完士とおたく工場その2 【投稿日 2007/08/10~09/07】

カテゴリー-他漫画・アニメパロ


と そこに突然
「かわいー。」
中島の声が聞こえ、皆が中島の方を見た。

中島が指差した方を見ると遠くで小さな少女がせっせとフィギアを回収していた。
少女は髪を筆のようにくくって立てている。
(あ・・・あれは・・・・)
完士くんは思い出した。道で拾った1万円札を渡した少女だ。
(あの少女だ・・・とすると・・・僕にフィギアをくれたあの人は・・・ウォンカさん?)
皆がみていると、また一人、同じ姿形をした少女が現れて作業を手伝い始めた。
どうやら少女は一人だけではないらしい。
と よく見るとあちらにもこちらにも少女の姿が現れる。次から次へと少女の姿が増えていく。
どの少女もせっせとおいてあるフィギアを回収する作業をしている。
みな自然にフィギアに自分の名前を書く作業を止め、少女の姿をよく見るように
中島のところに集まりはじめた。
「あれはオ・ギウ・エーといってね・・・」
皆が振り向くと後ろにウォンカさんが立っていた。
「僕が東北の隠れ里で見つけたコロボックルの一族なんだ。
お金の代わりにイクラを大事にしていて働いたお礼にイクラを払ってるんだよ。」

みんなウォンカさんの話を聞きながらオ・ギウ・エーの作業風景を見ていた・・・とその時
「があっ!!」
朽木くんの声が木霊する。
(なんだ なんだ?)
皆 声のした方を見ると朽木くんが何か水溜りのようなもののところでもがいていた。
「どうやら接着剤を踏んだらしい」
接着剤の入れ物が会場のあちこちにおいてあり、フィギアに名前を書くのに忙しく
足元に注意していなかった朽木くんが接着剤の入れ物を踏み倒し
接着剤が流れ出たところにそのまま倒れこんだようだ。
地面に流れた接着剤が身体にくっつき朽木くんの身体は地面にくっついてしまっている。
地面からはなれようともがいているのだがどうやってもはなれない。
むしろもがけばもがくほど体に接着剤がくっつき更に体の自由が奪われるという悪循環に陥っている。
そのもがく朽木くんの姿を見てスーが叫ぶ。
「タテ タツンダ ジョー!」
そのほかの人たちはみなその姿を見て どうしよう?と頭をひねっている。
と突然、グアガガガという機械の音が聞こえたかと思うとスチームボーイに出てきたような
巨大な機械の手が天井から下りてきた。
そして朽木くんを地面ごと掘り下げ、持ち上げる。
「オー!ノー!」
朽木くんの叫び声が聞え、朽木くんは掘り起こされた地面と共に機械の手によって空中に持ち上げられる。
みな、その光景を固唾を呑んで見守っている、

その時、虎革のビキニに頭に角をつけたうる星やつらのラムちゃんのコスプレをした
沢山のオ・ギウ・エーがどこからともなく現れる。
「?」
なんだなんだという感じでみんなオ・ギウ・エーを注視する。
オ・ギウ・エーは空中に持ち上げられもがく朽木くんの下に集まって輪を創り回りながら歌い踊りだした。

うる星やつらの替え歌である。

あんまりソワソワしないで♪ あなたはいつでもきょろきょろ♪
よそ見をするのはやめてよ♪ 自分(の趣味)が何よりいちばん♪
好きよ...好きよ...好きよ...♪ 

星達が輝く夜更け♪ TV見るの アニメの全て♪
注意しても あなたは知らんぷりで♪ 今ごろは アニメに夢中♪

ああ オタクの人って♪ いくつもクセを持っているのね♪
ああ あちこちにバラまいて♪ 周りを悩ませるわ♪

あんまりソワソワしないで♪ あなたはいつでもキョロキョロ♪
よそ見をするのはやめてよ♪ 自分(の趣味)が誰よりいちばん♪

ああ オタクの人って♪ どれだけ好きなものがほしいの♪
ああ 自分(の趣味)だけ愛してる♪ いつでもひとりだけね♪

あんまりソワソワしないで♪ あなたはいつでもキョロキョロ♪
よそ見をするのはやめてよ♪ 自分(の趣味)が何よりいちばん♪
自分(の趣味)がいつでもいちばん♪ 自分(の趣味)の全てが♪
好きよ...好きよ...好きよ...♪ いちばん好きよ! ♪

