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国会での審議の中継


丸山和也議員/自民党所属(参議院法務委員会(2008/11/27))

丸山和也 - Wikipedia
○丸山和也君 自民党の丸山です。よろしくお願いします。

最高裁判決と民法900条の関係

 もう各委員が何度も聞かれているんですけれども、今年の六月のこの最高裁大法廷判決のもたらした意義というか、そういうとらえ方から少し聞かせていただきたいと思います。
 これは法の下の平等という憲法十四条のここに、根幹にかかわるケースなんですけれども、先ほど白眞勲先生から、やっぱり外国人とどのように付き合っていくかという問題ではないかと、この国籍法に関してそうおっしゃって、私もまさにそうだと思うんですが、もう一つやっぱり、これは日本の取っている戸籍とか婚姻制度というものをどのようにとらえるかという問題とも同じ比重がある問題だと思うんですね。
 そういう意味で、私はこの判決出たときにぱっと脳裏にひらめいたのは、何度も言われているんですが、民法九百条の嫡出子と非嫡出子の相続分、取り分の不平等といいますか、これが目に浮かんだんですね。むしろ私の感覚からすれば、これだけ紛糾のあると言うと変ですけれども、大議論を起こす国籍法以前に、この民法九百条の方がむしろ先に訂正というか改正して取り組むべき課題であったんじゃないかと。これは何度も裁判になっているんですけれども、一定の理由があるということで、この前の最高裁の判決でも意見は若干分かれましたけれども、多数意見ではなお維持されているんですけれども。
 この点について法務大臣は、既に答えられていますけれども、基本的な今回の判決を受けて、この民法九百条についての御認識といいますか、ありましたら一言お伺いしたいんですけれども。

○国務大臣(森英介君) 最高裁の判決は、少なくとも十五年以降は違憲であったということで、これはやはり日本における家族観、それから様々な状況等の変化などもやはり勘案された上での御判断だと思います。
 しかしながら、先ほど申し上げましたけれども、やはり子供の立場に立って、別に子供は生まれてくる親を選べない、国を選べないわけですから、子供の立場に立って考えるべきであるという御判断であるというふうに受け止めておりますけれども。
 一方、やはり日本の戦前の家制度というのは、そこから既に変容して脱皮したものの、基本にやっぱり戸籍主義というか、そういったものが私はあるんだと思うんです。要するに、戸籍に入れば家族だということが基本にあって、それで、そういった日本の家族観というのが、やはりどういうふうに見るかということが一つあると思います。
 それでもって、やはり世界の、まあ世界の趨勢といっても私は日本の中の事情の方がより重いと思いますけれども、それに立って、これからどういうふうにこの問題に取り組んでいくかということでございますけれども、私、例えば世論調査の結果なども前回の委員会で引き合いに出しましたけれども、これは嫡出でない子よりも嫡出の子の方が、そういう子供も母親もずっと多いわけですから、ああいう世論調査の結果になるというのはある意味で現時点では当然なんだと思うんです。しかしながら、必ずしも、この間近藤先生からも御指摘あったように、これ多数決の話じゃなくて、やはりそういった子供の立場というのは十分に考えなきゃいけないというふうに思います。
 しかしながら、先ほど申し上げました日本の家についての考え、家族についての考え方とかそういったことが根底にありますから、これはまさに国民的な議論を更に深めていただいて判断すべきことだと思いますけれども、これは裁判所でどういう判断を示されるかとかそういうことと別にして、やはり法務省としても考えなきゃいけないし、また国会においても御議論いただかなきゃならないと思いますけれども、国籍法が先か九百条が先かということは別にして、いずれにしても同様に重要な課題であるというふうに認識をしております。

