教育・教育費

説明及び注意事項(最終更新日:2009/09/12)

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目次(関連ページ一覧)

テーマ別まとめ
資料・統計まとめ

教育問題関連の整理・資料

教育改革の歴史

 80年代半ば以降、いじめ、不登校、学級崩壊、高校中退、それに子どもをめぐるさまざまな暴力事件など、「今までの教育」がこれらの問題を生みだしてきたという見方が定着した。さらには、大蔵省や警察のキャリアと呼ばれる上級官僚や金融機関のトップが不祥事を起こすと、そうした「エリート」を生み出してきた「今までの教育」が問題視されたりもした。そして、学校や家庭や社会の問題の一因として、「今までの教育」が時代の変化に合わなくなっていることがたびたび指摘されてきた。
 しかも、情報化が急速に進展する時代には、知識は急速に陳腐化する。生涯学習の時代でもある。そうした時代には、「自ら学び、自ら考える力」が必要であり、これまでの「知識の詰め込み」教育では対応できないといった意見も根強く、幅広く受け入れられている。
 そして、結論として、「今の教育は制度疲労を起こしている」、だから「教育を改革しなければならない」となる(苅谷剛彦「教育改革の幻想」p.12)
年次 名称 内容
1947 学習指導要領 戦前の「教授項目・細目」に変わるものとして、学習指導要領が作成される
1951 学習指導要領 第一次改定(同年実施)。教師主導のやり方から、「問題解決学習」へ
1958 学習指導要領 小中学校・第二次改定(小学校は61年度、中学校は62年度から実施)。基礎学力重視の系統主義へ
1968 学習指導要領 小学校第三次改定(71年から実施)。「知識詰め込み」のピーク※小学校の主要4教科の授業時間が3,971時間へ
1969 学習指導要領 中学校第三次改定(72年から実施)
1977 学習指導要領 小中学校・第四次改定(小学校は80年度、中学校は81年度から実施)。ゆとり教育の始まり※小学校の主要4教科の授業時間が3,659時間へ
1978 学習指導要領 高等学校第五次改定(82年から実施)
1984~1987 臨時教育審議会 「教育の自由化」が主張され、その後の新自由主義的・市場主義的な教育改革の端緒になる
1987 臨時教育審議会 「生涯学習という考え方に立ち、学習者が主役の教育という方向性を打ち出す」
1989 学習指導要領 小中学校・第五次、高等学校第六次改定(小学校は92年度、中学校は93年度、高等学校は94年度から実施)。ゆとり教育の強化や「新しい学力観」の導入など※小学校の主要4教科の授業時間が3,452時間へ
1996 中央教育審議会 「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」第一次答申
1998 学習指導要領 小中学校・第六次改定(2002年度から実施)。ゆとり教育の完成、学習指導内容の三割削減、完全週五日制、「総合的な学習」の導入※小学校の主要4教科の授業時間が2,941時間へ
1999 中央教育審議会 初等中等教育と高等教育との接続の改善について
1999 学習指導要領 高等学校・第七次改定(2003年度から実施)。
2002 文部科学省 「確かな学力の向上のための二〇〇二アピール「学びのすすめ」」発表。学習指導要領の一部改訂(教育内容の一部復活、「歯止め規定」廃止の再確認など)
2006~2008 教育再生会議 「ゆとり教育」の見直しを提言

小学校6年間の主要4教科の授業時間数の推移
年度 時間
1971 3,971時間
1980 3,659時間
1992 3,452時間
2002 2,941時間
出展:学習指導要領の統計

参考サイト

文部科学省の高校教育・幼児教育に関する方針

教育安心社会の実現に関する懇談会~教育費のあり方を考える(平成21年7月3日)~
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/21/07/__icsFiles/afieldfile/2009/07/07/1281312_2_1.pdf
(3)高等学校段階について
【基本的方向性】
義務教育ではないが、進学率が98%に達する「国民的な教育機関」となっていることを踏まえ、教育の機会均等を図る観点から、授業料等の負担軽減を図る。
特に低所得者層(※)の家庭の生徒については、高校生が家庭の経済状況に左右されずに安心して学業に専念できるよう、新たな修学支援方策について検討する。
併せて、私立高校に通う生徒に対する手厚い負担軽減策を講じる。
※生活保護の受給対象相当及びそれに準ずる世帯
(イメージ:年収おおむね350万円以下※P25参照)
文部科学省の方針としては、高校教育無償化には賛成せず、奨学金の充実や授業料減免制度の拡充によって対処しようとしているようです(試算は、最大で229+500+1564=2293億円)。
また、文部科学省は、上記の高校教育の負担減免とは別に幼児教育の無償化(試算では7900億円)を打ち出しています。

