【-St.Sera's Temple-】

南側の円柱2

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【名も無き者】①
【?】①
【?】②
【?】③
【?】④【京極 春海】①



>【名も無き者】① [人物/Asassin]
>
>昼間の喧騒もどこへやら、深夜ともなれば首都プロンテラといえど人通りはほとんどない。時折、酒場から出てきた酔っ払いがいる程度だ。
>ガス灯の明かりも小さく、闇に生きる者にとっては格好の時間である。
>魔力を施された城壁によって、外に蠢くモンスター達は中に入ることはできない。それによって住人は安心して暮らすことができる…
>いや、例外があった。何も人の命を奪うのがモンスターだけの特権ではない。それと同じくらい古き歴史を持つ者たち、暗殺者(Asassin)である。
>今でこそトリスタン3世によって(その力を人に向けないことを絶対的な契約として)職業として認められてはいるものの、「人を殺す」という技術を持っていること、そして、表向きはともかくとして、今でも依頼遂行をする非公認のアサシンギルドが存在することは、上級下級を問わず、貴族たちの間では公然の秘密であった。
>
>「ちっ、失敗か…?なっ、まさか!」
>
>その日もいつものように依頼を遂げるため、ある貴族を襲撃した。男の役目は目付の目付、すなわち完全な監視役である。
>今回の任務は簡単に済むはずであった。何しろエリート暗殺者として育てられた二名でチームを組んでいるのだから。
>それゆえ監視の監視である男にとっては、暇な任務であったはずだった。しかし…
>
>
>「まずいランディー!作戦変更だ」
>
>「我らの存在を知られるわけにはいかない。皆殺しだ・・・」
>「・・・・!!」
>「ちぃっ!!」
>
>「私の命が目的なら、妻と娘は見逃してくれ!頼む!!」
>
>「何をしている!早くやれっ!!」
>「くそっ!この期に及んで躊躇するとは使えない奴だ!!」
>
>「ぐぅ・・・な、なぜだぁ・・・」
>「う・・・裏切り・・者・・・」
>
>
>「おいおい、マジかよ」
>男にとっては信じられない光景であった。まさか彼女が裏切るとは…
>だが、そんなことは言ってられない。ここで彼女を、ランディーを取り逃がしてしまえば、次に追われるのは自分である…。
>「おい何をしている、追うぞ」
>「(…やはり、か)」
>たかが貴族一人を襲うのに監視を2人もつけるとは大仰な、と思っていたが、どうやら裏では相当大きな力が動いているらしい…。
>男のほかにも監視役がいた。
>「まったく、厄介なことをしてくれるな、あの女は」
>まったくである。おかげで同業者を追うという面倒な任務が増えてしまった。
>「お前は右から回りこめ、俺は左から追う」
>「了解した」
>同業者を追うというのは一番厄介な任務である。なにしろ互いの技は熟知されているし、追跡・撹乱など読みあいになってしまうからだ。
>「だがまぁ、やるしかない、か」
>男は、ナイトメアの魂のこもったカタール『裏切り者』を装備した。
>「ほんとはこんなことに使いたくはなかったのだけれどな…」
>男の記憶でも、依頼を投げ出し逃亡した同業者は数えるほどしかいない。そのほとんどは相討ちになったという。追跡者にも逃亡者にも生存者がいないため確認が取れないのだ…。
>ゴッ
>何かが足に当たった。
>人の腕のようだ。
>「…」
>男にはそれだけで状況が読み取れた。この太さからいって、監視役のものであるのは間違いない。つまりそれは…
>カキーン
>冷たい金属音が静かな街に鳴り響く。
>アサシンどうしの戦いほど静かな、そして冷酷なものは無いだろう。
>詠唱も無ければブラックスミスのように気合の声をあげるわけでもない。
>ただ刃の打ち合う音だけが聞こえるだけである。
>
>キーン
>数十合ほど打ち合いになり拮抗した状況になった。
>「なぁ、ひとつ聞きたい」
