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国会での審議の中継


松野信夫議員/民主党所属(参議院法務委員会(2008/11/27))

松野信夫 - Wikipedia
○松野信夫君 民主党の松野信夫です。
 我が会派も、白さんや田中さんやら非常に多彩な方々がおられます。私の方は、この法務委員会、たくさんいる弁護士の一人でもありますので、いささか弁護士的な発想での質問になるかもしれませんが、よろしくお願いしたいと思います。
 今回の国籍法の一部改正の法案ですけれども、今回の法改正というのは、御承知のように、今年の六月、最高裁の判決を受けてのものだということで、私は基本的には今回の法改正に賛成するという立場で質問をしたいと思います。ただ、いろいろと残された論点がございますので、そういった点についてはきちんと確認を取っておきたいと思います。

違憲判決を受ける前に法改正すべきだったのでは?

 そこで、今回の法改正ですけれども、今年六月の最高裁の違憲判決を踏まえたものだということは間違いないかと思いますが、しかし、本来は国民の人権あるいはいろんな方々の人権をしっかり守るという法務省とすれば、最高裁から憲法十四条に違反するというような指摘を受けて法改正するというのはいささか残念な気もいたすわけで、本来であればもっと前にきちっとした法改正等をやるべきではないのかなと。
 ですから、以前からのこういう法改正への検討というものはなかったんでしょうか。まず、この点、お聞きいたします。

○国務大臣(森英介君) 率直に申し上げて、この違憲判決が六月四日になされましたのを契機として法務省においては具体的な検討に着手しております。

○松野信夫君 これ、やっぱり非常に基本的な人権にかかわる大事な問題であります。
 今大臣言われたように、今年六月の最高裁の判決を受けてのものだということですけど、しかし、その前から、これは違憲だ、あるいは違憲の疑いが強いと、こういうような指摘は裁判所、下級審の方でもありました。また、最高裁の補足意見辺りでも出ていたわけです。もちろん学者の方々からも出ていたわけで、私は、そういう点についてはやっぱり基本的人権にかかわることですから、法務省はその辺の感度を良くして、最高裁の違憲判決を受ける前にやっぱりしっかり検討すべきではなかったか、違憲判決を受けて慌ててやるというのはいささか格好悪いという気もしないではないですが、大臣はどのようにお考えでしょうか。

○国務大臣(森英介君) 委員の御指摘の趣旨は理解をいたしますけれども、しかしながら、法務省においてはこの判決を契機に検討を始めました。

弁護士時代の具体的経験

○松野信夫君 これは、まあ私の個人的な思いも正直あります。というのは、もう十年ぐらい前かと思いますが、フィリピン人の女性から相談がありました。日本人の男性と関係を持って子供さんが生まれたということで、その男性の方には日本人の奥さんがおられるということで、まずなかなか認知してくれないということです。ですから、まず認知の手続を取りました。
 晴れて父と子という関係はできたわけですけど、しかし、その次の壁が、やっぱり国籍の壁がありまして、何とか父親が日本人だということがはっきりしたんでこの子供も日本人として育てたいというお母さんの思いもありまして、私もかなり調べたんですけれども、当時の国籍法の条項から見ると、これはなかなか難しい。そのフィリピン人のお母さんに、これは裁判で闘うという手もありますよと、しかし、裁判になれば、仮に一審、二審勝ったとしても、まずこれは間違いなく国の方は最高裁に持ち込むでしょうから、相当時間が掛かる、相当エネルギーも掛かる、それ覚悟できますかというお話をしたんですけど、エネルギーの点からいろんな費用の点もあって、もうそこまではとても闘うだけの力はないということで、もう断念します、こういうような経験もありまして、ですから、早く法律がこういうお母さん、子供さんの声をしっかり踏まえるような法改正がなされていれば断念しないでもよかったのに。
 恐らく、こういう形で断念せざるを得ないと、法律がある、その壁を突破できない、こういう方はかなり多かったのではないかなという気もして、やっぱり法律がきちんと国民のそういう要求を受け入れる、何も違憲判決を受けなくてもしっかり対応しなければいけない、こう思います。
 ですから、この判決を契機に今回国籍法の法改正がなされる、これはこれで結構だと思いますが、しかし、この後、民法九百条の嫡出子あるいは非嫡出子のこの差別の問題も、あるいは重国籍の問題も、最高裁から違憲判決だとか、そういうのを受けなければ動かないというのではなくて、やっぱりいろいろと御検討いただいて、最高裁の違憲判決受ける前に法務省としても、基本的人権の尊重あるいは憲法十四条のこの趣旨を踏まえて、積極的に対応をしていかれることが必要ではないかと思いますが、大臣、この点はいかがでしょうか。