オ・ギウ・エー達が歌い踊っている間に朽木くんはそのまま機械の手と供に
天井に姿を消していく。それと同時にオ・ギウ・エーたちもどこへともなく姿を消す。
皆、呆気にとられて見ていたが一人スーだけがウォンカさんの方を振り向き
手をまっすぐに差し出し親指を立てて「グッジョブッ!!」と叫んだ。
沢崎がおそるおそるウォンカさんに尋ねる。
「朽木くんはどうなったんですか?」
「うーん・・・この上はフィギアの製造工場なんだよね・・・。
だから多分、型にとられて等身大の朽木くんのフィギアができるだろうね。」
「・・・それ、店で売るんですか?」
「誰も買わないだろ?」
沢崎の裾を引っ張る者がいる。オ・ギウ・エーである。
「その娘についていきなさい。朽木くんがいるところに案内してくれるから。」
沢崎がオ・ギウ・エーについて違う方向へいくのを見ながらウォンカさんは
皆をうながした。
「次の部屋に行こう。」

野原には川が流れており、その川に宇宙戦艦ヤマトの小型版といった格好のボートが
多数のオ・ギウ・エー達に漕がれてやってきた。
「さあ乗って」
ウォンカさんに促され、船に乗り込む完士くんたち
船は川を下り、洞窟を通り地下へと向かう。
完士くんはおそるおそるボートを漕いでいるオ・ギウ・エーたちを見ていた。
(あの時の少女は誰だろう?)
みな、双子のように同じ顔・姿で区別がつかない。
すると船を漕いでいる一人のオ・ギウ・エーが完士の方を見てウインクした。
ウインクしたオ・ギウ・エーはすぐにもとの表情に戻りなにくわぬ顔で船漕ぎを続ける。
(やっぱり あの時の女の子は・・・オ・ギウ・エーの一人だったんだ)

「この部屋は漫画やアニメのキャラクターの食玩を開発する部屋だ。」
ウォンカさんに連れられて入った部屋には様々な装置・機械や器具がしつらえられ
開発中の様々なキャラクターの食玩がおいてあった。
「これは僕の開発した商品の1つ 北斗の拳風船ガムだ。」
そういってウォンカさんは商品の1つを手に取った。
「これを噛んで膨らませると膨らませた風船が爆発するとき、『グワシ』とか『ヒデブ』とか
叫んで爆発するんだ。」
ウォンカさんは1つ風船ガムを膨らませて爆発させるとそのガムは『アベシ』といって爆発した。
みんな興味深げにウォンカさんの話を聞いていると 突然、
「スー!」
アンジェラの叫び声が聞える。
見るとスーが口をもぐもぐさせている。

「だめでしょ!!スー!勝手に他人のものを食べたら。」
「ノビタノモノハオレノモノ オレノモノハオレノモノ」
「何を食べたの?」
スーの立っている横には様々なキャラクターの小さな飴が入った箱がおいてあった。
「ああ・・・だめだよ。それを食べちゃ・・・今、実験中なんだ。」
「アワテナイ アワテナイ ヒトヤスミ ヒトヤスミ」
「これを食べたらどうなるんですか?」
「食べたキャラクターに変身するんだ。」
アンジェラの顔が青ざめる。
「スー あなた何のキャラを食べたの?」
するとスーの身体がぷっくりと膨らみ始めた。
「どうやらドラミちゃんみたいだね。」

スーの顔は変わらないものの身体が真ん丸くなり手足も丸くなって
その姿はまるでドラミちゃんである。
「まだ完成してないからね。変身も中途半端なんだ。」
どうやらまん丸で偏平足の足では慣れないのかバランスがとりにくいらしく
スーは滑って転んでしまう。
滑った拍子に頭を床にぶつける。
「ウグゥ」
しかも身体も丸いものだからそのままコロコロと床の上を
あっちへ転がりこっちへ転がり目まぐるしく動く。
「ジタイハサラニアッカシツツアル・・・」
コロコロと転がりながらあちこちの角に頭をぶつけ、スーの目が渦巻状に変化した。
スーが喚く。
「ゼツボウシタ!!ウォンカサンノハツメイニゼツボウシタ!!」
するとセーラームーンのコスプレをした沢山のオ・ギウ・エー達がどこからともなく
現れ集まり輪をつくって踊って歌いだした。


