想風月華
【届かぬ祈りの果て】
最終更新:
benhino3
明るさは 夜独特の闇に犯され、空には静々と帳が降ろされた。
今宵は満月。庭の澄んだ池には、掴めそうで掴めない月が色鮮やかに舞い降りている。
「―――…今宵は望月、なんだ…」
俺は一人、縁側に腰掛けて夜空を見上げた。
きっと、今の俺はいつも以上に情けない顔をしているだろう。
こんな顔は朔には…ましてや彼女には絶対に見られたくないななどとぼんやりと思う。
こんなこと 俺が言う資格なんてないけど――正直、満月の夜は辛い。元の世界へ帰ってしまった彼女を思い出してしまうから。
苦笑をもらして、俺は自嘲気味に空から視線を逸らした。
『 景時さん 』
あの声が笑顔が、脳裏に甦る。
くるくると目まぐるしく変わる表情は、いつも忙しなく周りへと向けられていた。―――でも、
『……ありがとう、ございます…』
あの…照れたような笑顔は。頬を真っ赤に染め、はにかむように俺を呼ぶ君だけは。
今となっては自惚れかも知れないけれど、
「俺だけのものだって…思ってたのに」
痛いね。今でもこんなにも―――君のことを想ってる。
ぽつりと呟いた言葉は もう誰にも届かない。
焦がれた月は行ってしまった。腕を伸ばしても、届かないものは必ずあるのだ。だから…
「――――好きだよ」
せめてこれだけは、この気持ちだけは 誰にも譲らない。
君に逢えた。
それだけで、十分だった。
【届かぬ祈りの果て】
…果てしなく 景時さんじゃない気がする(汗)
久々に書くと危険だ・・(滅)