>男はランディーに尋ねた。通常のアサシン同士の戦いでは有り得ない事である。ランディーは一瞬驚いたようだがすぐに
>「いいだろう、死に逝く者の望みだからな」
>冷徹に切り返した。
>「このまま逃げれるとでも思っているのか?」
>「ふん、よくある問いだな」
>彼女の刀に力がこもる。
>「わたしは逃げ切ってみせる」
>「…アサシンとして育てられた貴女に帰る場所があるとでも?」
>「……」
>この問いには答えず、ただ刀に力が入るだけであった。
>そう、いくら逃げおおせたとしても、帰る場所も無い生粋のアサシンにとって、逃亡はただの放浪に過ぎない。
>「…俺は逃亡を遂げたある一人のアサシンを知ってる」
>[[へっざまぁねぇな]]
>「そいつは追跡から逃れることには成功したが、自分で命を絶っちまった」
>[[逃げたは良いものの、何をしたらいいかわからねぇ]]
>「そしてこう言ったよ」
>[「俺には守るべきものも誇るべきものも無いのになぁ…どうやら俺が逃げたがっていたのは「人を殺すアサシン」ということからだったらしいぜ」]
>聞いているのか無視しているのか、ランディーに反応は無い。
>「…いいだろう」
>考え込んでいたのか、不意にランディーは声を出した。
>「逃げおおせて見せるさ、『殺人者としてのアサシン』からな!」
>拮抗が解けた。
>急激なラッシュだ。
>か わ し(腹部に右の短剣が刺さった)き れ な い
>[クローク!]
>男はアサシンの技、[クローキング]で姿を隠した。本来なら追撃に用いるのであるが、今は隠れるだけで手一杯である。
>…しばらく彼女は様子を窺っていたようだが、追撃できないと判断したのか、その場を立ち去った。
>「…手加減したのかはしらんが、逃げて見せるさ、どこまでもな」
>立ち去る瞬間、そう言っていた様な気がした。
>それが男の最後の記憶であった。
>

>【?】① [人物/?]
>
>男は深い闇の中にいた。
>「……ら…だってば」
>誰かが話をしているらしい。
>「もし…ら、どうす…」
>声からして女のようだ。
>「そのときはそのときよ」
>「りく姉、いくらなんでもまずいでしょ」
>「傷ついた人を助けるのは聖職者の役割よ」
>「はる姉やるみ姉が聞いたら何て言うか考えて見なさいよ」
>「はるちゃんもるみちゃんも同意してくれるよ」
>「…りく姉、場所考えていってよ。連れてきたのがわたしらの家だったらまだいいけど、ここ、セラ師匠の神殿だよ。師匠にまで迷惑かけるんだよ!」
>「セラさんだって『よろしいですよ』って言ってくれるよ」
>「だいたいこんな傷だらけのアサシンが怪しくないわけないじゃない!」
>「でも~…」
>どうやら命は残っているようだ。二人(おそらく姉妹だろう)の会話から大体の状況は把握できた。
>「お姉ちゃん、お薬買って来たよ~」
>部屋のドアが開き、二人の妹らしき子どもが入ってきた。
>「くーちゃん、ありがとう」
>「この人、まだ起きないの?」
>「そうね…だいぶ傷が深かったし、まだだと思うよ」
>「服とか洗濯しておいたから、お姉ちゃん干すの手伝って~」
>「はいはい…ケイここお願いしていい?」
>「あ~いってきな、何かあったら知らせるから」
>「お願いね」
>「ちい姉お願いね~」
>バタン、とドアが閉まった。どうやら一人だけ残っているようだ。
>「(今がチャンスか)」
>武器が無くとも女一人倒すのに苦労はしな
>「…言っとくが、私はりく姉のように甘くは無いからな」
>「(!)」
>「いつまで寝た振りをしているつもりだ?それとも女一人だからとなめているのか?」
>「……いつから気づいていた?」
>「お前が気づいていた頃からだ」
>どうやらケイと呼ばれているこの女は、相当修練を積んでいるようだ。
>「私はお前がどんな人物であろうと構わん、が、師匠やりく姉、くーに危害を及ぼすようなら…消す」
>最後の一言にこめられた殺意は、数多の任務をこなしてきた男を震わせるものであった。それはもはや恐怖と言っても過言ではなかった。
>「あぁ了解した」