ごめんね 素直じゃなくて♪ アニメのセリフなら言える♪
思考回路はショート寸前♪ 同人誌買いたいよ♪

逝きたくなるよなエロ同人♪ 正視ができない18禁♪
だって純情 どうしよう♪ ハートはマンダラケ♪

日本のサブカルに導かれ♪ 何度も来日する♪
買った同人誌の数数え♪ 失うお金のゆくえ♪
同じおたくに生まれたの♪ ミラクルロマン スー♪

もいちどコミケでウィークエンド♪ (コスプレの)神様 かなことハッピーエンド♪
現在 過去 未来も♪ アニメにくびったけ♪

(日本のアニメに)出会ったときの なつかしい♪ ときめき忘れない♪
幾千万の同人誌から♪ ヤオイを見つけられる♪ 
なんでもアニメのセリフに変える♪ 生きかたが好きよ♪

不思議な奇跡クロスして♪ 千佳と巡り会う♪
買った同人誌の数数え♪ 失うお金のゆくえ♪
同じおたくに生まれたの♪ ミラクルロマン スー♪

信じているの♪ ミラクルロマン スー♪


ウォンカさんも歌に合わせてのりのりで踊っている。
歌い終わると同時に決めポーズをつくるがそのウォンカさんを
アンジェラが鬼のような形相で睨む。
「スー!」
アンジェラはすぐに視線をスーの方に向ける。
スーはそのままごろごろと転がり、階段のところまで転がって
階段を一直線に落ちていく。
「マダダ マダオワランヨー。」
スーのけなげな叫び声がだんだんと小さくなっていく。
アンジェラが必死で追いかけて階段を下がって姿が見えなくなった。
「まあ階段はやがて終わる。そうすればスーも止まるよ。」
呆気にとられている皆をウォンカさんが促す。
「次の部屋に行こう。」

次の部屋にいたる長い廊下を歩く途中、原口がウォンカさんの横につきまとい
ずっとウォンカさんを褒めちぎる。
「いやー!!すばらしい発明の数々っ!!堪能させていただきましたっ!!」
「私、原口ともうしまして、こういったおたグッズを販売しているものです。」
「ウォンカさん あなたは天才ですっ!!是非、私と組みましょう。大もうけできますよっ!!」
「どうです?ウォンカさんの発明した新しいおたグッズを私が独占的に販売するというのは?
私独自の販売ルートをたくさん持っておりますから・・・
任せていただけるなら他の業者よりもたくさん販売できること請負ですよ」
「利益の取り分もウォンカさんにとってプラスになるように考えさせていただきますから」
原口はうざいくらい饒舌に喋る。眼鏡の奥の目がぎらぎらと光っている。
ウォンカさんは聞いているのかいないのか原口の喋りには一切、返事をしないし、反応もない。
無表情に前を見ているだけである。
「あ・・・遅れましてすいません。これ私の名刺です。」
そういうと原口は名刺を取り出し、丁寧にお辞儀してウォンカさんに手渡した。
再び正面を向いた時、ウォンカさんが名刺を原口の見えない背中側にポーンと放ったのは
誰も見ていなかった。
部屋の前でウォンカさんが立ち止まる。
「ここはやおい漫画・同人誌の製作部屋なんだ。」

そこに入ると大きな丸い空間になっており、その丸型の部屋の壁にあわせて
巨大なドーナツ型の机が置かれていた。
巨大なドーナツ型の机には沢山のオ・ギウ・エーが並んで座り、原稿用紙に流れ作業で漫画を描いている。
部屋の真ん中には穴が開いており、描く傍からその穴に原稿用紙が放り込まれていく。
流れ作業を見物するようにしつらえられた出っ張り部分に完士たちはいた。
部屋との間には腰までの高さの鉄柵があるばかりでまたげば部屋の中に入ることができる。
「この部屋は漫画の製作がメインの仕事だ。」とウォンカさんが言う。
「オ・ギウ・エーに描いてもらってるのだが、没原稿は全て真ん中の穴に捨てられる。」
みんなは原稿をせっせと描くオ・ギウ・エーを見ていた。
少女が手足を振りながら作業をする姿はとても可愛い。
そしてオ・ギウ・エーを見る中島の目がいつしか爛々と輝き始めているのに誰も気づかなかった。
と、突然、中島が叫ぶ。
「原口さん。オ・ギウ・エーほしいっ!!」
中島が後ろを振り向いて原口に言った。

