性転換ネギま!まとめwiki

千雨♂×ザジ

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集

千雨♂×ザジ

その1

俺は長谷川千雨、この麻帆良学園中等部の3年だ。
表向きはPCに詳しい地味な奴で通してるが、裏ではホスト業なんかをやったりしてる。
自慢じゃないが、今じゃNo.1を張ってるほどだ。
大体どんな奴にどんな対応をすればいいのかは心得てるつもりだ、でなきゃこの歳でNo.1になんてなれやしない。
だけど、たった一人、どう対応すればいいのか皆目検討つかない奴がいる。
それは――――

「・・・お前、いつの間にそこに座ってたんだ?」
「・・・・・・(ニコ」

――――こいつだ。


「お前、いっつも神出鬼没だよなぁ」
「・・・・・・」
「つか、その顔のメイク、ずっとつけてる必要あんのか?」
「・・・・・・」

・・・駄目だ、会話が成り立たない。
こいつはZazie・Rainyday(ザジ・レイニーディ)、俺と同じクラスのルームメイトだ。
曲芸手品部に入ってるとはいえ、四六時中顔にピエロのメイクをしているうえに、しゃべったところなんて他の連中より長く一緒にいる俺ですらほとんど見たことがない。
部活の宣伝なんかのときでは営業スマイルくらいはしてるらしいが、本当だかどうか。
変人ぞろいのうちのクラスでもひときわ変わってるが、余計なことは――――必要なこともだが――――しゃべらないし、なんだかんだで長い付き合いになるので、こいつには俺がホストをやってることを教えている。
まぁ、教えたときもほとんど表情を動かさなかったんだが。
だが、それ以降なんだか妙に俺について歩くようになった気はする。
部屋にいるときも何かと近づいてくるし、こんな風に外でもいつの間にか近くにいたりする。
そういうことがあんまりにも続いたので、からかうつもりで「俺に惚れたか?」と冗談で言ったんだが、何をどうやったのか突然出てきたハトの大群にボコボコにされた。
以来、何か用事が立て込んでたりしない限りはそれなりに付き合うことにしている、あんな恐怖は一度で十分だ。

「・・・・・・(ちょいちょい」
「ん? 何だ?」

何を話しても会話が途切れるので、無言でコーヒーを飲んでいた俺に、ザジが手を差し出す。
こいつが自分から何かすることってのは結構珍しい。
そういうときは大抵、何か手品をやってみせるときだ。

「・・・ハンカチ」
「ハンカチ? ここに置けってか?」
「・・・・・・(こくこく」

ほれ、案の定だ。
ただ、俺のほうからハンカチを貸し出すような手品は初めて見る。
こいつの手品の腕はたいしたものなので、新作の手品を見せてもらったときは結構驚かされる。
一体何が始まるのか、と思いつつザジの手を見つめていると、ザジはハンカチを広げ何もないことを確認させる。
いや俺のハンカチなんだから何かあったらおかしいだろう、と心の中で突っ込みつつも、一応仕掛けがないことを確認する。
するとザジはそのハンカチを右手で勢いよく一回振ると、左手で1、2、3、と指を振る。
次の瞬間、ザジの手の中からハンカチが消えた。
ちなみに、コイツが今着ているのは夏服で、袖に隠したりはもちろんできない。

「おお、どこやったんだ?」
「・・・・・・(ニコニコ」

ありふれた手品ではあったが、見事な消失っぷりに素直に感嘆する。
ザジはといえば、まさにしてやったりといった表情でニコニコしている。
だが、俺はふとあることに気づいた。

「・・・なぁ、アレ俺のハンカチなんだが」
「・・・・・・!」
「まさか、忘れてたのか?」
「・・・・・・!!!(ぶんぶん」

忘れてたな、コイツ。
まぁ別にテキトーに買ったハンカチだからひとつくらいなくなっても構わないんだが。

「あー、まあいいや。 別にたいしたもんじゃないしな。 んじゃ俺はこれで・・・うおっ?!」

そういって俺が立ち上がろうとすると、凄まじい勢いで腕を掴まれた。
何事か、と思ってザジを見てみると、かなり必死の形相でこちらを見ている。
いや、表情自体はそんなに変わらないんだが、眼に凄まじいほどの光が宿っている。
この状況で立ち去るのはマズイ、ひっじょーにマズイ。
もし立ち去れば、飛んでくる鳥はハトではすまない気がする、それこそ鷹とか鷲あたりが飛んできそうな、そんな眼だ。