○国務大臣(森英介君) 今の御指摘については、これは法務省としてもそういったことが、取組が必要であると思いますし、また国会におかれましても是非御議論を深めていただきたいと思います。

胎児認知のケースと生後認知のケースでの差別は解消したのか?

○松野信夫君 それで、今申し上げたように、できるだけこの最高裁の判決も踏まえて、やっぱりいろんな形での不合理な差別というのはなくしていかなければいけないと、こう思っております。
 それで、今回の法改正で、いわゆる胎児認知のケースと、それから生まれた後の生後認知での差別、私は、基本的には胎児認知の場合もそれから生後認知の場合も余り差を設けない方がいいのではないか、このように考えているんですけれども、今回の法改正でこの胎児認知と生後認知での差別というのは解消したんでしょうか。

○副大臣(佐藤剛男君) ただいまの松野委員の御指摘でございます胎児認知と生後認知での差別が解消したかどうかというものでございますが、この度の改正法案で、国籍法第三条第一項の要件、すなわち父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得したと、その要件を削除するものでありまして、国籍取得に父母の婚姻を不要とする胎児認知と、これを必要としていた生後認知での実質的な要件の違いは解消されていると、このように考えるわけでございます。
 もっとも、胎児認知された方が出生のときに父又は母が日本国民であるときに該当しますので、国籍法第二条第一号によりまして出生時から日本国民となりますが、改正法においても、生後認知された方は、国籍取得の届出が必要でありますが、そのときから日本国籍を得ると、こういう違いがございますが、委員のおっしゃるとおりでございます。

○松野信夫君 実質的には差別解消したようなお話ですが、少し細かく見ますと、今副大臣言われたように、日本人の父親と外国人の母親との間に生まれた子供さんの場合について言うと、胎児認知、つまり胎児の時点から日本人の父親が認知をしていたという場合には、これは出生のときからもう既に日本国籍を取得すると。しかし、生後認知の場合は、要するに認知の届けをして、国籍の届けを出した、これで初めて国籍を取得するという、こういう違いが出てくるわけですね。
 それからもう一つ違いは、胎児認知の場合は今回の法改正で出てくるいわゆる罰則は、これは出てこないですね。それから、生後認知の場合は今回の法改正で設けられる罰則の適用、これを受けるということで、こういう二点の違いがあるのではないかと思いますが、この点は間違いないですか。

○副大臣(佐藤剛男君) 本法案においても、生後認知された方につきまして届出によります国籍取得という制度を維持しているのは、生後認知された方は、それまでに他の国の国籍を有していることがありますが、外国の法制によりましては、我が国の国籍の取得によって当該国の国籍を喪失してしまうという場合もあることや、外国人として生活している子が日本の国籍取得を望まない場合もあり得ることなどからしまして、生後認知によって当然日本の国籍を取得するということは妥当でないというふうに考えるからでございます。

○松野信夫君 その辺はちょっと私もいささか異論がありまして、最初に申し上げたように、胎児認知の場合と生後認知の場合と、これは余り取扱いに差を設けない方が子供さんの福祉のためにもいいのではないか。
 ですから、国籍の取得の時期についても、罰則を掛けるかどうかについても、掛けないなら掛けない、掛けるなら掛けるというふうに、やっぱり取扱いには違いを設けないということが私は必要ではないか。今回のこういう、今二点、違いを設けるというのはどうも余り合理的な差別とはちょっと考えにくいなと、このように思っていますが、いかがですか、何かありましたら。

