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肉体派苦学生アスた! 2

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肉体派苦学生アスた! 2


第5話 高校生相手にするなら一投に三人分くらい魂込めろ


”前略、天国のおふくろ様。
力説すると原稿用紙10枚分は語れますが、
いい年の取り方と悪い取り方ってもんがあるんです。ホントだぞ!”

5話 ”高校生相手にするなら一投に三人分くらい魂込めろ その1"
前話まで:ネギの熱い心に打たれた明日太は、ツンデレ全開で協力を惜しまない!

ある晴れた日の昼休み、魔法以上に愉快な運動の時間でございます。

「ここにいらっしゃいましたか、明日太さん!」
「ん……なんだいいんちょか。声張り上げて一体何の用だ?」

クラブ棟のベンチにだらりと座る明日太に寄ってくるは、いいんちょと村上夏美である。

「ネギ先生を賭けたトス耐久勝負を申し込みますわ! 今日こそは決着をつけます!」
「はぁ、またかよ……しゃあねぇ、疲れてんだが相手になってやるよ」

そんなグチを垂れつつも、明日太は案外楽しそうに立ち上がります。そいや煩悩振り切れてるみたいだな。

「しっかし、あんなガキをふんだくろうってんなら他に方法あるだろ。お前に負けるのヤだから手を抜く気ないし」
「正々堂々と明日太さんを倒すことこそ、ネギ先生とのバラ色の日々を迎える契機にふさわしいと考えていますの」
「2人とも変わってるよね……はい、ボール」

多分無理矢理付き合わされた夏美がボールを投げ渡し、試合開始のゴングを……誰かが鳴らしてくれるといいなぁ。
まあそんなもんなくても勝手に始まりはしますが、しばらくすると少し騒がしくなってきまして。

「……あ、いいんちょに明日太君、見て!」
「オイオイ夏美ちゃんよ、注意そらせていいんちょを勝たせようなんて、そうはいかないぜ」
「私はそんな卑劣な真似はしません! 夏美さんも邪魔しないで!」
「え~でも、裕奈ちゃんたちのとこにウルス……」
「「黙ってろ!」いてください!」

哀れ夏美ちゃん、相手にされてないよ。それにしても勝負とツッコミシンクロを同時にやるなんて仲のいいこと。

「そんな怒鳴らなくても~……ホントにスゴイことになってるんだって!」
「知るか、こっちもスゴイ大事なことやってんだよ!」
「それどころじゃないって言ってるのに……あ、アキラちゃんが!」
「いい加減にしてください夏美さん、アキラさんがどうしたと……」
「そこの高等部の人たち、やめてくださーい!」

ネギ先生の進軍と相成りまして、しのぎを削りあう二人の手も思わず止まります。

「今のはネギ先生のお声! 夏美さん、何故黙っていらしたんですか!?」
「そんな~、先生もついさっき来たばっかりなんだから分かるわけないもん!」
「……あぁもう、勝負申し込んどいてお前から放り出すな! ネギがどうしたっつんだよ!」

跳ねさせていたボールも一旦キャッチしまして、明日太はネギの元へと意気込むいいんちょの後を追います。

「あ、明日太にいいんちょ、こっちこっち!」
「裕奈か、こいつは一体どうなって……なんだアキラ、何しゃがんでるんだ?」
「いや、明日太君、これはなんでも……」
「高等部の2-Dが場所取ろうとしてきてさ、サーブまで打ってきて、アキラが何とか受け止めたんだけど」

ネギの声がしましたる場所へ近寄ってみますと、裕奈とうずくまるアキラがおりまして。
なるほど裕奈の言うとおり、高等部の女子クラス・2-Dのあんましいい思い出のない面々が明日太達の視界に入ってきました。

「んならほっといてないで様子見てやれよ! アキラ、大丈夫か?」
「うん、私はなんともないけど、ネギ子……ネギ先生が……」
「いやー私もどうにかしたかったんだけどさ、どうせなら王子様に助けさせたいって思ってねー」

裕奈がスケベ心を出して笑うんですが、明日太に意図なんざ読みきれませんで……って何か忘れてね?

「何を呑気に喋っているのです! あぁっ、ネギ先生が年増の方々にあんなにもみくちゃに……」
「あー、まき男と亜貴が呼んでくれたみたいだけどさ……やっぱり子供のネギちゃんじゃどうしようも……」
「でしたら私たちも加勢するまで! 明日太さん行きますわよ!」
「はぁ……ったく、世話の焼ける先生だぜ」

高校生の皆様の歓声に埋もれて半泣きのネギを救わんと、明日太の投球がウルスラの制服へ目掛けて襲い掛かります。

「いたっ! 何よこのボール!」
「そこのおば様方、ネギ先生をお放しなさい!」
「明日太さん、いいんちょさん!」
「あら……神楽坂明日太に雪広あやかじゃない。一体何の用?」

ネギを取り囲む一人にボールが見舞われましたところに、いいんちょがかっこよく名乗りを上げます。
そこに一大事と、明日太達とは因縁浅からぬ相手、英子さんが前に出てきて臨戦態勢です。

「ここは私たち2-Aの淑女……とおまけの男子の場所ですわ。あなた方年増が乗り出して、ましてやネギ先生をもみくちゃになd」
「ツッコミどころが違うだろが……ともかく、強引に場所を横取りなんてないんじゃないんスか?」
「言いたいことはそれだけ? 調子に乗って突っかかってくる、でしゃばりなガキは引っ込んでなさい」

いいんちょと明日太が反論致しますが、イヤミったらしく笑ってくれちゃう英子筆頭の2-D勢であります。

「そーよ、こんな可愛い先生、アンタたちにはもったいないわ。私たちに譲りなさいよ」
「そうねえ……私も気に入ったし、アンタたち後輩に我慢してもらうように、学園に頼んでみるのもいいわね」
「そ、そんなー!」
「ハァ!? 先輩風吹かせた口吐かして、思い通りになると思ってるのか!!」

勝手に話を進める2-D一同に、明日太も思わず怒り心頭。腕力頼りに立ち向かっていきます……単純だこと。

「誰がネギ先生を譲りなどするものですか! 力ずくでも阻止して見せますわ!」
「私も手伝うよ、明日太!」

かと思ったら、いいんちょとか裕奈とかも馬を並べて突撃です。単に騒ぎ好きなだけか、こりゃ。

「あ、あの……やめて……」
「相変わらず元気だね、2人とも」

ネギが戸惑いながら止めるのに目もくれず、怒りのスーパーモードで押し合いへし合いな明日太といいんちょを掴む影が一つ。

「な……高畑先生!」
「年上とはいえ、女の子相手に本気で取っ組み合いをするなんて男らしくないよ」
「放してください先生、ネギ先生を取り返さないと!」
「あやか君も、ここは落ち着いて」

天然な人かと思いきや、物腰もよく明日太達を宥めるタカミ。教師の鑑ですな。

「私の元生徒が失礼なことをして済まなかったね。でも、中学生相手に大人気なかったんじゃないかい?」
「い、いえ、こちらこそ……私たちも子供の目線に合わせすぎたみたいです。それでは、先生」

タカミも両成敗と取り成しますが、英子の捨て台詞は謝ってるとは言えませんで。

「んだとこの野郎……」
「よしなさい、明日太君。どんな事情であれ、先に手を出すのは心象が悪いからね」

いやはや、全く言うとおりでございまして、明日太も一旦KOOLにならざるを得ませんでした。

「あの、ありがとう、タカミ」
「まあ、こういうこともあるさ。メゲちゃ駄目だよ」

そんなタカミのご教授を賜りまして、再び熱を込めた臭全開のネギちゃん。

(そいや、前の居残りテストもああいう根性で始めたんだろうな、あのガキ……)

あぁ明日太君、そういうこと思うと二の舞を踏んじゃうんだって!


