国会質疑 > 児童ポルノ法 > 2009-02

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衆議院・法務委員会(2009/06/26)/牧原秀樹議員(自民党所属)

○山本委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。牧原秀樹君。

○牧原委員 おはようございます。自民党の牧原でございます。
 きょうは、私、本来は法務委員会のメンバーではないんですが、特に御指名を受けて、こうした大切な法律についての質疑の機会をいただきましたことに、まず感謝を申し上げます。
 この法律は、非常に重いということでございます。多くの皆様の人生や、あるいは権利や、あるいは人権や、こうしたことに物すごくかかわる、大変重くて、しかしながら大変重要な法律であるということをかみしめております。両案の作成者の皆様におかれましては、この大変重要な、大変重いテーマについて、法律の作成という形で御尽力をいただいておりますことに、まず心から敬意を表させていただきたいと思います。
 トップバッターでありますので、まず最初に、改めて議論の前提として、平成十一年、そして十六年に続いて法改正を行うということについての理由をお聞きしたいと思います。
 今、提案理由説明の中で、それぞれに、平成十六年までの法律ではまだまだ足りない、さらに厳しい規制を設けて、そしてそのことが児童の権利の擁護に資するんだということがともに述べられたような気がしております。このような理解、つまり今回の法案というのは、基本的には、今までの法案でまだ足りなくて、より規制を厳しくして、そして、もって児童の擁護に資するようにしたいんだ、こういうことでよろしいでしょうか。まず、民主党案の提出者の皆様にお伺いしたいと思います。

○西村(智)議員 お答え申し上げます。
 冒頭、これは全員の共通の思いだと思いますけれども、児童ポルノは児童に対する性的虐待以外の何物でもないということであります。被写体となった児童は、撮影されたことのみならず、これが広く流通し、拡散していくことによってさらに被害を受け続けるものであります。児童ポルノによる被害を受けている子供たちのことを考えますと、私どもはしっかりとした法改正を一刻も早く行わなければならないと考えていたところでありまして、そういう思いで、平成十一年の法律制定時、また平成十六年の改正時と取り組んでまいりました。
 他方、刑罰法規であります児童ポルノの定義規定について、抽象的であいまいな主観的要件を中心とする規定のもとで捜査権力が不当でないものまで処罰するようなことがあってはならないし、また逆に、運用する当局にとっても、あいまいな規定のもとでは腰が引けたような運用になってしまって処罰すべき行為が処罰されないということにもなりかねません。こうしたあいまいさが、例えば小学生や中学生の水着姿の写真集が広く流通しているような現状にも影響していると思われます。
 加えて、いわゆる単純所持を処罰することについては、気づかないうちにメールで送りつけられていたなど、何らかの悪意で知らない間に持っていた場合なども不当に逮捕される事態が起こりかねないということであります。
 与党案では、目的犯という形で限定を加えておりますが、定義規定のあいまいさを残したままで所持を処罰し、さらに、自己の性的好奇心を満たす目的という主観的要件を課すことになれば捜査機関の運用に対する不信感はぬぐい去れないし、また、これを避けようとすれば過度に抑制的な運用に陥ることにもなりかねません。真に悪質なものについては処罰されるようにしながら濫用の危険性を排除するものでなければならないと考えておりまして、こうした考え方のもとで初めて、過度に抑制的な運用に陥ることなく処罰すべき事例が適切に処罰されることになると考えております。
 そういった背景で民主党案を提出しておりまして、具体的な全体の考え方については、また御質問いただければ答弁をいたします。

○牧原委員 次に、今伺いましたが、同じ十六年に続く法改正についての理由を与党の提出者の皆様にお伺いします。

○葉梨議員 お答えいたします。
 総論においては民主党さんが言われていることと与党が言っていることはそれほど違いがないように聞かれるかもわかりませんが、各論において相当違いがあるというふうに私は思っておりまして、そこら辺のところは本日の質疑でも明らかにさせていただきたいというふうに思います。
 私、個人的な経験から申し上げますと、平成九年から平成十一年までの間、警察庁少年課の理事官というのをやっておりまして、また、この制定時の立法過程において事務方からかかわらせていただきました。また、平成十六年の法改正においてはやはり提案者の一人として参議院でも答弁をさせていただいたというようなこともございますので、その経緯等を申し上げますと、もともと、日本の国は児童ポルノに対して甘いんじゃないかというような国際的な非難が相当ございました。
 一九九六年のストックホルム会議、これに当時社民党の清水澄子議員が出て、大変な国際的な非難を受けた。そういうようなところから、やはり我々としても、子供を物として、あるいは性的な虐待の対象として見るということ、これはあってはならないんだということで、この児童買春、児童ポルノ法の制定を見たわけですけれども、当時から定義等について、あるいは目的等についてしっかりと厳格な運用ができるようにというような配慮がなされたこともございます。
 ですから、この法律においては、例えば刑法にあるような、卑わいですとか、あるいはわいせつ物的なような表現は使わないで、できるだけ具体的に運用ができるような法律の定義ということで児童ポルノの定義も工夫をしたというようなことを覚えております。
 そして、その上で、当時から単純所持についてどうだという議論は国際的にもあったんですけれども、児童ポルノの関係について言うと国内的なコンセンサスがまだできていないだろうということで、検討過程ではございましたけれども、単純所持の規制というのは制定時には盛り込まれなかった。平成十六年にやはり与党から提出いたしましたのも、単純所持については罰則を設けないで一般的な禁止を置きましょうというような規定を提案させていただいたんですけれども、これも与野党協議の中で、基本的には罰則を強化するという形で単純所持の一般的禁止までは盛り込まないという形になったわけです。
 しかしながら、先ほど森山筆頭提案者からもお話がございましたように、非常に世の中が進んでいるわけですね、特にインターネットの普及等で。そして、さらにはこれで蓄積された児童ポルノというのは本当に大量なものがございます。これをそのままにしておいて、やはりそれを写された子供たちというのは、おびえて一生過ごさなきゃいけないんじゃないか。だから、やはりここは、十一年、十六年と議論した中で単純所持の禁止というところにしっかり踏み出していくということが今の段階ではどうしても必要になってくるんじゃないかというような思いから今回与党案を提出させていただいたわけです。
 翻って、民主党については、またこの質疑の中でもいろいろと質問、答弁等させていただきたいと思いますけれども、基本的に、今明らかな児童ポルノとして規制されているものが、民主党案によれば相当部分児童ポルノとして規制されなくなります、野放しになります。そういうようなことで本当に子供の保護が図れるのかどうかということがありますし、また、先ほど、蓄積されている児童ポルノについてどうだということについて議論を避ける形で、反復あるいは有償の取得ということを禁止する、それはちょっと取り繕い、びほう策ではないかというような感じを私自身は個人的には持っております。
 捜査の運用の過程あるいは捜査がしっかりと行われるような形にするというのはまさにこの国会で議論すればいい話であって、捜査に対する不信があるからといって、定義を狭めたり、あるいはびほう策に陥ることが本当にあっていいんだろうかというような感じを私は個人的には持っております。
 十一年、十六年、そして今回の提案の経緯については以上でございます。