「家制度」の名残と民法900条問題

○丸山和也君 ありがとうございます。
 私も午前中にも言ったんですけど、福沢諭吉が封建制度は親の敵であると言いまして、これは明治維新のころですけれども、それから戦前、家制度、家父長制度、いわゆる家という強固な制度がありまして、それが戦後、現憲法になりまして、それから家制度がなくなり、子供は皆平等であると、そして法の下の平等、基本的人権が高らかにうたい上げられた、こういう出発をしたわけですね。
 そこの中で、大臣がおっしゃるように、やっぱり家制度の名残のようなものが、ああいう嫡出子であるかないかによって、たかが財産と言ったら変ですけれども、財産、まあお金ですよね、そこにおいてまで出生によって差別をするということは、やっぱり僕は残滓がかなり強固に残っていて、悲しむべき現実だと思うんですね。
 だから、まず日本国内におけるというか、国籍法ももちろん大事なんですけど、こういうところもむしろ僕はやっぱりかなり大きな、この民法九百条も解決されて初めて、まあほかにもまだあるんですけれども、国籍法の問題と同様の問題点で大きな問題が解決されたという時期が来るんじゃないかと思っていますので、是非、法務大臣、今おっしゃったように問題意識を持って取り組んでいただきたいと思います。

最高裁判決は司法権を逸脱しているか?

 それから、この国籍法なんですけれども、この判決についてはいろいろ賛否両論、意見がございまして、今日の新聞でも出ていたり、あるいはそれ以前からも一部の人で言っていますけれども、これは司法権の逸脱だと、要するに、国に法律制定を命じるようなものであって、司法権の範囲を逸脱したとんでもない、まあとんでもないと言うかは別にして、司法権の逸脱判決だと言う方もおられます。また、しかし司法権を逸脱しているけど、まあ最高裁判所が言ったから仕方なく国籍法の見直しはしなきゃならないんだろうという意見の方もおられる。
 そこで、大臣としては、今回の判決が司法権を逸脱しているけれども、最高裁判決が言ったんだからまあ仕方がないと、何とか国籍法を改正しようかというようなお気持ちで今回の改正案が出ているのか、そこら辺を、いやいや、あれは立派な判決だと、やや遅かったけれども、はっと気が付いて取り組んでいるんだというところか。そこら辺、忌憚のない御意見を伺いたいと思うんですけれども。

○国務大臣(森英介君) ここで忌憚のない私見を述べますとえらいことになりますから差し控えますけれども、私はあくまでもやっぱり法務大臣として最高裁の判決を尊重してなるべく早期に違憲状態を解決したいと思い、またそういう気持ちでもって国会に御審議をお願いしているところでございます。

日本の国籍法上の「血統主義」

○丸山和也君 それと、やっぱりちまたで一番問題になっているのは偽装認知とか犯罪行為が増えるんじゃないかということなんですけれども、ここでよく言われるのがいわゆる国籍法における血統主義という用語なんですけど、この血統主義というのが、法務省側の説明不足もあるのか、やや誤解されているんじゃないかという感じがするんですね。本当の生物学的な、まさにDNA的な血統を言っているのか、国籍法上の血統主義というのはどういうものかという点についてのやや僕は説明が足りないために誤解を生んでいる面があると思うんですよ。
 そういうことについて、先ほど田中委員もおっしゃっていましたけど、ちょっとやっぱり違っている前提の上でおっしゃっているような気もしましたんで、質問ですけれども、いわゆる日本は血統主義を取っているとおっしゃる、民事局長で結構ですけれども、ここでいう国籍法上の血統主義というのはどういうものなのかを勉強のつもりでひとつ教えていただきたいんですけれども。

○政府参考人(倉吉敬君) 血統主義というのは、基本的に血統がつながっている人、日本人の血がつながっている人はまず日本人としていくということであります。これに対する反対概念というか、立法例でありますのは出生地主義でして、領土で生まれた人、自国の領土内で生まれた人は全部自国民にしようという考え方と、血のつながりのある人を自国民にしようという、こういう大きな二つの考え方がある、それを血統主義と出生地主義と呼んでおります。
 それで、あとお答えになるかどうか、今回の最高裁の判決でございますが、国籍法の三条一項についてどういう趣旨かということを述べております。国籍法三条一項の立法目的を述べているところですが、血統主義を基調としつつ、我が国との密接な結び付きの指標となる一定の要件を満たす場合に限り出生後における日本国籍の取得を認めることとしたと。だから、血のつながりがあるというのがまず第一だけど、それに認知プラス婚姻ということで、それが我が国との密接な結び付きだと。
 つまり、認知というのは、単なる生物学上の父子関係ではなくて、法律上の親子関係をつくるということでございます、先ほど議論されたように。その親子関係ができて、そしてしかも、今の現行法は結婚をしている、そのことが我が国との結び付きを示す指標になるんだと、そういうことで定めた規定であって、この規定の立法目的自体は合理的であると、こう述べているわけでございます。