2-Aの5時間目は体育、屋上コートでバレーの授業でごじゃりますので、ジャージ姿の皆々様も移動してまして。

「なぁなぁ、やっぱ高畑先生ってすごいわ! ええ裁きやったなー」
「うん……」
「そりゃ、鬼の新田とは違った感じで頼れる臭漂ってるもの。あれでちゃんとできなきゃサギでしょ」

ウキウキのカタマリな明日太の後ろで、亜貴・アキラ・裕奈が昼の一件のことを話し始めました。

「なんや、何かあったん?」
「ウルスラの連中と土地で揉めたんだよ」
「なんだよー、あのオバタリアン! ボクら以外のクラスにもやってるみたいだし、ヒドイなー」

何度かあったとはいえ、”土地で揉めた”って説明する明日太と、それで理解したっぽい木乃香たちってどうなのよ。

「でもさ、ネギちゃんも初めてあいつらとぶつかったとはいえ、頼りなかったなー」
「そんなの10歳なんだからトーゼンだよ、カワイイんだしいいじゃん」
「まき男さんの言うとおりですわ。先生を可愛がっていた口で非難するより、私達で補い合っていくことこそ……あらっ、鼻血が……」

裕奈の言うことが最もなのもあるが、興奮のポイント低かないか、いいんちょよ。

「何やかやゆーても、期末の時期に相談しづらい先生も難儀やろー」
「可愛さか頼りがいか、50:50でも難しい問題だよ、モン太さーん!」

彼達彼女達も中学生でありまして、先生は頼みの綱であるからして評価も厳しくなるのは道理。でもモン太は関係ない。

「ったく、せっかく体育の前だのにイヤなの思い出させるんじゃねぇよ……ともかく、数少ないコートを拝みに参ろうぞ、と」

そこにイヤなのが既に現れてたとしたら、さぞや気持ちの落ち着かないことでしょうな。

「あら、またあんた達に会うなんて……偶然ね」
「高等部2-D! 噂してたらホントに出てきちゃったよ!」

真っ先に頭を抱えて裕奈が落胆の声を出しますが、時間差とリアクションの大小はあれど、大体のクラスメートがイヤって反応を示します。

「ひょっとしてあんた達もここを使うの? 私たちもレクリエーションなのだけど、これじゃダブルブッキングねえ」
「なんでいつもいつも……ってネギちゃんなんでいるの!?」
「あ、お前なんで捕まってるんだ、またお前の仕業か!?」
「違いますって、体育の先生の代理で来たらこうなってまして……」

力なく抑えられてるネギを見つけまして、裕奈と明日太が問い詰めますが収穫もてんで無く、

「こういう時は、先に来たお姉さん達に譲るのが常識よね。とっとと帰りなさい、神楽坂明日太」
「色気より加齢臭が勝ってるくせして何がお姉さんだ! 隣の校舎からわざわざジャマしに来られて、ハイそうですかなんて言えるか!」

結局昼に立ち返って……いやもっと前からと言えるか、ともかく引き続いてどちらも譲れぬ事態であります。

「言いがかりがお得意のお子ちゃまに、女のとやかくを言われても痛くも痒くもないわねー」
「子供みたいなことしてるのはアンタたちじゃない!」
「そうやってつっかかって来る方がガキに決まってるでしょ!」
「だったら、ガキかどうか拳で証明してやる!」
「やる気ならかかって来ればいいじゃない、この中坊!」
「上等ですわ、ネギ先生を放してもらいます!」

約1名目的が違ってる人もいますが、案外つまらん意地の張り合いで、言い争いから取っ組み合いへと進化を遂げていきます。

「は……は……はっくしょん!!」

……なんだかこよりみたいなものを持ってるネギのくしゃみと同時に、突風が吹き荒れて場を一旦静めます。

「あの、明日太さん! 争いごとに暴力だけを使うのはダメです!」
「……ツッコミたいのはやまやまだが、高畑先生も言ってたことだしな。でもどうしろっつうんだよ、ネギ」

ここばかりは素直に反省の色を見せる明日太。ちっとは成長したのかね。

「でしたら、せっかくコートもあるんですし、スポーツで対抗戦をしてはどうでしょう?」
「あのな、いくら相手が女子だけだからって、高校生相手にバレーは勝ち目ねぇだろ」
「あら、意外と自信がないのね。まあ、言ってることは本当だし……バレーじゃなくてドッジボールなんてどう?」
「それでも勝てそうにないなら、11対22ぐらいハンデをつけてもいいのよ」

ネギもさわやかに締めたいものでしたが、流石に体格差は見てのとおり。舐められてるのか、続々とハンデ案が飛び出します。

「……なんだかシャクにさわるけど、受けてやろうじゃない! もちろん、負けたらそれなりのことはしてくれるんでしょうね?」
「え、なんだか血生臭い方向に進んでる気が……」
「そうねえ……あんた達が勝ったら、今日から一切邪魔はしないであげる。当然ここも明け渡すわ。でも……」

裕奈を始めとしましてイケイケな状況となりまして、ネギが不安になってきたら……

「もし私たちが勝ったら、ネギ先生を担任としてもらっていくわ……負けるのが怖いなら降りてもいいのよ?」
「「え……えぇぇぇぇぇぇっ!!」」

ほら、妙なことになっちゃったよ。まき男やいいんちょとかの腰が引けてきたが、イケイケムードは止まりませんで。

「上等だ、受けて立ってやる!」
「そーだ! 後悔するなよー!」

血の上った人らが受けちゃったよ。どうするんだか……


明石裕奈 曰く、
”高等部と元気に張り合って、アキラのサポートもしなけりゃならないのがバスケ部員の辛いところよね。
覚悟はいい? 私は出来てる……って何、この台本?”



”前略、天国のおふくろ様。
売られたケンカを買った上で、コテンパンにするのが俺の主義っスよ。
……キレてないっすよ。俺キレさせたら大した(ry”


5話 ”高校生相手にするなら一投に三人分くらい魂込めろ その2”
前回まで:いっつも邪魔してくる高等部2-Dと、ネギを賭けてドッジボール勝負をするハメになったが大丈夫なのやら。

「よっしゃ、まずは選手選抜だな」

余裕綽々な2-D一同が作戦タイムをあっさり許しまして、2-Aも固まって話し合います。

「ちょっといいでござるか、ネギ子よ」
「はい、何でしょう楓さん」

こういう状況でキーパーソンになる楓が、残念そうな顔で切り出してくる。

「先程の昼休み、食べるハズだったプリンにカエルの侵入を許してしまってから、体調が優れないのでござる。ここは辞退させていただけないか」
「なんだよー楓姉、プリンが食べられないからってへこたれちゃってさー!」
「確かに、楓さんの体躯なら高校生と張り合えるので貴重な人材ですが、当人がああ言うのではやむなしです」
「……分かりました、お大事にしてください」

……言われてみりゃ楓の物腰がおかしかったので、ネギもここは素直に頼みを呑むしかなかった。

「俺もいいか、先生」
「はい、龍宮さん」

ほんで、お次は龍宮が呼びかけてきます。

「俺と桜咲は、こういう下らない遊びに付き合う気は無いから降りる……」
「え……そんな、下らないなんて……」
「……といって断れと桜咲に頼まれたので、大人しく断られてやってくれ」
「ちょ、おい、龍宮!」

伝聞したままを伝えてる龍宮に、刹那君、思わずテンパって怒鳴ります。

「なんやせっちゃん、一緒にドッジやらへんの?」
「い、いえ、お嬢様……自分は……でありまして……ともかく、失礼します!」

そのテンパりっぷりは木乃香が話に入ってきてますます加速しまして、刹那は小声になってスタコラサッサだぜい。

「いややせっちゃん、どうして逃げるん~?」
「ちょっと、話は終わってないんですよー……しょうがない、龍宮さんと桜咲さんも不参加、と」
「……よろしいでしょうか、ネギ先生」

続いて来ましたるは、どこかメカメカしい少女、絡繰茶々丸でございます。

「はい、どうしました、絡繰さん」
「私とマス……マクダウェルさんも不参加にさせていただけないでしょうか」
「マクダウェル……ああ、エヴァンジェルさんですか。事情は伺いませんので、どうぞ」

ちょっと投げ気味にネギも承諾しまして、茶々丸は外れに待つエヴァンジェルの元へ歩いて行きます。

「ネギちゃーん、私たちは応援に回ってもいいかなー?」
「チアのみなさんでですか……分かりました、桜子さん」
「そうと決まれば、コスチュームを準備よ! 円、桜子、これに着替えて!」

勢いよく応援団をやると言った桜子たち、さっそく美砂が服を準備いたしますが。

「……ちょっと待て、何で俺がチアリーダーの服を着るんだよ!」
「何言ってんの、私たちが男物持ってるわけないじゃない。それに桜子がセンターなんだから、円だけ違う服だと見栄え悪いし」
「だったらフォーメーション変えればいいことだろ!」
「いいじゃないくぎみん、前着たときも似合ってたんだしー」
「ムリヤリ着せられて似合ってたって喜べるか! あとくぎみんって言うなー!」

ここぞとばかりに好き勝手イジられる釘宮でありました。周りも笑うしかねぇ。

「……おい、先生」
「はい、えーと……長谷川千雨さん」
「俺も参加しないことに……うん、誰だ?」

冴えないルックスで目立たない長谷川千雨も話しかけてきたところに、彼の肩を叩く人影が。

「…………」
「なっ、お前何の用d……ハンカチ? それがどうしたんだ」
「……!」
「は、ハトが出てきた……っておい、俺のメガネ持ってくな、返せ!」

突然出てきたザジ・レニーデイのちょっとした手品で呼ばれたハトさん、千雨の眼鏡をかっぱらって飛んでいっちゃったよ。

「い、一体なんだったんでしょう……」
「…………」
「あれ、ザジ・レニーデイさん。ザジさんも辞退ですか?」

その隙にザジが話しかけ……いや何も言ってないけど、ともかく千雨さんの先を越して不参加席ゲット。

「……てちょっと待て! 俺の話が先だろ、勝手に決めるなよ!」
「オイ、これだと22人に足りなくなんねぇか?」
「そうですけど、今から出るように言えませんし……こうなったら私も出ます!」
「聞けよっ!」

キャラの色が出てこない頃は不遇だな、千雨君。


ともかくスタメンが決定しまして、戦いの火蓋が切って落とされようとしております。

「人数多いっていっても、文化部系の人が多いなんて冒険でしょでしょ!?」
「何で2回言うのですか」

しゃがみ込んでやる気のない夕とハルナの言うとおり、不向きな面子が多いご様子です。大丈夫ですか?