>そう言って、ケイという女を見てみた。金色の髪、いかにも魔力を持っていそうな帽子、そしてWizardの制服…
>「あんたウィザードか」
>「みりゃわかるだろ?」
>そう言うと近くのいすを引っ張り出して書を読み出した。
>「…ずいぶんと冷たいな?」
>「当たり前だ、アサシンを信用するほどお人好しではないからな」
>書から目を離さずに返答してきた。
>「信用してない割りに無防備だな?」
>ケイは杖すらもってない。部屋には彼女ただ一人。
>「…仕方が無かろう、りく姉の言いつけだしな、それに…」
>そこで言葉を切って男を見た。いや、見据えた。
>「けが人を縛り付けておくほど、私は外道でもない」
>それだけ言ってまた書に目を落とした。
>「…なぁ」
>「しつこいやつだな、本に集中できないではないか」
>「怪しいと思っているなら、なんで騎士団に通報しない?」
>書を読む手を止め、
>「通報してほしいなら届け出るが、そのほうがいいのか?」
>一瞥もせずに言い放った。
>「アサシンは信用ならないんじゃないのか?」
>「…職業を差別する気はまったく無いが」
>もう書を読むのを諦めたのか、それを机の上に置き、こちらを向いた。
>「夜中に傷だらけで倒れていたアサシンを怪しむな、というほうが無理だと思うが、どうかな?」
>「…まぁそりゃそうだ」
>「アサシンだからといって非難する気は無い。溜まり場にもランディーさんのようにすごい人もいるのだからな」
>「…ほう」
>「私はまだあまり話したことが無いが、それでもその強さは見るべきものがあると思っている」
>「(ふっ、運命と言うものはどこで交わるかわからんものだな)」
>「ん?何か言ったか?」
>「いや、なんでもない。そうだ、おれはどのくらい眠っていた?」
>「ん、かれこれ半年というとこかな」
>「…ならお前の姉とのやりとりは」
>「あぁ、わざとだよ。お前さんが目覚めたのに気づいたからな」
>「ふっ食えない女だ」
>「食われたくも無い、お断り願おう」
>「(…当面は安心していいようだが、いずれここを逃げ出さなければ)」
>「…何を考えているかは知らんが、目覚めたことを伝えてくるぞ」
>「あぁ(ちょうどいい、今なら逃げれるだろう)」
>〔大地の精霊よ、我に敵を拘束する力を!ストーンカーース!!〕
>「なっ、お前」
>「どうせ逃げると思うのでな、石化させてもらうぞ」
>「・・・」
>男はこの女だけは敵に回さないようにしようと、石化する直前に決意した。


>
>【?】② [人物/?]
>
>〔精霊に魅入られし者に神の癒しを リカバリー〕
>頭上に神聖文字が浮かんだ。体の隅々にまで[神の癒し]が行き渡るのがわかる。
>「(人の命を奪って生活していたおれに、[神の癒し]とはな…)」
>その運命の皮肉(あまりの滑稽さ)に自嘲の笑みがこぼれた。
>「石の中はどうだったかな?」
>…どうにも皮肉を言わないと気がすまないらしい、このケイと呼ばれている女は…
>「おかげさまで、静かなところだったよ」
>「そうかそうか、ならもう一度入ってみるか?」
>…精一杯の皮肉を込めたつもりだったが、あっさり流されてしまった。どうにもこの女にはいいようにあしらわれてしまう…
>「あの…お体の方は大丈夫ですか?」
>おれとケイの会話におずおずと入ってきたのは「りく姉」と呼ばれていた(想像通り)Priestだった。
>「まだ気分が優れないようでしたら、横になっていたほうがよろしいですよ」
>ケイと違い、こちらはとても優しい。職業柄というよりも、もともとの性格なのだろう…
>「いや、お気遣いありがとうございます。できればこのあと、貴女と二人っきりになりたいものですね」
>「…?」
>何のことやら、という感じで小首を傾げられた。そしてケイは
>「りく姉、こいつ石の中のほうが好きだってさ」
>片手にレッドジェムストーンを持ち、いつでも詠唱いけるよと言わんばかりにこちらを睨んでいる…
>「だめだよケイちゃん、そんなことしちゃ」
