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その10

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匿名ユーザー

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荒巻がまじめにリハビリをするようになり、かなりの日が経った
ブーンは、最初の頃は戸惑ったものの
やる気と、執念のような決意で、二週間ほど経ったあたりから、異常に飲み込みが早かった
ジョルジュも、その姿に触発されてか
それからもどんどん、どんどん、社会に復帰して、究極のおっぱいを探すために、リハビリをこなしていく
荒巻は・・・わからない
リハビリはしているようだが、いつもブーンたちとは、リハビリの時間をかぶらないようにしているからだ
なのに、なぜリハビリをしているとわかるのか?

それは、以前のように絡んでくることはなくなったからだった
以前ならば、必死になっているブーンたちのことをバカにしに来ていた

―――それが無くなった、と言うことは、おそらく彼自身の光を見つけたのだろう・・・―――


やまじゅん「おどろいたな・・・・」
驚いているような、感心した感じの声を出した
ふむぅ、と一言出してから、考え出したようだ
彼からは、呼吸の音しか聞こえない
隣にいる長岡は、黙っている

やまじゅん「そうだなぁ・・・もうそろそろ・・・・・いいかも知れないな・・・・・・長岡くんは、どう思う?」

しばらくして、彼は長岡に意見を求めた
長岡「そうですね・・・もう、初めてもかまわないと思います」
何のことかわからないブーンの顔は、複雑な顔だった
やまじゅん「内藤くん、君に、新しいリハビリを始めようと思う」

       「少しの間、ほんの、二時間程度、病院の外を長岡と、君の友人で、歩いてきてもらおうと思う」

       「車の教習所で、公道を走って見る訓練のようなものだ、どうだ?」

ブーンは、二つ返事でOKを出した
( ^ω^)「もちろん!喜んで受けるお!!!!」
コレは、久しぶりにツン、毒男、ショボンたちと同じ世界、同じ社会に出れる、滅多にない機会
と、いうか、病院に来てから初めての機会だった
やまじゅんは、あまり気の乗らない声で了解した

やまじゅん「それじゃあ・・とりあえず付き添ってくれる友人を、呼んでくれないか?」
       「電話は、長岡くんに番号を言ってかけてくれ」
( ^ω^)「わかったお」
ブーンの声は弾んでいた
やまじゅん「とりあえず、来週の火曜にでも、始めてみよう」
       「それじゃあ、それまでに、ゆっくりと呼ぶ人を決めてくれ」
( ^ω^)「・・・先生」
んー?と、間の抜けた声で、やまじゅんは答える
( ^ω^)「ありがとうだお」
そう言ってペコリと頭を下げると、立ち上がり
杖で道を確認しながら、歩き出した

ブーンが出て行ったドアを、長岡とやまじゅんは見ていた
やまじゅん「ありがとう・・・か・・・・・あのリハビリで・・・・・・」
溜息をつき、長岡に問いかけた
やまじゅん「いくら、決意が強いとは言え、まだ彼には早すぎる」
       「そうわかっていながら、彼にあのリハビリを受けさせるなんて・・」
私は酷い男かい?、と、苦笑いをしながら言った
長岡「・・・いえ、そんなことないと思います、彼ならきっと、乗り越えてくれますよ」
クスリと笑いながら答えた
だが、すぐ後に難しい顔になり
長岡「でも・・・まだ早いかもしれませんね・・・」

やまじゅんは頬を、ぽりぽりとかいた

やまじゅん「いまさら・・・やめると言えば彼のためになるが・・・」
       「彼をがっかりさせてしまうと・・」
ふぅ、と、一息つく

やまじゅん「荒巻のように、その反動が大きそうだからな・・・・」

やまじゅんは、荒巻の担当医もしていた
そのとき、やまじゅんは、荒巻の心を壊してしまった
荒巻がこの病院に来たとき、無気力ながらも
その目には何か期待と、決意のようなものがあった

