 「サンタフェ」は、十八歳なのか十七歳なのか、私も調べてみましたが、わかりませんよ。わからないですよね、十八歳ぐらいの女の子が実際の年齢が何歳だったのか。特に十年前、二十年前、三十年前に製造、販売されて手元にあるもの、そんなものをみんな調べるんですか。
 しかも、未必の故意でオーケーなんですから。どうも昔はそういうものがあったらしい、うちにももしかするとあったかもしれないな、まあ、それでもしようがないや、探すの面倒くさいから。私自身だってありますよ。平成十一年にこの法律をつくるときに、こんなにひどいものがコンビニなどでも売られているんですよといって、たしか野田聖子さんにだと思いますけれども、見せられて、サンプルとしてもらいましたよ、その児童ポルノの雑誌を。もちろん資料として、もしかすると審議が終わったころに捨てたかもしれない、だけれども、また児童ポルノを改正するときの参考になるかもしれないからとっておいたかもしれないな。自信ありませんよ。
 自信がないということは、未必の故意だったら、私は、あらゆる事務所を全部家捜しして、まさか残っていないか確認しなきゃいけないんですか。そんなことが日本じゅうの人に起こるんですよ。それは現実的じゃないですよ、残念ながら。

○葉梨議員 枝野委員、もしかしたら事務所に持っていらっしゃるかもわかりませんね。でも、あなたの性的好奇心を満たす目的じゃありません。私も、児童ポルノをたしか中央教育審議会か何かで回覧したことがあります。これは正当目的です。みだりにもならないんじゃないかなというふうに思うぐらいですけれども、少なくとも、自己の性的好奇心を満たす目的、これにはならないです。
 それで、大家捜しをしなきゃいけないとかいう話もありましたが、例えば「サンタフェ」であれば、あれだけ有名なものであれば、未必の故意という話もありますが、大体、具体的に、それが一体十七歳なのか十八歳なのか、そこら辺のところはいろいろなところでまた問い合わせをしていただければいいし、それぐらいのサービスは政府の方もやってくれるんじゃないかというふうに思います。そして、児童ポルノであるかどうかということについて、児童ポルノかもわからないなというような意識のあるものについてはやはり廃棄をしていただくということが当たり前だと私は思う。
 ただし、それは、昔、うちの蔵の中に、蔵なんて私のうちはありませんけれども、旧家であれば蔵もあるんでしょう、蔵の中に、何百年か前の児童ポルノがあるかもわかりませんよ。そこまで家捜ししようという話じゃないので、これはあくまで、罰則がありますのは、自己の性的好奇心を満たす目的で所持、保管するという故意犯、これを罰しているわけです。そして、みだりに児童ポルノを所持し保管しちゃいかぬ、みだりにですから。それで、たまたま地震で蔵が壊れた、そういうものがあったといったときは、それはちゃんと廃棄してくれればいい、そういうことじゃないかと思います。

○枝野委員 何百年前だったら、写真がないので、まずそういうことは現実としてあり得ないということを指摘しておきたいんです。
 それから、確かに、私のどこかの事務所の片隅に野田聖子さんからかつてもらったものが残っていても、それは抗弁がきくかもしれませんね。それは、ずっとこの問題に私が取り組んできていることをみんなが知っていますから。でも、そういうことがみんなに起こり得るんですよ、この法律は。
 今の法律では児童ポルノに当たる、児童ポルノに当たるのだって、まさに、それこそ二歳、三歳の女の子に性交をしているような、こういうものから、「サンタフェ」は十七歳だったら児童ポルノに当たるというところまで、いろいろな種類のものがあるわけですよ。それについて、どれか持っていた可能性があるよなと、いや、ちゃんと考えればみんな普通そうだと思いますよ。本法施行前は、現実問題として、十八歳前後の女の子の裸の写真は普通の雑誌にもたくさん載っていましたから。だからいいということじゃないですよ。いわゆる特殊な幼児性愛者向けの雑誌じゃない普通のところにも載っていましたよね、十七歳とかの女の子の裸の写真が。ああ、そういったものがあったはずだよなと、未必の故意はみんなあるじゃないですか。そんな何十年か前の週刊誌をたまたまとってあることはありますね、みんな。そのことが目的じゃないかもしれない。
 そうすると、それが立証されてしまったら、あとは主観的な目的なんですよ。主観的な目的も、確かにこの人は幼児性愛があって性的好奇心を満たす目的であるということがはっきりしている人を他の客観的な事情で立証すること、これはできます。おっしゃるとおりです。本人の自白がなかったとしても、自白に頼らなくても、なるほど、この人はこれこれこういう趣味で、こういったことを今までやってきている、あるいは周辺の人の証言でということは可能かもしれません。
 でも、逆に、そういう幼児性愛などの性向がなくて、御本人に性的好奇心がなかったとしても、現に持っている人が、いや、おれは幼児性向ではない、私は性的好奇心を満たす目的ではないということをどうやって抗弁できるんですか。結局は、性的好奇心を満たす目的であるという自白がとられてしまったら、それ以外にそれを否定する客観証拠を出して否定することはできないじゃないですか、まさに内心の問題ですから。それも処罰の対象になるんだというこの法律の問題点を我々は指摘しているんですよ。
 いや、それは仕方がないと。そういう人がたまたま一枚持っていた、たまたま一枚。大体、どうやってその単純所持を立件するのかというのはよくわからないんですけれどもね。つまり、単に自分で持っているだけという状況であるならば、そこに捜索が入るということは基本的には考えられない。たまたまかばんに入れて持っていたら、任意で荷物検査をしてその中に入っていましたとか、そういうことかもしれませんね。そこで一枚出てきましたと。そして、捜査官の方が大変熱心な捜査官で、おまえ、こんなものを持っていたんだから性的好奇心を満たす目的だろう、そういうことで、足利事件のようにつじつまの合う証言を得られてしまいました、こういう人は冤罪でも処罰されても仕方がないというんだったら、この与党案は正しい法案だと思います。
 でも、そういったことは絶対に起こしてはいけない。絶対起こしてはいけない中で、なおかつきちっと処罰をしなきゃならない人たちについては処罰をする、それが私たちに求められているので、少なくとも、現状の与党案は、その部分のところで決定的な問題があると思いませんか。