「・・・な、何だ?」

恐る恐る俺が聞くと、ザジはポケットから自分のハンカチを取り出した。
そのハンカチを俺の手に巻きつけ、それを真剣な眼で見つめながら1、2、3、と再びカウントする。
そしてハンカチをはずした瞬間、俺の手の上に出現していた。

「お、おおお?!」
「・・・・・・(ぺこり」

これにはさすがに驚いた、まさか自分のハンカチがこんな風にして戻ってくるとは。
が、よくよく見るとこのハンカチ、妙な形で丸まっている。

「なぁ、何か入ってるのか? コレ」
「・・・・・・(ふるふる」

何も知らない、といいたげに首を振るザジ。
俺の気にしすぎだろうか、とにかく広げてみればわかるだろう。
そう思った俺がハンカチを広げ、その中から出てきたもの。
それは――――――――

「んなっ、なななななぁぁぁぁぁぁ?!」

深緑のレースで縁取られた、二つの山をもつライトグリーンの布。
それは、間違いなく――――女子のブラジャーだった。

「こ、ココココレ・・・・・・・っ?!」
「・・・・・・(ちょいちょい」

怒鳴ろうにも言葉が出ない俺の叫びを聞き流し、前かがみになって視線を誘導するザジ。
怒りが収まらないながらも、ついついそっちに眼がいってしまう俺。
するとザジは夏服のボタンをいくつか外し、胸元を少し開く。
わずかに覗いた褐色の肌と胸のふくらみに思わず顔が赤くなる。
そこには、本来あるべき下着らしきものは、何もなかった。
つまり、俺が持っている、コレは――――

「お、お前、まさかコレって――――!」

はっと我に返ってみたときには、もうザジは遠くに走り去っていた。
俺はそこに一人取り残された、ハンカチと――――多分アイツのであろう、ブラジャーを持ったまま。

「・・・どうしろってんだ、バカヤロォ――――――――!!!」

気がつくと、俺は思わずそう叫んでいた。
あの気まぐれなピエロに振り回される日々は、まだ当分続くことになりそうだ。



その2

「あ~~~~っ・・・・・・疲れた・・・・・・」

部屋のドアを開くなり飛び出た、でかいため息。
ホストなんてコトやってりゃめんどくせーことなんざ山ほどあるが、今日はいつも以上に疲れた。
なんでかって?
そんなもんわかってる、今俺のポケットに入ってる・・・この、ブラジャーのせいだ。
待て、何も俺が好き好んでポケットに突っ込んだわけじゃない!
仕事してる間もずっとコレがバレやしないかとヒヤヒヤしてたせいで気疲れ倍増だしな。
で、俺にこんなもんを押しつけやがったのが・・・・・・

「・・・・・お帰り」

この、台所で料理しながら俺を出迎えたピエロ野郎、ザジだ。
俺とこいつは中一の頃から同室なもんで、毎日の食事は二人で交代で作ることになっている。
今日は俺も仕事だったし、最初からコイツが料理当番の日だったから台所にいることは問題ない。
問題なのは、その格好だ。
黒い生地にフリルがふんだんに使われ、エプロンみたいな前掛けまで標準装備された服装。
早い話がメイド服だ。
とりあえず、今日までコイツがこんな服で台所に立ったところは見たことがない。
大抵ラフな格好にエプロンをかけてたもんだ。
だのになんでまた急にメイド服。
どこで買ったとかいつ買ったとかなんでそんなもんがいるんだとか色々突っ込みたいところが満載だが、とりあえずストレートな突っ込みにしておこう。