○牧原委員 今伺った理由、背景によりまして、児童の擁護に資するという観点、両方が思いをお持ちでありながら、若干各論で違っているということがわかりました。
 まず、今各論で違っていることのそれぞれの中で挙げられました単純所持という新たな規定についてお伺いをしたいと思っております。
 今、葉梨先生の方からも若干御回答がありましたけれども、平成十六年の改正のときの質疑におきましては、吉川春子委員に対する葉梨先生の見送りについての答弁の中で、やはり、国民意識の高揚や運用の積み重ねがその当時としてはまだ必要だという話がございました。この国民意識の高揚や運用の積み重ねが必要とされていたものが具体的に今回どう変わったのかということについて、もう少し国際的なことも含めて御説明いただけますでしょうか。

○葉梨議員 重複することになるかもわかりませんけれども、国際的には、当時、平成十一年に法律を制定して、平成十二年に児童の権利条約の選択議定書というのが採択されたわけですけれども、当時から、単純所持についても国際的にはやはりある程度規制していくんじゃないかというような一般的な世論、国際世論みたいなものはございました。ただ、日本国内においてはまだまだそこまでいっていないということで、先ほど申し上げましたように、平成十一年の提案では単純所持の禁止というのを取り下げたわけです。
 平成十六年でございますけれども、これは私も答弁をさせていただいたわけでございますが、まさにその次の段階としては、罰則を強化するけれども、国際的な動向はどんどん進んでおりますし、また、国内的にもコンセンサスを広げるという努力をしていかなきゃいけない。そしてその中で、次の改正点、検討点としてはやはりこの単純所持の禁止というところに本当に真正面から取り組むということが必要じゃないかという、まさにそのステージに今あるんだろうと思います。
 国際的に申し上げますと、これはもうよく知られているとおり、G8諸国の中でロシアと我が国だけが単純所持についての禁止を設けていないというようなこともございます。そして、さらには我が国発の児童ポルノというのは、提供は禁止されているといいながら、今現在非常にネット社会が進んでおりまして、提供の禁止をされていながら国際的に何十万回も児童のポルノ画像がダウンロードされる。それが日本発である。
 ですから、先ほど申し上げましたように、そういったような蓄積されている児童ポルノについて、その被害に遭った子供たち、これについてしっかりと対処するという実態的な理由と、やはり、今現在、提供を禁止してそれを厳しくすればいいじゃないかというような意見もあるでしょうけれども、現実の問題として、日本発の児童ポルノというのが全世界的にこれだけ広がってしまって、世界的にこれだけの非難を受けているという状況に対応していくためには、今回、真正面からこの児童ポルノの単純所持の禁止、これに対して取り組まなければならないというように考えております。

○牧原委員 よくわかりました。
 今の背景の中で、今回の与党案、そして民主党案というものが出てきているわけですけれども、今のお話によれば、多分与党案の方が規制が幅広いというか厳しいということなのかなというふうにお伺いをしましたが、この点について、今回の与党案の単純所持というものと、民主党案の反復あるいは有償での取得というそれぞれ新設されている罪がございますけれども、この対比において、具体的な事案ではどういうような差が出るのか。民主党案ではこんな事例がカバーできないんじゃないか、私たちとしてはこんな事例をカバーするために単純所持が必要である、この点について教えていただきたいと思います。

○葉梨議員 単純所持の禁止について、私ども二つの提案をさせていただいております。
 一つは、一般的な禁止規定として、みだりに児童ポルノを所持、保管すること、これについては一般的な禁止規定を置いております。これについては罰則はございません。そして、自己の性的好奇心を満たす目的で所持、保管をする者については一年以下のということで、罰則の規定を置かせていただいている、この二段構えということになります。
 これはどういうことかといいますと、みだりにというのは正当な理由なくということなんですけれども、一般的な禁止規定を置くということ、それと、その中でも性的好奇心目的というのは罰則を付するということで、例えば、他人の性的好奇心を満たす目的、例えばお父さんが見ている、お父さんが見たいということで子供が無理やり持たされている、そんなことで子供を罰するわけにもまいりませんし、また、別の正当な目的、例えば捜査目的、これは正当な理由にもなりますし、みだりにということにも、また性的好奇心を満たす目的にもなりませんけれども、例えば捜査目的で児童ポルノを持っていますよというようなものまでこれを禁止するということではございません。
 ですから、そういった意味では、みだりに児童ポルノを所持すること自体を罰則をもって禁止するべきだという意見もあるんですけれども、基本的にこの法律というのは、ペドファイル、小児性愛者との戦いということでございますから、自己の性的好奇心を満たす目的で所持をしているというような場合を罰則をもって禁止しているというわけなんです。
 そして、民主党案についてのお尋ねでございますけれども、まず一つは、一般的な考え方として、児童ポルノを持つこと、これが悪いことである、つまり我が国として悪いことであるというような宣言、これは一切ございません。悪いことでないということであれば、それはいいことなんです。
 ですから、そういった意味でいいますと、児童ポルノを持ち続けても構わないということ、今の法律もそうはなってはいるんですけれども、それを議論する過程で、児童ポルノを今後持ち続けても構わないということを、まさに真正面から単純所持の禁止ということをこの国会で議論して、そしてその中で民主党案がいいということになれば、それを国会が認めてしまうということになってしまうのかなというような感じもいたします。
 また、有償でまたは反復で、そこのところは、私は民主党の提案者ではございませんので、民主党案について有権解釈をする立場では、立法者として解釈をする立場ではありませんけれども、拝見するところ、有償で取得をする、それから反復で取得をするというような行為、これを禁止するだけということになりますと、先ほど言っていましたように、持ち続けても構わないということですね。それで、だれだれさんの子供時代の写真を私はたくさんうちに抱えているんですよというようなことをそこらじゅうで言いふらして回ったって構わないということですね。テレビで言ったっていいし、新聞で言ったっていいし。
 そして、さらには、ビデオを他人に見せる、提供じゃありません、単に見せるだけですから。自分のうちに、ある友人を呼んできて、児童ポルノのビデオを他人に見せる、そして見せてお金を取る。これは営業としてやりさえしなければ、この法律は風俗営業ではございませんので、営業を規制しているわけじゃありませんけれども、少なくともこの法律は、例えばお金を取ったとしたって、そのような行為は多分禁止することはできないんだろうというふうに思います。
 また、家宝として児童ポルノを持っている。大量の児童ポルノを、これを相続によって取得する。相続というのは反復がありませんね、一回限りですから。そういった場合もこの法律によっては禁止することはできないんだろうというふうに思います。
 ですから、一般的な禁止規定を置きながら、ペドファイルの方々が自己の性的好奇心を満たす目的でこれを所持するというものについてはやはり罰則をもって対処するという、それぐらいのところまでは、我々としても、日本の子供あるいは世界の子供、これを守るために踏み込んでいかなきゃいけないんじゃないかというふうに考えています。