各国の教育関連の公的支出のGDP比

国名 GDP比総額 初等・中等教育 高等教育
日本 3.1% 2.6% 0.5%
ドイツ 3.8% 2.9% 0.9%
イタリア 3.8% 3.2% 0.6%
韓国 4.0% 3.4% 0.6%
アメリカ 4.5% 3.5% 1.0%
カナダ 4.6% 3.2% 1.4%
イギリス 4.7% 3.8% 0.9%
フランス 4.9% 3.8% 1.1%
フィンランド 5.5% 3.8% 1.7%
スウェーデン 5.7% 4.2% 1.5%
出展:OECD Education at A Grance2008

受験に関する推移

首都圏の中学受験率
入試年度 全国小6児童数 首都圏小6児童数(首都圏割合) 首都圏受験者数 首都圏児童の中学受験率
1986年 517,000 44,000 8.5%
2000年 1,326,960 308,363(23.2%) 40,100 13.0%
2001年 1,301,375 305,742(23.5%) 41,800 13.9%
2002年 1,239,194 290,560(23.4%) 40,500 13.9% 「ゆとり教育」の実施
2003年 1,214,274 288,047(23.7%) 43,500 15.1%
2004年 1,217,419 293,219(24.1%) 44,450 15.2%
2005年 1,203,193 290,241(24.1%) 47,000 16.2%
2006年 1,192,343 293,775(24.6%) 53,100 18.0%
2007年 1,232,292 307,011(24.9%) 58,000 18.9%
2008年 1,182,241 295,792(25.0%) 61,00 20.6%
出展:日能研のデータ

年度 大学志願率 大学入学率 私立大学在籍者率
1960年 21.2 58.8 65.1
1965年 25.9 71.0 71.7
1970年 25.7 60.7 75.6
1975年 34.5 63.8 77.5
1980年 32.3 61.1 76.2
1985年 32.3 57.4 74.2
1990年 34.5 51.7 74.5
1995年 39.0 60.5 76.6
2000年 45.1 77.3 77.2
2001年 46.4 77.3 77.3
2002年 47.3 76.4 77.5
2003年 47.3 76.8 77.5
2004年 47.4 78.4 77.5
2005年 48.0 81.8 ?
出展:苅谷剛彦『学力と階層』p.277

参考サイト

在日外国人の子供の抱える教育問題

在日外国人の子供の場合、「日本の義務教育への就学義務はないが、公立学校に就学を希望する場合は、国際人権規約等も踏まえて無償で受け入れる」という対応を取っています。
そのため、親には子供を学校に通わせるという意思が弱い場合も多く、子供の学習上の問題を抱えて色々な問題を抱えています。
①学習思考言語としての日本語をマスターできないため、学校の授業についていけない子供が多い事
②上記に伴い、子供に低学歴の傾向がある事
③不就学児童の増加

参考サイト

海外の大学教育

英国の大学教育

英国留学経験のある方(政治学専攻)に伺ってみた所、英国の大学は以下のような感じになるようです。
①講義とチュートリアルの機能分担がハッキリしている。チュートリアルというのは、基本的に一方的な講義を補うために行われる少人数教育で、オックスフォードやケンブリッジのように極少人数だったり、十数人のゼミのような感じだったり、場所によって違いはあるが学部一年次から行われる。
②試験については、試験問題は学内の担当教官が作成し、採点者は学外から選定される(=大学相互に採点を行っている)ので、ピア・レビューのような感じで客観的評価が行われ、学部教育の水準を一定以上に保つ機能もある(=適当な授業や政治偏向した変な教育はできない)。また、使用するテキストや参考文献などについても、一年次から(国際的に通用する)学術文献の参照・比較に普通に道が開かれているため、本格的な学術文献への距離が近いとも言える。

授業料は、(1ポンド=210円で計算した場合は)1998年度入学者から、教育費用の1/4(約21万円)。
※保護者の年収420万円以下は負担額無し、年収525万円で約15万円、外国人留学生はフルコストで文科系175万円、理系で230万円
2006年度から、各大学が自由に授業料を設定。9割の大学は法定最高額の3000ポンド(約63万円)
※教育の機会均等のため、大学は大学独自給付奨学金を設定しなければならないとされ、学生が支払う純授業料(定価-給付奨学金)は無償~163万円

参考サイト

教育行政に関するQ&A

「教育の目的」はどういうものになっているのでしょうか?