「心配めさるな、ハルノさん。この俺がいる限り負けることはない!」
「おー空、頼もしいこと言うじゃん! どんな活躍するつもり?」

いつも騒がしい空がさらに饒舌になってきまして、それに裕奈もノってきました。

「ユウコさんよそいつは簡単だ! ドッジを支配するのは速さ! 速く動き回り速くボールを受け速く助走をつけて投げるボールは速い! 速さつなわち勝利! そう思いませんかアキノさ~ん!」
「それは間違ってるんじゃ……それに私、アキラだよ……」

ただでさえ誰もついて来ない空のテンションに巻き込まれ、アキラさんも困惑である。

「みんなやる気になってくれているようだし、これで私たちが勝って、共に戦った末に友情に目覚めt……いや、明日太さんのラブコメに英子さんが参戦するのもなかなか……」

ネギも理想的すぎる青写真を描いてニヤニヤしてまして……あ、ジャンプボール始めた。

「いいんちょさんに詰め寄られて困惑する明日太さんが目に浮かんで……あいたっ!」
「なにボーっとしてんだ、足引っ張んな小娘!」

試合が始まっても妄想を広げるネギの後頭部にボールがヒットしましたが、明日太がすぐにキャッチしてノーカンである。
そいや、顔面セーフってルールにないんでしょうか。

「オバン氏ねよやぁぁっ!」

返す刀で投げた明日太、見事に1人オトした!

「お見事です、この調子でケンカ勝ちますわよ、明日太さん!」
「おうさ!」
「ケンカじゃありませんよー、聞いてるんですかこの単細胞!」

ネギが半ば黒いの出しながら叫んでも、このノリで言ってももう遅いでしょうな。
――2-A 再起不能0人・残り22人  2-D 再起不能1人・残り10人

「ところで誰が単細胞かなネギ先生? 見てなお前ら、なめくさった分は100倍にして返してやるからな!」
「あふらはんひゃめれー、へんはひゃはいへふっへー」

明日太は聞き逃してなかったようで、ネギの口をつねりながら華麗に勝利宣言です。

「そのファイトは認めてあげる……でも、勝ち目がないことが分かってないみたいで、哀れでならないわ」

ボールを確保したからか、詭弁のガイドラインでも知っていらっしゃるのか、余裕綽々で返す英子さんです。

「思い知らせてあげるわ、子スズメ達! 必殺……」
「イヤー、目がマジだよあの人!」
「あわわわ、あのお姉ちゃん怖いですー!」

早速英子が構えましたれば、なんとか逃げようと2-A側は押し合いへし合いです。

「ああーん、後ろに入れて入れてー!」
「こら、押すんじゃないってば!」
「おぉっ、なば乳ktkr!」
「ウホッ! いい股間……」
「ハァ……それっ」

一部が天国に参っていらっしゃるのに呆れ顔ですが、英子がボールを投げて……ってか放ってると言うよな、これ。

「あだっ」「いてっ」「あうっ」

ぎゅうぎゅうに固まってるもんだから、ハルナ、風香、千鶴と玉突き事故同然に3人も仕留められました。
――2-A 再起不能3人・残り19人  2-D 再起不能1人・残り10人

「ごめんね明日太ー、当てられちゃったよ」
「チッ……しゃあねぇ、みんな、次のボールには当たるなよ!」
「そううまくいくもんですか……それ、もう一丁!」
「あっうそ!?」「ひゃっ」「あーっ」:あっ

明日太が息巻いたのも空しく、続いてボールを押さえた英子の投球で朝倉、夏美、ハカセ、五月と撃沈。
――2-A 再起不能7人・残り15人  2-D 再起不能1人・残り10人

「ちょっと皆さん、今のは大した弾じゃないでしょう! もっとボールをよく見て!」
「そう言ってもさーいいんちょ、こんな逃げる余裕がなきゃ、コーラを飲んでゲップが出るくらい確実に当てられるって」

そんな朝倉の指摘に、ようやくあることに気付いた2-Aの皆さん。

「……ってそもそもドッジじゃ数が多いのって的が多いだけじゃねーか!」
「それではハンデにならないじゃありませんの! そんなことに気付かないおバカさんに任せていたとは……」
「そのバカと一緒になって騒いでたのはどこのどいつだ!」
「痴話ゲンカはよそでやってなさい。それにしてもさすが子ザルね、まんまと騙されちゃって」

策というにはせせこましいモンだな……それにかかる明日太達もバカである。

「そ、総員散開です! 的にされますわよ!」
「いややー、僕は当てられたくないわー!」
「うわーん、怖いですーー!」

すぐと散らばった2-Aだが、ハメられたショックは大きくおののく者も出てくる!

「それを想定していたのも私だ! 次に狙うのは、取る気のないもやしっ子!」
「はうっ!!」

英子の牙は納められる事はなく、狙われた史也君も、後頭部を当てられて姉の元にお陀仏である。やっぱ顔面セーフねーのか。
――2-A 再起不能8人・残り14人  2-D 再起不能1人・残り10人

「史也さん! ひどいですっ、後ろからボールを当てるなんて!」
「後ろを向いているのが悪いのよ、次はアンタよ!」
「えぇっ!」
「本屋、狙われてるアルよ、取るアル!」

騎士道精神の欠片もなく、ターゲット宣言されてのどかもおおわらわである。

「今から構えても無駄! それっ!」
「うわぁぁーっ! ……あれ?」

ブチ当てられるとひるむのどかだが、明日太が首根っこを引きずった上にボールを取るファインプレー。

「あ、明日太さんどうも……」
「大丈夫かよ本屋、せめて前向かないとあぁして狙ってくるんだ、根性見せろよ!」
「「さすが明日太だ、馬鹿力で本屋を引っ張ってもなんともないぜ!」」

まき男君に亜貴君、その歓声は茶化してることにならんか。

「余計なこと言ってんな! いくぜ、必殺ストレートを受けてみろ! ハイド○ブレイザァァァァァ!!」
「ぐっ……これはっ!」
「え……明日太さんのバカ力の全力投球が片手で受け止められてます!」
「お前までバカ力言うんじゃねぇネギ子!」

そんな馬鹿力に頼っている2-Aにとって、ボールをこんな簡単に無効化されたのはとんでもない逆境である。

「フン……ヒヤヒヤしたけれど、フォームがダメだとこの程度ね。それにしても、子ザルたちもとことん疎いものね、私たちの正体に気付かないとは……」

そう言って制服を脱ぎ捨てる2-Dの皆様……ってまさか公開ストリップですか!?

「ドッジボール関東大会優勝、麻帆良ドッジ部”黒百合”とは私たちのこと!」
「な、なんだっt……って高等部でドッジ部って自慢できんのかよ」
「多分関東大会も、あいつらしか出なかったんやで」
「ウェールズでもとんと知られてない競技であんな誇られても哀れとしかwwwww」
「う……うるさいわね、余計なお世話よ!!」

ある意味ストリップ並の恥辱が公開されましたが、不利な状況には変わりないのでございます。

「生意気な子ザルが! ビビ、しぃ、トライアングルアタック構え!」
「「OK,英子!」」
「トライアングルアタックって……懐かしのドッ○段平でもやってねぇだろんなこと」
「侮るなかれですわ明日太さん! ネギ先生下がって、私が受けてたちますわ!」

それにも関わらず危機感が欠けてゆきまして、いいんちょが我こそと立ち上がって前に出てきます。

「2-Aのためネギ先生のため、おばサマ方の野望を打ち砕く雪広あやか! このお肌の輝きを恐れぬのなら、かかってきなさい!」
「何が肌の輝きよ、くらえっ!」
「キャッ」
「うりゃっ!」
「あんっ」
「ハイ、1人アウト」
「あうっ」

豪語したくせに、あっさりと相手の技に巻き込まれていいんちょ戦死である。
――2-A 再起不能9人・残り13人  2-D 再起不能1人・残り10人

「なんやいいんちょ、全然ダメやん!」
「く……パスの軌道が読めませんわ。トライアングルアタックとやら、その陣形さえ分かれば……」
「「だから、トライアングルやん」」
「フフ……そいつが分かれば十分さ。悪いなアヤコさんよ、俺の速さを見せ付ける機会の引き立て役にしちまって」
「お前も分かってなかったのかよ!」

一通り漫才も終わりまして、空が自信満々にしゃしゃり出て参りました。

「さぁ見ててくれアキノさん! お前達に足りないものそれは! 情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さそして何よりmブッ!!」
「はい、うるさいのアウトー」

……あっさり当てられて、かっこ悪いなぁ空。
――2-A 再起不能10人・残り12人  2-D 再起不能1人・残り10人

「どいつもこいつも喚き散らしてとっととオサラバかよ、まあ俺としてはとっとと終わらせてくれれば……」
「そこのダメ男君もアウト!」
「ウボァ!」

日和見のつもりだった千雨もあえなく見つかって処刑されまして、状況は刻一刻と敗北へ傾いていきます。センジュぴんち!
――2-A 再起不能11人・残り11人  2-D 再起不能1人・残り10人


長谷川千雨 曰く、
”なんだよ、散々振り回しておいて俺が出てるのこれだけかよ!?
そこいらのバカ女の方がまだ扱いやすいぜ、本当に変態だらけのクラスで腹が立つ!”