○牧原委員 よくわかりました。
 所持のところと取得という能動的な行為の違いで差が出るということだと思いますが、逆に、民主党の案ではこういうことがカバーできるんだけれども、今の与党案ではこんなことがカバーできないじゃないか、こんなことが民主党案ではあるんでしょうか。

○枝野議員 私どもも、児童ポルノ、特に悪質な児童ポルノを性的好奇心を満たす目的で持っているということがいいことであると思っているわけではありません。
 ただ、所持という構成要件は、どういう手法で入手をしたかということが全く問われません。提案理由等でも御説明をしたかと思いますが、例えば、インターネットをつないでいてメールをやっていれば、皆さんのところにも多々わけのわからないメールが飛び込んできます。一件一件内容をチェックして、そこに児童ポルノが含まれているのかどうかということをチェックされておられる方はいらっしゃらないだろうというふうに思いますし、仮にパソコンのごみ箱に捨てたとしても、映像は残っておりますから、所持という状態は続きます。
 仮にごみ箱を空にしても、すぐに復元できる状態でパソコン上に残りますから、これを本当に所持じゃない状況にしようと思ったら、復元不可能なところまで削除をするということは、普通、パソコンを使ってネットをつないでいる人間からすれば、ほぼ不可能を強いるということになります。しかしながら、こうしたことまですべて所持に入ってしまう。
 その上で、所持の故意という観点からすれば、これは未必の故意であっても故意が認められますから、つまり、多分そういってむやみやたらに送られてきているわけのわからぬメールの中には児童ポルノのような種類のものが含まれているかもしれないなということは、ほとんどの皆さん、ネットをつないでいらっしゃる方は、逆に言えば知っていらっしゃるわけでありますから、未必の故意は成立をします。
 そうすると、あとは性的好奇心を満たす目的という一点で、そうやって勝手に送られてきたものがどこかに残っていたものと、それからまさに性的好奇心を満たす目的で排除をされるべき対象、処罰を与えるべき対象とが区別をされるということになりますが、この点について外形上違いを判断する方法はなかなか困難、つまり内心の問題でありますので、最終的には、一般的に考えれば自白の有無というところに行かざるを得ないのではないだろうかというふうに思っております。
 自白の有無ということになれば、これはもう皆さん御承知のとおり、足利事件を初めとして、罪を犯していなくても、あるいは今回の足利事件の場合は暴力等はなかったかもしれないという状況であったとしても、やっていないことを詳細に自白をしてしまうというようなことが普通に起こり得る捜査の手法と捜査の手続というのが我が国の状況でありまして、こういった意味では、国際的な標準、スタンダードに我が国の刑事司法手続がまだそろっていないという状況がありますので、できれば、その問題についてこそ法務委員会で先にやっていただければ、そこは国際標準に並んだ時点で、では、こちらの方の国際標準をどうするのかということがむしろ筋かなというふうに思っております。
 いずれにしても、そこで性的好奇心を満たす目的とか、所持の故意とかということについて自白に頼らずに立証しようと思ったらどうするのか。それは、入手のプロセスを立証するしかないということに結果的にならざるを得ない。
 である以上は、結局、そういった場合の虚偽の自白による冤罪等を防ぐという観点からは、いずれにしろ、自白に頼らないならば、入手のプロセスについて立証せざるを得ないということを考えたときに、その入手そのものを可罰的な行為として取り上げれば足りるというふうに考えました。その限りでは、私どもは、冤罪になる可能性のものが与党案に対してそれよりも少ないというふうに思っておりますが、それを超えて我々の案の方が小さいということはないというふうに思っております。

○牧原委員 済みません、今、質問は、構成要件でいうと所持、取得ですね、それぞれのまず客観的な行為についての質問だったので、若干、内心の主観的要件の話とは違うんですが。
 今御指摘があったように、今回、私もいろいろな御意見を伺っていますと、所持という客観的事実に加えて、自己の性的好奇心を満たす目的というのが主観的要件であります。
 これは、具体的に言いますと、例えば、かばんの中にいつの間にか大量に児童ポルノが入れられていて、そして通報がされて、警察がちょっとかばんをあけてみてくれと言って、調べてみたら児童ポルノが出てきた、これは所持という要件を満たしますから、その上で、これが自己の性欲を満たすための目的だったかどうかというのは取り調べてみないとわからないということで、警察としては一回そこで捜査に着手せざるを得ないんじゃないかというような懸念は確かにあります。
 このような捜査の恣意性ということが指摘をされていることについて、与党案ではどのようにお考えになっているのでしょうか。

