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ルミネッセンス

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ルミネッセンス年代測定


ルミネッセンス測定装置

ルミネッセンスとは


蛍石という石がある。これを火中にくべると肉眼でも分かるほど強く青白い光を発する。
これが熱ルミネッセンス(TL,Thermoluminescence)である。
蛍石だけではなく、土壌や岩石を構成する鉱物の熱ルミネッセンス現象はきわめてありふれた現象であり、殆どの鉱物は加熱すると発光する。
ただ、蛍石のように肉眼でも分かるほど明るいルミネッセンスを発する鉱物は希である。(ダイヤモンドやアメジストも加熱によるルミネッセンスが観察できるが、空気中での加熱では燃焼や変色を起こし元に戻せなくなるので決して実験しないこと。)
しかし、光電子倍増管など感度の良い検出器を用いれば、石英や長石などの微弱な熱ルミネッセンスも測定することが出来る。
一度、発光した鉱物に人工放射線を吸収させて再度加熱すると、再び熱ルミネッセンスを発する。
このことからもわかるように、鉱物が熱ルミネッセンス現象を示すのは自然界の放射線を吸収した事による。TLの強度は鉱物が吸収した放射線量に比例するので、発光量が多いほど鉱物の年代は古いことになる。

光る原理(超絶簡易版)


<前提>

○450℃(温度上昇による発光手前)での加熱=低エネルギーの作用
○エネルギーの順序=放射線>可視光(紫~赤)>赤外線

赤外線をどんなに束ねても不可視なのが明らかなように、低エネルギーは高エネルギーには変換できない。
しかし、今、物質に低エネルギーを作用させている(蛍石の加熱のように)にもかかわらず、可視光である発光現象が確認できる。つまり、以前に放射線のような高エネルギーが作用したに違いない。


<解説>

放射線を浴びて原子が電子を離し(電離)、電子の欠けた原子(正孔)と電子とに分かれる。

多くはまた再結合するが、結晶内部の欠陥や不純物部位に捕らえられるもの(捕捉正孔=ルミネッセンスセンター、捕捉電子)がある。

熱や光による刺激(励起)で揺さぶられ、捕らえられた電子が元に戻る

余分なエネルギーが光となって放出される(ルミネッセンス)

遺物の場合、焼成された瞬間がゼロであり(ゼロイングという)、そこから長い年月をかけて放射線により不純物に捕らえられた電子が増える。
発掘した我々によって熱や光で励起させられ発光の度合いを見て年代を測定するのだ。

古い試料ほど長期間自然放射線に曝されるので、捕獲された電子の数が多く、従って加熱したときのルミネッセンス強度も強い。

ルミネッセンス現象は励起エネルギーの与え方によって、熱ルミネッセンス、光ルミネッセンス、機械刺激ルミネッセンス、化学ルミネッセンスなどと区別されるが、年代測定に利用されるのは熱ルミネッセンスと光励起ルミネッセンス(OSL,Optically Stimulated Luminescence)である。
他の発光はむしろ誤差を生じる原因となる。


放射線はどこから?


自然界の放射線でルミネッセンス年代測定に関与するのは、アルファ線、ベータ線、ガンマ線と宇宙線である。
放射線源はウランやトリウムの壊変系列がつくる放射性元素、カリウム40やルビジウム87などの放射性同位体、宇宙線及び炭素14のように宇宙線によって生成される放射性同位体である。
自然放射線の強さは土壌・岩石の種類によって異なる。宇宙線に関しては緯度が高いほど、また高度が高いほど強度が大きい。
ルミネッセンス年代測定では鉱物が吸収したこれらの放射線を区別せずにトータルとして評価する。

ゼロイング


熱や光によって励起エネルギーを与えられることによってルミネッセンスを発した鉱物は元のエネルギー状態に戻り、再度熱や光のエネルギーを与えても発光しない。このように、人為的または自然現象による加熱や露光のイベントによって発光して元のエネルギー状態に戻ることをタイムゼロイング、または単にゼロイングという。
土器や焼石・焼土は過去の人為的な加熱により、テフラ(火山が噴火した際に,噴火口から大気中へ飛び出る固体の破片。一般に「火山灰」や「軽石」などとよばれるものがその代表。)は火山噴火により、レス(砂漠や氷河に堆積した岩粉が風に運ばれ堆積したもの)などの堆積物は太陽光によってそれぞれゼロイングされている。
年代測定をイベントから現在までの時間を測るタイマーに例えれば、ゼロイングはイベントによってこのタイマーをリセットすることに相当する。



粗粒子法と微粒子法

粒度がおよそ100μmの鉱物を測定試料とする粗粒子法、2~8μmの鉱物を測定する微粒子法に分かれる。
さらに粗粒子法は石英粗粒子法と長石粗粒子法に分類される。
微粒子法の場合は有機物と炭酸カルシウムなどを酸処理によって除去した残りの種々の鉱物が含まれる。

試料の条件別年代測定の方法




適用可能な試料


熱ルミネッセンス法(TL法)

石英や長石を含み、加熱によりゼロイングされた履歴のある遺物であれば、原理的に測定可能。
ゼロイングの加熱温度は約500℃以上であることが必要である。
土器など粘土を焼成して作られた遺物の他、焼石・焼土・焼砂・テフラなどが適している。

○土器
縄文土器・弥生土器・埴輪・土師器は適度な粒度の石英を含んでおり石英粗粒子法が適用出来る。
陶器や磁器も測定可能であるが鉱物の粒度が細かいので微粒子法またはスライス法による。

○テフラ
適している。石英を含んでいない場合は長石粗粒子法・微粒子法が適用できる。

○焼石
石英を含有するのが望ましい。

各種窯跡の炉床・炉壁の土や砂・炉跡の土・鋳型など。
また、土製品ではなくても鉄宰のように高温に焼けた土が付着した遺物や内側の粘土がこそぎ落とし切れていない鋳造品のTL年代測定例もある。

光ルミネッセンス法(OSL法)

TL法で測定できる試料は全て測定可能であるほか、太陽光によってゼロイングされた鉱物を含む試料も測定の対象となる。
原理的には全ての堆積層が対象となるが、ゼロイングが完全であるかどうかが問題である(数分から数十分の露光が必要)
レスなどの風成堆積物が最適である。現在蓄積線量が小さい試料、年代で言えばおよそ1000年より若い堆積物に関しては線量依存性がよく解明されていないこともあってOSL法は困難である。

※博物館の陳列ケースや個人所蔵の陶磁器の年代測定に関しては年間線量が正確に評価できないので年代測定試料としては不向きである。しかし、真贋判定などの正確な年代値が必ずしも必要でない場合は数十mgの試料で測定可能である。

※試料採取時、太陽に露光しないよう注意する必要がある。
発掘の時は不可能であるが、遺物の表面層を削り取り内側の部分を採取して測定することで解決できる。

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