○葉梨議員 冤罪は絶対にあってはなりません。これは絶対なくしていくように、お互いちゃんと努力をしていきましょう。
 しかし、今のお話を聞いてみると、ちょっと本末転倒じゃないかなというようなところもあります。
 一つの児童ポルノを持っている、これについて冤罪があるというのであれば、それはなくす努力をしっかりすべきであります。しかしながら、だからといって、そういうことがあるんだ、もしかしたらみんな陥れられてしまうかもわからないんだというような、私はそんなことはないと思います、ないと思いますけれども、そういう考え方で、たくさんの児童ポルノを蔵書として抱えている、それは許される、そっちに行ってしまうというのは考え方として違うんじゃないか。そういうことをもし言われるんだったら、何で民主党案は大量の児童ポルノを所持している場合を禁止しなかったんだというふうに私は思いますよ。一枚だけだったら大丈夫ですというように書くべきじゃないですか。
 それと、もう一つ申し上げますと、具体的に、自白だけでといったって、さっきの例でいえば、昔、確かに週刊誌の中には児童ポルノというのはあったかもわかりません、それは私もよく知っています。でも、家を見たら、それが本当に何十年前のほかの雑誌と一緒に束になって、それで全然見た形跡もないし、ほこりをかぶっているといって、それでこいつは性的好奇心をとる目的だと自白を強要する捜査官なんて私はいないと信じていますよ。
 そうじゃなくて、やはり、児童ポルノであれば、有体物であればそれを何回見たとかいう態様ですとか、それから、パソコンの情報であれば、それをダウンロードしているとか何回開いたとか、そういったことから、やはりこれは自分が見ているんだな、性的好奇心を満たす目的で見ているんだな、それで所持しているんだなということをおのずと明らかにするようなしっかりした捜査を行われることが私は求められていると思うし、もしも、捜査に対する配慮というのを、我々がしっかりしなきゃいけないということをさらに求めるんだったら、この国会でちゃんと捜査機関に対してしっかり求めていきましょうよ。

○枝野委員 捜査機関が冤罪を防ぐためにしっかりとやるだなんてことは、別に今さら繰り返さなくたって、我々の条文に載っけましたけれども、そんなこと書かれなくたって当たり前なんですよ。当たり前なんだけれども、現に繰り返されているじゃないですか。
 立法は、民主主義社会は、基本的に公権力に対する性悪説で、間違いを犯すかもしれない、でも、間違いを犯しても、その間違いによって基本的人権を害すことのないようにしなきゃいけない、それが民主主義社会における、特に刑罰法規のつくり方じゃないですか。基本ですよ。性善説で、ちゃんとやってくれるでしょうと。ちゃんとやってくれなかったケースがあるから、民主主義国家にして、立憲国家にして、法律をつくって罪刑法定主義にしているんですよ。ちゃんとやってくれない可能性がある、ちゃんとやってくれないことがあったとしても間違いが起こらないようにする立法をするのが我々の責任だと思います。
 それから、もう一点だけ。
 大量にと。大量に所持している場合については、一枚だけについて、それの取得の経緯ということを立証するのはなかなか難しいかもしれません。しかし、大量に持っていれば、そのうちの何本かについては、あるいは蓋然的に、具体的な話じゃなかったとしても、反復継続して、あるいは有償でという我々の要件を満たす形で、その人たちは我々の法律にひっかかる可能性は十分にあると私たちは思っていますし、なおかつ、さらに言えば、今の点について私たちは、別に修正をすることについては、単純所持はだめだけれども、取得のあり方とかそういったことについては、我々自身も、単純所持的なものは全部だめだからといって否定をしているんじゃなくて、今回だって、何とか問題が起こらない範囲の中で、いわゆる単純所持として問題にされている部分を処罰するために我々なりに知恵を出してここまで持ってきているんですから、今のようなケースについて切り出してやることが可能であるなら、我々は否定するものではありません。
 しかしながら、一枚でも処罰されるという法形式であって、主観的要因については自白だけでも立証することは可能であるという、この法律を認めることは到底できません。
 終わります。

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最終更新:2009年07月04日 22:07
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