○政府参考人(倉吉敬君) ちょっと今の点、まず罰則の点から申し上げますが、罰則ですので、何らかの処罰に値する行為がなければいけません。
 胎児認知の場合には、生まれたと同時に、胎児認知をしていればもうそのままで日本の国籍を取得するわけでして、胎児として生まれたときに何らかの行為があるわけではない。今度の国籍法三条一項、これは現行法の規定でも同じですが、届出という行為があるわけです。その届出という行為をとらえて、そこが虚偽の認知であったときには、虚偽の認知に基づく虚偽の国籍取得届であったときには罰則を掛けようということで、そこは行為があるかないかということなので、そこの違いはやむを得ないかと、こう思っております。
 それからもう一つ、時期の点でございますが、これは、要するに生物学上の父子関係があったら直ちに日本国籍を与えるということではありませんで、認知という行為によって法律上の父子関係、法律上の親子関係ができたときに日本国籍を与えるということでございます。
 胎児認知の場合には、既に胎児のときに認知行為が行われておりますので、生まれたと同時に法律上の親子関係が父親とその子供の間に発生します。しかし、生後認知の場合には、生まれたときはまだ認知されるかどうか分かりませんから親子関係が発生していないわけです。そして、生後、認知行為をしたときに、そのときに初めて親子関係が発生する、その後国籍取得届を出すことによってそれが具体化していくと、こういうことですので、時期がずれてしまうというのもこれはやむを得ないと思っております。

○松野信夫君 今の説明で、生後認知の場合は新たに国籍届をする必要があるということです。確かに今の現行法は、胎児認知は特段のそういう手続をする必要はない、胎児認知しておけば生まれる時点で直ちに日本国籍を取得するというのが、今のこの法律上の仕組みがそうなっているから今そのとおりおっしゃられたんだろうと思うんです。だけれども、結果として胎児認知の場合と生後認知の場合で区別が出ていることは間違いないんでね。だから、私はどっちかに統一した方がいい。ですから、多少これは極論になるのかもしれませんが、統一するということでいうならば、胎児認知の場合もちゃんと国籍の届けを生後認知の場合と同じようにしてもらうと。罰則を掛けるならそこで罰則を同じように掛ける、しないならしない、私はどっちかに統一する方が合理的ではないか。
 ただ、そうするとかなり法改正が伴うことはもう御存じのとおりですけれども、余り胎児認知と生後認知とそんなに区別をする合理的理由はちょっと考えにくいなと、これは率直に指摘をしておきたいと思います。

認知のみにより国籍取得を認める旨の法改正が行われている諸外国の例

 それから次に、今年六月の最高裁の判決の中ではこういうくだりがあります。諸外国において認知のみにより自国籍の取得を認める旨の法改正が行われている。だから、認知だけで別に婚姻手続までは要らないんだと、こういう一つの理由になっているんですが、こういう諸外国の例というのを幾つか御紹介いただけますか。

○副大臣(佐藤剛男君) ただいまの御指摘でございますが、私ども法務当局としまして調べました結果を申し上げます。
 嫡出子でない子につきまして、準正、すなわち父母の婚姻による嫡出子たる身分の取得、これを要件とせずに、認知等によりまして国籍取得が認められるようになった国の法律改正としましては、例えばドイツでは一九九三年改正というのがございます。また、スイスの二〇〇三年改正、それからデンマークの二〇〇四年改正というのがあるものと承知いたしております。

○松野信夫君 ついでに、もしお分かりでしたら教えていただこうと思うんですが、ドイツとか今スイスとかの事例はお話しされたんですが、そういうような改正になった理由、どうしてそういう法改正をするようになったのか、さらに、その改正によって何らかの不都合が生じたのかどうか、もしその辺までお分かりでしたら教えてください。