”前略、天国のおふくろ様。
結局、俺が真っ当に活躍するのは難しいようです。
何だよ……主人公だって言うから出たのにサギくさくねぇか、オイ。”


5話 ”高校生相手にするなら一投に三人分くらい魂込めろ その3”
前回まで:孔明ばりの策で追い詰められる2-A……ってバカなだけじゃあるまいか?

「残り10対11、これじゃ負けちゃうよー!」
「もうハンデ分も残ってへんて、どんだけ強いんや……」

焦ってももう遅く、年甲斐もなくドッジを極めた黒百合に押されて、さしものまき男と亜貴も弱音を吐きます。

「残りはチビやトロそうなの……次は神楽坂明日太、あんたを仕留めてあげるわ」
「そっちこそ大丈夫かよ、勝ちムードだからって年で弱った腰が引けてるんじゃねぇのか?」
「虚勢を張ったところで無駄よ。しぃ、打ち上げて!」
「任せて!」

上がったボール追いつけと、英子は太陽を背に飛び上がる。うおっまぶし!

「チッ……まぶしくて見えねぇ!」
「必殺、太陽拳!! 喰らいなさい!」
「ぐわぁっ!」

明日太も敢え無くボールを当てられ、衝撃にうずくまります。
――2-A 再起不能12人・残り10人  2-D 再起不能1人・残り10人

「明日太さーん!」
「そこをもう一撃!」
「うっ!」

跳ね跳んだボールを、英子が続けて明日太へアタックする。うーん、ヒールだ。

「2度もボールを当てるなんて……卑怯ですよっ!」
「おだまり! 黒百合は汚い手を使おうと勝つのがポリシーなのよ!」
「……ったく、ねじくれたオバサンだぜ」

体を起こしながら軽口を言う明日太ですが、さすがに元気も足りなくなってきてます。

「憎まれ口を叩く元気があるみたいだけど、勝ち目がなくなったことぐらい気付きなさい」
「明日太さん、大丈夫ですかっ!」
「この程度で心配してんな、かすり傷だよ」
「こんな非道いことを……許せません! リリカル・トカレフ・キルゼムオール……」

あのーネギさん、その呪文今までと違ってませんか?

「コラ、何危険な単語並べてんだ」
「あうっ、明日太さん何で叩くんですかっ」
「スポーツ提案した本人がおもいっきし卑怯な手段に訴えるなよ。俺らの男を立てるやり方ぐらいしろっつんだ、先生」

転んでもただじゃ起きない2-A魂を感じて、ネギも決心を決めましたようで。

「あ、明日太さん……」
「わりぃみんな、後は頼むぜ」
「明日太までやられてもうたら勝ち目ないわー!」
「もーオシマイだよ!」
「みなさん、諦めちゃダメです!」

糸色望に支配された2-Aに、ネギも奮って声を上げます。

「前を向いてボールを取れれば、逆転のチャンスはあります! 勝てることを信じて頑張りましょう!」
「ネギちゃん……そうだよ、ネギちゃんが僕らといられるかが掛かってるんだから、負けられないよ!」
「そーそー、こんななめられ方のまま終われないもんね!」
「そーだ頑張れ2-A! 早く勝って俺に普通の服着させて!」

結局女装したまんまの釘宮は置いといても、ネギの言葉に生き残りも励まされる!

(やる気を取り戻させたか……そういうこともできるんじゃねぇか、ネギ)
「よーし、みんないくよ!!」
『オー!!』
「そのまま諦めてた方がいいのに……先生、うちのクラスに来てもらう準備はできてるから、このガキ共を蹴散らしてすぐn」
「5秒ルール!」

英子が悠々と口上を述べていますと、けたたましいホイッスルが鳴り響きます。

「この公式ルールブックによると、5秒間ボールを投げずに持っているのは反則ですー!」
「ボールをこっちに渡していただくです」
「な……なんであいつらルールブックなんて持ってるのよ!」
「さすが本屋ヨ、鈴音書房のルールブックを出すとは見る目あるネ」
「どこか見たことがあると思ったら、超さんの出版物でしたか……」

夕君、中学生が本を出してるのはもっと驚くところでしょ。

「アキラさん、おねがいします」
「うん、任せて」
「頼むぜ、アキラ!」
「俺の骨も拾ってくれよ、アキノさーん!」

のどかからボールを受け取ったアキラに声援が集まりまして、明日太と空も声を上げます。

「私はアキラだって……」

心なしか明日太に視線を向けながら、アキラの投球が見事、敵の一人をを捉えます。
――2-A 再起不能12人・残り10人  2-D 再起不能2人・残り9人

「でもボールはこっちのものよ、いい気になってるんじゃ……」
「え……むむ」

しかし跳ねたボールは2-Dがきっちり確保、亜貴がターゲットにされてしまいますが、すでに腹は決まっております。

「ジーコさん、アルシンドでもええ、生霊になって僕に力を……ええーーい!!」
「わっ!」
「おおっ、亜貴の弾丸ボレーだ! さすがサッカー部補欠!」

カウンターでボールを蹴りまして別の選手に直撃です……ってこれで亜貴はアウトにならんのか。それに補欠は褒め言葉じゃねーって裕奈さん。
――2-A 再起不能12人・残り10人  2-D 再起不能3人・残り8人

「ついでに私も、ダンクシュート!! ……ちょっちちがう?」
「あちゃっ!」
「裕奈はバスケ部やもんな~。確かにちゃうと思うけど」

確かにエセハンマーナックルで打つのはダンクとは違いますが、ともかく裕奈さんの戦果です。
――2-A 再起不能12人・残り10人  2-D 再起不能4人・残り7人

「この……ってなにこれ、ヒモ?」
「えいっ、えいっ、えいっ、えいっ!」

すげぇ……あのボール、リボンに巻きつかれながら当たっている!

「まき男のリボンがバンバン叩いてる、さすが新体操部だ!」
「あれこそ反則なんじゃねーのか……」

少なくともルールブックには無い反則も言い渡されず、まき男が一気に3人オトしました……いや、フォローしきれてねーよ。
――2-A 再起不能12人・残り10人  2-D 再起不能7人・残り4人

「古ヨ、ボールを打つタイミングを合わせるネ!」
「了解アル、チャイナダブルアターック!」

……ああもう、説明すんのも面倒だ。ともかく強烈な中華合体攻撃でもう一人撃墜です。
――2-A 再起不能12人・残り10人  2-D 再起不能8人・残り3人


「時間です! 試合終了ー!!」
「やったー、勝ったよー!!」

いろいろ汚い手を使ったことも忘れt……ってそれは相手も同じだな、ともかく忘れてたけどネギの処遇も元のまんまとなりました。

「やったじゃねぇか、英子のトリオには当てられなかったが、ともかく勝ってよかったぜ!」
「ヤツらのことは明日太に任せてばっかだったし、私もアキラも頑張ったんだよー!」
「ん……なんでそこにアキラが出てくるんだ?」

あれま、明日太も以外にウブなもので……ってからかってられる状況じゃなくなることには誰も気付かなかった!

「まだロスタイムよ! 神楽坂明日太、とどめ!!」
「……あ、危ない、明日太さん!」
「え……」

注目の的からすっかり外れたのをいいことに、英子さんの弾丸シュートが唸りを上げて明日太に襲い掛かる!
それに間一髪気付いたネギが、明日太をかばおうと間に入って来る!

