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完士とおたく工場 【投稿日 2007/07/21~08/07】

カテゴリー-他漫画・アニメパロ


ある見知らぬ国の見知らぬ町に完士という少年がいました。
完士の母親は加奈子 父親は総一郎 妹は恵子
その他 家族には母方のおじいさんの晴信じいさん。自称マムシ72歳と
父方の爺さんの光紀じいさんがいます。
いわゆるおたくファミリーですが、妹の恵子だけはなぜか一般人だ。
仕事は総一郎父さんが服の縫製をやっていたが、腱鞘炎で仕事ができなくなり
収入が激減、家計は大変な状態だ。
加奈子母さんがコスプレ(写真撮影料)をやって何とか食いつないでいる。

完士の住む町の大半は全世界におたグッズを供給しているおたく工場が占めている。
いわゆる企業城下町だ。
工場を経営しているのはウィリー・ウォンカという謎の人物。
ウィリー・ウォンカ製のおたグッズは世界中で大人気。
世界でもっとも有名で最も謎めいていている、それがウィリー・ウォンカのオタク工場である。
しかしその工場の中は一切謎に包まれている。
15年前、スパイによって極秘の情報を洩らされたことから、ウォンカさんは人間不信に陥って、
表面上は工場を閉鎖、従業員全員をクビにしたのだ。それ以来、工場に入ったものもなければ
出てきたものもいない。
それでも毎日大量におたグッズが出荷され、世界中で飛ぶように売れている
晴信じいさんはウォンカさんのおたく工場で働いたことがあり、ウォンカさんを見たことがあった。
しかし15年前、晴信じいさんもウォンカさんに解雇されてしまった。
「みんなウォンカさんのことを初代会長と呼んでいたな。」
と晴信じいさんの話はおたく工場に勤めていた頃の昔話ばかりだ。

「おたく工場ってどんななの?」と完士くんが尋ねる。
「夏と冬コミを足して100倍にしたくらいかな。」と晴信じいさん。
「・・・あんまいきたくないな。」と完士は顔に縦線を入れて応える。
「熱気が100倍なんじゃないぞ。中のコンテンツのすばらしさがじゃよ。」
「今、動いているのは全部、機械なの?」と完士は尋ねるが
「さあ。わからん。」と晴信爺さんは答えるのみだった。
完士はおたく工場が好きでおたく工場のミニチュアをつくった。ウォンカさんのフィギアつきだ。
95%は総一郎父さんが「手伝ってやるよ」といって勝手に作ってしまったが・・・。
完士の夢は一度、おたく工場を見学することだ。

そんなある日、ウォンカさんが驚きの発表をした。
朝、完士くんが街を歩いていると人だかりがしている。
(なんだろう?)
そう思ってその人だかりのところにいくと電信柱に張り紙がしてあった。
それはウォンカさんからの告知だった。
「工場で生産するおたグッズの中に5枚だけ金色のチケットを同封しています。
それを引き当てた人はそれぞれ一人パートナーを同伴させて工場を見学する権利が与えられます。
トラック一杯のおたグッズもプレゼントします。」
慌てて家に帰ると恵子を除いた家族みんながTVの前に座って釘付けになっている。
発表はTVでもされていたようだ。
そして、今ちょうど、いきなり招待券を引き当てた人間のレポートがTVで放映されていた。
完士くんは家族の中に割り込んでTVを見る。

「レポーターの北川です。さっそく1組目の当選者が出ました。」
北川レポーターは小柄で痩身 眼鏡をかけた女性だ。
TV画面には様々なおたグッズが乱雑におかれたいかにもおたくといった部屋がうつっている。
そこに男2人が並んで立っている。一人はかなり長身で痩せてて手足が長い
一人は中肉中背でボサボサ頭であごひげをはやしている。
「朽木であります。ウォンカさんの招待券に当選したであります。光栄であります!!」
手足をばたつかせて長身の男は応える。
「沢崎です。おたく工場へいけることが決まって嬉しいです。」
中肉中背の男が応えた。

「何?この人たち?」と加奈子母さんがクレームをつける。
「なんでこんな人たちに当たってうちはあたらないの。この人たちいかにもおたくじゃないの!!」
キーっという感じで叫ぶ。
(いや、だっておたグッズ買うのはおたくだろう・・・)
と家族みんな心の中でつっこみをいれる。
「・・・それに俺達、おたグッズ買ってないし・・・」と晴信じいさん。