教育基本法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H18/H18HO120.html
 第一章 教育の目的及び理念
(教育の目的)
第一条  教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。
教育基本法にもありますが、現代(国民国家成立以降)の「教育の目的」の捉え方としては、国民(公民)の形成と個人の成長・発達という(時に相反する)2本柱の目的で捉えられます。

但し、教育基本法では「人格の完成(私人)」と「国民の育成(公人)」という二つの目的が記載されていますが、両者は等価ではありません。
上下で言えば、人格の完成=私人としての成長の方が上に来ます(私人として成長するという事が即ち、公人としての熟成も意味するというモデルを背景に持っているため)。

日本の教育の問題点としては、(欧米とは異なり)公教育と私教育の区別がされないか曖昧だという点が挙げられます(例えば、欧米では道徳を教えるのは親+「教会」の仕事と見なされるが、日本では道徳も「学校」で教えるものと考えられている)。
そのため、日本の教育を議論する上では、この辺りを注意して議論を進めないと、「公」だけあるいは「私」だけが肥大化してしまうという事態が発生してしまいます。

教育基本法にある「政治教育」とは、どういうものなのでしょうか?

教育基本法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H18/H18HO120.html
(政治教育)
第十四条  良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない。
2  法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。
政治教育に関してですが、大雑把に見て「政治的教養」の教育と、「政治教育(党派教育)」の2種類が存在します(後者の方は、「教育」では無く、「教化(政治的教化)」と呼んで区別される事も多いです)。

公教育は基本的に、現在の国家体制(とその下にある現社会)を将来にわたって維持する為に必要な知識や価値を次代を担う子供達に伝えていくという機能が期待されます。将来の事は不透明な事が多く、今の人々には把握し切れるものではありませんが、それでも最低限将来も維持して欲しい形態というのがあります(今の日本の場合、これは民主主義社会)。
この民主主義直接民主制・間接民主制もあり、自由民主主義・社会民主主義のようなものもあるなどのバリエーションがあり、結局は、その時々の人々で選んでもらうという事になります。この選択がその時々で行える為に必要な政治知識を「政治的教養」として教育するのが、現在の「政治教育」という事になります。

教育の「政治的中立性」が必要な理由に関しては、こういった歯止めをかけておかないと、「直接民主制万歳」「自由民主党万歳」みたいな教育が「国家の庇護の下に」行われてしまう危険性があり、(大人を転向させるより子供を引きずりこむ方が遥かに簡単で効果絶大なため)それが積み重なった結果として、民主主義が崩壊してしまう可能性があるため、そういった事態を防ぐ為(≒民主主義を将来にわたって維持する為に)です。

但し、日本の戦後教育ではこれが有効に機能したとは言えない状況にあり、自民党政権と日教組の争いによって教育は政治闘争の舞台になり、「肝心の子どもが置き去りにされてしまっている」という事が長らく指摘されてきました。

参考サイト

1991年から出てきた「新しい学力観」というのはどういうものなのでしょうか?

 新学習指導要領に基づいた教育が展開されつつある。
 新しい教育は、児童一人一人が主体的に生きる資質である、自ら進んで考え、判断し、自信をもって表現したり、行動したりできる豊かで創造的菜能力の育成を目指している。このような教育を実現するためには、自ら学ぶ意欲や能力、思考力、判断力、表現力などを育成することを基本とする学力観に立って、学習指導を創造する必要がる。
 したがって、日々の授業は、児童一人一人が、これまでに経験したり、学んだことなどをもとにして、新しい課題に進んでかかわり、自ら考え判断し表現することを機軸にして展開される必要がある。また、その過程において新たな知識や技能を自ら獲得するようにし、児童一人一人の思考や判断、表現などの体系の中に組み込まれるようにすることが大切である。
 このようにして身に付いた能力は、児童のその後の学習や生活において生きて働く力、すなわち自己実現に役立つ力となる。これを基礎・基本としてとらえ、学習指導を創意工夫することが肝要である。このことによってこそ「基礎・基本の重視」と「個性を生かす教育」とはその本質において同義語となる。
 このように、新学習指導要領は、新しい学力観への転換を求めている