「な……ネギ、お前!」
「こんなことしちゃ……いけませーん!!」

体で受け止めたボールに魔法を仕込んで打ち返し、あっという間に下着姿の高校生が3人出来上がりと相成りました。

「キャーー、何よコレ!!」
「……あ、やりすぎちゃった。いやむしろ手加減……」
「すごいじゃんネギちゃん、何今の!?」
「魔球を開発してたアルかネギ子?」
「もっと早く出してりゃ、ボクも無事だったかもしんないのにー、ケチー!」

ネギには一思案の時間ももらえませんで、2-Aの皆さんに質問攻めです。そりゃ文句も言いたくなるかもな。

「お、覚えてなさいよー!」
「あ……でもこれって明日太さんに怒られるんじゃ……」
「コラ、そこのお嬢ちゃん!」

さて、脅威が後ろから近づいてきたわけだが。

「あ、明日太さん……その……」
「……あぁもういいや、お前が起こす騒動にいちいちキレてたら身がもたねぇ。それにヤツらの裸に興味はないが、スカッとしたしな」

呆れながらも、一応助けてもらったこともあって明日太もあっさり許します……いいのかなぁ。

「よーし、高等部に勝ったぞー!」
「ともかく完全勝利を祝って、ネギちゃんを胴上げだー!!」
『オーーッ!』
「ワケの解らない試合で落ち込んだり盛り上がったり……無駄に元気な連中だ、ついて行けるか」
「おーい、俺そろそろ着替えてもいいよね? 下スースーするし、女装やめてもいいよな? いいって言ってくれ!」

一部は除くとして、大きな壁を乗り越えたクラスは最高潮に達しましたとさ。でも多分授業中だ。

「……おや、どうやらうまくいったようですね」
「ええ。でも、あれではまだ先生というより、仲のいい遊び友達ですね」

いつのまにやらタシーロしていたタカミとしず樹にゃ気付くことなく、遊び友達のはしゃぎっぷりは収まることをしらずにフェードアウト、であります。


釘宮円 曰く、
”だからさ、俺はどこぞの会社の重役みたいに女装趣味があるわけじゃないんだって!
美砂と桜子がムリヤリ着せてるだけなんだから、そろそろ普通の服を返してくれ! 女装してない俺を返せー!”




第6話 紳士的だと自称する奴ほど性根が腐ってたりする


”前略、天国のおふくろ様。
このお話も、いよいよシリアスに片足を突っ込む気配です。
参ったなー俺、そろそろ『テレビを見るときは~』って練習しなきゃいけないみたいだわこりゃ!”


6話 ”紳士的だと自称する奴ほど性根が腐ってたりする その1”
前話まで:ドッジ部黒百合の脅威を跳ね除け、ネギを取り戻した明日太達にも本格的な危機を用意してやろうと思うんだ。

「明日太さん、ちょっと……いいですか?」
「ん……本屋、じゃなかった宮崎か。どうした」

校舎の中庭的存在っぽい休憩所で明日太がのほほんと座っていますと、どこか決まりの悪いのどかが話しかけてきました。

「あの……その……明日太さんって、好きな人はいるんですか!?」
「へ……オイオイちょっと待て、何でんなことをきいてくるんだ! 頭どうかしたのか!?」

明日太もテンパりますが、それより後ろの茂みからズッコケて登場した夕とハルナの方がショックが大きいみたいで、急いで駆け寄ってきます。

「何を言ってるですかのどか、回りくどすぎです!」
「そーよ! のど×アスもアス×のど誘い受けも魅力あるけど、のどかが聞きたいのはそうじゃないでしょ?」
「何不吉な単語を並べていらっしゃるのかハルナさん」

そいつはベーコンレタスの専門用語(軽い方と思われ)だから知らぬが仏だ、明日太よ。

「その……僕、ネギ先生に好きな人がいるかどうかが訊きたかったので……」
「要するに真白木さん状態だったのか……って待て、俺が付き合ってることとネギがどう関係があるんだよ」
「だって明日太、木乃香とネギちゃんといいんちょでハーレム作ってるんでしょ?」
「OK、誰が言い始めたことか教えろ。修正してやる」

そんなの言われるようになって久しいんだから、放ってりゃストレスも溜まらくていいんジャマイカ。

「それより明日太さん、実際のところはどうなのです?」
「それよりで済ますなよ……でもネギはたかが10歳だぞ。好きな人とか考える年じゃねぇって」
「そ、そうですよね……やっぱりダメなのかなー」

まぁ予想できてた答えであるとはいえ、望み薄と気付かされてのどかも落胆気味である。

「大丈夫だってのどか、乙女チックな方面から攻めればイチコロかもよ!?」
「それはどうかと思いますが、千里の道も一歩からです。諦めないのが肝心ですよのどか」
「そこらへんはこのパル様が、しっかり作戦立ててあげるから心配無用よ♪ んじゃのどか、放課後の図書館島は先に行っててねー」
「あ、うん……それじゃ、明日太さん」

思案モードにシフトして勝手に去っていくハルナと夕に対して、急ぎながらで頭を下げて追いすがるのどかでありました。
しばらくして、明日太も呆気に取られた体を立たせ、教室へ行く道に付きましたところ。

「あ、明日太さーん! あ……いえ、なんでもないです」

体育館のあたりでネギに呼びかけられたが、こう言われてなんでもないと信じるヤツはおらんて。

「なに目に見えたごまかし方してんだ、正直に言ってみろ」
「……えーとですね、クラブ棟の方に教材を取りに行かなきゃいけないんですが、手伝ってもらおうと呼んでしまいまして」
「だったらいきなり遠慮しだすんじゃねぇよ。ホレ、案内しろ」

確かに日ごろのトラブルよりは軽い出来事でありまして、明日太も承諾してネギについて行きます。
……でもさ、こういうなんでもないことが事件の発端だったりするんだよな。

「あら、ネギ先生……と余分の神楽坂明日太じゃない。ご機嫌いかがですか、先生?」
「あ、高等部2-Dの英子さん……馴れ馴れしくて困るから会いたくなかったのに」
「その余分がいるクラスに負けたクセして、まぁ大きなツラができたもんだ。尊敬するっスよ」

小声で嫌がるネギも、大声でイヤミをぶつける明日太のおかげで目立ちませんでしたとさ。しかし言い争い好きねぇ。

「悪ガキは黙ってなさい。それよりネギ先生、ドッジ部顧問のお話、考えていただけました?」
「えーと……一応実習生ですので、安請け合いはできませんというか……」
「いつの間に勧誘なんてしてんだ! 邪魔しないって約束したくせに、性懲りもなくちょっかい掛けて来やがって」

あっさり無視された上、明日太も初耳な話を進めているもんで、さらに問い詰めようとします。

「さっきから負けたとか約束とか……あんななってない試合で勝ち誇るとは、器の小さい男ね」
「手段を選ばないとか吐かしたくせに、俺らにゃ手段を選ばせようとするんスか。大した根性の腐りっぷりだぜ」

ありゃまぁ、こりゃケンカにならない方がおかしい雰囲気だぜよ。

「……やれやれ、元気なのはよろしいことだけど、何度もいがみ合ったところで疲れるだけよ」
「あ、タカミ」

おぉーーっと! 殺伐とした状況に救世主タカミが!

「高畑先生! 俺はもう我慢ならねぇんだ、止めないでくれ!」
「あら先生、あなたの元生徒にはこんなのばかりしかいないようですね。同情しちゃいます」
「その元生徒も、ネギ先生とうまくやっていける部分もあるのだけどね」

相変わらずタカミは動揺を全く見せず、話を続けます。言いたいこと言うだけってのが活きてるんでしょうな。

「そういう事実もあるから、私にも君達にもネギ先生の処遇を決めることは出来ないわ。だのに、言い争いを続けるのは君達の得にならないよ」
「……それも一理ありますね。私たちも前途ある高校生ですから、お先に失礼します」

英子も落ち着いたふりをして帰って行きます……ふりって言ってるのはモチロン隠しきれていないから。

「何が前途ある、だよ! んなら俺達に吹っかけてくる暇をどこから作ってきてんだ!」
「そういう明日太君も、元気が有り余らせているのも問題よ。あくまで程ほどにね」

……いや、やっぱり言い捨てが基本のこの人は危険だわ。少なくとも明日太の前だと。

「またちゃんと場を収めるなんて、さすがタカミだなー」
「ほどほど……ほとほと……いやんなこたーないハズだ俺の女神はそんなことは言わないって」

ただ少しは抑えろと言っただけなのに、そこまで大げさに考えるかい明日太。

「明日太さーん、何ボケっとしてるんですか。教材取りに付いて来てくれるんですよね?」
「……あぁ、うん……そうだよ、元気を余らせなきゃいいんだよ簡単じゃねぇかあははははは」

あ、なんか妙なスイッチ入ったっぽい。


「2人とも聞いてくれ……紳士王に、俺はなる!!」
「は……はい?」

そんな日が終わり行く夕飯時、明日太はネギと木乃香に強く宣言し出しました。

「あの明日太さん、集○社を敵に回すようなネタは控えた方がいいと思うんですが……」
「真っ先にネタに反応すんな! ともかくイギリス淑女にお嬢様が付いてくれれば、俺も紳士になれるって思うんだよ」
「……あ~、明日太まだ食べてへんかったんか。ところで何の話してたん?」
「木乃香も占いグッズのカタログ見てないで聞け!」

手元に目を落としていた木乃香さんがようやっと反応しました。どっちにしたって、食事時にやることじゃなかろうなぁ。

「ともかく俺は思ったんだ。高畑先生が、そこいらのヤンキーレベルの今の俺に振り向いてくれるわけがないと。なら素行を直すしかないじゃないか!」
「ネギちゃん、イギリス製で欲しいグッズがあんねんけど、取り寄せてくれへんかな?」
「あ、いいですよー。お兄ちゃんに頼んで送ってもらいますよ」
「聞かんかてめぇら!」