「当選した理由は何だと思いますか?」
北川リポーターが(こいつらうざい)という表情をしながら聞く。
「いつもウォンカさんのおたグッズ買ってるからでありますっ!!」
「俺ら毎日、ウォンカさんの店でおたグッズ買ってるもんなあ。」
「これだけ買ってて当たらなかったら詐欺でありますっ!!」
「え~以上、おたく工場招待券が当たって喜んでいる当選者の2人でした。
以上でレポートを終わります。」
いい大人の癖に子供のようにはしゃぐ朽木を本当にうざそうな視線で
睨みながら北川レポーターの中継は終わった。

次の日の夜のことだった。
「今日は完士の誕生日だね。」
加奈子母さんは言った。
「はい。これプレゼント」
「わあ。ありがとう。」
ちゃんと包装紙にくるんでリボンも巻いているプレゼントを渡されて
完士くんは舞い上がって喜んだ。
「もしかしたらウォンカさんの招待券がはいってるかもしれないよ。」
と総一郎父さんは言う。
「楽しみだな。明日、開くよ。」
すると晴信じいさんがゴホッゴホッと咳をしだした。
「明日までワシの寿命はないかもしれん・・・ゴホッゴホッ
ああ・・・死ぬまでにもう一度、ウォンカさんのおたく工場を見学したかった・・・ゴホッゴホッ」
そういってじっと恨めしそうな顔を完士くんに向ける。
家族みんな晴信じいさんの方を見、そして顔をあわせた。
「じゃあ。今、もうあけちゃうね。」
そう完士くんは言って、おたグッズを開く。
みんなドキドキしながら招待状が出てくるかどうか注視していた。
プレゼントは完士くんが前から欲しがっていたくじアンのケッテンクラート会長のフィギアだ。
しかし招待状は出てこなかった。
完士くんは半分嬉しく半分がっかりだったがお礼を言おうと家族をみると
みんながくっと肩を落としていた。

更に次の日
「レポーターの北川です。2組目の当選者が出ました。」
TV画面にはツチブタのように太って眼鏡をかけたスーツにネクタイを締めた親父と
短髪で髪を茶色に染めたスタイルのいい可愛い娘がカジュアルな服装をして並んで立っていた。
「僕は原口 この娘は僕の恋人の中島。」
と男が女性の肩を抱きながら自己紹介する。
「中島っていいます。招待券が当たってまんず嬉しい。」
女はペコリとお辞儀をし、東北弁で応えた。
「当選おめでとうございます。ところで、今回、招待券が当たった理由は何だと思いますか?」
北川リポータが聞く。
ふふん!とツチブタオヤジが鼻を鳴らして応える。
「僕はおたグッズのブローカーをやってるからね。ウォンカさんの商品は沢山入るんだよ。」
「はい。」
「入ってくるウォンカさんの商品を全部レントゲンで調べて招待券の入っているものを
買ったってわけさ。」
「・・・それは違反なんじゃ。」
ふふん!ツチブタオヤジがまた鼻を鳴らす。

「別にそういうことをしちゃいけないって規則はないだろ?」
「ないわよねえ。」
「この娘が(といって中島を指す)どうしてもおたく工場の招待券がほしいっていうもんでねえ。
ちょっと一肌脱いだってわけさ。」
「ほんと原口さんにはお世話になるべ。」
中島はツチブタオヤジに抱きついて頬にキスをする。
北川レポーターはうつむいて肩がプルプル震えている。
正義感の強い彼女からすれば二人のやったことは許せないのであろう。
ディレクターだろうか大柄な身体の男性がカメラの前に突然現れ
「CM!CMいくぞっ!!」
と叫んで場面が変わった。

加奈子母さんが悔しそうにキーっと歯噛みしながら叫ぶ。
「あんな卑怯な手を使う奴らが招待券を手にするなんて間違ってるわ!!」
「ほんとにあんな奴らっているんだな。」
「おたくの風上にも置けないな。」
家族が次々に答える。

次の日、完士くんが家で暇そうにしていると晴信じいさんがベッドの上から手招きする。
何事かと思って晴信じいさんのところにいくと
晴信じいさんは枕の下から5000円札を出した。へそくりだという。
「これでウォンカさんのおたグッズを1つ買ってきてくれ。」
「何がいいですか?」
「店に入ったら迷うことなくニャボリャボオルタナティブⅡを買ってくるのじゃぞ!!」
晴信じいさんは間髪いれずにいった。
(エロゲーかよ)
と心でつっこみをいれる完士くん。
(おじいさんも元気だなあ・・・)
完士くんは晴信じいさんに渡された5000円札を持ってウォンカさん専用のおたグッズを扱っている
店に入り、ニャボリャボオルタナティブⅡを手にしてカウンターへ行き
「これください。」といった。
店長の高柳が尋ねる。「これエロゲーだよね?」
「おじいさんにお使いを頼まれて・・・」完士くんが多少、顔を赤くして答える。
「晴信じいさんも元気だなぁ」高柳はあきれるように答えた。
高柳と晴信じいさんは昔からの知り合いである。
完士くんは買ったニャボリャボオルタナティブⅡを持って家に戻ってきた。
二人でドキドキして封を空け中身を見る。
しかし中には金の招待券は入っていなかった。
がっくり肩を落す二人。