文部科学省小学校教育課程企画官・高岡浩二「初等教育資料・今月の言葉」1991年3月号 
上記が「新しい学力観」の詳細な内容ですが、1991年の「小学校及び中学校の指導要録の改善について」の内容を分かりやすいスローガンで集約したものとして「自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体的に対応できる資質や能力を育成するとともに、基礎的・基本的な内容を重視し、個性を生かす教育を充実する」というものが使われ、これ以降は、知識の詰め込みによる受動的な学習ではなく、児童生徒の意欲や興味・関心を高める教育が目指されるようになりました。

関連項目

「ゆとり教育」はどのような事を目標として考えられていて、どのような成果をあげたのでしょうか?


「ゆとり教育」が開始されるまでは、どの位の準備期間があったのでしょうか?


「ゆとり教育」は「エリート教育」としての意図ももっていたのでしょうか?


学校週五日制が導入された理由は、どういうものがあるのでしょうか?

学校週五日制に関しては、1992年に月1回、95年に月2回、2002年からは完全に週五日制になりました。
建前としては、①日本の学校はいろいろな事をやりすぎている事の問題解消②子供の生活がゆとりがあるものにするため③家庭での親子の触れ合いや地域での異年齢交流を促進させる事などが言われましたが、中教審の委員もやっていた教育社会学者の藤田英典教授によると、本当は「日本の労働者の労働時間の短縮」が目的で、国家公務員・地方公務員の週休二日制を教育においても導入する事が目的だったようです(教職員の数を増やさずに教職員の週休二日制を実現させるには、学校を週五日制にする事が簡単なため)。

週休二日制に関しては、日教組の方でも、文部省に先駆けて1972年の秋田で開いた定期大会で「週休2日、週40時間制の実現」の運動方針を採択し、「学校5日・週休2日制研究会」を設けて、具体化に向けて運動を開始していたようです。

参考サイト

文部科学省が全国の都道府県教育委員会に命令して、全国一斉に高校改革を行う事は可能でしょうか?

教育は地方自治が原則のため、それはできません。
文部科学省は法令に基づいて教育委員会に指導と助言を行う事はできますが、東京都の都立高校をどうするのかなどは東京都民が決めて、神奈川県の公立高校をどうするのかは神奈川県民が決めます。

教員免許更新制度と不適格教員への対応の関係はどうなっているのでしょうか?


政策決定の参考にするための学力調査には、どういったものがあるのでしょうか?

国家政策レベルでは、PISA(OECDの学習到達度調査)やTIMSS(IEA国際数学・理科教育動向調査)の調査を利用します。
PISAとTIMSSは調査で「図りたい学力」が違い、PISAは「ゆとり教育」が目指した思考力や創造力などの「新しい学力」を、TIMSSは従来型の学習到達度を図り、国際比較を行っています。
それ以外には、最近縮小が決定した「全国学力調査」が有力で、都道府県別の順位なども出ます。全国学力テストは一端中止され、2007年から
復活しましたが、その前には、国立教育政策研究所(文科省のシンクタンク)によって「教育課程実施状況調査」という調査が行われていました。

日教組は組織率が3割を切っているので、仮に民主党が政権をとっても影響力はないのではないでしょうか?


「家庭の教育力が低下している事」に対する対策は文部科学省ではしないのでしょうか?

「家庭の教育力が低下している」という事実認識は1998年の中教審で議論され、文部科学省ではその答申を受けて「家庭教育ノート」というのもを作成・配布しました。
但し、教育社会学者の広田照幸教授によると、「「現代の家庭はしつけをしなくなった」というのは事実誤認で、「子どもは放っておいても一人前になるものだ」という考え方が衰退し、代わりに「家庭がちゃんとしつけをしろ」といわれる時代になったからこのようなとらえ方がされている」という事です(広田照幸『日本人のしつけは衰退したか』)。

「家庭の教育力が低下しているので親はもっと責任を持つべきだ」という言説の広がるメリットとしては、親が子どものしつけに対して責任を持つ傾向が一層促進されていく事、デメリットとしては、子どものしつけどころではない生活困難層や家族の関係が冷え切っている家庭の真の問題を無視して、道徳的態度で親を問責する事で問題の解決を遅らせる事、昔よりもわが子の子育てに責任を感じるようになっている親を追い詰める可能性がある事などが指摘されています。

諸外国の制度・メソッドを取り入れた教育改革に関するQ&A

教育改革における「トップランナー効果」「クリーム・スキミング」というのは、どういうものでしょうか?