原口は
「ふふん」
とツチブタのように鼻を鳴らしてウォンカさんの方に向き直り
「どうだろ?中島がこういってるんだ。一人わけてくれないかね?」
「オ・ギウ・エーはものじゃないよ。」
「お金ならいくらでも払うよ。」
「オ・ギウ・エーは人間なんだ。」
「ねえ。お願いウォンカさん。だめ?」と媚びた視線を送る中島。
「ダメだね。」
ムッと怒った顔をする中島
「オ・ギウ・エーちょうだいっ!」
「だ・め・だ」
中島にあわせて怒った顔をするウォンカさん。
「どうしてもほしいならオ・ギウ・エーに聞いてみればいい。オ・ギウ・エーがOKしたら
反対しないよ。」
「そうね。」
中島はそういうと柵を乗り越えて中に入る。

「あたしはほしいものは何でも手にいれてきた女なんだ・・・」
中に入り作業で夢中のオ・ギウ・エー達を一人一人丁寧に観察する。
そして一人を選ぶと突然、手を伸ばし抱きかかえた。
「決めたっ!!おまえにするっ!!」
選んだオ・ギウ・エーを思いっきりギュッと抱きしめ頬すりする中島。
すると周囲にいたオ・ギウ・エー達が次から次へと中島に群がり始めた。
「なに?」
中島に群がったオ・ギウ・エー達は中島を叩いたり蹴ったりしはじめる。
「いたたたたた」
中島がすべって転ぶとみんなで手足を押さえ真ん中の穴に向かって運びはじめた。
と赤・白・青の様々な色のプラグスーツのコスプレをしたオ・ギウ・エー達が
たくさん飛び出てきて輪をつくり歌い踊り始める。


残酷な天使のように♪ 少女よ 腐女子になれ♪

 やおい風がいま♪ 胸のドアを叩いても♪
 私だけをただ見つめて♪ 微笑んでるあなた ♪
 そっと触れるもの♪ イラストを描くことに夢中で♪
 運命さえまだ知らない♪ いたいけな瞳♪

 だけどいつか気づくでしょう♪ その胸中には♪
 はるか腐女子 めざすための♪ 種子(タネ)があること♪

 残酷な文芸部のテーゼ♪ 窓辺からやがて飛び降りる♪
 ほとばしる熱いジェラシーで♪ 友達を裏切るなら♪
 この空を抱いて輝く♪ 少女よ 腐女子になれ♪

 ずっと眠ってる 私の腐女子の揺りかご♪ あなただけが校長室に呼ばれる朝がくる♪
 細い首筋を冷や汗が流れてる♪ 世界中の時を止めて閉じこめたいけど♪

 もしもふたり逢えたことに意味があるなら♪ 私はそう やおいを知るためのバイブル♪

 残酷な文芸部のテーゼ♪ 悲しみがそしてはじまる♪
 抱きしめた命のかたち♪ やおいに目覚めたとき♪
 誰よりも光を放つ♪ 少女よ 腐女子になれ♪

 人はエロをつむぎながら同人誌をつくる♪ 女神なんてなれないまま 私は生きる♪

 残酷な文芸部のテーゼ♪ 窓辺からやがて飛び降りる♪
 ほとばしる熱いジェラシーで♪ 友達を裏切るなら♪
 この宇宙(おたワールド)を抱いて輝く♪ 少女よ 腐女子になれ♪


中島は歌が終わると同時に穴に放り込まれた。
「キャーッ」
「な・・・中島ぁ。」
原口が叫び穴にかけよる。
おそるおそる中を覗きこんだ原口のケツをオ・ギウ・エーが思い切り蹴る。
「あーっ。」
原口も穴の中に吸い込まれて消えていった。
沈黙があたりをおおう。
「あの穴はどこに向かっているんですか?」
沈黙を破ったのは高坂だ。
「焼却炉だよ。ゴミを焼くためのね。」
一瞬緊張が走る。
「大丈夫だ。ゴミを燃やすのは火曜日だから。」
「今日が火曜日ですよ。」
高坂はニコニコ笑いながら言う。
咲ちゃん晴信じいさん完士くんはエッと驚いた顔をする。
「あー・・・そうそう。確か焼却炉は壊れていたはずだ。うん。」
ウォンカさんはそういうと
「だから心配する必要はないよ。次にいこう。」