今までの明日太を見てるためか、なると言ってもなれると思われていないようでガン無視である。

「明日太、ホンマに京紳士になるつもりやんな?」
「京紳士がどんなもんか分からんが、ともかくいっぱしの男にさせて下さい」
「よう言うた、ならウチも協力するえ。明日までにどうするか考えてみるわ」
「ありがとよ木乃香! ホント恩に着るぜ!」

かと思ったら次は安請け合いかぁ。ホントに大丈夫なんでしょうか。

「ん~その言葉遣いもちゃうねんけど、それもおいおい教えていこ~か。頑張っていこうなネギちゃん」
「……え、私もなんですか!?」
「俺だって好き好んで教わりたかないが、お前だっていいとこの嬢ちゃんなんだろ? だったら相手にとって不足はないぜ」
「いやですよー、そんなにタカミを陥落としたきゃおまじないでもすればいいじゃないですか。ほら、この本の魚の着ぐるみ着てどうこう……とか」
「んな奇妙な占い、誰が真に受けてやるんだ!」

いや、実際にやった人がいたんだけどね……ともかくなし崩しですがネギも明日太ジェントルマン化計画に参戦です。


はてさて、日が変わった放課後、木乃香が発案したのが”会話トレーニング”とのこと。

「セレブ~とまではいかんけど、丁寧な言葉遣いをする人と話をしていけば少しは影響されてくると思うんよ」
「ド直球っつうか正攻法っつうか……ま、何も焦るこたぁないんだ、じっくりやっていこうぜ」
「そのセリフを聞いてると少しは焦ってもらった方がいいんじゃ……それより木乃香さん、誰を選べばいいんでしょう?」
「そこらへんはしっかり考えとるから楽しみにしててな~。今日のところはウチが相手をするえ」

かくして、木乃香さんとの個人レッスンが始まりました。つっても指導役でネギが付いてるんだが。
ちと長いのでダイジェストでどーぞ!

「このペンダント、今日の昼にネギちゃんが持ってきてくれたんよ。昨日の今日で届くなんて魔法みたいですごいわ~」
「あぁ、昨日取り寄せてもらうように言っていたよな……ところで、いくらだったんだ?」
「ん~、5桁はあったかな。これの為に貯金しとったんや」
「はぁ……なんとも、俺にはボッタクリにしか見えないけd」
「明日太さんっ、ボッタクリはNGワードですよ!」
「……あぁあぁ分かってるよ、それはいくらなんでも高くないか?」

「それでな~、これで占うと的中率バツグンなんよ。明日太も見てあげよっか?」
「教室をうろちょろしてると思ったらカモを探してたのか……だが断る!!」
「明日太さん、カモはデジャヴュを覚える言葉なので控えて……あとジョジョネタは一般的な紳士は使いませんって!」
「んだよ、注文多いな……悪いが、今は占ってもらおうと思わないから次にしてくれ」

……結構長く話していた中、問題になりそうな部分はこれぐらい。意外と頑張ってる模様です。

「なかなか悪くないと思いますよ。勉強もコレぐらい頑張ってもらえたら……」
「余計なお世話だっつんd……いや、その言葉は余計じゃないのか」
「うん、自分から直せるようになれたみたいやな。ではこれからの明日太を占ってみるえ~」
「それは謹んでお断りいたします。それで木乃香、今日はまだ時間あるし、他の人相手も試してみたいな」
「なんや、残念やな~……せやったら、のどか君にも話は行っとるんで、図書室にいると思うから頼んでみてな」

明日太の燃え上がる意気は次の対戦相手を探し求め、木乃香の占いをまた突っぱねてネギと一路図書室へ参ります。


「やぁ、本屋……じゃなくて宮崎、ちょっと話をさせてもらっていいか?」
「ん……ネギ先生に明日太さんですか。木乃香さんが言っていたレッスンのことですか?」
「そうなんです、宮崎さんにも是非協力してほしいんですけど、今はいいですか?」
「実は本の整理がまだなんですが、ネギ先生の頼みならそちらを優先しますよ」

そうしてたどり着いた図書室、お目当てののどかの元に来てみましたが。

「すまないな、こっちの都合に合わせてもらって……ところで宮崎、なんだかフインキ違わないか?」
「何言ってるんですか、僕は元々こういう性格ですよ。ですよね、ネギ先生?」
「え……実は私も、なんだか妙に物腰が柔らかいような、って……」

明日太もネギも、はっきりと言葉を告ぐのどかに奇妙さを覚えてなりません。

「僕からすれば、変なのは2人ですよ……ネギ先生の場合、野蛮な明日太さんと付き合ってるからなんでしょうけど」
「オイオイ、それはご挨拶だな……ってかお前、そんなこと思ってたのか!?」
「明日太さん、その言葉遣いは……」
「そうですよ、気付かなかったんですか? 頭が空っぽなくせに、イヤに馴れ馴れしくて、その上僕のネギ先生まで……」

……うーん、これは明らかにおかしい。

「な……宮崎、やっぱりお前おかしいぞ!? 今までそんな口を叩いたことなかったろ!?」
「貴方がどう思おうが知ったことではありませんよ。しかしこうなるなら、学園長にネギ先生を引き取らせてもらえるよう頼みに行くべきでしたね」
「あ、あの、宮崎さん……」
「ん……どうしましたネギ先生、そんなに怖がって。僕で良ければ、相談に乗りましょうか?」

のどかはあからさまに明日太を無視し始めて、甘い声を出しながらネギの顔を覗き込みます。

「え……いや、その……結構ですっ!!」
「な……ネギ、どこ行く気だ!」

頭が沸騰しまくった所為か、ネギは図書室から逃げ出していってしまいます。

「……ったくどうしたんだ宮崎、いきなり口を悪くしちまって」
「どう思われようが知らないって言ったでしょう。それより、ネギ先生を怖がらせて、貴方こそ正気なんですか」
「待て、何で俺のせいになるんだよ! どっちかと言うとお前におびえたような……」
「そんな訳がないでしょう! ともかく、いつまでもネギ先生を独り占めしているのは先生の為になりませんから、すぐに止めてくださいよ」

微妙に声を荒げて、のどかは溜めていたという本へと歩いていきました。

「何が独り占めだよ、あいつ……そうだ、ネギはどこ行ったんだ!?」

引っ掛かるもののある明日太でしたが、ひとまずは飛び出していった担任を追いかけに行くことにしたようです。


「……ネギ、んなとこにいたのか?」
「あ、明日太さん……」

校舎を走り回ることしきり、屋上近くの廊下で壁に対面するネギをようやく見つけた明日太は声を掛けまして。

「どうしたんだよ、確かに本屋はえらく変わった風だったが、逃げ出すほどのことじゃ……」
「それが……さっきの宮崎さんからなんですが、少しだけ魔力を感じ取れたんです」
「へ……魔力って、魔法の魔力? 何でだよ!?」

突拍子もないネギの言葉に、明日太も声が大きくなります。

「何でかは分かりませんけど、あの宮崎さんが魔力で作られた偽者かもしれないんです」
「確かにあの宮崎は変だったが、それだけで魔法絡みの話になるもんか?」
「まだ情報が少ないので、判断出来かねますが……こちらから、いろいろと探ってみようと思います」

これは、思ったより深刻な事態の香りがしてきました。でも、聞いてる分には頭がおかしいと思われそうだな。

「探ってみるって……いいのかよ、お前1回逃げちまったんだぞ?」
「でも、今の推測が本当なら、本物の宮崎が危険に晒されているかもしれないんですよ!? 黙って見ていられません!」
「……あぁ分かった、その熱意は買ったよ。俺も手を貸してやる」

こうなったらテコでも動きそうに無いことを悟りまして、明日太はネギに協力を申し出ます。

「え……でも、明日太さんには危険かもしれないんですよ!? それに紳士のことはどうするんですか?」
「あ、さっきから言葉乱れまくりじゃねぇか! ……あぁ今から言い直すのも面倒だ! ともかく手伝うからな、今決めた!」
「そんな易々と投げ出したり決めたり……大丈夫なんですかこの人」

そう思うのも無理はないな、ネギさん。


ネギ・スプリングフィールド 曰く、
”さっきの宮崎さんの目、自信に満ちてるっていうか、セクシーな目をしてました。
                   この私が、視線だけで○○されちゃうなんて……こっち見んな!”




”前略、天国のおふくろ様。
今までの展開を無視して時間がポンポン飛んでいって混乱してる人もいるかと思う。
だが、コレがゲーム版の流れなもんで勘弁してくれよ、お兄さんとの約束だ!”