○葉梨議員 捜査の恣意性ということで今るるお話がございました。
 この点については、実は後で枝野委員の方から私もたんまり質問をいただいておりますので、いろいろと議論をさせていただきたいなというふうに思うんです。
 冤罪といいますけれども、例えば足利事件の場合ですけれども、まことに菅家さん、私は本当にお気の毒だと思います。また、当時DNA鑑定というのに頼り過ぎてああいうことが起こってしまったということは、本当に反省をしなければならないというふうに思いますけれども、具体的に、例えば犯行行為について、私はやった、やりませんという冤罪と、あとは内心の意思についてという冤罪と二つあるわけです。
 例えば、殺人の場合は、殺人の故意、つまり内心の意思、私は殺す意思を持って相手を殺したという事実。まず事実について、殺していません、傷害も加えていませんということが、多分、足利事件の場合は当然全くやっていないわけですから、そこにおいて争いとなったわけです。ですから、その意味で、性的好奇心を満たす目的を立証するのは自白によるんだということで足利事件を引かれるというのは、ちょっとレベルが違う話じゃないかなというふうに私自身は思っているんです。
 所持ということであれば、持っているという事実については、これは所持ですから、もう明らかなんですね。現行犯的なものでやっていかざるを得ないでしょうし、物がなければ所持ということになりません。
 そして、一つは所持の故意性です。ですから、先ほどの例で、もしかしたらこんなメールが送りつけられてくるかもわかりませんよというようなものが来たとして、私はそれで、個別に、全体として、単にパソコンを開いているということだけで未必の故意が成立するとは思えないんです。このメールというのはもしかしたら児童ポルノかもわからない、そういうような認識というのはやはり必要になってくるだろうと思うんです。
 さらには、それがたまたま人に入れられたものかどうか、そういうような抗弁というか話があれば、やはりそれはよく確認をしなければならないし、例えば、十分に信じるに足りるような弁解があったときに、警察において、捜査機関において、それで逮捕というようなことになるかといったら、私はならないというふうに思います。
 また、自己の性的好奇心を満たす目的でというのを、それは自白に頼らざるを得ないというふうに言われますけれども、例えば、殺人の故意というのは、私は殺すつもりはなかったんです、殺すつもりはなかったんですと言ったって、けん銃を持って相手をぼんと撃てば、どんな自白が、否認をしていたって、殺人の故意というのは客観的にやはり認められるわけです。
 ですから、自分の性的好奇心を満たす目的というのは、たとえその自白がなかったにしたって、うちに大量の児童ポルノを持っている、その横に大人のポルノもたくさん持っているというようなうちで、児童ポルノを持っている方が、私は自分の性的好奇心を満たす目的じゃございませんと言ったところで、それは裁判所では多分通らない話になってくるだろう。ですから、自白だけに頼るということじゃなくて、やはり客観的な証拠に基づいて捜査というのはできるんだろうというふうに私は確信をしています。

○牧原委員 わかりました。
 ここはきょうの質疑で中心的なところになると思いますし、私自身は、今、葉梨先生はまさに警察にもいらっしゃった先生でありますし、最後は捜査機関への信頼性にかかるのかなと思っておりますが、おっしゃるとおり、客観的な状況というものをきちんと踏まえて、それ以上にいかないということになるだろうなと思います。いずれにしても、きょうの審議で尽くしていただきたい点でございます。
 ちょっと時間もなくなってきたんですが、両案についてはもう一個大きな違い、つまり、法律名と定義について民主党側が変更されたということがございました。この「児童ポルノ」というのを「児童性行為等姿態描写物」ということに変えるとともに、この定義が「性欲を興奮させ又は刺激するもの」という部分が削除されたということでございます。
 これについては、先ほど来述べられているように、捜査の濫用の危険だとかあいまいさをなくすという観点だと思うんですけれども、このような理由で削除をされたことについて、与党側はそのままになっているわけであります、与党側としてこれを変えるべきではない、そして削除すべきではないと思う理由について述べてください。

○葉梨議員 児童ポルノという用語が本当にいい用語かというと、私は個人的には必ずしもそうは思わないです。
 当時、この法律をつくったときに、いろいろな形でこの定義規定についても工夫をいたしました、どういう名称を使いましょうかと。ただ、わいせつな画像という言葉も使えませんし、それから、卑わいな画像ということも使えない。やはりそこにおいては、日本が国際的なペドファイルとの戦いの戦列に加わるという意味からも、当時議論されていました、平成十二年に採択された児童の権利条約の選択議定書、さらには平成十三年に採択されましたサイバー犯罪条約、こういったものにおけるチャイルドポルノグラフィー、これをいわゆる国際的スタンダードとして禁止していこうという中で、そのチャイルドポルノグラフィーという言葉を、まさに日本もそれに加わるんだということで、児童ポルノを使ったということであって。
 ですから、ポルノが風俗犯、風俗犯と言われますけれども、風俗犯を規制する法律、取り締まる法律でポルノなんという言葉を使った法律は今までなかったんですね。一番最初に法律用語として、児童買春の禁止法の中でこの児童ポルノという言葉を使わせていただいたんです。むしろ、今までの風俗犯の体系とは全然違うんだ、そして国際的な戦列に加わるんだという意味で、果たして、言葉が個人的に好きか嫌いかという話は別として、児童ポルノということを使わせていただいたということの経緯を覚えております。
 性欲を興奮させ刺激させるということについては、また後の質疑でもあろうかと思いますけれども、基本的な当時の考え方としては、やはり医学書ですとかあるいは家庭内の成長の記録、こういったものは除かなきゃいけない。その中で、性欲を興奮させ刺激させるというような法令用語もあった、あるいは運用の積み重ねもある、現実に幾つかの判例も出ているわけでございまして、その言葉を使わせていただいたわけです。
 我々の考え方としては、児童のヌード、それから児童の性器等をさわる、さわられる、あるいは性行為、性交類似行為等の姿態、こういったものについては基本的に児童ポルノなんだろうというような考え方を持たせていただいたというわけであります。ですから、その考え方を今変える必然性は私はないと思います。