その日の晩
「レポーターの北川です。3組目の当選者が出ました。」
TV画面には美しいブロンドの長いストレートの髪をした青い目の可憐な美少女と
短髪・金髪でダイナマイトボディのお姉さんの二人の外人が並んでたっていた。
美少女はブスっとした顔でやぶ睨みにTVカメラを睨んでいる。
(無愛想な女の子だな)
なにかムっとするものを感じながら北川レポーターが
「当選おめでとうございます。」
と言ってマイクを向けると小さな子がいきなり
「アンタ バカア?」
いきなりの洗礼に言葉を失い顔面がひきつる北川レポーター

「これっ!スー。誰にでもそんなこというもんじゃないの。」
長身の女性がたしなめるように言う。そしてレポーターの方を向き直り
「私はアンジェラ・バートン この娘はスザンナ・ホプキンス。スーって呼んでね
二人は親友よ」と自己紹介した。
(親子じゃネエのかよ)
引きつった顔面を無理やり作り笑顔に変えながら北川レポーターはレポートを続ける。
「今回招待券があたった最大の理由は何だと思いますか?」
「スーは昔からこういうのは強いの。運がいいのかな。懸賞物にはよく当選してるのよね。
多分、気合で運を引き寄せたんじゃないかな。」
とアンジェラは笑って応えた。
「当たったのは奇跡みたいなもんかな」とアンジェラ
「オコラナイカラ キセキッテイウンデスヨ」とスー
北川レポーターはブスっとした顔で睨むスーが苦手なようだ。
苦虫を噛み潰したような顔で
「ここらへんでレポートを終わりたいと思います。」というと番組は終わった。

「まあ なんでしょ。あの娘、ブスっとした表情で、愛想笑いのひとつくらいしなさいよ。」
と加奈子母さん。
「まあまあ 相手は子供だ。いいじゃないか。」
といつもと違って優しく言う晴信じいさん
「相手が自分好みの可愛い少女だからって何をかばってるんですか!!」と加奈子母さん
「僕はもう一人の女の方がいいな。ダイナマイトボディで」と総一郎父さん
「・・・あたしの胸のほうがでかいですよ」更に不快そうな顔をして総一郎父さんを睨む加奈子母さん
言わなくても言いことを言ったことに気づき顔面蒼白となる総一郎父さん。
「あなた ちょっと来ていただけます?」
そういうと加奈子母さんは顔にマスクをした。

その夜、総一郎父さんの部屋からキャーという叫び声が聞えたそうな。

更に次の日
「レポーターの北川です。4組目の当選者が出ました。」
TV画面には長身の美しい女性と童顔でキュートな男が並んでいる。
女は立ったまま男は座って格闘ゲームに熱中している。男の顔は満面の笑顔だ。
「隣に座ってるのは招待券を当てた高坂真琴 あたしは彼の恋人の春日部咲。」
レポーターに向かって女が自己紹介する。
「今回招待券があたった最大の理由は何だと思いますか?」
「こーさかはなんかさあ。勘で当てたっていってるんだけどさあ。」
と横の男を見ながら言う。
「うん。勘で当てたよ。」
「一発で当てたんだよねえ。『咲ちゃん。このゲームに招待券が入ってるよ』
って言って買ったら入ってたんだよ。」
と咲は不思議そうに言う。

「はあ・・・そうですか。」
と信じられなさそうな顔をする北川レポーター
「それでおたくとして工場へ行く感想は?」
「あたしはおたくじゃねえっ!!」いきなり怒り出す春日部さん。
「はあ?あんたおたくでしょ?おたくじゃなければなんで招待券なんか手に入れて喜ぶのよ!!」
なんで怒り出したかわからず困惑顔でレポートを続ける北川レポーター。
北川レポーターは今までのレポートのストレスが溜まっているらしく怒りっぽくなっているようだ。
ちょっとケンカ腰で質問する。
「別におたく工場へ行くのが嬉しいわけじゃねえっ!!こーさかと一緒に出かけるのが
嬉しいんだよっ!!」
それにたいして同じくケンカ腰で返す春日部さん。
「おたく工場へ行くやつはおたくって決まってるだろうがっ!!」
「決めつけんなっ!!」
二人の女はにらみ合いお互いにヒステリックに罵り合いはじめた。
その中で一人、関係ないとニコニコ笑いながらゲームを続けるこーさか。
ゲーム画面は陰惨な殺戮画面が続いている。
TVからはゲームの音と二人の女の言い争うかまびすしい怒鳴り声が響き渡る。
と、突然、例のディレクターが出てきて
「CM!!CM!!」
と叫びCMに画面が変わった。