○丸山和也君 若干私が聞きたいのは、例えば、いわゆる純粋な意味での、我々素人的に言えば血統というと血のつながりと、じゃ、もう一〇〇%それを、まあ九九・九九九%か知りませんけど、科学的に立証するんだとやっぱりDNA鑑定が必要じゃないかと。それをしないで血統主義というのはおかしいじゃないかという議論に発展すると思うんですね。
 ところが、国籍法二条を見ますと、出生のときに父又は母が日本国民であったときは日本国籍を取得すると書いていますよね。これはだから、いわゆる国籍が、父又は母が日本国民であれば日本国籍だと、こういう血統主義を取っているわけですね。それは、だからどのように説明されるわけでしょうか。

○政府参考人(倉吉敬君) ちょっと漠然とした説明をし過ぎたと思います。血統主義というのは、日本でいう血統主義というのは法律上の親子関係があるということでございまして、委員御指摘のとおりでございます。

偽装認知問題について

○丸山和也君 そこで、最大の、今一番問題になっている偽装認知、偽装国籍取得ということになってくるんですけれども、これ三つの段階があって、それぞれの段階でチェックすると。認知の届出は余り実際はあれだけど、国籍取得届の段階で一番それが、チェック機能が働くだろうというお答えをいただいたように思うんですけれども。
 もちろん、それぞれの段階で十分事情を聴き、いろんな調査もされたり面接もされたりして厳格にやっていただく、またいただかなきゃならないと思うんですけれども、私がやや心配するのは、もちろんどんなことをやったってその網もかいくぐってくるような事例をもう一〇〇%防ぐということは人間がやることですから難しいと思いますけれども、一番心配するのは、不正が発覚したとき、それに対する、いや、法律ではこういう刑罰も設けましたよ、あるいは併合罪で最高七・五年まで行きますよ、だからもうかなり重いですよとおっしゃると、なるほどなと、一見そう思うんですけれども、やっぱり実際は法定刑がどうなっているかじゃなくて、発覚したときにそれをどのように追及し、実際どのように処罰するかという実際の運用なんですよね。例えば告発して、例えば検察庁に行ったって、こういうような行政犯みたいなものだったら、まあ初めてならいいや、今後はもうこんな変な申請したら駄目だよというふうに帰されたら、まあ何だそんなことか、しかられて帰ったわいぐらいに収まってしまうと、これはやっぱり後同じような例がどんどん続く可能性が十分あると思うんですよ。
 ですから、法律を作る段階では、もちろん違反者の処罰とかいうこと、実際運用は当たらないわけですけれども、そこの範囲についての、例えば違反が発覚した場合は、例えば国籍に関してはどのように、厳格にというか刑の実効性があるように、また抑止効果が発揮できるように運用されようとしているのか、もしそういうお考えがあるのならばお聞かせいただきたいと思うんですけれども。

○政府参考人(倉吉敬君) もちろん法務局の窓口に来た届出人に対して、これはすべての人にこういうことを言ったら良くないかなと思いますけれども、一般論として、この国籍取得届だけでも、これがうそだということになれば、ちゃんと罰則があるんですよ、一年以下の懲役ですよということは言うということになろうかと思います。
 それから、一般的に広く広報活動をしないといけません。こういうふうにして日本の国籍法が変わりましたということを広報するわけですけれども、その中でも、こういう罰則が設けられて、新しく新設されて、虚偽の認知に基づく国籍取得届というのはそれ自体でも処罰されますということはもちろん言っていくということになりますし、先ほど委員が御指摘になった、その前と後ろの公正証書原本不実記載罪になるという戸籍に載る場面のことについても十分に広報していく、そして説明をしていくということに予定しております。

窓口での運用は大丈夫か?