○牧原委員 質疑時間が終了してしまいまして、用意した質問の全部は聞くことができませんでしたが、目的は同じだということだと思います。児童の方で被害を受けられた方は、この法律については本当にどうなるんだという思いで注目をされておるわけでございます。他方で、表現の自由やプライバシー権ということを心配されている方もいらっしゃるわけでございます。どちらを重んじていくのかというところも、非常にこの法律案の両案の違いにあるような気がします。審議を通じて、そして今国会でぜひとも成立をさせていただきたいということをお願い申し上げて、質問を終了させていただきます。

衆議院・法務委員会(2009/06/26)/葉梨康弘議員(自民党所属)

○山本委員長 次に、葉梨康弘君。

○葉梨委員 自民党の葉梨康弘です。お手やわらかにお願い申し上げます。
 主として児童ポルノ、この問題について、民主党の提案者に、三十分の時間をいただきまして質問させていただきたいと思います。時間もございませんので、特に、主に定義等について具体的な質問をさせていただきたいと思います。
 民主党案においては、第二条において、もともと与党案にありました三号というのを削除する、それから、性欲を興奮させ刺激させるという言葉を削除するというようなことがあるわけですが、先ほど私も述べさせていただきましたとおり、幾つかやはり私が懸念しておりますのは、現在児童ポルノとして規制されているもの、これが相当抜け落ちてくるんじゃないかというような懸念を持っております。そこで、解釈について伺います。
 まず、民主党案にあります「露出」とは、あらわれ出ることですから、見えるということですね。それから、「強調」とは、特に目立つように表現するというふうに日本語辞書にございますけれども、こういう解釈でよろしいでしょうか。

○枝野議員 それは、そのとおりでございます。

○葉梨委員 あと、この「殊更に」というのは、私も民主党の提案理由、それから解説、解釈というのも見させていただいて、ちょっと日本語とは違うなと思ったんですけれども、「殊更」というのは、正当な理由なく、必要以上に、わざわざという意味のようですけれども、いずれにしても、例えば児童のヌードであっても、つまり性器などをさわったりさわられたりはしていないような児童のヌードでございまして、性器などの露出や強調がない限り、これは規制対象にならないという理解でよろしいでしょうか。民主党さん。

○枝野議員 私どもが「殊更に」と言っておりますのは、殊さらに露出をしたり強調したりされている映像ということでございますので、例えば、性器の部分だけが写っているとかということで強調あるいは露出ということではなくて、全体の映像の状況として、必然性なく例えば裸でいるというような状況等については「殊更に」に入る、合理的な理由なく性器などが露出をしているということになるというふうに考えております。

○葉梨委員 「性器等」というのは、余りここの用語としては使いたくないですが、性器と肛門と乳首ですね。

○枝野議員 そう認識をしています。

○葉梨委員 では、性器、肛門、乳首が露出していなければ規制対象にはなりませんね。

○枝野議員 「露出」のほかに「強調」ということを入れた意味は、今回の規制で、従来、いわゆる着エロというんでしょうか、性器や乳首だけはちょっと特殊な水着のようなもので隠されているけれどもまさにそこが強調されている、こういったものを明確に規制の対象の範囲内なんだということにしたいという趣旨でございまして、例えば乳首のところにだけ何かシールが張ってあってそこが露出をしていないということが、逆に、むしろそのことによって強調されているということになるというふうに考えています。

○葉梨委員 それでは、後ろ姿のヌードはどうでしょう。肛門は見えません。

○枝野議員 個別の状況によって、もちろんそれはお互いわかっていることですけれども、判断しなければならないと思いますが、肛門そのものが写っていなかったとしても、肛門と周辺部のところが殊さらに強調されているという状況、つまり臀部の肛門周辺のところが不自然な形で、つまり必然性のない形で露出をしているということになれば、結果的にそれが強調に当たるケースは十分あり得るというふうに思っています。

○葉梨委員 では、パンツをはいた後ろ姿はどうでしょう。

○枝野議員 パンツの種類にもよります。それこそ、先ほど申し上げましたとおり、この間、大変ひどい状況になってきているいわゆる着エロと称するものは、大変特殊なというか普通には着用しないような、パンツと言っていいんでしょうかね、というようなものをはいていることによって結果的に肛門等を強調しているというケースはありますので、はいていればいいということではない。そのパンツの形態とか、そのことによって全体の映像として肛門、性器等が強調されているかどうかということで判断されるというふうに思います。

○葉梨委員 上半身裸で下はスカートをはいている、そういうような後ろ姿の画像はどうでしょう。

○枝野議員 上半身裸ということによって、例えば乳首が露出をしていなくてもいいわけですけれども……(葉梨委員「後ろ姿」と呼ぶ)
 後ろ姿であったとすると、一般的には今回のこの法律の要件には該当しないというふうに思いますが、ただし、上半身が背中であるから、あるいは下半身にスカートをはいているからといって、では全部当たらないということになるかというのは、まさに着エロのような、はいている形はとっている、あるいは乳首、性器、肛門そのものは写っていない、けれども、まさにそこが強調されているという、まさに法の抜け道をやろうみたいな話のところというのは、「強調」という言葉でしっかりとカバーはできるというふうに思っております。

○葉梨委員 どうとでも解釈できるということじゃないですか、要は。強調とは、特に目立つように表現することなんですよ。
 では、背中だけでスカート、それも強調だと言われるわけですね。

○枝野議員 ですから、スカートといってもいろいろなスカートがあるわけですよ。つまり、実際に、多分葉梨委員も本案の作成とかあるいは審議に当たって、最近問題になっている着エロのいろいろな映像とかを心ならずもごらんになっているかというふうに思いますが、例えば、水着を着ている、水着を着ていれば全部オーケーかといったら、現実には、まさに本当に一センチか二センチぐらいの細い上の部分、それで乳首だけは隠していますという水着も現にあって、それでそういった写真が、とりあえず性器等が写っていない、そして着衣、つまり水着を着ているということで、ようやくつい最近こういったものについても摘発が始まっていますが、まさにあいまいで、そういったものをやっていいのかどうか、そして、厳密に現行法の、着衣の一部または全部を着ていないということのときに、それはそれで一応水着ですという抗弁に対してどうするのかということがあるように、例えばスカートだって、まさにスカートの態様によります。
 それから、背中だけで乳首そのものが写っていなければいいかということについてでも、それは撮影の角度とかなんとかで、そのことによって乳首を強調しようとしている、あるいは、スカートによって逆に肛門あるいは性器等を強調させようとしているという映像があり得ることを全面的に私は否定はできませんから、そこが、まさに全体の映像として殊さらに強調しているかどうかということで決まる。そこのところはしっかりと、悪質なものは「強調」という言葉で十分に取り込み得るんだというふうに私たちは思っています。