「・・・おう、ただいま。 で、なんだそのカッコ」

「・・・・・・普段着」

「嘘付けこのピエロっ! お前そんなカッコしてたことねぇだろ!」

「・・・今日買ったから」

「アホかぁっ!!!」

駄目だ、コイツ駄目だ。
あろうことかメイド服なんてもんを『普段着』なんていけしゃーしゃーと抜かす時点でもう激しくアウトだ。
いや、こいつは普段から顔にピエロのメイクをしてるような奴だからその辺の感覚がずれてんのか?
俺もコイツのカッコをいつも観察してるわけじゃねえから、本当はこの手の服を大量に持ってるのかもしれん。
・・・勘弁してほしいがな。

「あー、じゃあ一応確認しよう。 お前、それが普段着だっつーなら、その手の服大量に持ってんのか?」

「・・・・・・コレが一つ目」

「どう考えても普段着じゃねぇだろソレ!」

あああ、頼む誰か助けてくれ。
初めて会ったときからよくわからん奴だったが、最近はソレに拍車がかかってやがる。
このメイド服しかり、昼間のブラジャーしかり。
一体俺はどうすりゃあいいんだよ!?

「・・・・・・・・・(てくてく」

「オイコラ?! どこ行くんだよ!」

頭を抱える俺にかまうことなく台所から出て行こうとするザジ。
勢い怒鳴ってしまったが、ザジが持っている盆を見た瞬間に後悔した。

「・・・・・・ご飯、食べないの?」

「~~~~~~!!! 食うよ、チクショウ!」

「・・・・・・?(きょとん」

足を踏み鳴らしながら食卓へ向かう俺を、ザジが不思議そうに見つめてきやがる。
自覚なしか、あーもう。
席に着いた俺の前に、ザジがてきぱきと皿を並べていく。
飯と、サラダと、ハンバーグ。
そんな手間のかかったメニューじゃないはずなんだが、なぜだか滅茶苦茶うまそうに見える。
俺が生唾を飲み込んだのと、ほぼ同時。

ぐぐぅ~~~・・・・・・

「げっ・・・・・・」

「・・・・・・(くすくす」

俺の腹の虫が、盛大に鳴った。
しかもザジの野郎、そっぽ向いちゃいるがどう見ても笑ってやがる。
いつも無表情な奴が肩震わせたりしたら嫌でもわかるんだよこのピエロ!

「コラ待て! お前今笑っただろ!」

「・・・・・!(ぶんぶん」

「ごまかすな! ッたく・・・・・・いただきます!」

と、怒鳴るだけ怒鳴っておいてから、箸を取る。
とりあえずコイツに構ってると気が休まるときがない。
さっさと飯をかき込んで、PCでもいじってるのが得策だ。
そんなことを考えながら箸を進めていた俺だったが、ふとザジが自分の分を取ってくるでもなく、俺の横で黙って控えているのに気付いた。

「むぐ・・・どした? お前、食わねぇのか?」

何気ない、普通の質問。
だが、俺の耳に飛び込んできた返事は、普通とはかけ離れたものだった。

「・・・・・・ご主人様のお食事が終わるまで、ここでお待ちします」

「ぶっ――――――――!!!」

吹いた、思いっきり吹いた。
コイツ、こともあろうに「ご主人様」だと?!
メイド服か?! メイド服着てるからなのか?!

「・・・・・・どうかしましたか、ごしゅじ」

「やめろっての! なんなんだよお前は!」

席を蹴って立ち上がる。
ブラジャーの件といい、メイド服といい、この発言といい、俺をからかって面白がってるとしか思えない。
さすがの俺も我慢の限界だ。

「これといい昼間といい、俺をからかうのがそんなに面白いか?! ふざけるのもいい加減にしろよ!」

あらん限りの声で怒鳴る、怒鳴りっぱなしだったから喉が痛い。
ザジは黙っている、いつもの無表情で。
いつも見慣れてる顔、なのに何か妙な感じだ。
それでも俺は、感情に任せて怒りをぶつけ続ける。

「昼間のことだって、お前とは長い付き合いだったから我慢したけどな、ここまで馬鹿にされちゃ黙ってられねぇんだよ、俺も!」

「・・・・・・・・・・」

うつむくザジ。
なんだよ、逃げの一手か?
そんな風に目背けたりするなんて、今までなかっただろが。
卑怯だぞ、お前。
なんかよくわかんねーけど、やりづらいじゃねぇか。

