修正履歴(その1)

法律的な基礎知識

日本が批准した条約(国際法)は、個人の権利主張の際の根拠として使えるのでしょうか?

憲法と条約とどちらが優先するのかについては、議論のある所ですので省略します(多くの学者は二元論もしくは国際法優位論を支持しています)。
単純化した結論としては、 日本国憲法の趣旨に反する条約は、日本政府は条約を批准する際に当該部分について留保をつける義務があるとされています。日本国憲法の趣旨に反しない部分については、批准した条約を(「遵守」ではなく)尊重する義務があります。

条約そのものを根拠法として個人が権利を主張できるかという点は難しいところで、政府が批准し国会が承認した条約の実効性を確保するために国内法の立法が求められ、その国内法が個人の権利主張の際の根拠法となります。
但し、行政法の解釈においては、日本が批准・承認している条約を参照した上で、行政の判断が適当であったのか、不適当であったのかを論じることは、行政訴訟においてはしていい主張になります。

上記のような整理から、おおざっぱに「法源としての条約」を分類すると、以下のようになります。
  • × 日本の法廷で権利を主張するための根拠法として使える
  • ○ 行政訴訟において、条約を参照した主張も認められる(例:退去強制の違法性を主張する際の根拠として「児童の権利条約」を使用する)
  • ○ 条約の義務を履行するための国内立法を求めるための根拠となる(政治的主張)

関連項目

外国人政策

カルデロン一家への「在留特別許可」が降りた場合、日本の入管行政に何か影響があるのでしょうか?(第1版)

※訂正のお知らせと最新版への誘導
こちらの文章は条件分岐等で不正確な記載がありましたので、訂正させていただきました。
最新の記載は以下になりますので、そちらを参照して下さるようにお願いします。
最新版(2009/01/27)


カルデロン一家に「在留特別許可」を出した場合、それが呼び水となって日本に不法滞在者が大量にやってくるという「懸念」があるようですが、「在留特別許可」制度は、社会政策的な視点が入る余地の大きい一般アムネスティではなく、あくまでも入国管理システムの一部です
入管側は、諸外国の移民希望者側に「子供が出来れば、不法滞在者でも日本の在留資格及び労働許可が得られるようになる」といった「合法化プロセス期待」を呼び起こすのは好ましくないと考えていますので、諸外国に比較してかなり厳しく「不法滞在者の合法化」の基準を設けています。
「在留特別許可」に関しては、家族の結合・子どもの教育・長期滞在などの個別の事情に基づいてされているものであり、その影響範囲は、広くとった場合でも日本在留の不法滞在者への「在留特別許可」の基準変更に留まり、通常は個別のケースに応じた入管の特別審理官と外国人当人・弁護士の間に留まります。

カルデロン一家のケースの場合、以下のような条件に該当します。
①最高裁で敗訴した
②一家全員在留資格がない
③不許可裁決の時点で長子が中学生未満(小学5年生)
上記の条件のケースの場合、過去には2004年3月のキンマウンラ一家の事例(父親:ビルマ民主活動家、母親:フィリピン人妻、娘:9才と6歳の2人)以外には許可事例はありません(キンマウンラ一家の事例は、父親がビルマ民主活動家で、難民認定されない方がおかしかったという例外の事例です)。

現在の、「在留特別許可」の基準(「在留特別許可に係るガイドライン」と呼ばれ、細部は非公開です)では、①②の条件で「在留特別許可」が認められるためには、③の所で「長子が(原則)中学生以上」という条件を満たさなければなりません。
カルデロン一家の場合、退去強制処分が下った時点では長子が小学5年生であり、③の所で引っかかって、家族の職業・経歴にもキンマウンラ一家のように特別な所はないため、特例で「在留特別許可」が認められる可能性もありません。
そのため、カルデロン一家に「在留特別許可」を出すためには、「在留特別許可」の最低条件の変更を行う必要があると思います。
この最低条件は、当初は日本人と結婚するか日本人との間に子供が出来ない限りは認められていなかったものが、1999年に「外国人同士の子供でも日本で生まれた子供が中学生以上」ならば認められる可能性が出るようになり、今度は、カルデロン一家に「在留特別許可」を出して、現在の「在留特別許可」の基準である「長子が(原則)中学生以上」を、それ以下に下げることが適当か?という点が論点になります。

仮に基準変更がされた場合の影響力ですが、行政レベルでは「最低条件」が変更されて「可能性」が開けるだけであり、司法レベルでも「在留特別許可に係るガイドライン」の基準に関しては、裁判規範性は一部の下級審例を除いて認められていません。
そのため、「在留特別許可に係るガイドライン」が変更されたとしても、個別具体的なケースに関しては、入管側の特別審理官と弁護士の間の綱引きの範囲に留まると思いますし、それと合わせて担当する裁判官の認識によって裁判の結果は変わります。
一般的にイメージされている、「日本社会に適合できず、社会問題を起こす可能性がある外国人」に関しては、弁護士がついていても退去強制処分が下って退去強制になります。

関連項目

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2009年05月12日 19:31
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。