「おたく工場は広いからね。いちいち歩いていくと何日かかっても全部見れない。
エレベータで行こう。」
そうウォンカさんが言うと近くにあったエレベータに入った。
完士くんたちもウォンカさんに続いてエレベーターに入る。

エレベータの中には四面全体に沢山のボタンがついていた。
そしてボタンの下にそれぞれの部屋の名前が書いてあった。
「コスプレの部屋」「アニメの部屋」「アニメ専用カラオケボックス」エトセトラ・・・・
「ボタンを押せばどれでも好きな部屋にいけるよ。好きなボタンを押してごらん。」
(といっても・・・)
完士くんは四面をザっと眺めて(これ全部、見るだけでもたいへんだよ)と思った。

「じゃあ これ」
高坂が素早く背面にあったボタンを押す。
何の部屋かと表示を見てみると
「ゲーム・ルーム」とあった。
(これだけのボタンの中からよく一瞬で見つけたな)
完士くんだけでなく晴信じいさんや咲ちゃんもびっくりしていた。
エレベータは物凄い速さで移動して一瞬で部屋についたみたいだった。

部屋に入ると巨大スクリーンが目の前に展開し、剣士の格好をしたオ・ギウ・エーが
スクリーンの中で魔物をバッタバッタと切り倒しているところであった。
やがて最後の魔物を倒したところでエンディング・テーマが流れゲームが終了する。
それと同時にスクリーンからさっきまで戦っていたオ・ギウ・エーが飛び出てきた。
一同がびっくりしているとウォンカさんが冷静な言葉で話す。
「これはゲーム機の中に入って自分がゲームの主人公になって活躍できる装置だよ。」
そういって部屋の端っこにある装置を指差し、
「あそこの装置の青のボタンをおして、あのケースの中に入るとゲームの中に入れるんだ。」
「すごい!」
高坂は叫ぶと同時に一目散に装置の方に走り、青のボタンを押して
ガラスの円筒形の筒の中に入った。
白い電流が何本か流れピカっとまぶしい光があたりを覆ったかと思うと
高坂の姿は装置の中から消えていた。

「こ・・・高坂 どこいったの?」
咲が心配してウォンカさんに尋ねる。
「咲ちゃーん。ここだよー。」
高坂の声が聞えた方を見ると前面のスクリーンにその姿がアップされていた。
「ゲームの中に入れたんだ!!すごいよー!!」
そして高坂の入ったゲームのタイトルが大きく表示される。
「くじアン(ハートマーク)ラビリンス」
タイトルを見た晴信じいさんと完士くんは額に汗の粒を流す。
「なに?なに?なに?」
二人の様子が変なことに気づいた咲が不安そうに二人に聞く。
「あ~・・・『くじあん(ハートマーク)ラビリンス』か~。」
「この間出たばっかりの最新作でしたよねえ・・・」
「エロゲーだよ。」
ウォンカさんが何の躊躇もなく断言した。
咲の顔がムンクの叫びになる。
一呼吸おいた後、咲はウォンカさんの胸倉を掴み揺すりながら叫ぶ。
「こーさか戻せっ!!今すぐっ!!早くっ!!」
咲の目に涙。

が、ウォンカさんは冷静に言う。
「だめだよ。一旦、ゲームの中に入ってしまったら、”ゲームを終わらせる”まで出れないんだ。」
咲が完士くんの方に顔を向けキッと睨む。
「このゲームどうやったら終わるんだよ?」
「ええと・・・」
完士くんは答えにくそうに喋る。
「くじアンに出てくる全女性キャラとエッチしたら・・・終わります・・・」
「・・・・」
絶句してその場にへたりこむ咲。
「ウォンカさーん。動けないよー。」
高坂の声がスクリーンから聞える。
「ゲームをプレイする人がいないとね。ゲームの主人公にはなれるけど、
ゲームの中の人間を動かすのはゲーム機をコントロールする別の人が必要なんだ。」
「ええと・・・じゃあ高坂くんをゲームの中から出して元に戻すには誰かが
ゲームのプレイをしないといけないということですか・・・?」
「そういうことになるね。」
晴信じいさんと完士くんは咲の方を見る。