6話 ”紳士的だと自称する奴ほど性根が腐ってたりする その2”
前回まで:明日太とのどか、まるでベクトルの違う危機に立ち向かうネギ。そこにもう一人……

ウキウキで夕飯を作る木乃香がキッチンに篭っているうちに、ネギと明日太は密談を交わします。

「その本を、俺とウルスラがケンカした日の夕方に、倒れてた宮崎が持っていたんだな……」
「その日の宮崎さんは普通でしたし、この本を調べてみれば何かが掴めるかもしれません」

机に置かれておりますは、題名の一部が読めなくなっていることもあって怪しさ全開な洋書です。

「あの日か……一人で図書館島に行くとか言ってたな、確か」
「図書館島って、学園都市の湖にある巨大図書室のことですよね?」
「本好きな連中がよくもぐり込んでいるみたいだが、さすがに魔法に関わるモンがあるとは思わなかったぜ」

伊達にそこいらの私立学園を超える魔境と呼ばれていない麻帆良学園、スケールの大きなお話であること。

「つーか、俺に聞くより木乃香に聞いてくれよ。あいつも図書館島探検部だって言うし」
「2-Aだと、早乙女さんと綾瀬さんもそうですよね、あと宮崎さんも……」
「そゆこと。ともかく魔法とありゃ俺に探れたこともないからな。突き止められたら言えよ、俺がとっちめてやる」
「倒すよりも封印する手段の方が見つかりそうな気がしますけど……ところで明日太さん」

ひとまずの方針が決まったところで、ネギは改めて明日太に向き直る。

「私たちが苦労して教えたこと、さっぱり守れてないみたいですね……」
「へ……あぁぁぁぁぁっ! 紳士的になるってすっかり忘れてたじゃねぇか畜生ーー!!」

1日目にして前途多難な成り行きでありますねぇ。それに紳士はこんな叫び方せんでしょう。


『今日の明日太は水に注意や。登校中は気ぃ付けてな~』
「……なんて無責任な占いなんでしょう、木乃香様よ」

そんな次の日、明日太はバイト前に木乃香の占いに捕まった自分を呪いながらゲタ箱へたどり着きました。

「あ、明日太さん遅かったですn……ってどうしたんですか! 水浸しで、棒切れを杖代わりにしてるなんて」
「ネギ……お前、木乃香のペンダントに何したんだよ……」

とても教室に上げられないと、ネギは保健室へ連れて行きまして事情を聞こうとします。

「自販機で炭酸を買ったら噴き出して、初等部の子に水風船を投げつけられ、挙句にマンホールから下水が溢れて水浸しになった……ってどんな雪ダルマ式の不幸なんですか」
「そんなの俺が聞きたいよ! ともかく、木乃香の占いがここまで強烈に効くなんておかしいって思うだろ!?」

毛布に包まれてガタガタ震える明日太が強く訴える内容に、ネギも心当たりがあるみたいで。

「それが、明日太さん以外の人からも、木乃香さんの占いのことで相談を受けているんですけど……」
「けど、何だ。いきなり言葉詰まらせんな」
「いえ……あのペンダント、お兄ちゃんに送ってもらったんですが、何故か私が使うと思ってたみたいでして」
「でして……どうした?」
「魔力がある、魔法使い用のペンダントを送ってきたみたいなんです。占いが現実になるという魔法が込められた……」

世の中には都合のいい魔法があったものです。そのおかげで都合が悪くなったのが、占われた人々なんだけど。

「……まぁ、今回はそんな取り違えを起こしそうな物を欲しがった木乃香にも問題があるが、だからって放っておけないだろうな」
「ええ……というわけで、今朝なんとか理由を作って、あのペンダントのレプリカを作りました。タイミングを見て入れ替えようと思います」
「ほぉ、見た限りじゃ本物と違わないな……それにしてもお前の魔法ってホントに卑怯だよな」

そりゃ、レプリカ作りましたでひょいとパチモンを出されたら、そう思っても無理はなかろうな。

「2つ作ったうちの1つを渡しましたから、うまく摺りかえられたら教えてくださいね」
「こればっかりは、俺を当てにしてほしくないんだが……あの気に入りようじゃ当分手放さないぞ」

異性の身に着けているものをこっそり交換するタイミングなんて、明日太に見つけられそうもないのは分かりきった話だと思われ。


「今日のトレーニングは、この2人に付けてもらうことにしたえ」
「ちあーっす! 今日はボクたちが紳士にしてあげるですー!」
「ち、ちあー……」

そんなこんなで気鬱なお昼休みに、木乃香に連れてこられましたる鳴滝姉弟……なんですが、風香さんの様子がどうもおかしい。

「……あれ? 風香さん、なんだか風香さんじゃないような……」
「ハァ……またか風香、史也と入れ替わってるんじゃないよ」
「あーもう、ダメだよ明日太! ネギ子を騙そうとしてたのにすぐバラしちゃってさー!」
「だから言ったんですよー、明日太さんが分かっちゃうからこんな格好したくないですってー!」

ネギと明日太が気付いたとおり、目の前にいるのは、風香の姿をした史也と史也の姿をした風香でございました。

「あ、そういえばそうや。明日太にネギちゃん、よく気が付いたな~」
「短いながら、私も担任ですからね……それより、私を騙すために入れ替わるなんて止めてくださいよ」
「はぁーい」
「はいですー」

ネギさんはそうおっしゃりますが、この双子が黙って聞くことはありませんで、後々一杯食わされるのですが尺の都合で割愛です。

「そんじゃ、せっかくの明日太の頼みだし、着替えないでこのまま行くよー」
「そんな、お姉ちゃんイヤですー!!」
「……本当に反省してるんですかこの人たち」

するわきゃねーって。それはさておき今回のレッスンもダイジェストでGO!

「明日太ー、この曲歌ってみてよー」
「何でいきなり歌うことになるんだって……キンタ、マカオに着kってこんな古い歌どこから引っ張り出して来たんだこのチビ助!」
「明日太さーん、もう少し穏やかにお願いしまーす」
「これは承知していいのかよ……風香さん、こういう下品な歌を歌わせないでくれるか?」

「いろんなものを丁寧に言ってみるです、まずは”コーヒー”」
「”おコーヒー”……ってなんか間違ってるような」
「気にしないで下さいですー、次は”奈良漬け”」
「”お奈良漬け”……コラ史也、てめぇもか!!」
「明日太さん、クールダウンして言い直して!」
「あ゛ーーーもう納得できねぇのに! 史也君も、こういういたずらは仕掛けないようにしてくれ」

その他様々なブービートラップが降りかかりましたが、明日太はそれなりにやり過ごすことに成功たようです。

「紳士というより、言葉のアヤに引っ掛からない訓練になってた気もしますが……」
「明日太も意外に面白みがないよなー、引っ掛からないように身構えてるんだもん」
「お姉ちゃんは分かり易すぎるんです、もっと捻った問いかけなら騙されるですよー」
「……明日太さん、このクラスを受け持つ自信が無くなってきました……」
「そのうち慣れるから気にするな。それじゃ次に行くぞ、ネギ」

平穏無事に終わったところで、2人はこの後に控える大物の元へと急ぎます。


「ネギ先生ですか! 呼んでいただければこちらから伺ったのに……」
「いえ、そんなことはいいんです……昨日は突然逃げてしまって、すみませんでした」
(よし、盗み聞き体勢はバッチリ……なんだか貧乏くさい隠れかただよなぁ)

屋上に腰掛けて本を読むのどかの元に、ネギが1人で歩み寄ります。それを階段ブロックの上に忍び込んで見守る明日太……並の芸人より頑張ってるなんじゃなかろうか。

「今日は、お話したいことがあって来たんです」
「奇遇だな、僕も先生に訊きたいことがあったんですよ」

立ち上がったのどかの口元が軽く緩み、ネギへと一層近づいていく様は、正体を掴めていない今では恐怖を駆り立てる。

「先生……おとといの夕方に僕を保健室に送ったとき、本を持っていきましたよね?」
「そ、それは……どうでしたかねー、覚えてないんですよー」
「とぼける顔も可愛いですよ、先生……でも、正直に話してくれませんか」

そう言うと、のどかはネギの髪に指を通して、耳元で何かしらをささやき始めました。

(チ……この位置からじゃ何話してるか聞こえねぇ、何を吹き込んでるんだ宮崎!)
「……っ!」

ネギの顔が限度まで引きつるのと同時に、自慢げに笑うのどかが顔を離す。

「し、して欲しいって言われましても、見たことも聞いたこともないのでどうしようも……」
「だったら僕が教えてあげますよ。2人きりになれる場所で、ゆっくりと……ね」
「ヒッ……」

挙句には腰に手まで回されて、ネギもかなり怯えきっています。黒いとこばっかり見てると新鮮……なんだがさすがに痛々しくなってきませんか。

「……やっぱりダメですっ、すみませんーー!!」
(また逃げちまったか……重要なことが聞き出せてたらいいんだが、こりゃ望みは薄そうだ)
「あ、先生……まあいいか、先生とは本を手に入れてからでも遅くは無い……僕が宮崎のどかになれば解決する……!」

結局ネギも後ろに前進、明日太も偽者っぽい言質が掴めただけ、とショボい収穫でありました。
ひとまず明日太はネギの携帯が繋がらないのもあって、先に寮の部屋に帰ってきますと。