○丸山和也君 そういうふうに説明をされることは当然なんですけど、例えば実際に認知届なり持っていくとしますよね、窓口に。それで、偽装認知のあれですよ、偽装認知の関係の書類を持っていくと、いろいろ聴いているうちに、おかしいじゃないの、あなた、これ本当じゃないんじゃないのと言われて、いや済みませんでした、じゃまた翌日来ますわと言って持って帰ったら、大体これで終わってしまうんじゃないかという感じもするんですよ。おい、待てと、そこでこう、ただ捕まえるという言葉はあれですけど、そこでもうはっきり言えば着手しているわけですよね、書く段階でそうですけれども。そういう扱いの現状なんですよ、私が一番心配しているのは。
 窓口に行ってあれしてもらって、いや済みません、ちょっともう一回考えて書きます、出直しますと、いや、もう気を付けてくださいよというようなことで、悪いことをやったら犯罪になりますよということで帰しているようでは、やっぱり僕はちょっと、発覚さえしなければやっていいし、発覚したって帰ればそれでいいんだということになって、たまたますり抜けた人がうまくいくというような感じで、やっぱり法定刑だけ作っても実効性がないんじゃないかと思うんですね。
 というのは、こういう手続に関する犯罪というのは余り重く見ない風潮がありますね。例えば、暴行とか傷害とか窃盗だと、やっぱりこれは即座にその場で未遂であっても逮捕しますけれども、あるいはこういうのだとやっぱり突っ返されて終わりということになってしまうと、法定刑だけ重くしたあるいは新設したということにしても、実効性という意味では余り抑止効果があるのかなという点が心配しているんですけれども、そこら辺についてどのようにお考えになりますか。

○政府参考人(倉吉敬君) 今の委員が設定されたケースでは、疑わしいとなった場合でございますが、疑わしいとなった場合には、更にいろんなことを聴いて証拠を詰めるということもやりますけれども、それ以上に、これは本当に犯罪の疑いが強いということになれば警察に通報をいたします。場合によっては告発をするということがあり得ます。
 それから、それとも離れて、要するに私は関係機関との連携ということを言いたいわけでございますけれども、入管や警察と連携を取って、事前に情報を集め、そして何かあったときは、これはどうだと、何かおかしいケースはなかったかと個別の事案ごとにやる。それからさらに、もちろん各法務局、地方法務局ごとに関係機関との連携具合というのは事情が違うわけですけれども、少なくとも帰化の届出の関係なんかではいろんな連携がございますので、そういうことで連絡会を定期的に持つとか、本省においてもそういうことはできると思っております。そういう体制を組むということも非常に大事なことだと思っております。

○丸山和也君 今、教科書的なお答えをいただいたんですけれども、それを、市町村窓口、法務局窓口、全国たくさんあるわけですよね。そういう中で、一生懸命仕事をされるということと、やっぱり犯罪行為を摘発して告発するということは、ちょっとやっぱり一般の人はなかなか、幾ら公務員であってもステージが高いと思うんですね。だから、そこは僕はかなり疑問に思っているんですよ。
 だから、いろいろ、例えば疑われ出したら、いや、もう結構です、撤回しますというふうに帰ってしまうんじゃないかというような感じも非常に持っていまして、それで、そういう偽装がなければいいんですけれども、その程度の抑止効果だとするとちょっとやっぱり心配だなという気がしていますから、先ほどおっしゃったこれからの取組なんですけれども、やはり疑わしいと思ったら、すべてやっぱり、取調べと言うと変ですけれども、よく審査をすると。それで、かなり疑わしいと思ったらもう告発をすると。司法機関によって犯罪性があるかないかをやっぱり漏れなくやると、こういうぐらいの決意でやっぱり取り組んでいただかないと多くの方の国民の不安はなかなか取り除けないと思うんですね。特にDNA鑑定を入れない今回の制度の場合ですね。
 ですから、そこら辺は実際のやはり運用が非常に大事になると。それで、最高裁の方もこういう判決を出していますけれども、実際はやっぱり運用がどうなるかということは非常に心配しているような判決のように私は思ったんですけれども、そういう意味では、最高裁判決の意を酌む意味でも、是非、今回の法改正が悪用されないように最大限の、運用面でのこれから研究をして、工夫をしていただきたいと思いますけれども、もう一度そこら辺の覚悟をお聞きしたいんです。

○政府参考人(倉吉敬君) 御指摘のとおりでございまして、それぞれ事案が違うから、それに応じて緩いことにならないかという御指摘でございまして、そこは我々も非常に重く受け止めました。そこが一番基本的には大事なところだと思いますので、今委員の御指摘になったこと、本当におかしい、いよいよ疑わしいとなったら常に告発するのを原則にしろという、そこら辺を基本的姿勢で臨むということで、今後また法務局の運営に当たっていくようにしたいと思います。