「なんで、あたしを見るんだよ。あたしはエロゲーなんて金輪際やんないからねっ!!」
「じゃ・・・じゃあボクが・・・」
と完士くんが手をあげる。
「これ最後までやったことあるし・・・」
(あるのかよ!)
汚いものを見るような目で咲が完士くんを見る。
「わしは3回ぐらいやったぞ。わしも参加させろ。」と晴信じいさん
咲の顔が更にゆがむ。
完士くんと晴信爺さんは一緒にゲームのコントローラの前に座る。

「え・・・ええと・・・高坂くん。最初にどのキャラとやりたい?」
完士くんがスクリーンの中で固まっている高坂に聞く。
「んー。橘いづみちゃんがいいなあ。」
「おー。橘いづみかー。いいとこをつくねー。」
「このゲームに出てくる橘いづみって旧作なんだよね。」
「やっぱ旧作でしょ。新しいスパイの設定?ありゃだめだ。萌えネエ。」
「おじいさんもそう?僕も萌えないんですよ。なんでああいう設定にしたかなあ。」
「新設定の奴って人間の感じがしないんだよね。機械というかロボットみたいな感じで。」
「やっぱ旧設定のゴーグルをかけたミニスカがいいよなあ。」
「なんで旧設定変えられたんだろう。」
「やくざの親分の娘でプロのばくちうちって設定が拒否られたんですかね?」
「未成年だしなあ・・・やっぱ抗議とかきたのかも。」
「でも、やっぱ純情可憐で美しい女子高生が内面の弱さを必死で隠して突っ張って頑張っている姿が
萌えるんすよね。突っ張ってる中、時々、内面の弱さがチラリと見えるのがもうたまんないっす。」
「チラリズムってやつか?あははははは。」
オタ談義をしながらゲームをやっていく完士と晴信じいさん
咲は二人のセリフのふきだしに圧迫されクガピーの部屋を訪れた時のようになっている。

「しっかし高坂くんといづみって似てるよなあ。」
「どっちがどっちかわからん。」
そうこういいながらゲームは進んでいく。
やがて高坂がいづみをつれて部屋に入り、いよいよベッドイン寸前、服を脱いでパンツ一丁になった時。
「待て待て待て待て待てっ!!見るな見るな見るな見るなっ!!」
ひときわでかい声をあげて咲が止めに入った。
驚いてゲームをストップする晴信じいさんと完士くん
「やめろっ!!高坂の恥ずかしい姿をおまえらに見せてたまるかっ!!」
「えー。咲ちゃん。僕は平気だよー。」と高坂
「こーさかが平気でもあたしゃ耐えられないのっ!!」
「じゃあどうするんですか?」
咲は腕組みしたまま恐ろしい形相でスクリーンを睨む。時間にして2~3秒だが
永遠の時間がたったかと思えるくらい長く感じた。
「・・・あたしがやる。」
完士からゲームのコントローラを奪った。
「あんたらはさっさと出ていって!!」
咲に言われて3人はお互いの目を見合わせる。
とたくさんのオギ・ウ・エーが頭に狐のお面をかぶって巫女のコスプレをして出てきて
歌と踊りをはじめた。


色とりどりのエロが舞う♪ ゲームという名の迷宮は♪
光と闇がせめぎあう♪ 那由多の形のマニア狂♪

神様さえも持て余す♪ 見えない高坂の深い闇♪
理性と欲望絡みあい♪ 鏡に映らぬあなたがそこに♪

エロゲーは両刃(もろは) 宝の剣(つるぎ)♪ ときに人を支配するけど♪
きっとおたくを切り開いてゆく♪ 

フィギアがいっばい エロキャラ達が♪ 幾重に織り成すたまゆらの夢♪ 
萌えがいっばい 森羅万象♪ ここから生まるる永遠(とこしえ)がある♪ 
フィギアがいっばい この現世(うつしよ)の♪ すべては天から賜りし夢♪ 
萌えがいっばい 心の闇こそ♪ あまたに流るる真琴を秘める♪