>やはり彼女は優しい。…比較対象がひどすぎるのかもしれないが
>「生きてる間はだめだよ~」
>訂正だ…それなりに似てはいるようだ…


>
>【?】③ [人物/Asassin]
>
>2人が部屋から出て行った後(もちろん出て行く時に「おとなしくしてるか石の中がいいか、選びな」と聞かれたのは言うまでも無い)とりあえずはベッドに横になっていた。が、
>「…やはりのんびりはしていられないな…」
>洗濯の終わった服に身を包み、カタールを手に取り部屋から抜け出した。
>
>「!」
>その感覚に、ケイは紅茶を飲むのをとめた。
>「ケイちゃんどうしたの?」
>ケイの挙動に疑問を感じりくがたずねる。
>「なんでもないよ、りく姉」
>残った紅茶を飲み干し
>「それであず、下手人とかはわかったの?」
>目前にいるあずに聞いた。
>「ん~…それがいまいちはっきりしないんだよね」
>あずはお茶請けに出されたクッキーを平らげつつ、紙片を渡した。
>「その報告書にある通りだけど、事件そのものは未遂で終わってるし、暗殺されかけた当の貴族が『この通り生きているので大丈夫です』の一辺倒で、調査自体が進展してないんだってさ」
>と、ここまで言ってカップを空にする。
>「あずお姉ちゃん、お代わりどうぞ」
>くーが代わりのカップを差し出す。
>「ありがと、くーちゃん、……」
>「な、何?あずお姉ちゃん」
>カップを受け取った後もじっとくーを見るあず。
>「いやさ…普通、末の妹ってこう可愛いものだよなぁと思って…」
>「るみお姉ちゃんだって可愛いと思うけど」
>あずは全力で首を横に振り
>「いやいや…もうとっくに可愛げなんて消え去っちゃったよ…」
>と、るみが聞いたら大魔法乱舞劇になりそうな事を言ってのけた…。
>「あずちゃん、あの人の事はどう?」
>3人のやりとりを黙って聞いていたりくがたずねた。
>「うーん…それがねぇ」
>脇に置いてあった袋の中から1枚取り出し
>「今回の件とは直接関わりは無いけど、暗殺などの重大事には実行犯と目付け役っていう組み合わせで行うんだって」
>「まぁそうだろうな、背信して逆に雇われかねんからな」
>ケイがうなずく。
>「で、ここにいるやつがどっちかは分からないけど、少なくとも関わっていることは確かだろうね」
>「なら、ここに置いていても大丈夫だね~」
>りくのその言を聞いて、あずとケイは同時にため息をついた。
>「あ、あれ?私何かおかしい事言った?だって事件は不問に近いんでしょ?」
>「あのね、りく姉。事件そのものは不問でも、組織としてはまだ動いているんだよ」
>あずもそれに続く。
>「『失敗者には死を』の言は今でも通用するって事。実行犯であろうと目付けであろうと、追っ手が掛かっていることは間違いないだろうね」
>
>「しばらく身辺に気をはらってね」
>あずが帰り支度をはじめ
>「あ、買い物ついでに送っていくわね」
>「私もついてくー」
>と、りくとくーも出かけていった。
>「ふぅ…」
>家に残るはケイ1人だけ。…いやもう1人いた。
>「…お前は、タヌキ寝入りとクローキングで盗聴が趣味なのか?」
>「なんだ、やっぱりばれてたか」
>クローキングを解除し、男が姿を現した。
>「部屋の出入り口に結界をしいてたからな」
>「おやおや…用心深いことで」
>「だが解せんな、逃げ出す事は出来たろうに…」
>ケイは怪訝そうに男を見る。
>「なーに、ちょいと情報を仕入れたかっただけさ」
>「…まぁいい。出て行くというのならさっさと出て行ってもらおうか」
>「ずいぶん冷たいねぇ、せめてお茶の1杯でも出してくれてもいいだろ?」
>と、カップを指差した。
>「ふ…招かれざる客に出す義理は無い。お前がいることで周囲にまで危険が及ぶというのは、分かりきっていることだろう?」
>「まぁな……その点ではあず?が言ったことが的を得ている」
>「なら即刻立ち去れ」
>「命令かよ…どうせなら『ご無事で』とか『神のご加護を』とか優しい言葉の1つくらい」
>「無い」
>ためらいも無く言い放った。