「おたくじゃない奴がおたく工場へ行くなっ!!」
いつもと違って最初に切れたのは晴信じいさんだった。
「本当に行きたい人がいけなくて行きたくも無い奴が行くのは間違っている。」
とうなづく総一郎父さん。
「い・・・一般人がお・・・おたく工場へ行くのは邪道だよねぇ・・・」
珍しく光紀じいさんまでもがぶつぶつと文句を言う。
「でも、あの男の子かっこいいからいいんじゃね?」
とハートマークを頭の上に浮かせながら喋る恵子。
「でも、これで残る招待券は一枚だけになっちゃいましたねえ・・・」
と完士くんが喋ると、みんな完士くんの顔をみては~っとため息をつくのであった。

完士くんは雪の降る街中をトボトボと歩きながら物思いに沈んでいた。
(もう4組も招待券が当たっちゃったよ・・・)
残るは1組だけ。でも新しいおたグッズを買う金は完士くんとその家族には無かった。
(せっかくおたく工場に行けるチャンスなのに・・・)
あきらめなくてはいけないと思ってはあとため息をつく。
と ふと前を見ると雪が降り積もっている中に1万円札が落ちているのを見つけた。
「あっ」
慌ててお金を拾う完士くん。
(このお金でウォンカさんのオタグッズを買えば・・・もしかして招待券が当たるかもしれない)
と期待に胸をふるわせた。思わずオタグッズを売っている高柳の店にダッシュする。
と 途中で小さな女の子が泣いているのに出くわした。
その女の子は頭を筆のようにくくって、耳の左右からアンテナの様に髪がはみ出している。
雪の降る中、頭や肩に雪が積もっている。

「どうしたの?」
気にかかった完士くんは女の子に聞いてみた。
女の子は完士くんに言う。
「おつかいを頼まれたんだけど、お金落しちゃったの。」
(さっき拾ったお金だ)
完士くんは理解した。
「このまま黙って店におたグッズを買いに行け」と悪魔の完士くんが囁く
「だめだよ。落とした人がいるんだからちゃんとお金は返さなきゃ。」と天使の完士くん
「お金を渡してしまったら二度とおた工場へ行けるチャンスはめぐってこないぞ。」
「そんなことで手に入れた招待券でおたく工場へ行っても楽しくないよ。」と天使
完士くんの心の中の葛藤は天使に軍配が上がったようだった。
完士くんは泣いている女の子のところに近寄ると話しかけた。
「さっき、そこでお金が落ちてたので拾ったんだよ。多分、君が落としたお金だ。」
そういってさっき拾った1万円を女の子に差し出す。
泣いていた女の子はみるみるうちに笑顔が戻る。
女の子は1万円札を受け取ると
「ありがとうございます。助かりました。きっとこのお礼はさせていただきます。」
と頭をペコリとさげてとても喜んで走って去っていった。
完士くんは女の子の去っていく姿を見ながら
(オタグッズは買えなかったけど、いいことしたなあ)
と心に暖かいものを感じていた。

「レポーターの北川です。遂に5組目の当選者が出ました!!」
TVの前に集まる一家。
TVの前ではデブで三つ網の女と長身で痩せてて腰まで届く長髪で顔面を隠している女が映っている。
「当選者の藪崎さんと加藤さんです。おめでとうございます。」
北川レポーターは二人にマイクを突き出す。
「いやあ。まさかわてらのようなもんにこんなんが当たるとは光栄のいたりです。」
デブの女がバリバリの関西弁で答える。
「本当に嬉しい。これも藪崎のおかげだわ。」
喜ぶ二人の女性を見ながらTVの前の家族一同が全員、肩を落としていた。
「終わった。」晴信じいさんの一言が家の中に響いた。

次の日
完士くんが雪の降る中歩いていると、ふと前方に二人の人がいるのに気づいた。
一人は以前、お金を落として困っていた小さな女の子である。
もう一人は小柄で痩身の男性である。
分厚いコートに身を包み目深にかぶったシルクハットと首にまいた
ぶあついマフラーで顔が隠れてよく見えない。
女の子は男の後ろに半分姿を隠し、じっと完士くんをみつめている。
「あの人です。」
と小さな女の子は完士の方を指差した。
「キミが落としたお金を拾ってこの子に渡した男の子だね?」
と男が聞く。
「はい」
完士くんが答える。
「ありがとう。とっても助かったよ。お礼といってはなんだが、これをプレゼントしたいんだ。」
そういって男は完士くんに紙に包まれてリボンをした箱を差し出した。