○政府参考人(倉吉敬君) いずれも婚姻の要件を外したということであろうと思っておりますが、各国とも。これはやはりヨーロッパで非嫡出子の数が増えてきたとか、いろんな、非嫡出子に対する考え方、意識が変わってきたとか、今度の最高裁の大法廷判決もそういうことを挙げておりますが、それと同じようなことがヨーロッパでも起こっていたという、そういうことなのかなと思っております。
 それから、後の御質問は、その後何か状況が変わってきたのかという御質問かと思いますが、その点はまだちょっと十分確たるものは把握しておりません。

○松野信夫君 私の質問は、事情が変わったかどうかじゃなくて、そういう法改正、つまり婚姻を要件としない、認知だけで国籍取得できるという法改正することによって何らかの不都合、あるいは想定しない事態というのが各国で生じているんでしょうかという質問です。

○政府参考人(倉吉敬君) その点も確たるものはちょっと把握しておりません。

○松野信夫君 是非そういう点については御検討をいただきたいな、こう思っています。
 何かありますか。

○政府参考人(倉吉敬君) 実は、内容をしっかり、どういう法制度がどう変わったんだと明確に説明できるところまではいかないんですが、オランダとかドイツでは、そのことによってきちっと扶養をしない父親が増えたとか、何かそういうことがあって、公的機関が介入して、何ですかね、親子間の出生証明が十分でない人についていろんな対処をするというようなことをしているという話も聞いております。

平成十五年の時点で違憲になった事への解釈

○松野信夫君 是非外国の動向についてもよく御調査をいただきたいと思います。
 それで、今回の六月の最高裁の判決によりますと、この国籍法の立法された昭和五十九年当時は合憲であった、しかし遅くとも平成十五年の時点では違憲だ、違憲状態になっていると。そうすると、昭和五十九年から平成十五年までの間のどこかの時点で違憲状態になったのかなというふうにも思うんですけれども、ただ、その時期については最高裁は必ずしも明確にはしておりませんで、要するに遅くとも平成十五年の時点では違憲だと言うにとどめているわけですね。
 これは恐らく、この事件の原告になった方々が実際に法務省の方に国籍取得届を出されたのが平成十五年だと、だからそこでは違憲と言わないとこの原告の皆さんが救済されないと、そういうことから平成十五年の時点では遅くとも違憲になったと、こういう形で救済をしたんではないかなというふうに私は見ているんですが、法務省の方はどのようにお考えですか。

○政府参考人(倉吉敬君) 最高裁の判例の読み方、評価にかかわりますので、法務省当局としてどうだと断定的なことは申し上げられませんが。
 ただいまの点ですが、一般論で申し上げますと、とりわけ最高裁の判決というのは射程距離が問題になります。基本的に、個別的な事件についてそれを解決をするというのが裁判所の仕事でございます。だから、それを余りに拡大するような一般論というのは控えるという一般的な傾向はあるやに思います。
 その観点からいきますと、平成十五年に届出をした人たちが、原告たちたくさんいるんですが、一番古い人だったと。そうすると、その人が届出をしたときは少なくとも違憲だったよ、遅くとも憲法違反だったよと言えば、その事案の解決としては済むわけでございます。そういう観点から、あの判決のくだり、今日では憲法違反になっていると言いまして、最後のまとめのところで、遅くとも本件の上告人が届出をした平成十五年当時にはでしたか、何かそういう書き方になっていたんではないかと考えます。

○松野信夫君 そうすると、たまたま訴えに出られた方が平成十五年の時点で国籍取得の届けを出されていたと。だから、もしかして平成十年とか十一年とか十二年とかに届けを出していた方が訴えておられたら最高裁の結論も、もしかしたら平成十年当時違憲だというふうに言う可能性もあるわけですね。そうしますと、平成十五年という時点に私はそれほど大きな意味合いというのはないのではないかと思っております。
 それで、経過措置として、今回の法改正では、施行日から三年以内に届出をすることによって国籍の取得ができる、平成十五年の一月以降に二十歳に達した者に限定をすると、こういう立て付けになっているんです。平成十五年一月以降に二十歳に達した者に限定する。これは恐らく最高裁で、先ほどから出ますように、平成十五年の時点で違憲だというのを踏まえたものなのかなと思うんですが、この辺の理由はどうでしょうか。