>「即答か、せめて考えるそぶり位してくれたって…」
>「……無い!!!これでいいか?」
>「…もういい、諦めた」
>男は踵を返して居間から出て行こうと
>「あぁそうそう」
>と言って立ち止まった。ケイは冷たい視線を送り
>「何だ、まだあるのか?」
>と聞いた。
>「まぁそうトゲトゲするなって…俺ばかり情報もらってばかりだったからな、1つ教えておこうと思ってな」
>「いらん」
>「まぁ聞けって…今回の件で、俺は目付けの目付けだ」
>「…ふむ、なら現場にあった死体が実行者か?」
>「いや、あれが目付けだ。実行者は別にいる…で、だ」
>「なんだ?」
>「それなりに衝撃的な事実を知ることになるが構わんか?」
>「…お前が勝手に話してるだけだろう」
>「そうか…なら言うぞ。実行者として選ばれたのはランディーだった」
>


>
>【?】④【京極 春海】① [人物/Asassin/Wizard]
>
>「なっ…あのランディーさんが…」
>いつもは冷静なケイも、さすがに動揺を隠せなかった。
>「まぁ、俺は今のランディーのことは知らんが、事実を述べただけだ」
>事も無げに男は言う。
>「加えて言うなら、日数的に見てもそろそろ追手が迫ってる頃だろうな…無論俺にもだが」
>「…こうしちゃいられない」
>足元に置いてあった杖を取り出立しようとしたが
>「おいおい、お前さんが行ったところでどうしようもないだろ」
>男に押し止められた。
>「そこをどけ」
>「やめときな、多少心得はあるようだが本職には勝てん」
>「いいからどけと言っている」
>「むざむざ死にに行くようなもんだぞ?」
>「可能性が0じゃないなら行く意味がある!」
>「まったく頑固者だな…っておい!!」
>気付いたときには詠唱は完成していた。
>〔大地の精霊よ、我に敵を拘束する力を!ストーンカーース!!〕
>「私の邪魔をするというのならお前も敵だ」
>石化した男を置いてケイは急ぎ足で出て行った。
>
>だが、すでに遅かった。
>「…ったく、あいつのせいで…」
>神殿の結界を壊し侵入しようとしているのだろう。そこかしこで結界術式の綻びが感じ取れる。
>「まず、結界を修復しないと…」
>1つ、また1つと術式を修復していく。だが、ケイにできるのはここまで。術式の再構成ができるのは、ケイの師Sera'Arkだけである。それが意味するものは
>「ちっ…破られたか…」
>破綻である。
>「でも、だいぶ数は減ったようね…」
>修復前に感じ取れた人数は18人。だが、今感じ取れたのは5人…
>「なら…連携される前に…潰す」
>
>〔地の精霊よ 我が怨敵を足止めせよ クァグマイア!〕
>〔水の精霊よ 永氷と為りて凍てつかせよ フロストダイバー!〕
>〔風の精霊よ 我に神の雷の力を ユピテルサンダー!〕
>
>「はぁ…はぁ…残り2人…」
>傷こそ負っていないものの、さすがに魔力が枯渇してきた。術式構成ができるのも残り数発分であろう…。
>「あまり、無駄撃ちはできない…」
>短剣がとんで〔氷の壁よ 我を守れ アイスウォール!〕きた。壁に阻まれ短剣が落下する。
>「くぅ…そろそろ限界か……」
>頭痛がする、目眩がする、何より魔力がもう無い…
>その瞬間を見計らっていたかのように、2つの影が襲い来る。
>「(やれるとしたら…これしか無い…)」
>
>『この術式は禁呪です、確実に命を削りますからね…もし使うことがあるのならば、最後の手段でしょうね…』
>
>「(セラ師匠ごめんなさい…禁を…破ります!)」
>杖を振りかざし、術式を構成していく。すると、ケイの周りに赤色の魔方陣が現出した。あまりの突然の出来事に影が動きを止める。
>〔我 ヴァルハラに在たる戦乙女に申す 我が内に在りし生命力を魔力と換え〕
>赤い魔方陣が回転する。ゆっくりと、だが確実に速度を増していく。
>禁呪…それは生命力そのものを直接魔力に換えるもの。即ち、自らの命を削って魔力を生み出す諸刃の剣…
>〔今一度 敵を討つ力を!〕