「えっ・・・いいすよ。そんなたいしたことしたわけじゃないし・・・当たり前のことしただけですから。」
「・・・残念だな。せっかくの巷談社の『くじアン』アニメ化決定記念限定トレカなのに。」
「え」
「しかもレアカード橘いづみのサンタバージョンが入っている。」
(ほ・・・ほしい)
この男がプレゼントとして渡そうとしているものはおそらく今、ここで受け取らないと
一生、手に入れることはできないであろう。そう思うと完士くんは断れなくなってしまった。
完士くんが迷っているのを見て男は言った。
「こーゆう時はもらっとくもんだよ。」
(えっ・・・そーなのか そーゆうもんなのか・・・・)
ちょっとパニくる完士くん。
「ほら君の顔にどうしても欲しいって書いてあるよ。無理せずもらってくれよ。」
確かに完士の顔には(ほしい)という表情がありありと出ていた。
「あ・・・じゃあ・・・すいません・・・遠慮なく・・・」
そういうと完士は男の差し出したプレゼントを手に取った。
男と女の子はプレゼントを完士くんに渡すと「それじゃ楽しみにしててね」といってその場を去る。
別れ際に女の子が手をふって
「また会いましょう」
といった。

家に帰ると早速、完士くんの持っている品物が総一郎父さんの目に留まる。
「どうしたんだ?それ」
そこで完士くんは今までのいきさつを話した。
「その中におたく工場の招待券が入ってないかしらねえ・・・」
加奈子母さんがため息交じりに言う。
「ははは・・・おたく工場の招待券はもう全部出たじゃん。」
そういって完士くんが封を開けると中から紙が1枚、落ちてきた。
(あれ?)
なんだこれはと思って拾ってみると紛れも無くおたく工場への招待券であった。
「おい!これ招待券じゃないかっ!!」
総一郎父さんが驚いて拾う。
「何っ!!」
今まで元気なく寝ていた晴信爺さんが起き上がって眼鏡をかけ、総一郎父さんが
拾った紙切れをまじまじと見つめる。
「でももう5枚全部出てたはずよねえ。」と加奈子母さんが頭に?をだしながら言う。
「よ・・・よくできた・・・レ・・・レプリカじゃないかな?」と光紀じいさん
その時、恵子がたまたまつけたTVから北川レポーターの声が聞えてきた。

「えー。レポーターの北川です。突然ですが緊急ニュースです。
先日、ウォンカさんの5枚目の招待券が出たというニュースですが、
招待券はニセ物で偽造したものだと判明しました。」
みんな、一斉にTVの方を振り向く。
「偽造したんですよね。あなたが?藪崎さん。」
北川レポーターは舌鋒鋭く太った女にマイクを向ける。
「す・・・すいません・・・」
藪崎は消え入りそうな声で話す。
「で・・・出来心やったんです。ウォンカさんの工場へいくのはわいの・・・わいの夢やったんです。」
藪崎は目に涙をためながら弁解する。
しかし、北川レポーターは不正を許せない性格だ。
そのうえ今までのレポートで積もり積もったストレスが爆発した。
「あなた、そんなことしていいと思ってるんですかっ!!
招待券を偽造するなんて犯罪ですよっ!!犯罪っ!!
ホントにオタクって奴ぁ常識を知らないっ!!
自分のやったことを胸に手を当てて深く反省しなさいっ!!」
手足を振り歯をむき出しにして藪崎を攻め続ける。
藪崎は床に膝をつき、消え入りそうになって謝り続けていた。

「すんません。ほんまどうあやまってええかわかりません。すんません。」
しかし、一旦、火のついた北川は止まらない。
ますますヒステリックに喚き続け、責め続けた。
慌てて例のガタイのでかい男が現れて
「北川さん。やりすぎ・・・そこまでにして」
といって北川レポーターを止めに入るが、なかなか北川さんは止まらない。
どうしていいのかみんなおろおろしていると つと加藤が前に出てきた。
怒鳴り続ける北川の顔面に自分の顔をぐいと近づけ顔の前面にかかっている髪を手で払いのけた。
そこから現れたのは切れ長のキラキラ光る瞳を持った見まごうばかりの美女であった。
想像もしなかった美人にさすがに北川も息を止めその場に硬直する。
TVカメラもアップでその顔を撮影しているので完士の家族もみなTV画面の前で息を呑んでいる。
「藪崎のやったことは謝っても許していただけないことだとは思います。
でも、それだけウォンカさんの工場に行きたいという思いが高じてやったことなの。
私も友人として藪崎の代わりに謝ります。藪崎も深く反省していますので
このへんで許してやってくださいませんか?」と凛とした澱みの無い声でしゃべる。
キラキラまぶしいほどに光る眼に見つめられさすがに北川レポーターも毒気を抜かれた。
ただほうけたような表情となり「・・・はい」と答えるのみだった。
加藤はサっとシャッターをおろすように前髪を元に戻すと「いくよ」といって
その場でひざまずいていた藪崎を立たせるとその場を去っていった。