○政府参考人(倉吉敬君) 御指摘のとおりでありまして、そこの時点をまず最初の基準で考えないといけないだろうなと、こう考えたわけでございます。
 ただ、今委員がいみじくも御指摘されました平成十五年一月以前でも違憲だった可能性は、最高裁の論理からいえばあるではないかと。それはそのとおりだろうと思います。
 それで、平成十五年一月以前でも届出をしていた、本件の事件の原告と同じように届出をしていた人は、平成十五年一月以前でもこれは救済しないといけないだろうと。しかし、十五年の一月以前に届出もしていなかった人、そういう人たちまで経過措置で配慮をして日本国籍を付与するという、そこまではしなくてもいいのではないかと、このように考えまして、今の立て付けになっているわけでございます。

○松野信夫君 今のお話、平成十五年一月以前に国籍取得の届けを出していた人は助けてあげようというようなお話ですけれども、しかし、私も最初、冒頭申し上げたように、十年ぐらい前相談を受けたフィリピン人の女性、その子供さんのケースは、弁護士の私が付いていたんですけれども、ああ、これは駄目だ、とても正直勝ち目がないということで、それは私の実力不足だったかもしれませんが、これは勝つにはもう最高裁まで行かないととても無理だから、国籍取得届も出しても無駄だと、受け付けてくれるかどうかも分からない、出しても駄目だというふうに、率直に言うと早々にあきらめてしまったというのが実態で、恐らくこれは私だけじゃなくて、法律がそうなっているから駄目ですよと言われればすごすごと引き下がっちゃうという人がむしろ私は大半ではないかなという気がしますので、平成十五年一月より前に国籍届を出しておれば助けてあげますよと言ったって、そういう人は恐らくほとんどいないのではないかなと、こういうふうに思います。
 ですから、先ほど申し上げたように、平成十五年の一月というのはそんなに重い意味が時期としてあるわけではない。その時期にドラスチックに社会情勢、世界情勢、婚姻の情勢が変わったわけでもない。ですから、平成十五年の一月以降に二十歳になった人はオーケー、平成十四年の十二月で二十歳になった人は残念でした、あとは帰化の手続しかありませんという仕組みは正直言っていかがなものか、この妥当性はどうかなと思いますが、この点はいかがでしょうか。

○政府参考人(倉吉敬君) 委員のおっしゃることもよく分かります。これはすぐれて立法政策の問題でして、どの時点でどう処理するのがいいかという問題でございます。
 実質的なところも十分に考えたつもりでありまして、平成十四年の十二月以前に二十歳になっていた人、その人たちがそれからずっと日本で暮らしていれば恐らく簡易帰化をして、日本国籍が欲しいということであれば日本国籍を取っているであろう。十二月以前で日本にはいない、もう外国で暮らしているということであれば外国での生活が安定しているであろうと。だから、日本国籍の取得を望むかどうかということ、ここは、そんなこと言ったって一人一人見たら違うじゃないかとおしかりを受けることは十分覚悟しておりますが、どこかの時点で、どこかの時点でポイントにしてやらざるを得ないというところで、こういう仕切りの仕方が妥当なところかなと考えたわけでございます。

○松野信夫君 どこかの時点で仕切るというのは全く分からないではないですけれども、平成十五年というのがたまたま原告の人たちの国籍届がそうだったということ、立脚しているわけですから、元々余り合理的な基準をとらえて経過措置をしているわけではない、この点は指摘をしておきたいと思います。