「トップランナー効果」というのは、「誰よりも先に始めた改革は上手くいきやすい」という事です。そして、最初の実験校・モデル校で行った教育実践は上手くいきますが、それを全体に広げようとすると上手くいかなくなってしまう事が多々あります。
「成功している」と評価されている愛知県の犬山市での教育改革の場合、名古屋大学のカリキュラム学や教育行政学の先生が深く協力している事が成功の要因の一つといわれていますが、全国の市町村が犬山市と同じように工夫して教育改革を行おうとした場合は、深く協力してくれる優秀な専門家の数が足りなくなります。また、最初の改革の事例はメディアや学者が注目するため自分の実践がニュースになって流れるけれども、後発の事例は注目されないため、実践する側のモチベーションにも差が出る事なども指摘されています。

「クリーム・スキミング(cream skimming)」というのは、やりやすい事例だけ(牛乳の中から一番おいしいクリームの部分だけ)をすくいあげるという事です。私立・国立大学の附属校では、理念に共鳴した保護者や優秀な生徒が多く集まるため、そういう所で行った実践は、子供に柔軟性があったり親が熱心で協力的な事も多く、上手く行く事が多いです。
ですが、「牛乳の底」とされる、親は子供の教育に無関心で、学校に対して無関心か反抗的な生徒が多く集まる学校で同じような教育を行っても、その教育実践は上手くはいかないため、一部で成功した教育改革を全国の普通の学校に広げる事は難しいとされています。

この事は「ゆとり教育」の目玉である「総合的な学習」に関しても指摘されていて、東京の学芸大附属や名古屋大学教育学部附属などの全国の国立大学附属では一定程度の成功を収めた「総合的な学習」の授業でしたが、それを見て普通の公立の小学校・中学校・高校に広げて実行した結果、多くの学校では上手く機能せず、2007年の学習指導要領の改訂(2011年度から実施)の際には、「総合的な学習」の時間は縮小・削減される事になりました。

関連項目

「ゆとり教育」の下敷きとなっている「子ども中心主義」教育とはどういうものでしょうか?


「ゆとり教育」「新しい学力観」育成の目玉である「総合的な学習」は、どのような社会認識を元にしたものだったのでしょうか?


「ゆとり教育」「新しい学力観」育成の目玉である「総合的な学習」が成果をあげられなかった理由はどのようなものがあるのでしょうか?


日本の学校システムは「単線型」で、諸外国のような「複線型」「分岐型」の学校システムとは違うようですが、これはなぜでしょうか?

学校システムには、大きく分けて単線型・複線型・分岐型というものがあります。
日本やフィンランドは、このうちの同一タイプの中学校・高校に進む「単線型」の学校システムを採用しています。

近代の理想は、「生まれた時点では、誰にでも何にでもなれるチャンスを与える」というもので、専門教育・職業教育に入るまでの普通教育の期間は「何になるのか選び取るまでは、その基礎となる知識や市民としての共通の知識を学ぶ期間」とされています。
この期間をどれだけ取るかで学校システムは分かれ、「単線型」は汎用性の高い教育(訓練可能性)を長期に渡って行い、上の段階学校に進む時にコースを変えられる幅を広くとっています。
「単線型」の学校システムのデメリットとしては、普通教育が長期化してしまい、生徒によっては自分が将来就く職業に関係のない知識を長い間学ばなければならず、学ぶ意味が見えなくなってしまうという事が挙げられます。

そういった問題点を解消し、自分が将来就く職業に関係ない知識を学ぶ意味が薄い生徒に関しては、早期に自分が就く職業を決めて早めに専門教育・職業教育を受けさせる学校システムを採用している国もあり、ドイツの場合は10代前半という早期から社会階級に対応した職業教育を行う「分岐(フォーク)型」の学校システムを採用しています。
「複線型」「分岐型」の学校システムのデメリットとしては、一度選んだら(振り分けられたら)、そのラインに沿って進級・進学し、学業を積み上げていかざるを得ず(専門用語では「トラッキング」といいます)、職業選択の幅が狭まる事と、親の職業が子供に受継がれる階級化社会が促進される事にあります。

公立の小学校・中学校を選択できる「公立学校選択制」というのは、どのような効果があるのでしょうか?