ぼうっとTVを見ていた完士たちははっと気づいた。
「あの招待券が偽物ということは本物は・・・」
皆の視線が完士の持っている招待券に集中する。
「これが本物だ」
やっほー!!といった感じで何かが爆発したように抱き合って喜び合う完士くんの家族
「で、いつなんだ?おたく工場へ行ける日は?」と晴信じいさん
「明日・・・ウォンカさんの工場の門前に朝9時集合だって・・・」
「で、一人は完士としてもう一人は誰が行くことにする?」
家族全員が顔を見合わせる。
「はい!!はい!!はい!!はいっ!!」
晴信じいさんが必死で手を上げてアピールする。
「だってウォンカさん知ってるのは俺だけだし。
昔、工場に勤めてたし それに歳で明日死ぬかもしれないしっ!!
今回が最後のチャンスだしっ!!」
手足を振り回し必死にアピールする晴信爺さん
家族みんな晴信じいさんを見、続いてお互いの顔を見合う。
「・・・しようがないっか」
晴信じいさんは喜びのあまりベッドから飛び出てハルヒダンスを踊りはじめた。
「・・・晴信じいさん いつもにましてハイですね」
「冬だからな!」

翌日、工場の門前に5組10人のウォンカさんに招待された人間がズラリとそろった。

1組目は朽木くんと沢崎くん
2組目は中島と原口
3組目がスーとアンジェラ
4組目が高坂と咲
5組目が完士くんと晴信じいさん

お互いがお互いの顔を見合いじっと正面の工場の門が開くのを待っていた。
スーが「バカバッカ」と言って一緒にいるアンジェラに「これスー」と言ってたしなめられる。
やがて9時になり工場の鉄門がゆっくりと開く。
その中には広大な前庭が広がっている。
「中へお入りください」
工場の中からスピーカーで案内の声が聞える。
招待された者はお互いの顔を見つめあいながら工場の前庭へと足を踏み入れる。
横に一列になって工場の入り口に向かってゆっくり歩く。
思ったよりも中は広く進んでいるようでなかなか進まない。
やがて工場の入り口に到着する。

正面のドアがいつ開くかとみんな緊張して様子をみるが何も起こらない。
みんなジリジリして待っている。
と突然、庭中に鳴り響く荘厳な音楽があたりに鳴り響く
皆、慌てて何事が起こったのかと周りを見まわす。
と ゴゴゴゴゴゴゴ という地鳴りが鳴り 地面が揺れだす。
「じ・・・地震?」お互いに顔を見合わせたり抱きついたり地面に伏せたり
それぞれが対応していると、前方の地面がむくむくと盛り上がりいろんなダクトを
周りに装着した巨大な金属の球体が姿を現す。
金属の球体はダクトをはずし濛々とした煙に包まれながらモリモリモリといった感じで
徐々に姿を現し、そのほぼ全体をみなの目の前に聳え立たせる。
招待されたものはみな唖然として心の中でつぶやいた。
(・・・アキラかよ・・・)
と球体の頂点の蓋が開き中からシルクハットを被り燕尾服・杖・手袋をした一体の人形が
スーっと上がってくる。
人形から機械の声が出る。
「ヨバレテトビデテジャジャジャジャーン」
みなあまりに古いネタにしらけて呆然となる。
人形もそのしらけた雰囲気に気づいたのか暫くなんとも形容のしようのない間があく。
暫く間が開いた後、ようやく人形がしゃべりはじめた。
「オタクコウジョウヘヨウコソ」
そういって丁寧にお辞儀をする。
人形が深々とお辞儀をしたとたん ドッカーン!!という物凄い音と供に閃光が閃き球体が爆発する。
爆煙があたりをおおい みなケホケホと咳をする。

