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 「弁慶さん」
不意にかけられた、いつの間にか聞き慣れてしまった…柔らかな声音。振り返れば、いつもとは少し違う 悪戯っぽい微笑みが…そこにあった。


 『花が咲く頃。』


 「どうしました?なんだか楽しそうですね」
微笑みながら問うと、少女はにこっと微笑った。
 「弁慶さんに質問です。今日は何の日でしょう?」
 「…何の、日…?」
満面の笑みを浮かべる少女。…だが、全く心当たりがない。
 「…降参、ですか?」
心なしか切なげに微笑む少女に、僕は困ったように微笑む。
 「…すみません、望美さん」
 「あっ謝らないでください。そうですよね、こっちではあまり関係がないって聞きましたから…」
 「え…?」
思わず目を丸くする僕を見、すっと目を細めた少女は、僕に一輪の色鮮やかな花を差し出した。
 「これは…」
 「弁慶さん、お誕生日おめでとうございます」
にこっと笑って僕に花を差し出す彼女は、そっと恥ずかしそうに瞳を伏せる。
 「私の世界では誕生日に贈り物をするんですけど…弁慶さんに何をあげたら良いのか分からなくて…」
だから譲くんに頼んでお花をもらってきたんですと、頬を紅く染めて、少女は真っ直ぐに僕を見る。
 「…有難う、御座います」
花を受け取り、僕はそれを見つめる。
 「私の世界に咲いている“パンジー”という花にそっくりなんですよ。…弁慶さんに見せたかったんです」
 「ぱんじー…ですか?」
 「はい」
ふわりと一陣の風が吹き抜け、少女はさらさらと靡く美しい髪を、手で押さえる。…暫くの間、沈黙が辺りを漂う。
 「…私の世界には、花言葉っていうのがあるんです」
突然、ぽつりと呟く声が聞こえる。
 「花言葉…?」
 「はい、例えば…薔薇は純愛、梅は高潔というように、花にそれぞれの意味をもたせたものなんです」
面白いでしょう?とくすくす微笑う少女は、とても眩しくて僕はそっと…瞳を細めた。
 「…望美さん」
 「なんですか?」
 「宜しければ…この花の花言葉も、教えてくれませんか?」
 「…え?」
予想外だったのか、少女は驚いたかのように僕を見る。
 「パンジーの花言葉、ですか?」
 「はい」
にっこりと微笑んで、僕は少女の問いに応じる。少女は少しの間、考え込み…
 「…………内緒です」
と軽く頬を染め、踵を返した。
 「望美さん…?」
 「よっ弁慶!」
 「…将臣くん」
突然の声に振り返ると、走り去っていった少女の幼馴染である青年が、こちらに近付いて来ていた。
 「誕生日なんだって?おめでとさん」
 「有難う御座います」
 「まっ誕生日プレゼントはねぇけどな」
彼女の幼馴染である青年は、笑いながら僕の手の中の花に目を向ける。
 「おっパンジーじゃねぇか…ってははぁ、望美の奴だな?」
 「将臣くん?」
まじまじと僕を見て、譲も大変だなぁ~と意味ありげな顔をする青年。…彼は何かを知っているようだ。
 「将臣くん、この花の花言葉を…御存じですか?」
 「一応、な。望美に昔、教えられたんだ」
懐かしそうに目を細め、青年は柔らかな微笑を浮かべた。
 「…知りたいか?」
 「えぇ」
お願いします…と僕も微笑を浮かべると、青年は静かに口を開いた。
 「―――…パンジーの花言葉はな…」


その日の夜、僕は自室に籠って少女からもらった花を見つめていた。…昼間の将臣くんの言葉が、耳にこびりついて離れない。
 「―――…僕もかなり重症、ですね…」
くすりと自嘲気味に笑い、僕は夜空に輝く満月を見上げた。
 「―――めぐりあひて見しやそれともわかぬ間に雲がくれにし夜半の月かな…」
…本当に君は、僕の予想外な事ばかりしてくれますね…


 『―――…パンジーの花言葉はな…“私を想って下さい”…だぜ?』


~終~


あとがきという名の言い訳。


・・・はい、誤字発見&エラーが発生したため、もう一度UPしなおしました(涙)これもお誕生日SSでしたね。。。・・・なんで今日はこんなに誕生日SSをUPしてるんだろう・・・?何故だか気になる今日この頃(ぇ)