戦前の国籍法について

○丸山和也君 大体聞こうと思ったことをもうおっしゃったんですけれども、勉強のために少しお聞きしたいんですけれども、国籍法、現在の国籍法ですね、昭和二十五年制定ですか、戦前の国籍法においては、国籍の取得というのは、国籍取得の届出は必要だったんでしょうか、それは必要なかったんでしょうか。

○政府参考人(倉吉敬君) 認知の場合は必要でありませんでした。日本人の男子が外国人の女性との間に生まれた子供をおれが認知すると言ったら、認知した瞬間に日本人になる、届出も要らないという、そういう制度でございました。

○丸山和也君 逆に言うと、ドイツなんかもそうじゃないかと思うんですけれども、短絡的に考えると、その方がむしろ時代の流れかなと思ったりもしないこともないんですよ。すると、わざわざ法改正をして、例えば戦後の体制、個人の自由を尊重した憲法下でこういう法律が逆に強化されて、それで今またいろいろ問題が起こっているんですけれども、これはどういう意図でというかいきさつで、あえてこの国籍法で認知のほかに国籍取得の届出を要求したんでしょうか。

○政府参考人(倉吉敬君) 実質的には、認知をしただけで日本人になるというと、日本人になる方は子供でございます。子供には外国国籍がある場合が多いわけで、それを子供の意思にかかわらず、あるとき認知するということを言ったら自動的にその人が二重国籍になったりとか、いろんなことが起こるわけですね。それでいいのかという問題があります。
 それで、きちっと届出をさせて、そこで身分関係をきちっと安定をさせて、そしてやるというのが正しいという、そういう立法政策だろうと思います。

「二重国籍問題」について

○丸山和也君 そこで、どうしても二重国籍問題というのが出てくるんだと思うんですね。それで、現在の国籍法においても基本的には二重国籍は望ましくないという発想ですよね。それで、先ほど局長の答弁の中で、例えば日本人男性がフィリピン人の女性との間に子供をもうけたと、そして生後認知をしたケースだとしまして、既にもう子供がフィリピン国籍を取っているとして、すると、今回の改正で日本国籍を取ったときに、結果的にはまあ、その後どうなるは別にして、その時点では二重国籍になるわけですよね。
 それで、一方、日本の国籍を与えても、日本の法務当局からはフィリピンに対して、いや、日本国籍を取りましたからおたくの方でしかるべき手続を取ってくださいという通知もしないし、今後もする意向はない、また、そういうことを一々やらないのが国際的な各国の流れだと、私もそう思うんですけれども、そうなると、ある意味じゃ特定の場合にはだから二重国籍者をどんどん今回の国籍法の改正によって増やすことにもなるわけですよね。
 それと、一方、日本の国籍法は基本的に私が読む限り余り二重国籍というのは前提にしていないと。それから、国籍の選択ですか、何条でしたかね、十四条ですか、こういうことがあって、どちらかの国籍を選ばせるという思想のようになっていると思うんですけれども。
 こうなると、二重国籍あるいは三重国籍、四重国籍もあるかもしれませんけれども、重国籍に対する考え方についても、基本的に考え方自身をどのようにするかということを考えるときが来ているんじゃないかと思うんですけれども、これについて、まず法務大臣はどのようにお考えでしょうか。

○国務大臣(森英介君) そうですね、現状では今委員のお話にもありましたとおり日本では国籍唯一ということが基本で、これは何でそうなっているかということを私なりに考えると、やっぱり白眞勲委員のように重国籍になる可能性のあった方の場合、やっぱりその両国の利害が対立したときなんかに非常に困ったことになっちゃうというふうに思うわけです。そんなことで、日本では恐らく国籍唯一ということが基本になっていると思いますけれども、諸外国では重国籍を認めている国も少なからずあるわけでございまして、これをどうするかというのは、やっぱりこれから国の在り方も含めて大きな議論になると思いますけれども。
 私は、個人的には、別に特に国籍唯一を基本として特に問題はないと思いますし、また、今回確かに重国籍が増える、可能性としては重国籍が増える方向に行くと思いますけれども、それも二十歳まで、二十歳以下の場合には二十歳のときに自分で決めると、それで、それ以上であればその二重になった時点から二年後に決めるということで、かなり自己申告的な感じもありますけれども、私は現状においてさしたる不都合はないんじゃないかなというふうに思っております。