偽装認知と偽装結婚の立件件数

 それから、先ほど来から出ている偽装認知、仮装認知、これをどう防いでいくのかという点が問題になっているわけですが、これは、警察庁の方お見えいただいていると思いますが、これまで偽装の結婚、偽装婚姻、あるいは偽装認知あるいは偽装の養子縁組というようなことで例えば公正証書原本不実記載罪で犯罪として摘発された最近の件数、あれば教えてください。

○政府参考人(宮本和夫君) 平成十五年から平成十九年までに都道府県警察からいわゆる偽装結婚事件の検挙として報告を受け警察庁が報告しているものは百七十三事件でございまして、同様に、平成十五年から平成十九年までに偽装認知事件として把握しているものは三事件でございます。

○松野信夫君 そうすると、今のお話ですと、偽装結婚というのは五年間で百七十九件……

○政府参考人(宮本和夫君) 百七十三件。

○松野信夫君 百七十三件ということですが、偽装認知はわずか三件ということで、偽装認知そのものの数というのは非常に少ないのかなということが分かりました。
 それで、一昨日の委員会の質疑の中で、民事局長さんの御答弁で、それぞれ三ステージ、三つのステージで偽装を防止できるというようなことが、これは木庭健太郎さんの御質問で、三か所のゲートがございますということで言っておられるわけですね。その内容というのは、まず第一に認知の届けを市町村に提出する時点、それから二番目に法務局に国籍の取得届を出す時点、それから三番目に戸籍創設の届けを市町村に出す時点、この三段階でそれぞれ、例えば犯罪とすれば公正証書原本等不実記載罪でいけると、こういう御指摘があるんですが。
 しかし、実際のところを見ますと、認知の届けを市町村役場に出す、それから三番目の段階で、戸籍を新しくつくるということで市町村に出す、ここは恐らく実質的なチェックというのではほとんど機能しないのではないか。市町村の町民課の窓口でそういうチェックをしろといっても、これは現実にはなかなか難しい。実際のチェックというのは、法務局の方に国籍の取得届を出される、ここの時点ではないかなと、これはもう率直に言ってそのように思っておるんですが、いかがでしょうか。

○政府参考人(倉吉敬君) 基本的には委員御指摘のとおりでして、第二段階で法務局に国籍取得届を出してくる時点、そこできちっとやることが一番大事だと思っております。市区町村ではそれはなかなかそんなこと見付けられないだろうというのは、おっしゃることはそのとおりでございまして、私どもも基本的にそう思っておりますが。
 例えば、過去にも似たような例があるわけですけれども、同じ男性が全然別の女性との子供、外国人の女性との子供を何人も認知するとかいうようなケースがあったとします。そうすると、一人目で認知申請来たときは分からないんだけど、二人三人と来ると、前の戸籍に付いていますから、市区町村はおかしいなと担当者が思うわけです。そのような場合には、何かその届出をそのまま受理することに疑義が生じる場合には法務局に照会をして、法務局に関係書類を送って法務局の判断を仰ぎなさいということが手続としてできておりまして、そういう場合には、そういうルートで法務局がよく検討をして、おかしいんじゃないかということで見るということもまれにはあるということは付言させていただきたいと思います。

○松野信夫君 余りまれな話ではなくて、通常は、ですから市町村の窓口、役場でチェックするというのは極めて難しい。やっぱり法務局の方に国籍の取得届、出されるこの段階だろうと思うんです。
 それで、念のためにちょっと確認をしておきたいんですが、認知といっても、いわゆる任意認知、父親が自発的に認知する任意認知の場合と、それから裁判手続を経た強制認知と二種類あるわけです。実際のところは、強制認知だろうと任意認知だろうと結局その三つのゲートをくぐっていくということは変わらないんだろうと思うんですが、ただ、強制認知ということは裁判所の目が光って、裁判所で一定のチェックが掛かってクリアされているということになると、強制認知で父子関係がきちんと裁判所が確認をしているということであれば、これはここでかなり偽装認知というのは防止できているのではないか。
 だから、そういう意味では、任意認知と強制認知というのは、事実上の取扱いでは実際上は少し違ってくるのではないかな、実務の運用としては違ってくるのではないかと思いますが、この点はどうでしょうか。