「・・・・・・・から」

「あ?」

小さな声でつぶやかれた言葉。
なんて言ったんだ? 聞こえやしねぇよ。

「・・・・・・千雨に、こっち見てほしかったから」

「え――――――――」

なんだよ、ソレ。 わけわかんねー。
つまり俺はお前を見てなかったってことか?
んな馬鹿な、毎日顔合わしてるしクラスの馬鹿共に比べりゃよほど意思疎通してる、はずだ。
それになんでそれがブラジャー押し付けたりメイド服着て「ご主人様」なんて言い出すようなことになるんだよ。

「・・・・・・千雨、私のこと、『ルームメイト』だと思ってても、『女の子』だとは思ってくれてない」

ぽつり、ぽつりとザジの口からこぼれてくる言葉。
こいつがこんなに饒舌なのは初めてだ。
でも、何か、それ以外のものに気圧されて、口を挟むことができない。

「・・・・・・別に、彼女にして、とか、そういうのじゃなくて・・・ただ、少しでいいから『女の子』だって意識してくれれば・・・それでよかった」

気のせいだろうか、ザジの声が震えてる気がする。
まさか、コイツの無感情っぷりはよく知ってるはずだ。
でも、否定できない。
ザジの声が――――数えるほどしかまともに聞いたことのない、澄んだ声が――――とても、思いつめているように聞こえたから。

「・・・・・・・・」

「・・・」

重い沈黙。
何を言えばいいのかわからない。
こういう状況で何を言えばいいのかなんていうのは、ホストの俺にとってはお手の物のはずだ。
なのに何も浮かんでこない。
ザジはうつむいたまま、何も言わない。
コイツが何も言わないのはいつものこと。
だけど、いつもどおりのはずのザジの姿は、なんだか滅茶苦茶儚げで、頼りなさげで――――愛おしく思えた。

「ったく、バーカ」

こつん

「・・・・・え?」

憎まれ口と一緒に、うつむいたザジの頭を小突く。
顔を上げたザジの目が、どこか潤んでるようにも見えた。

「あのな、女と思ってないんだったら、こんなもんもらって取り乱したりしねーっての」

そういいつつ、ポケットに入れていたブラジャーを取り出して、ふん、と鼻を鳴らす。
ザジの手にそれを押し込みながら、目線を合わせるためにしゃがみこむ。

「いいか? お前は俺にとって“特別”なんだよ」

「・・・・・・“特別”?」

「ああ。 俺はお前を信頼してるからホストやってることだって教えたし、飯だって一緒に食うんだ。 他の奴らなら絶対にしねぇ、お前だからするんだ」

そこまで大真面目に言って、自分が滅茶苦茶臭い台詞を吐いてることに気付いた。
なんとなく気恥ずかしくなって、合わせた目線を外しながら立ち上がる。

「――――だから! 俺はお前をなんとも思ってねぇんじゃなくて、お前が“特別”だから、別の自分みたいな面倒なもんを演じたりしねぇだけだ」

そこまで言って、見上げてくるザジから目をそらす。
あーもう、こんな臭い台詞俺のガラじゃねぇんだよ。

「・・・・・・ありがとう」

「バッカ、礼なんていわれるようなことじゃ――――――――」

そこまでしか言えなかった。
言葉を詰まらせた俺の目の前にあったのは――――――――
ザジの、見たことのないような、綺麗で、澄んだ笑顔だった。



――――――――その少女は、『道化』として人々の前に現れる。
されど、その少年の前でのみ、少女は『道化』の仮面を外す。
そして、王子様に抱かれる『姫君』を夢見る、ひとりの少女に戻るのだった。



その3

「んあ・・・? んだよ、まだ9時じゃねえか・・・」

カーテンからこぼれた光で目を覚ます。
時計を見ればまだ9時、平日なら遅刻ギリギリで大慌てしなきゃならないが、あいにく今日は日曜だ。
昨夜は閉店まで引っ張られたせいで、布団に倒れこんだのが3時かそこらだった、つまりまだ俺は6時間しか寝ていない。
せっかくの休み、誰になんと言われようと俺は寝る、たっっっっぷりと寝させてもらう。
そう決意も新たに頭からかぶった布団を、無情にも引っぺがされた。

