福井晴敏と言えば、『亡国のイージス』で日本推理作家協会賞・日本冒険小説協会大賞・大藪春彦賞の3賞を受賞して一躍その名を世間に知らしめた。そしてその2年後、『亡国のイージス』の記憶冷めやらぬうちに、『終戦のローレライ』を発表すると、これも吉川英治文学賞新人賞・日本冒険小説協会大賞を受賞したことで彼の作家としての勢いはさらに増すことになる。
両作品の映画化や、それに伴う文庫の好セールス、自身のファンサイトの管理人を嫁にするなど、いろいろな意味で目を見張る氏の活躍は皆さんもご存知のことかと思う。
この作品は『亡国の~』と『終戦の~』の間に文庫3巻組で発表された作品を1冊にまとめてハードカバーで出版したものであり、富野信者としても有名(あと高村薫も好きらしいので、作中のアレはガチ)な筆者が(おおよそ本人にとってのみ)満を持して執筆したガンダムノベルである!(ここは小林清志のナレーションで)
でまあカバーのイラストで一目瞭然(ガノタスタンダード)、ターンAのノベライズであるだが、正直なところこういうのは同人誌でやってくんねぇかなぁ。いやまじでまじで。って内容。
"黒歴史"好き勝手しすぎ。カイラス・ギリとか出されても・・・・・・あまつさえGUSOHとか何食わぬ顔で出てきて、お茶吹くっつうの。ガンダム知らない読者はキョトンだし、ガンダム知ってる読者は中途半端に感じる、なんともどっちつかずな作品となってしまっている印象を受ける。パスティーシュであることが、良くも悪くも「福井色」を薄めてしまっている。
筆者曰く「自身最大のスケール」であり、本作がなかったら「終戦の~」は誕生しなかったということであるが、個人的に福井作品はスケール云々ではなく、どれだけ「熱い(暑っ苦しい)」が鍵だと思っているので、この作品の温い感じはどうも消化不良であった。
"黒歴史(くろれきし)とは、アニメ作品『∀ガンダム』における過去の歴史、『∀ガンダム』を除く全てのガンダムシリーズにおける戦争の歴史のことである。∀ガンダムの「月光蝶」によって埋葬されたとされている。"
(Wikipedia "黒歴史"の項より)
この作品も黒歴史として月光蝶に埋葬されちゃえばいいのに。