「二重国籍問題」に関する実際の運用

○丸山和也君 実際の運用で少しお聞きしたいんですけれども、二重国籍に関する問題なんですけれども、十五条で、法務大臣は、外国の国籍を有する日本国民で前条第一項に定める期限内に日本の国籍を選択しないものに対して、書面により、国籍の選択すべきことを催告することができる、そしてこれを、催告を受けても選択しなかったら国籍を失うと、こういうふうになっているように思うんですけれども、実際にこういう催告なんてやっているんでしょうか。

○国務大臣(森英介君) 事務方から答えさせますけれども、ちょっとその前に、先ほど二十歳と申し上げたのは、二十歳以下の場合には二十二歳のときに国籍を明らかにすると訂正させていただきます。

○政府参考人(倉吉敬君) 催告をしているのかという御質問でございます。しておりません。

○丸山和也君 だから、実際問題としては、例えばアメリカで生まれた子供さんとか、日本人夫婦の、出生地によってアメリカ国籍を持ったと、それで日本に帰ってきて、そのままにして二つのパスポートを持ってやっていて、成人になっても別に催告も受けないし、そのままずっといっている方もたくさんいるんですが、こういうのはどのように考えたらいいんでしょうか。

○政府参考人(倉吉敬君) 実はその重国籍の問題というのは非常に難しい問題で、いろいろ、例えば自由民主党の司法制度調査会のプロジェクトチームなんかでも非常に議論のされているところでございます。
 様々な御意見があります。これまでも国籍法については、我が国を取り巻く情勢とか、国内のいろんな意見とか、そういうことを振り向きながら必要に応じて改正をしてきたわけでございますけれども、この重国籍の問題については非常に意見が分かれているところでございまして、今後とも、もちろん国際的な動向がどう動いていくかということも注視しなければいけませんが、それと同時に、国民的な議論が深まっていくということを見守っていきたいと、今はそう考えているところでございます。

○丸山和也君 あえてそれを調べて催告もしないというのは、そういうことをすれば事務的手数も増えますし、そういう時代の流れもゆっくり見ていた方がいいという配慮からそういう催告もするようなこともないということなんでしょうか、現実的なとらえ方なんですけれども。

○政府参考人(倉吉敬君) 実は今の下でだれが重国籍者なのかというのをもう把握できないわけでございます。そのような状況の中で、たまたま把握した人に催告をするのがいいのかと。もちろん、催告を受ける側は追い詰められるわけですから、どっちかを選択しなければならない、それが本当にいいのかという問題はございます。いや、そんな生ぬるいことでいいのかとか、いろんな御意見はあるわけですけれども、今のところはそういったもろもろの事情を考えて催告をしないということにしております。
 我が国の国籍法は、基本的に国籍唯一の原則、国籍は一つであるべきだという原則を理念としております。したがって、無国籍及び重国籍の発生はできる限り防止し、解消を図るように努めることとされているわけでありますけれども、国籍選択については、今申しましたように、そういう事情があるとともに、本人のみならず、その親族等関係者の身分関係及び生活等に極めて重大な影響を及ぼすということがございますので、慎重に対処する必要があると考えておりまして、本人の自発的な意思による選択がされるよう制度の周知と啓発に努めているわけでございます。