○政府参考人(倉吉敬君) 一般論として、御指摘のとおりだと思います。強制認知の場合は、通常の当事者が出頭して裁判をやって、そこでやっているということであれば、外国の手続がどうかというのがちょっと問題にはなるかもしれませんが、きちんとやられているであろうということで、それはおのずと物の見方が変わってくるという面はあろうかと思います。
 日本で言われている公示送達なんかの事件で相手がいないというときはどうかなという問題は若干残るかもしれませんが、基本的には委員御指摘のとおりだと思います。

○松野信夫君 それから、念のための確認ですが、法務局での国籍の取得届が出されるときに、十一月二十五日の読売新聞にも出ているように、厳格に写真取ったり父親の戸籍謄本取ったりでチェックをするという、そういうふうに考えておられるようですが、そうすると、例えば郵送で国籍取得の届けをぽんと送ってきただけではそれは駄目ですよと、単に郵送で送り付けるぐらいじゃ駄目で、必ず本人が法務局の窓口まで出頭してもらわないと駄目ですよということになるのか、その辺はどうでしょうか。

○政府参考人(倉吉敬君) これは、届出人が出頭しなければならないということになっております。

「二重国籍」問題について

○松野信夫君 それからもう一つ、念のための確認ですが、新たに国籍を取得するということで法務局の窓口に来られる。そうすると、場合によっては二重国籍ということもあり得るわけですね。元々、例えばフィリピン人の女性の産んだ子供だ、フィリピンの国籍も持っていらっしゃると、こういう場合には二重国籍になるということでの何らかの説明とか、あるいはフィリピン政府に対してこういう国籍届が出たのでというような通知が、日本政府からフィリピン政府の方に通知を出されるのかどうか、この点をちょっと確認したいと思います。

○政府参考人(倉吉敬君) まず、二重国籍になると、だからその後の対処が必要であるということは必ず説明をいたします。
 それから、政府間でそういう、例えばフィリピンの人の例の場合にフィリピン政府にそういう通知をするかという御質問ですが、この点はそのようなことはしておりません。

○松野信夫君 しておりませんというよりか、今後はどうなるんでしょうか。今後もそういう通知はするつもりはないというふうに聞いていいんですか。

○政府参考人(倉吉敬君) それぞれ自国民に国籍をどういう形で与えるのかというのは、今各国がそれぞれ決めてやっているというところでありまして、国際的に見てもそういう通知をするという扱いはないようでございます。今のところ、法務省としてもそういうことをやるというつもりはございません。

○松野信夫君 時間が参りましたのでもう最後にしたいと思いますが、念のために。
 一昨日の民事局長の答弁で、私は必ずしも適切ではないなというふうに思った点があります。これは、仁比委員の質問に対して国籍と公的給付との関係を言っておられて、公的給付については、法律上はいろいろあれですけれども、少なくとも運用上は、現在住んでいる外国人についてはできるだけ、教育の面も含めて、それなりの配慮がされていると、こういうふうに答弁されているんですが、私はこれは余り適切な答弁ではないと思います。
 例えば生活保護については、これは予算措置で行われているわけですし、また年金とか国民健康保険とかこういうものについては、元々は国籍条項があってある意味じゃ区別していたわけですが、その後、国籍条項を取っ払って外国人についても適用するということですので、それなりの配慮をしているというようなことではなくて、法律上そういう扱いをしなきゃいけないわけですから、この一昨日の御答弁は余り適切ではないと思いますが、いかがですか。

○政府参考人(倉吉敬君) 委員御指摘のとおりでございます。
 少なくとも運用上はというところであいまいな記憶を、一生懸命答弁したつもりではございましたが、ただいま委員の御指摘のとおりでして、正確には、法律上もそうされている場合があるし、運用上そうなっている場合もあると。ただいま委員が説明したとおりでございます。

○松野信夫君 終わります。

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最終更新:2009年01月09日 06:50
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