爆煙で視界が悪い中、顔が煤で汚れている顔をお互いに見あっていると
横でパチパチと拍手する音が聞こえる。
その音のする方を見るとさっきの人形と同じ姿格好の男・・・
シルクハットを被り燕尾服・杖・手袋を身に着けた犬顔をした小柄で年齢不詳の男が
一人拍手をしている。
皆がその男に気づくと男はつかつかと皆の前に歩み出て丁寧にお辞儀をしてから挨拶を始めた。
「もう新1年がいるんだねぇ 現視研にも新会員来るかな ん・・・それはやだな」
男がそういってみんなを見渡すと全員言っている意味がわからずポカーンとした顔をしている。
ただスーが一人「ジーク、ジオン!!」と片手を上げて返事をする。
皆の雰囲気を察したらしい男はゴホンっと大きな咳払いをしてから
「ようこそおたく工場へ 私がオーナーのウィリー・ウォンカです。」
とようやく自己紹介した。
スーが早速反応する
「トオウ アナタガワタシノマスターカ」
ウォンカさんはちらとスーの方に目をやったが、すぐに招待されたみんなをざっと見渡す。
「みなさん 僕の後についてきて。」
そういうと爆発して半分破壊された球体の横をすりぬけて入り口の方へ歩きはじめた。

とウォンカさんのところに晴信じいさんが追いついて言葉をかける。
「ウォンカさん。わしのこと覚えてますか?」
「ん?」という感じで振り返るウォンカさん。
晴信じいさんの顔をまじまじと見る。
「覚えてないねえ」
「15年前、工場で働いていた時にお会いしたでしょ?あの時、初代会長とお呼びしていたかと・・・」
するとウォンカさんの眉間に皺がより
「キミ、スパイだった人?」と尋ねる。
晴信じいさんは慌てて首を振る。
「そう。スパイじゃなかったんだ。ならいいや。」
とウォンカさんは何事も無かったかのようにまた前を向きスタスタと歩き始めた。
自動ドアだろうか自然に開いた入り口から工場へ入る。
みんなもそれにつられるように工場の中へ入っていった。

工場の中は先が見えないほど長い廊下が続いていた。
歩きながらウォンカさんが喋る。
「招待した人の中で一人だけ特別なプレゼントを用意してあるんだ。
その一人は最後まで一緒に工場見学してボクが気に入った人間に決めることにしている。」
「チャ~ンスゥ」スーがつぶやく。
中島がくすりと笑うと突然ウォンカさんに抱きついた。
「うわっ」
「ウォンカさん大好きだあっ」
原口がムっとしている。中島は目配せする。
「ウォンカさん。あたし中島いいます。よろしく。」
「ああ・・・よろしく」
「ウォンカさんのことあたし前から尊敬してて大好きだったんです。
ここで会えてホントに嬉しくて胸がはちきれんばかりです。」
そういってウォンカさんに媚びた視線を送り頬にちゅっとキスをした。

完士くん「うわ。凄い媚び方・・・凄いのがいますねえ・・・」
晴信じいさん「勝てないな。あれは。」
するとウォンカさんと中島の間にスーが割り込んできた。
ウォンカさんに向かって一言
「カクユウ ワタシモドウテイデネ」
そして中島に向かってやぶにらみの目で睨み一言
「ドロボウネコ コロシテオケバヨカッタ」
中島もむっとして横目でにらみ返す。
「こら スー」アンジェラのたしなめる声が聞こえる。
スーと中島がしばしにらみ合う。
険悪なムードがあたりを覆い場の空気が凍りつく
すると空気を読まない一人の男が二人の女の間に割り込む
「朽木であります。よろしくお願いするであります。」
手足をバタつかせて左右に顔を振りながら自己紹介する。
「僕らはみんなおたくであります。ウォンカさんも同じおたくであります。
ウォンカさんもスーも中島さんもここにいるのはみんな同じおたくー同類ということで 
ここは日本的慣れ合いでまぁまぁ!」

「そうだね・・・きみと同じおたくなんだね。」
とウォンカさんがちょっと不本意そうに答える。
「ええと・・・あんた誰だっけ?あたしはおたくじゃないからね。」
と咲が眉間に皺をよせて指摘する。
「いやもうともかく ここは細かいことはナッシングでいきましょう
唇かんでナッスィング!!ナッスィィんグ!!アハハ発音嘘くせー!!」
妙にハイテンションで空気を読まずに喚く朽木くん。
その時、スーが朽木を指差して一言。
「ダメダコイツ ハヤクナントカシナイト」
一瞬の間があく
が、朽木くんの表情がみるみるうちに怒りの形相に変化し次の瞬間、
ガーっとスーに両手を振り上げて威嚇する。
スーを睨む朽木、スーも負けじと藪にらみの目で朽木を睨み返す。
朽木の動きが止まる。
「止まった」と完士
「というか睨みで止めた?」と晴信爺さん
「へえ根性は・・・」と咲が言いかけた瞬間
朽木の手がゆっくりと振り下ろされスーの頭にあたった。
ゴッという鈍い音が響く