○葉梨委員 何か、「強調」ということがよくわからないんですけれども。
 では、これで、(パネルを示す)どうも、おしりが見えていると強調だというふうには、通常の法令用語あるいは日本語の世界だったら、そうはならないと思うんですけれども、この資料一です。お配りしています。
 こちらで、下はちゃんとした着衣だと。この人は、性器、胸などを強調するつもりは全然ございませんね。これを撮りますと、これは強調になるんですか、下はちゃんとはいていた場合は。

○枝野議員 まず、「強調」「露出」というのは、当該行為をしている児童の主観的な問題ではありません。本人が強調するポーズをとったのかとか露出するポーズをとったのかということは、私どもの定義では全く問題にされていません。映像そのものが殊さらに露出をし強調するものになっているかということを、映像全体の客観的な状況から判断をするということになります。
 今の漫画は、いわゆる盗撮的な部分のところのことを取り上げているのかというふうに思いますが、一般的に申し上げれば、例えば浴場とか更衣室等について、本人に知られないようなところから撮影をされている映像というものは、その中で例えば性器等が写っているような状況があれば、まさに、ふだん隠していて本人も隠そうとしているところで、ふだんは普通の人に見えないようなところで、そういったものを隠れて写すという、そういう映像であるということに映像の客観的な態様としてなりますから、そうした場合には、性器等が写っていれば露出に当たるということになるというふうに思っています。(葉梨委員「写っていなかったらどうなんですか。写っていませんよ」と呼ぶ)

○山本委員長 発言者は立って発言してください。

○葉梨委員 はい。
 これは写っていません。おしりも隠れています。どうでしょう。

○枝野議員 おしりそのものが完全に隠れているという状況、つまり更衣、脱衣の途中ということでない映像であるならば、それは問題にはならないと思いますが、まさに脱衣の途中で、これからおしり、つまり肛門や性器等が見える直前の状況というのは、映像の態様によっては、強調しているということには十分なり得るというふうに思います。

○葉梨委員 これは、いつまでたったって、性器、肛門が見えるというオケージョンじゃないんです。これは水着で、着がえている。通常、着がえるときに、性器、肛門は見えません。
 では、これは、ならないということでいいですね。

○枝野議員 露出という定義からは、肛門等が見えなければ露出には当たりませんが、まさに着がえているところを盗撮されているという客観的映像は、基本的には、そこで肛門とか性器とかというものを強調している映像であるということに客観的に判断されるケースが多いと私は思いますけれども。

○葉梨委員 それは、性器、肛門を強調するためじゃなくて、臀部を強調するというんだったらわかります。胸部を強調するというんだったらわかります。
 枝野先生も法律家ですから、最後の最後まで性器、肛門が見えないもの、見えないことが明らかにわかっているにもかかわらず、それで強調というのは、どういうような解釈でされているんでしょう。

○枝野議員 最終的に見えなくても、例えば、先ほど来申し上げているいわゆる着エロなどというのは、例えば乳首の部分のところは全部隠しているし、肛門も性器も全部隠していても、それでもそれは強調に当たるというふうに言えるはずであります。
 最終的に見えるかどうかということではなくて、その映像を見た人たちがということになると主観的な要件になる。その映像からうかがわれる状況というのは、まさに間もなく肛門が見えようとしている、まもなく性器が見えるかもしれない、見えるか見えないか、どういう状況なんだろう、そういう状況にあるということが結果的に肛門とか性器とかということを強調しているという映像になるということは、見える見えないを問題にしているんじゃなくて、そのことによって、ふだんでは、例えば、きちっとした普通の水着を着て、あるいは普通の洋服を着ているという状況では、まさにもちろん臀部は見えませんし、性器や肛門が見えそうでもあるはずはないわけですけれども、それを、着がえをしている、しかも普通の脱衣所とかそういったところで着がえをしているという状況で、もうちょっと下げればもしかすると見えるかもしれないという状況の映像は、それは、客観的に見て、肛門とか性器とかそれから乳首とかという今回の法案の対象になっているところを強調している映像であるというふうに十分解釈ができるというふうに思いますけれども。

○葉梨委員 これで明確な取り締まりは、今の答弁でできるんだそうですよ、民主党の方々。
 性器等がいつか見えるだろうじゃないんですよ。いつまでたっても絶対見えないんですよ。見えないんだけれども、おしりの強調ではあるのかもわからないです、無理くり「強調」ということを特に目立つように表現するということであれば。
 これも強調だと言われるんでしょうけれども、(パネルを示す)では、これは上着を着ていたらどうなんですか。性器見えません。乳首見えません。肛門見えません。いつまでたっても見えません。これはどうなんでしょう、当たるんでしょうか。

○枝野議員 いつまでたってもとおっしゃっていることの意味が私には余りよくわからないんですけれども、静止画像の場合もあるし、動画の場合もいろいろあるんでしょうけれども、それは動画のことをおっしゃっているという……(葉梨委員「静止画」と呼ぶ)
 静止画像については、いつまでたっても、つまり、強調という定義を入れた以上は、いつまでたっても性器等が写らないのも強調に入るのは当たり前で、別に服を脱ごうとしている状況ではなくても、先ほど来何度も繰り返し申し上げていますが、着エロ的な映像というのは、別に何かを脱ごうとしているわけじゃないんですから、いつまでたっても乳首も性器も肛門も見えるような状態になるわけではないという映像であります。
 今御示しになった映像についても、その態様によって、まさに、例えばその形で半分パンツを脱がしているという状況とか、あるいは上半身が裸の状況で、胸のところ、乳首のところを手で不自然に隠しているとかという構造があれば、それは強調しているということに当然なるというふうに思いますけれども。