何度も人がこの世から♪ 転生輪廻をしてもなお♪
意識の底にたゆたうは♪ 消えない萌えの一片(ひとかけら)♪

いつかは誰も気づくはず♪ 腐女子・おたくのある処(ところ)♪
すべてはエロが作り出す♪ 地上の舞台の幻世界♪

ゲームは魔性 聖なる祈り♪ ときに罪へ変化(へんげ)しながら♪
きっとおたくを進化させてゆく♪ 

フィギアがいっばい 内なる宇宙♪ 狂ってしまえば奈落への旅♪
萌えがいっばい 色即是空♪ 徹夜して見ゆるは夜明けの陽(ひ)よ♪

フィギアがいっばい 賢者は語る♪ 創るは一夜のかりそめの旅♪
萌えがいっばい それでも捜せ♪ 果てなく溢るる欲望の在りか♪

謎めく 揺らめく 煌めく エロゲー♪


オギ・ウ・エーの歌と踊りが終わると3人は部屋を出て行く。
部屋からは咲の叫び声といづみのあえぎ声が聞えてくる。
「くっそー。なんであたしがエロゲーやんなきゃならないんだー。
しかもこーさかの浮気を手伝わなきゃならないんだー。
こーさか嬉しそうにしてんじゃねー。バカヤロー!!」


「さてと次はどの部屋に行こうか。」とウォンカさんが振り返る。
後ろには完士くんと晴信じいさんしかいない。
「あれ?後の組はいないの?」
ウォンカさんが不思議そうに尋ねる。
「後の組はいません。みんな途中でリタイアしました。」
ウォンカさんが目をパチクリするが、すぐに両手を広げて
「おめでとう。君達が特別プレゼントの受賞者だよ。」と叫んだ。
完士くんと斑目じいさんはお互いの顔をみつめあう。
「で、特別プレゼントってなんですか?」
「特別プレゼントはほかでも無いこのおたく工場だ。
今日から君がおたく工場のオーナーだ。」
そういうとウォンカさんは完士くんの手をとって両手で握った。
完士くんはあまりのことに言葉が出ない。
「い・・・いいんですか?僕みたいなものがもらっちゃって?」
「いいよ。」
「えーっ!!」
「やったー!!」

完士は感激のあまり晴信じいさんと抱き合って踊る。
完士くんの喜ぶ姿を見てウォンカさんも満足そうにうなづいている。
「さて完士くん・・・おたく工場をもらってまず第一に何をしたい?」
ウォンカさんが尋ねる。
「家族みんなで一緒に住みたいと思います。」
完士くんが目をキラキラ輝かせながら応える。
するとウォンカさんが眉間に縦皺をよせて渋い顔をする。
「それはだめだ。おたく工場はあくまでも完士くん個人にプレゼントするのであって
完士くんの家族にではない。」
(え)と驚いた顔をし晴信じいさんと顔を見合わせる完士くん
晴信じいさん
「・・・いや・・・それでもいいよ。完士・・・たまにはおたグッズを送ってくれよな。」
そう完士くんに言うが当の完士くんは難しい顔をしている。

完士くんは縦皺を眉間によせてウォンカさんの方を振り向いて言う。
「今回のお話はお断りいたします。僕一人がこんな広い工場に住んでも意味が無い。」
ウォンカさんは信じられないといった顔をする。
「こんな凄い申し出を断るなんて・・・君はどうかしてるな。考え直したほうがいい。
こんなチャンスは二度とないよ。」
「え~『第1回~緊急おたく工場 受け渡しどうするかほとんど決まってねえよ会議』を初めます~」
突然、晴信じいさんが叫ぶ。
ウォンカさんと完士くんが白い目で晴信爺さんを見、じいさんはゴホゴホッと咳き込んで
「最近、歳のせいかボケの進行が進んどるわい・・・」と目をそむけて小さな声で呟く。
「よく考えた方がいい。」ウォンカさんが再度、考えを改めるように完士くんに促すが
完士くんの決意は固くどうしても受け取ろうとしない。
あきらめきれない晴信じいさん「ま まーまーまー まーまーまーまー!!」と間に入り
話をまとめようとする。
「工場を受け取るのか受け取らないのかはいったん、おいといてだな。
えーと・・・まず・・・その・・・なんだ・・・。」