しかし、その瞬間咲の手がありえない距離から朽木の頬をひっぱたく。
ギャッという感じでその場に倒れこむ朽木くん。頬は赤く腫れている。
「そいつヤキ入れとけ!!女に手ェあげやがって」
そういってスーの頭をなでる。
「おーよしよし」
スーはなみだ目になりながら呟く
「・・・オヤジニモブタレタコトナイノニ・・・」
晴信じいさんが「いやあ やっぱりここはそうだよな・・・」と深くうなづく
完士くんも「お約束って奴ですか」と妙にうれしそうにつぶやく。

ここでウォンカさんがパンパンと手を叩き、皆の注意を自分に戻す。
「いちいち自己紹介しなくてもいいよ。君たちのことは調べがついているからね。」
そういうと後ろを振り返って
「きみは完士くん。その横が高坂真琴くんだ。」
そういうとまた正面を向いて歩き始めた。
みんな慌ててウォンカさんの後を追う。
完士くんはウォンカさんの後を追いながら
(どっかで聞いた声なんだよな・・・どこであったかなあ)
と考えている。
(あ トレカをプレゼントしてくれたおじさん?)
まさか・・・と思いつつも疑念がどんどん膨らんでいった。

一方、スーと中島は横に並んで歩きながらお互いに横目でにらみ合う。
中島がスーに今までのことを水に流そうと
「中島っていいます。よろしくお願いします。仲良くやりましょう」と媚びた視線を送る。
「タダノニンゲンニキョウミハアリマセン」とスーはぶっきらぼうに答える。
さすがの中島もムっとし、スーをにらむ。

そうこうしているうちに全員、どうやら長い長い廊下のつきあたりに到達したようだ。
廊下のつきあたりには大きなドアがあるが、そのドアには別に小さな扉がついている。
何の扉だろう?
完士は頭に?マークを浮かべる。
「ここはフィギアの森だよ。」
そういうとウォンカさんがドアを開けた。

ドアの向こうは東京ドームの5倍くらいの広さはあるただっ広い空間であった。
自然の公園のような起伏のあるなだらかな野原がはるかかなたまで広がっている。
その想像もつかない広い広い空間に大小様々なフィギアがびっしりと立っている。
あまりの壮大な光景に招待されたものは皆唖然としてその場に立ち尽くす。
「ここにおいてあるフィギアのうち、好きなものは持っていってかまわないよ。
全てのフィギアに札がつけてあるからほしいフィギアに名前を書けば後で家に送ってあげる。」
ウォンカさんの言葉が終わるか終わらないうちにワッと皆、それぞれ好きなフィギアを
手に入れるために散っていった。
スーも「ゲットダゼ!!」と言いながら一緒になって自分の欲しいフィギアを探しに散る。
その中で一人だけポツンと残っている人がいるのにウォンカさんは気づいた。
春日部咲である。

「どうしてキミはいかないの?」
とウォンカさんは咲に尋ねる。
咲はつまらなそうな興味なさそうな顔をして答える。
「あたしゃおたくじゃないんだよ。それにこーんなものほしがるやつの気がしれないね。
おたくって気持ち悪いよね。こんな人形ほしがるなんてね。頭おかしいんじゃないのかね。」
といかにも嫌そうな顔をしてケラケラと笑い暴言を吐きまくる。
ウォンカさんもさすがにムっとして言葉を返す。
「・・・きみの連れの高坂くんもおたくじゃないか。」
ウォンカさんがそういうと
「あ コーサカはいいの。あの人は別。」
「ふーん。高坂くんだったらいいんだ。」
「どーんな変態プレイを要求されても応える覚悟はしてあるの。されたことないけど。」
とあははと笑う。
「ふーん・・・どんな変態プレイでもねえ・・・。」
ウォンカさんの目が怪しく光ったのを咲は気づかなかった。

他の招待された人たちはわずかな時間も惜しいかのようにそこらに立っている
フィギアに次から次へと名前を書きまくる。
晴信じいさんと完士くんも必死で次から次へとフィギアに名前を書いていく。
「いやぁ どう選んだもんだか悩みます」
「そんなもん何も見ずにあるもん全部名前を書いていきゃいいんだ。」と晴信じいさん
「ああ~・・・やべえ・・・・何かが・・・何かが開きかけてる・・・頭のてっぺんあたりが」
「いいぜ・・・いけるところまでいってやる・・・神の領域へ・・・
 ・・・ヤバイな自分でも何言ってるかわからん」