「公立学校選択制」というのは、生徒が進学予定の公立の小学校・中学校を複数校の中から選ぶことができるという制度です。
従来は子供は教育委員会が指定する学校に通学することが定められ、生徒は自分が通う公立学校を選ぶ事はできませんでしたが、1997年に文部省が「通学区域制度の弾力的運用について」という通知を出して以来、この制度を採用する自治体は増加して、内閣府が2006年に行った調査では小学校の14.9%、中学校の15.6%が導入しているという結果が出ました。

この制度のメリットとしては、(生徒数という目に見える数字が出るため)学校間の競争によって教育内容が向上する事、保護者や子供にとって複数の選択肢の中から公立学校を選べるため、自分の行きたい学校に通える事が挙げられます。全国で最も制度が浸透している東京区部では、現在までに23区中19区が「学校選択制」を導入しています。保護者・生徒の満足度に関しても、墨田区が今年実施したアンケート結果によると、小中学校それぞれ85%前後の保護者が学校選択制を肯定し、2005年の内閣府調査では全国の保護者の64.8%が学校選択制の導入に賛成(反対は10.1%)するなどの支持を得ています。

制度のデメリットとしては、保護者の学校選びの基準が風評(○○学校は荒れてるなど)や進学実績になってしまい、個々の学校単位では成功していて保護者の満足度が高くても、自治体の抱える公立学校全体で見ると、教員の負担増大や、子供の流出による学校間の生徒数の差の拡大、地域と学校の分断などの問題が発生してしまう事が挙げられます。
制度の導入に関しては、前橋市や江東区長崎市等では一度導入した制度を取りやめる一方、横浜市が導入の検討を始めるなど、地域の抱える事情によって難しい選択を行っています。

参考サイト

英国のパブリックスクールをモデルにしたエリート教育は日本では取り入れらないのでしょうか?

2006年4月に開校した全寮制の中高一貫の私立学校である愛知県の海洋中等教育学校は、次世代のエリート育成を目標に、英国のイートン校をモデルにした教育をテストしています。

ただ、開校前はトヨタ自動車・JR東海・中部電力などの中部地方の有力企業が中心となり設立されたためにマスコミなどでも話題になりましたが、開校後は行過ぎた管理教育、高額の学費、大学進学ノウハウの欠如と大学受験に直結しない学習内容などの問題を抱え、学校運営は余り上手くいっていないようです。

参考サイト

教育費問題に関するQ&A

現在の教育予算の総額はどの位になっているのでしょうか?

教育予算に関しては、教職員の給与や学校の維持管理費等、ほとんどの予算は地方で計上し、国の方で計上するのは、各自治体に配る補助金・国家で行っている政策(全国学力調査など)の費用位となっています。
そのため、「教育予算」という枠組みで見た場合は「地方教育費」というものが大まかな概要になります(予算の詳細に関しては、参考サイトを参照して下さい)。

参考サイト

いままで、高校教育・大学教育の無償化がなされなかった理由はどういうものがあるのでしょうか?

様々な要素が絡み合って現在のような状況になっていますが、主な理由としては「旧教育基本法の改正が必要だったから」というものが挙げられます。
第4条 国民は、その保護する子女に、9年の普通教育を受けさせる義務を負う。
2 国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料は、これを徴収しない。
高校の教育費無料化に関しては、上記の教育基本法との絡みから高校教育の義務化とセットで考えられていました。
高校の義務教育化は、主に教職員組合を中心とした左派が普通教育の延長線上で主張していましたが、彼らは、同時に教育基本法の改正に反対していたため、自民党政権下ではおいそれと「改正」を口に出来ない構図がありました(憲法9条改正問題と似たような構図です)。

そのため、「立法政策上義務教育化できないのであれば、事実上義務教育化してしまえば良い」という発想でこのジレンマを解決する為に考えられたのが、高校全入運動と(東京都や札幌市で実施された)高校小学区制です。この施策に関しては、前者は現在の高校の進学率が97%前後なので一応の成功を収めたと言えますが、後者は都立高校の凋落という結果を招く大失敗に終わっています。

それ以外の高校教育が無償化されなかった理由としては、以下のようなものがあげられます。
①文部科学省は霞ヶ関の中でも力が弱いので、思ったような政策を展開できない(財務省の反対でGDP比5%以上の教育予算増額を目指すという文部科学省の方針は没になった)
②日本の教育の理論は、(日の丸・君が代問題が象徴されるように)最近まで基本的に教育に対する国家の関与を拒絶する(極小化に非ず)方向を向いていた。長年に渡って、教育界では、政策を内的事項(教育の内容決定等)・外的事項(学校整備等)に分けた上で、国家(行政)の関与を外的事項に限定しようとする理論(国民の教育権論)が有力であり、その理論が教育に予算を出さない財務省の対応を正当化させた。
→親の学費負担に関しても、教育を国家事業(社会事業)と捉えれば負担軽減に向かうが、私事と捉えた場合は、負担増大(等価交換)に向かってしまう。

参考サイト

自民党と民主党の教育費軽減に向けた取り組みはどうなっているのでしょうか?