「・・・・・・何すんだよ、ピエロ」

「・・・・・・」

俺から至福の睡眠時間を与えてくれる布団を奪い去った張本人をジト目で睨む。
ザジは布団を抱えたまま、いつもの無表情で見つめ返してくる。
みょーな沈黙。
いや、俺が起き上がって布団を取り返すなりザジがそのまま布団をしまうなりすれば事態は変わるとは思うんだが、『先に動いたら負け』って感じの雰囲気に呑まれてにらみ合う。
が、先に折れたのは俺だった。

「お前、俺がいつ寝たか知ってるだろ? 頼むから寝かせてくれ」

「・・・・・・(いやいや」

なんでまた。
ザジがこんなマネするのは始めてなもんで、理由が皆目見当つかない。
コイツはこう見えて結構気配りのできる奴で、俺の帰りが遅かった翌日が休みのときは昼頃までゆっくり寝させてくれたもんなんだが。

「・・・・・・お買い物」

「は?」

「・・・・・・一緒に、お買い物、行こ・・・・・・?」

突然何を言い出しやがるんだコイツは。
いやそんな柄にもなく布団をぎゅっと抱いて頬染めて見つめられても。
俺があんぐりと口を開けていると、ザジは布団をぱっと消して(本人曰く“手品”だが、そんなレベルじゃない気もする)寝ている俺に詰め寄ってくる。

「・・・・・・ちょっとだけでいいから・・・お願い・・・」

「俺じゃなくてもいいじゃねーか、誰か他に・・・」

「・・・・・・千雨くらいしか、頼める人いないし、それに・・・・・・」

そういって目を伏せるザジ。
俺ぐらいしかいねーってまた寂しいなオイ。
つうか、「それに・・・」、なんだよ、そっちがメインなら早く言え。

「んだよ、それにどうしたって?」

ついイラついてちときつめな言い方になっちまったが、この場合はいいだろ。
それでもザジは何も言おうとしない。
これ以上急かしても意味はないだろうから、こっちも黙って待つ。

「・・・・・・千雨と、一回だけでいいから、デート・・・駄目・・・?」

「ぶふっ――――!? 急に何言い出しやがんだお前は!」

思わず飛び起きて後ずさる、もう“ずざざざざっ”という効果音がぴったりなほどの勢いで。
考えてもみろ、普段そんな話題はカケラも出ない奴がいきなり頬染めながら「デートしよ?」だぞ?!
ビビるだろ?! 誰がどう考えても!!
が、ザジは真剣そのものだ。
なんか、殺気立ってすらいるように思える。
もし下手な返事をしたら呪い殺す、それくらいの勢いのオーラが見える、気がする。

「・・・・・・今日だけ、今日だけでいいから・・・・お願い・・・・千雨」

いつもながらの無表情、しかし鬼気迫る気配に圧倒される。
これでもし断ったりしたらどうなるんだ俺は。
なんか、「ハイ、このホスト中学生が・・・ホラ、綺麗に消えました」とかって消し去られそうだ、いやマジで。

「・・・っだぁぁぁ!!! わかった、わかったよ! 今日だけだぞ!?」

結局、こうなるのかよ・・・あーあ。
まぁ命は惜しいからな、付き合ってやるさ。

「・・・・・ホント?(ぱぁっ」

「ホントだよ、ったく・・・・・支度するから待ってろ」

そういいながら慌てて目をそらす。
くそっ、あからさまに嬉しそうな顔してんじゃねえよ・・・やりにくいだろうが。
そんなことを考えながら俺がベッドから立ち上がろうとした、その瞬間。




ぎゅうっ!




「んなっ・・・・・・・」

「・・・・・・ありがと、千雨」

そのやわらかくて暖かい体で俺に抱きついたあと、ザジは自分の部屋へと戻っていった。
俺は、しばらくベッドの上で呆然としているしかなかった。
体に残る、ザジの体温を感じながら。





わずかに開いたカーテンの隙間から見える空は、雲ひとつない快晴。
道化の少女の心も、想い人という太陽に美しく照らし出されていた。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

目安箱バナー