○葉梨委員 相当細かに見ていかないといかぬということですが、ただ、この強調という意味、多分、委員の皆さんも聞かれていて、さっぱりちょっと、私も頭が悪くてわからないんですよね。要は、背中だけのヌードなんだけれども、下はちゃんと着衣を着ていますといったものも強調になるかもしれないし、ならないかもわからないということでいうと、現場は混乱しますね。
 そして、多分、衣服を脱いだ人の姿態というのは、性器などを露出、強調するものよりも、相当やはり広いは広いんです。今のお話を聞いていると、衣服を脱いだ人の姿態で性欲を興奮させ刺激させるといった方がよっぽど明確じゃないか、私自身はそういうような印象を持ちました。
 ただ、いずれにしても、この「強調」ということで、今現在児童ポルノとして規制されているものが、やはり抜ける部分というのは出てきますね。それはよろしいですね。

○枝野議員 実はこれは、十一年前、まさに超党派の議員立法の当事者でございまして、そのときからこの今回外そうという三号というのは重要な議論のポイントになっておりまして、議員立法なのになぜ霞が関におられた方がかかわってこられたのか、私にはよく理解できないんですが。
 それはいいとしても、あのときから私自身、国会でも申し上げているんですが、この二条三項三号の条文を素直に読めば、例えば十六歳、十七歳の、わかりやすく言うとジャニーズなどの若い男の子が上半身裸でいる映像とかそういったステージとか、そういったものはたくさんあります。これは明らかに同世代の女の子たちの性欲を興奮させ、または刺激をしているというふうに思います。なおかつ、着衣の一部、つまり、上半身裸になって、あるいはステージの途中で着ていたものを上半身脱いだりするということがありますが、明らかにこれは条文上は入ってしまう。
 もちろん、それは社会通念上、そんなものは取り締まらないという現実になっているんでしょうけれども、こういったものが条文上入っていってしまうということは、もしかすると取り締まりの対象にされるかもしれない、そういう危険性があるという状況はやはり避けるべきである。
 一方で、この間、先ほど来繰り返しておりますが、着エロなどに対する取り締まりが大変腰を引けた状態でやってきた。これはやはりこの条文からでは、なかなか読み取ることについて迷いが出てくる、こういうことなんだろうというふうに思っていまして、そういったものをしっかりと取り締まりの対象に入れる一方で、私が申し上げた、例えば十六歳、十七歳の男の子が上半身を途中で脱いで裸になるというような映像は当たらない。まさにそういったものを外すことを目的としています。

○葉梨委員 そうすると、では、十六歳、十七歳の男の子が上を脱いだものはすべて当たらないということですね。

○枝野議員 わかってお聞きになっているんでしょうけれども、すべてこういうものについては、すべてということで果たして答弁できるのかどうかということについては、無責任なことは言うべきではないというふうに思っておりまして、つまり、例えばその態様によっては「殊更に」というところで基本的には扱われる。つまり、合理性を持ってということ。
 つまり、一種若い男の子に対する性的虐待というものも世の中には存在をしているわけでありまして、そういったことをうかがわせるような状況の中で、例えば男の子の乳首が写っている、それはむしろ一号や二号前段のところでカバーできるケースが多いかなというふうに思いますが、今ここで一切ないということを言うつもりはありませんが、先ほど例で挙げたようなケースについては明確に外すべきだということであります。

○葉梨委員 ここの議論をしていても、そもそもその強調というのがどういう意図なのかというのが私自身もさっぱりわからない中で、アメーバのようにいろいろな答弁が繰り返されるものですから、これは相当やはり現場は混乱するなというふうに思います。
 私自身も平成九年から十年にかかわったときも、役所の立場という公的な立場というより結構私的な立場で、覚えていますのは、堂本先生が当時いらっしゃって、もう役人は出ていきなさいといって私も大分いじめられ、私個人でおるんですからということでいたような懐かしい経験もございますけれども。
 ところが、「性器等」といった場合には男性の乳首も入りますよね。ですから、ジャニーズが上が裸になったものは入らないというのは、これは性器等は明らかに露出はしている。露出をしているけれども、それは、ジャニーズの場合は「殊更」ということにならないけれども、普通の男の子が裸になったら、これは「殊更」になる場合もある。では、「殊更」というのは一体何なんだろうと。
 では、殊さらそれを強調するようにジャニーズが胸をこうやって乳首を出している、これはならないということですか。

○枝野議員 「強調」も「殊更」も、その行為をしている児童の行動についてではない、映像そのものの性格である。
 ですから、例として申し上げたのは、ジャニーズの、一般的に我々が思っている、しかも現に行われている、例えばステージの上で上半身裸になるというようなことについては、これは「殊更」には当たらないだろうと。つまり、合理性がある、合理的理由があるだろうというふうなことを申し上げているので、仮に、ジャニーズの男の子であったとしても、先ほど申し上げたような、つまり一種同性愛的、あるいは男の子に対する性的虐待的なことをうかがわせるような映像において乳首の露出または強調があったりすれば、それは「殊更」「強調」、あるいは「露出」をしたものに当たる可能性は否定をしない。
 普通の男の子も、普通に、例えば海辺で、海岸に着いたから上半身裸になって、水着じゃないですよ、海水浴に行ったわけじゃないけれども、海に行ったから上半身をぱっと裸になってそこら辺で遊んでいる、これは、普通の男の子だって、それの映像を撮ったからといって、普通には殊さら強調した映像にはならない、こういうことだと思いますけれども。

○葉梨委員 「殊更」と「強調」というところがみそで、どんなものでもなり得るし、どんなものでもなり得ないし、その場その場で見るしかないというようなことだとすれば、今の定義の範囲としては、私がこう言っては申しわけないんですが、ちょっとできがよくないというふうに言わざるを得ないかなというふうに思います。
 そもそも、今の三号の児童ポルノ、これについて、後で枝野先生からもいろいろと質疑いただきますけれども、実際に、捜査が恣意的に運用されるということについて、これは私も大変な懸念を持っていますので、それはそうならないように絶対していかなきゃいけないけれども、やはり今のお話を聞いていると、民主党案というのは、定義の明確化というよりは定義のアメーバ化で、何だかよくわからなくなっちゃったというような感じを持っております。
 後でまた議事録、もう一度御自分の答弁を読み返してみていただいて、また議論もさせていただきたいと思います。
 ちょっともう時間もありませんので、別の題に移りたいと思います。
 民主党が、「児童ポルノ」という用語を「児童性行為等姿態描写物」と変えようとしています。先ほどお答えいたしましたが、サイバー犯罪条約では、いわゆる疑似児童ポルノというのも児童ポルノに入っているんです、サイバー条約ですが。これは日本の法律の定義には入っておりませんけれども。
 これを、ただ「児童性行為等姿態描写物」とすることにすると、この法律の世界では、いわゆる疑似の児童ポルノ、漫画、アニメについては一切さわらないというようなことになりますけれども、そういう理解でよろしいわけですね。