情報BOX:自民党と民主党のマニフェスト比較
http://jp.reuters.com/article/forexNews/idJPJAPAN-10339020090731
●子育て・教育
自民:
○3─5歳児に対する幼稚園・保育所などを通じた幼児教育費の負担を2010年度から段階的に軽減。3年目から無償化
○低所得者の授業料を無償化
○就学援助制度や給付型奨学金の創設
民主:
○中学卒業まで1人あたり月額2万6000円の子ども手当を支給(2010年度は半額でスタートし、11年度から満額を実施する)
○公立高校の実質無償化、私立高校生には年額12万円(低所得世帯は24万円)を助成
○大学生など希望者全員が受けられる奨学金制度を創設
財源見通しも合わせると、以下のような概要になります。
党名 幼児教育(3歳~5歳) 高校教育 大学教育
自民党 3年以内の無償化(年間7,900億円) 奨学金の充実・授業料減免制度拡充(年間2,293億円) ←の制度に含む
民主党 そのまま 無償化(年間4,000億円~7,000億円) 奨学金制度を創設(規模は不明)
上記の表が両党が打ち出した施策ですが、試算の根拠な詳細は関連項目の方を参照して下さい。

関連項目

参考サイト

日本の大学の授業料が高いのは何故でしょうか?

日本の場合、高等教育の国庫負担はGDP比0.5%と少ないため、学費収入に頼らざるを得ないからです。
国立大学では、全大学平均で収入の約4割、私立大学では約1割が国からの補助金になっています(国立大学の運営費交付金は1兆円以上で、私立大学も3,000億円以上になります)。
なお、学納金収入の収入全体に占める割合に関しては、私立大学は7割以上で国立大学は2割以下になります。

日本は高等教育(大学教育)の私費負担の割合は高いですが、大学進学における所得間格差は問題にならないのでしょうか?

大学進学における要因は、子供の学力と家計の教育費負担力というものがあります。
家計の教育費負担力に関しては、大学の学費・生活費と大学入学にまでかかる高校までの学費・塾の費用に分かれますが、ここで問題とするのは大学の学費です。
全国国公私立大学の事件情報 国民生活金融公庫、家計における教育費負担の実態調査
http://university.main.jp/blog3/archives/2005/10/post_586.html
2  在学費用は世帯年収の35% (本文7ページ) 
○ 世帯の年収に対する在学費用の割合は35.0%となった。
○ 世帯の年収に対する在学費用の割合は、年収が少ない世帯ほど高い。年収が「200万円以上400万円未満」の世帯では、57.3%に達している。
家計における教育費負担の実態調査 平成17年度
http://www.k.jfc.go.jp/pfcj/pdf/kyouikuhi_h17.pdf
上記は国民金融公庫が行った、「国の教育ローン」を利用した家計を対象とした「家計における教育費負担の実態調査」という統計ですが、日本の場合は子供の進学熱が高いため、低所得者層であっても子供の教育にかける費用は削減しないという傾向があります。
そのため、文部科学省が行っている「学生生活調査」では、数十年に渡り大学生の所得別在学率の格差は大きくはありませんでした(大学進学における最も大きな要素は子供の学力となっていました)。

この「学生生活調査」の調査結果は、高等教育機会の実態を示すためには必ず用いられ、高等教育政策の審議や政策文書には根拠として用いられる重要なデータとなっていて、これまで日本では大学進学の所得間格差はあまりないとされ、所得階層間格差の是正は主要な政策課題とはなりませんでした。
但し、研究者による「社会移動と社会階層調査」などの調査データを用いた研究では、「進学機会の所得間格差は縮小している」という結論は支持
されておらず、不況による家計の教育費負担力の低下傾向と相まって、今後は高等教育における機会均等の格差是正が政策課題に上ってくる可能性があります。

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最終更新:2009年09月19日 21:39
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