○丸山和也君 いや、私は決してそれでいいのかと言ってるんじゃなくて、非常に我が日本国も寛大なところがあるなというふうに思ったんですけれども。
 ただ、この重国籍に関しては問題があるという方もあるし、やっぱりまじめな方で、重国籍を認めてくださいという請願も結構来るんですね。それで、多様な文化、異国の文化を共有しながら社会生活を送る、それによってやっぱり共存といいますか、できるんだと。
 特に、日本人で外国の方と結婚されて、向こうの国では重国籍を認めるんだけれども、日本は認めない。それで、どうしても日本国籍を失うとなると、例えば外国人と結婚して子供ができて孫を連れて親に見せたいと、あるいは親の介護のために日本にしばらく長期滞在したいと思っても、外国人扱いされてなかなか非常にそれが困難だとか、こういうことで、そういうグループの方は、どうして日本国籍を失わなきゃならないんだと、これを何とか改正してくれないかという要望もありますし。
 それから、昨今ニュースになっておった、ノーベル賞をもらいましたね、日本人の方。日本人、ノーベル賞だといっても、あれ、実際は国籍はアメリカ、帰化されてアメリカ国籍であれば、もう日本人じゃないんですよね。そうなるとやっぱり、そういう方々も、別に日本の国籍を失いたくはなかったけれども、そういう日本でアメリカの国籍を取ることと日本の国籍が、両方が維持することが難しいとなってやむなく選択された方もおられるんじゃないかと思うんです。
 そうなると、これからの時代というのは、規制する面は厳しく規制し、不正は断固きつい処罰をしなきゃならないんだけど、やっぱりいい方向でのフレキシビリティーというのを持たないと、国としてやっぱり逆に孤立していくんじゃないかという感じ、私するんですよ。
 そういう意味で、私はよく言うんですけど、結構私は国粋主義者だけど偏狭な国粋主義ではないと、国際的に開かれた国粋主義者でありたいと思っているんですけどね。それは、良き日本の文化、伝統を大事にしながら、やはり開かれた国づくりをすべきだと思いますんで、どうか大臣、局長を含めて、この二重国籍問題についてもこれからの課題として研究を続けていただきたいと。我々もいろいろなところで議論を重ねてまいりたいと思いますので、どうかよろしくお願いします。
 それから、最後の方になりますけれども、これは私も前から思っていたんですけれども、松野先生が既に細かく御指摘されましたんですが、胎児認知と生後認知ですね。これは、やはり私も、なぜこういう違いがあるのかなということを司法試験勉強していた段階から思っていたんですよ。だから、本当に古いんですよ。もう三十五年以上前から、何でこれあるのかなと。でも、覚えなきゃいかぬですから、おかしいなと思いながら暗記していたんですよ。それが三十五年たってやっと日の目を見たという議論なんで、非常に今日うれしかったんですよ。ですから、ここはやはり統一的に処理していくという方がいいんじゃないかと思いますね、いろいろ細かい理由をおっしゃいましたけど。
 これ、何か、何か独特の胎児認知という歴史的な、我々が知らないやっぱり重みというか、活用のされ方ということが特別これまであったためにこういう区別をされたんでしょうか。局長。

○政府参考人(倉吉敬君) これは、国籍法が、子供が生まれたときに父か母が日本人であれば日本人というのがまず原則でございます。それが国籍法の二条でございます。それから、生まれた後、認知されたときに届出にというのが三条になっているわけです。
 生まれたときにもう日本人と親子関係があれば日本人だということにしているわけですから、論理的に、胎児認知の場合は胎児のときに認知しています。そうすると、生まれたと同時に父親と親子関係ができる、法律上の。そしたら当然日本人であるという、こういう考え方でございます。
 それから、済みません、先ほどちょっと誤ったことを申しまして、司法制度調査会のプロジェクトチームと申しましたが、法務部会でございました。ちょっと訂正させていただきます。

胎児認知について

○丸山和也君 それで、胎児認知というのは特別届けが要らぬわけですよね。実際、胎児認知をしたしないというのはどういう、いや、胎児認知していたよというふうなことを後から言うわけですか。まさかお腹の子に向かって、認知すると、こう言うわけじゃないですよね。

○政府参考人(倉吉敬君) これは戸籍法上の届出でございまして、胎児の間に認知したという届出を市区町村にするわけでございます。そして、市区町村にその届出を残しておいて、そして無事に生まれたということになったら、すぐ父親だということで戸籍の届出をすると、こういうことになります。

○丸山和也君 実際、現在、胎児認知というのはかなり行われているんでしょうか。統計的数字がありましたら、ちょっと参考までにお聞かせいただいて、私の質問を終わりたいと思うんですけれども。

○政府参考人(倉吉敬君) 済みません、今ちょっと手元に統計資料がありませんので、後刻また御報告したいと思います。

○丸山和也君 終わります。

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最終更新:2009年01月09日 06:44
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