○枝野議員 これも、過去二回の制定、改正のとき、常に一貫して私どもの立場として、そういったものを仮に規制をしなければならない状況があったとしても、保護法益が児童が性的な虐待を受けたことという個人的保護法益であるこの法案、法律と、それから、そういった映像等がはんらんをすることによる弊害を防ぐという目的とでは、目的に大きな違いがある。
 もし仮にそういったことを立法する必要があるとしても、それは別の法律であるべきである。そのことの方が、この法律ではとにかく、実際に性的虐待を受けた子供たちを守らなければならないという趣旨が明確になるということで、我々はそこを分けるべきだと考えておりますので、本法には入らないということで結構でございます。

○葉梨委員 そこのところは大変いろいろ議論のあるところで、例えば、今の法律でも実在の児童ということになっていますけれども、二百年前に製造された、明らかにその児童がもうこの世にいないといったものも、実はこの児童ポルノの対象にはなる。
 ですから、その意味では、いわゆる個人的な法益、社会的な法益ということで、我々は、ただ、二〇〇二年の米国の連邦裁の判決もよく承知しています。ああいう形でアメリカが強い規制をゲームとかアニメにかけたというのは、やはり表現の自由の関係から違憲であるというような判示がなされたわけですけれども、ただ、やはりゲームとかアニメでも、ひどいものはひどいんです。
 ただし、同じような規制を、実在の児童を被写体としたような児童ポルノと一緒にすべきだというふうには私は思わないんですけれども、少なくとも、エビデンスというのをそろえてこういう研究はしていかぬといかぬということから、与党案は研究という規定を入れているということを御理解願いたいと思います。
 ちょっと時間がないので、単純所持の関係ですが、児童性行為等姿態描写物の有償、反復取得の禁止で規制されない行為についていろいろと伺います。
 まず、先ほど言いましたけれども、大量の児童ポルノの蔵書を保有して、私は実はだれだれさんの子供時代のポルノを持っていますよ、私は実はだれだれの子供時代のポルノを持っていますよというのをだあっと宣伝して回る行為というのは、民主党案では禁止されないということですね。もうイエスかノーかで結構です。

○枝野議員 民主党案では規制されませんが、与党案でも、「性的好奇心を満たす目的」が満たされるのかどうか、非常に疑問があると思います。

○葉梨委員 多分、そうやって宣伝して回る方はペドファイル、小児性愛者ですから、与党案ではここのところを禁止されるだろうというふうに思います。
 自分が保有する児童ポルノを、友人であるばりばりの小児性愛者、ペドファイルに見せて、見せるだけよという代価として百万円をもらう行為、これは民主党案では規制対象となりますか。

○枝野議員 お言葉ですが、持っていて見せるからといって、ペドファイルであるという推定がどうして働くんでしょうか。私は、そこがまさに、持っているということだけでこいつは悪いやつなんだということをうかがわせるという、それに基づいて自白が強要されるのではないかという危惧のまさに一番のポイントだろうというふうに思います。
 今の点についても、私どもの案でも入りませんが、残念ながら、一人にだけ見せるということはどちらの法案でも対象になっていないわけで、そちらは所持は対象になる。だけれども、その人が人に見せてお金を取ることを目的としているのなら、自己の性的好奇心を満たす目的というのはむしろ排除される推定が働くんじゃないですか。

○葉梨委員 それはそうでもないと思いますね、一緒に楽しむということもあるわけですから。(枝野議員「こともあるわけでしょう。だけれども、違う場合もある」と呼ぶ)
 答弁者、それは客観的によく実態に即して考えてみたらいいと思いますよ。百万円をもらって、それを持っていて一緒に楽しむという形であればということで、もちろん、それを営業としてやっているような形であれば、自己の性的好奇心を満たす目的ではないということもあるでしょう、他人の性的好奇心を満たす目的で。ただ、営業としてやっているようなことであれば、それは別途の営業法の規制があるし、そもそも、「みだりに、」にということで一般的な禁止規定を入れていますから、そういったものについてはやはり廃棄するということは、与党案では期待をされるということです。
 小児性愛者、ペドファイルでありますお父さんが亡くなりました、その子である子供もやはり小児性愛者、ペドファイルでございます。大量の児童ポルノを家宝として相続する行為は、民主党案では規制対象となりますか。

○枝野議員 小児性愛者であるかどうかということは内心の問題なので、客観的に判断できないというふうに思います。どなたかが持っていた大量の児童ポルノが、結果的に相続で違う方になったとしても、そのこと自体を違法性のあることとして排除することは、残念ながらできないというふうに思います。

○葉梨委員 私、捜査機関じゃないものですから、小児性愛者であるかどうか判断できないというのは、これは具体的な捜査の事例に即して言っているのではなくて、ある小児性愛者が小児性愛者である子供に対して相続をした場合はどうですかというふうに聞いているわけで、立証できないからどうのこうのというのは、レベルの全然違う話なんです。
 最後になりますけれども、今回、民主党が単純所持について踏み込まないと。
 たしか十六年の改正でも、次の段階ではそこのところに検討を入れなきゃいけないなということは、実は武山百合子さんが委員長でした。私、委員長代理として参議院でも答弁したんですけれども、必ず次の段階で単純所持の禁止に踏み込みますよというようなことまでは言えない、それは当然ですけれども、やはりそこまでについては検討しなきゃいけませんねというような、次の段階ですというようなことにしたわけですけれども、民主党案においては、今のところそういうふうにはなっていないということでございます。
 ちょっと時間が来てしまいました。また本日、一日長いですから、議論をしてまいりましょうということで、私からの質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。

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最終更新:2009年07月04日 21:53
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