>魔方陣が爆縮し、ケイに集約される。ゆったりとした動作で再びケイは術式を構成していく。
>動きを止めていた影が再び動き
>〔暁の王よ その栄位なる力を持って 全ての敵を散らし給え! Load Of Vermilion!!!!〕
>一瞬眩い光が辺りを包む。そして光がおさまった後には、ケイ以外誰も残ってはいなかった。
>1人立ち尽くしていたケイも、糸が切れたように倒れこんだ…
>
>石化が解け、男はすぐさま外に飛び出した。
>「ちぃ…ケイのやつ余計なことを」
>神殿の扉を開けた瞬間、眩い光が辺りを包む。
>光がおさまり、倒れ伏しているケイを見つけた。急ぎ駆け寄る。
>「おい、ケイ!」
>返事が無い。揺さぶってみるが一向に反応が無い。
>「ちくしょう…」
>「後は私に任せてください」
>いつの間にか背後に人がいた。男が振り向くと、そこには神々しいまでの艶やかさをもった女性が立っていた。
>「誰だ、あんた?」
>「そうですね…ここの主とでも言いましょうか…」
>「主…ってことはあんたが師匠さんか」
>外套で体を隠しているため職業までは窺い知ることはできないが、まず間違いないだろう。
>「なら、あんたならこいつを助けることができるんだよな?」
>「えぇ…ですが…」
>「俺にできることがあるのなら言ってくれ!」
>「…その決意は絶対ですか?」
>「あぁ…結局俺は何もできなかったんだ…せめて…」
>それを聞いて何かを考え込んでいたが
>「わかりました、あなたの全て、使わせていただきます」
>
>
>「…ん…」
>ケイが目を覚ましたのはそれから3日後であった。
>「おう、眠り姫のお目覚めか」
>「…まだ夢の中のようだな…それも悪夢のようだ」
>頭をぶんぶんと振り、眠気を覚ます。
>「いきなりご挨拶だな」
>「…残念だが現実か…」
>乱れた髪をなおしつつ、声のするほうを見ると
>「…なんだその姿は?」
>そこにはAsassinの姿は無かった。代わりに見慣れぬMagicianの姿があった。
>「あぁ…話すとそれなりに長くなるんだが」
>「簡潔に話してもらおう…私が倒れた後の話も含めてな」
>「俺にも細かいことはわからんが…」
>
>『禁呪によって体内のエーテルを無理やり消費したのです』
>『失ったエーテルを他から補充するしか無いのですけど…』
>
>「てな感じでな」
>「…つまりあれか、お前がその「他から」ということか?」
>「まぁな」
>やれやれ、といった感じに両手を広げる。
>「なぜそこまでする…」
>「なぜって…そりゃあ…」
>「お前が暗殺者を生業としているのなら、そのまま立ち去ればよかったろうに…私の生死など構わずな!」
>そう言い放つケイを見ると、かけ布団の端を掴み肩を震わせている。
>その様子に男はため息をつき
>「あのなぁ…目の前で死に掛けている女性をほっとくほど、俺はひどい男でも」
>「私なんかのために…そんなことをする必要なんて…!」
>ケイの声は、段々と涙声になっていく。
>「そんなネガティブに考えるなよ、俺は新しい職と名前をもらえて嬉しいんだぜ?」
>「でも…」
>「でもでもうるさい!…弱気なケイは、ケイらしくないぞ」(でも、どこかあいつに似てるな…)
>その言葉を聞き、ケイは袖で涙を拭った。
>「ふん……誰が弱気になったと言った?この大馬鹿が!」
>「そこまで言うかよ…」
>「それで、新しい名前というのは?」
>「あぁ、師匠さんがつけてくれたんだがな」
>
>『新しい姿になったのです。名前も新しくしましょうね』
>『そうですね…古語で【フリューリング】というのがありますね…それにしましょ』
>
>「【フリューリング】?意味は?」
>「[春]だとさ、ケイたちと同じというわけだ」
>「ふ…そうか…」
>「これからよろしく頼むぜ『先輩』」
>「私の教え方は手厳しいぞ?覚悟しておけ」
>そう言ったケイの顔には笑みが浮かんでいた。
>

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