/;3「先生、オレ、リハビリを受ければ目が治りますか?」

彼が入院して、三日くらい経ったときにやまじゅんに言った言葉だ

やまじゅんは、まだ少年のような純粋な心を少し持っていた彼を、絶望を与えるのはかわいそうだと思った
彼には、少しの希望を持たせてあげようと
ほんの、少し、蟻の大きさにも満たないくらい、小さな小さな希望を
たった、一欠片、あげようと思った

それが、間違いだった

やまじゅんは、わざと複雑な顔をして
やまじゅん「うーん・・・難しいな・・・・・」
そしてそれから、ニッコリと笑い
やまじゅん「でも、君が頑張れば、わからない・・・・な」
と答えた
荒巻の顔が、パッと、明るくなったのがわかった
/;3「ホントに!?先生!じゃあ、オレ頑張るよ!」
  「絶対目を治して、オレのことを今まで採用しなかったやつらを見返してやる!」
彼の目は、もう無気力な青年ではなく、やると思ったことは必ずやる、少年の目になっていた
ありがとう!と、一言言われて、やまじゅんと、彼のもう一人の担当医の、中川は部屋から出た

中川「先生・・・、本当にいいんですか・・?」

   「彼の目は・・・・もう・・・・・・」

やまじゅんは、答えられなかった

それからの荒巻は、ブーンにとても似ていた
早くリハビリを受けて、社会復帰しようと考えていた
その姿を見ていると、やまじゅんも、中川も辛かった

――――自分たちはあんなに純粋な彼を騙していていいのか・・・?

―――彼の目を、偽りの世界の中ではなく、現実の世界で回復させてはくれないのだろうか・・・

その現実からの答えは、"NO"だった

そして、せめて、と、やまじゅんは思い、彼のリハビリを一週間後始めた

荒巻の努力は、おそらくブーンよりも、上
それくらい、彼は熱心にリハビリをしていた
そんな日が続き、二ヵ月後・・・・
彼は荒巻に話をした
やまじゅん「とても、がんばってるね」
荒巻は、笑いながら当然、と言った
やまじゅん「君を・・もう一度検査したい」
       「それで、このままリハビリを続けて、回復するかどうかわかる」
いや、そんなものは、しなくてもわかっていた
しかし、口実があれば、彼は納得してくれると、思っていた

それが甘かった

荒巻の顔は、真剣だった

やまじゅんも、中川も罪悪感に押しつぶされそうになっていた

そして、一週間後
検査と称された口実を作るための作業は、実行された

検査の日、一日中荒巻は緊張していた
そして、検査が終わっても、心配で眠れないでいた
そんな荒巻の様子を、中川は見てしまい、耐えられなくなった
彼女は、やまじゅんの元に行き、泣いた
声を上げて、泣いた
やまじゅんは、何も言えなかった

しかし、やまじゅんの目は、冷たい悲鳴をあげていた


次の日
やまじゅんは、検査の結果、と言う形で、真実を告げた
荒巻はうつむいていた

荒巻に大きな絶望と、不安を、手渡した

やまじゅんは、後悔していた
もしも、あの時、最初から本当のことを言っておけば・・・
今とは結果が違ったかもしれない

そのとき、荒巻は顔を上げた

―――彼の目は、深い深い深い深い深い深い・・・・・

その中に、もう期待や決意のようなものは


                                          感じられなかった



それから、やまじゅんは彼の担当医を違う医者に代わってもらい
『医者』という立場の自分を、見つめなおし、考え直した

そして、彼が戻ってきて、少ししてブーンが病院に運び込まれた

彼は、荒巻に対しての償いにはならないかもしれないが、
医者と言う職業に対しての償いも含め、ブーンの担当医になった

―――つくづく・・自分は卑怯な男だ

と、自分を嘲笑した
長岡「やっぱり・・・まだ彼のことを・・・」

やまじゅん「・・・私は・・・医者としても人間としても・・・・・・彼に最低なことをしてしまったからな・・・・・・・・」

クックッ、と、少し笑って、長岡に軽く手を振ってそれじゃあ、と出て行った

一人になった部屋で、長岡はポツリとつぶやいた

    日陰にいて、光から逃げていないで・・・・光を浴びなくちゃ・・・・・・
     一番光が必要なのは・・・、と、開きっぱなしのドアに向かって
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