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声なんて――――かけられる筈なかった。


一瞬、天女が空から舞い降りたのかと思った。満開の、美しい夜桜の下、少女はいた。
通りすがり 微かな嗚咽が耳朶を掠めて、こんな夜中にと思って足を運んだ…この美しい桜並木。
独り人気のない桜の巨木の下、少女は一人泣いていた。

 「……さん…っ」

年は同じくらいだろうか?
ない人目を憚らず、嗚咽をもらし、どうしてと…少女は髪を振り乱して泣いていた。

どうせ男にでもフラれたのだろう。
そう思って面倒なことの起きないうちに退散しようとしたオレの目に止まった、少女が手にした変わった形の刀。
…少女の物だろうか?だが、普通の少女がこんなものを持ち歩く筈がない。
長く色鮮やかな髪の隙間から垣間見える美しい二対の翡翠。それから溢れる涙を拭う事もせず、少女は立ち上がって手慣れた様子でそれを掲げる。


―――それは一瞬のことだった。


息をすることも忘れた。時さえも止まったように思えた。
それは見たことのない剣舞。舞を舞うかのように華やかで、花弁を断ち、風を断ち、己を断つ…鋭い太刀筋。
毅然と上げた面は 息を呑むほどに決意に充ち満ちていて。

 ( 驚いたな… )

視線が逸らせない。
生まれて初めてだった、こんなにも一人の誰かに魅せられたのは。

声をかけようとは思わなかった。…いや、声なんて―――かけられる筈がなかった。
そのひとつひとつの動作は洗練されていて、邪魔をするのも野暮に思える。
そして何より……少女の瞳に浮かんだ光は、何かに堪えているかのような寂しさを宿していたから。

…だからだろうか。少女をそんな風に思えたから―――綺麗だと、思ったのだろうか。

穏やかな風に 桜が散る。
身を隠すことも忘れて魅せられた姿は、始まりと同様唐突にその動作を止めた。

色鮮やかな花。物言わぬ翡翠が―――オレを捕らえた。



【春の夜の】

ヒノエ誕生日おめでとう!!
?←望美←ヒニョみたいな感じ?(笑)ですが、まあ分かんなくってもヒニョ誕生日SSです!!(ぇぇ)
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