「嫌がるのに無理やり渡すのは不誠実な感じがするね。もう渡さないほうがマシなんじゃないの?」
とウォンカさん。
「そうすねー どーせいらないですしねー」と完士くん
完士くんは一旦、こうと決めたら見た目よりも頑固であった。
ウォンカさんは大きく息を吸い込みはくとあきらめたように切り出した。
「じゃあしょうがない。この話は無かったことにしよう。」
すると今までの話のいきさつを横で静かに聞いていたオ・ギウ・エーが突然、泣き出した。
ウォンカさんも完士くんも(え?)という顔をしていると
泣いていたオ・ギウ・エーが叫ぶ。
「完士さんじゃなきゃやだ」
それが始まりで工場のあちこちから沢山のオ・ギウ・エーが完士の周りに集まってきた。
そして完士くんの周りを囲むと一斉にはもってしゃべりはじめた。
「完士さんがおたく工場の後継者に選ばれねえんだったらあたす達も辞めます。」
「あ・・・いや・・・そんな・・・」
完士くんは声も出ない。
突然のオ・ギウ・エーの反乱にあって唖然とするウォンカさん。
ウォンカさんは困って腕組みをして暫く考えていた。
やがて思いつめたような顔をして口を開いた。

「今まで、この工場は僕一人でやってきた・・・と思ってたけれど、
それは僕の勘違いだった。だってオ・ギウ・エーの協力が無ければ何もできなかったんだからね。
今回の後継者の問題だって僕一人で決めようとしたのが間違いだった。
第一にオ・ギウ・エー達の意見を聞かなければならないのにそのことを忘れていたんだ。」
そういうと深く深く頭を下げて謝った。
「完士くん。家族をつれてきていいよ。一緒におたく工場をやっていこう。」
そういうとウォンカさんは完士くんに手を伸ばした。
(これで決まりだろう)
と思ったウォンカさんだが・・・完士くんはウォンカさんの手を握らない。
「?」ウォンカさんが何かまだ足りないのか?と不思議に思っていると
完士くんは更に次のことを言う。
「おたく工場は僕達だけのものじゃないと思うんです。」
「?」
「おたく工場はおたくみんなのものじゃないでしょうか・・・僕や家族だけじゃなく
おたく達みんなに広く解放していきたいんですが・・・。」
ウォンカさんはポリポリと頭を掻いた。
「完士くん」
ウォンカさんはいう。

「おたく工場は既にきみにあげるつもりだ。どう使おうと君の勝手だよ。」
そういうとウォンカさんはニッコリ笑い再び手を完士くんに差しのばした。
完士くんもニッコリ笑い、二人は強く握手した。
晴信じいさんも横で喜んでいる。
「でもスパイには気をつけないといけないがね。」とウォンカさんはつぶやいた。

ウォンカさんはその後、朽木くんを接着剤からはずし、スーをドラミの身体から元に戻し 
中島と原口はゴミの焼却炉から戻され、高坂はゲームの中から出された。
完士くんはおたく工場に家族を呼び寄せいまではおたく工場で家族みんなで働いている。
そして全世界のおたくたちが工場見学やアルバイトなどで沢山、おたく工場に出入りするようになった。

今日はエロ同人誌を創る会議中
完士くんがオ・ギウ・エーに仕事を頼んでいます。
「じゃあ・・・たのんじゃおっかな・・・1~2ページのカットでいいから・・いや 
もちろん好きなだけ描いてもらっていいけど!」
「印刷どうすんだ?」と晴信じいさん
「そもそもページ数と値段は?」と総一郎父さん
「私コスプレして売り子しましょうか!」と加奈子母さん
「お・・・俺もイラスト描いていいか?」と光紀爺さん。
「わてもちょっと描かせて」と藪崎。
恵子は横で同人誌を読んでいる。

工場内では高坂が新しく自分でつくったエロ・ゲーを楽しみながらプレイし
咲ちゃんはその横で高坂に甘えている。
スーとアンジェラと加藤さんは新しいコスプレにトライし、
朽木くんと沢崎くんは漫画を読んでいる。
中島と原口は製品の仕分け作業だ。
今日も1日わいわいとおたく工場の日は楽しく暮れていく。
このまま永遠におたく工場はおたくたちの聖地となるだろう・・・・

え?ウォンカさんはどこで何をしてるかって?

    • 多分・・・ウォンカさんは・・・どこか別の部屋でこの様子を盗撮している・・・かもしれない・・・・

終わり

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最終更新:2007年11月02日 01:45