「ただいまー……ってネギ、帰ってたのか」
「おかえり明日太~。ネギちゃんやけど、帰ってきてからずっとああやってうつ伏せのまんまなんや」
「……明日太さぁん、ネギ・スプリングフィールド、最大の危機に見舞われてますー……」

ソファーに寝ていたネギが、半べそ顔で明日太に泣きついて来ました。

「苦しいのは分かったが、泣きながらしがみ付いてくるな! 俺はまだ制服なんだぞ!」
「でもー、私は宮崎さん一人救えないドジでノロマなカメかもしれないんですよー!」
「だからって、こんなみっともない泣き方してどうなるってものでもないだろ、しっかりしろ!」
「そ~や、ネギちゃんも知ってたん? 最近のどか君が変くなってるってこと」

戸惑うネギに今は頼って欲しくない明日太という状況を、木乃香が言葉を切り出して変えた。

「木乃香、本屋のことで何か知ってるのか?」
「うん……授業が終わるまでやと、明日太も見とったような感じで、ハルナも夕君もおかしがってたみたいやけど」
「俺とネギより付き合いの長い木乃香たちが言うなら確かなんだろうな……それで、続きがあるのか?」
「これからがおかしいことやねん。放課後の図書館島探検部の集まりにのどか君もおるねんけど、いつも通りののどか君なんよ」

意外! それは部活! 本物ののどか(偽者がいるとして、だが)の居場所があっさり聞けたことに、ネギも明日太も目を見張る。

「それが調べたいことがあるみたいで、ネギちゃんあてに事情で休むって届けを出して、ずっと図書館島に篭ってたって言っとったえ」
「そうか……分かった木乃香、そのことはお前とハルナと夕しか知らないんだな?」
「うん、探検部の人ら以外に喋ったのはこれが初めてや。でも、それがどうかしたん?」
「いや、なんでもないんだ。そろそろ夕飯の時間じゃないか?」
「あ、せやな。もうすぐ出来るから待っててな~」

木乃香がキッチンへ抜けていってから、まだ目を潤ませるネギに明日太は体を寄せる。

「今の聞いてたろ、ネギ? ここは本物の本屋に会って、何か分かったか聞いてみるしかないぞ」
「明日太さん……私、偽の宮崎さんに見つかって、正気でいられそうにないです……」
「弱音吐いてるんじゃない! 相手は魔法で出来てるんだろ、だったらわずかな勇気で勝ってみせろ!」

元はネギが言ったこととはいえ、無茶な精神論だなぁ。

「もし偽の奴に見つかっても、対処法が分かれば勝ち目は出てくるだろ? それを見つけられるのは、お前しかいないんだ」
「……少し、考えさせて下さい」

どうあっても10歳の御身に重過ぎる、でも時間の余裕があるとは言えない。はてさて、明日太とネギの運命や如何に。


近衛木乃香 曰く、
”最近、夕飯作ってるときにネギちゃんと明日太がひそひそ話し合ってるんや。
新しいマジックの打ち合わせでもしとるんかな? 今度占って助けてあげようかな~”



”前略、天国のおふくろ様。
人間何を思いつくものやら分かったものじゃありません。
デンプンの固まりな野菜で場を繋げるとは思ってもみなかった……”


6話 ”紳士的だと自称する奴ほど性根が腐ってたりする その3”
前回まで:偽のどかにいろいろ吹き込まれて、謝罪と賠償すら要求できなくなったネギ。明日はあるのか?

「んんっ……あぁ、そうだ。今日からテスト期間でバイト無いんだったな」

久々に晴れやかな目覚めを体感した明日太は、のんびりと身支度を始めます。

「おはよ明日太、ゆっくり眠れてすっきりしたやろ」
「でもないな、もうじきテストだと思うと気分が悪い」

バカレンジャー最強の男にしてみりゃ、成績に繋がるお話はイライラするだけでしょうな。

「そういやぁネギはどうしたんだ。あのグレっぷりで学校に行けたものか……」
「ネギちゃんやったら、ウチがちょちょいと占ってあげたら元気を取り戻してくれたみたいや。さっき出て行ったえ」
「そうか、一先ずは安心だな」

昨夜のどん底具合を思えば、少しは這い上がっていけそうな感じに明日太も落ち着けて来ました。

「ウチは内容的に満足できんかったけど……そうや、明日太も占って調子見てみよ~」
「こ、木乃香さんよ、なんでそこで俺をモルモットにするんだ、いいって!」
「ん……ん~~~! 『絶望しても、根気は絶やさずに』……はぁ、やっぱ調子悪いわ」
「……どこがどう調子悪いかは知らないが、ともかく助かった。礼を言うぜ」

まぁ、素っ頓狂な内容で現実になられたらたまらんものな。

「ネギちゃんも明日太も、見ようとするとどこかぼやけてくるんやけど……どうしたらええんやろ~」
「俺には分かりそうもないな。ともかく朝飯を……ん? これはひょっとして好機ってやつなんじゃ……」

ちょいと思案してみた明日太君、あることに気付いてブキミなな笑みを浮かべ始めました……これじゃ偽のどかとどっちが悪役か見分けつかんぞ。


「突然どうしたんや明日太、高畑先生に告白やて!?」

昼休みが始まったばかりの明日太の電撃発言に、木乃香さんも驚きの声を上げます。

「木乃香の占いじゃ、諦めなけりゃ成功するって言うんだろ? だったら当たって砕けろでやってみるさ! 砕けない保障もあることだし!」
「この人は……魔法かかってるからって都合よく考えすぎですよ」

なんともムリヤリな発想だこと。ネギも呆れ果て、小声でツッコミを入れます。

「すり替えは忘れてないが、いい占いをしてくれたんならそれを生かさないのは木乃香に悪いって思うだろ?」
「明日太さん……スケベにニヤけて言うことじゃありません」

もう告白すると決めてしまったら、中途半端にこなしたトレーニングの意味なんてどこにあるのやら。

「まあ、そう言うなら止めはせえへんけど、最後にある人とやってくれへんかな?」
「いやだから、今から告白するつもりなんだって。今すぐなんだぞ!」
「そうは言うても、昼休みは長いんやし……損はさせへんから、待っててな」

おいおい、明日太も勝手言ってるけど木乃香さんまで勝手に動いてどうするの。

「待っててって何だよ、俺は一刻も早くこの猛る気持ちを……」
「いいんちょ~、大分早くなってもうたけど出番や、こっち来て~」
「な……いいんちょだとぉ!?」

待っててと言う割に、ちと遠くに座っているいいんちょを呼び出すだけでして、呼ばれたいいんちょも静かに歩み寄ってきました。

「雪広あやか、只今参りました……それにしても、教えを受けたことに対して無にするような振る舞い、明日太さんも本当に紳士に程遠いですわね」
「……お前は毎度ダメ出しをしないと死んじまうのか」

いつもなら怒鳴りが入ってケンカに発展しているとこですが、妙に捻った返し文句でトーンの低い口ゲンカに収まってます。こりゃトレーニング同然だな。

「言わせるような真似をしているのは、どこのどなたか考えてみてはいかがですか? それで高畑先生に振り向いてもらおうなんて、無謀としか言えませんわね」
「ネギを追っかけるのが日課の変わった趣味の人に、高畑先生のような美人の何たるかが分かるとは知らなかったよ」
「常識を持った女性なら、貴方のような方に告白されても首を縦に振りそうもないという事実を述べたまでです」
「はぁ、娘っ子を手篭めにと企む女に常識があったのか。世の中、知らないことが多いもんだ」

手を上げてないだけで、ここまでギスギスした皮肉合戦になるものか。ネギもどこで止めたこっちゃ分からんようで。

「明日太さん、手篭めって表現はどうかと……」
「嬢ちゃんは黙っていなさい。今までの俺の話し様を見て、まだ紳士的かどうか疑うのなら、見る目を疑われるのはそちらさんだよ」

その自信の出所がインチキじみてなきゃ、決まった物言いに聞こえるんだろうなぁ。

「……少なくとも、おサルさんと呼べないほどになっていますわ。期間を考えれば、頑張った方でしょう」
「何だいいんちょ、急にテンション下げて」
「それはな明日太、いいんちょにわざと突っかかるような話し方をしてもらったんよ。怒鳴らずにおっただけでも上々と思うえ」

木乃香が一つ仕組んでいたことを白状しましたが、明日太には何かが引っ掛かった模様です。

「の割には毎度突っかかってくるのと変わってない気が……ナニか、いつも俺と高畑先生の仲が発展するのがイヤだと思ってたってことか」
「な……勝手に決めないでください! 明日太さんに追われる高畑先生に同情していただけですわ!」
「何だと、俺がそこまでダメな奴だってのか!」
「あああ2人とも、ケンカはやめてくださいー!」

あれま、結局ギスギスが再燃しちまってるよ。でも照れ隠し全開でなんか見てる方が腹立つ!

「ネギ先生がおっしゃるのでしたら……ともかく、豪語したのなら早く行ってください、そのうち無理とか言い始めるんですから」
「生憎だが、今の俺は説明するのも面倒なくらいの超明日太なんだ。逃げたりはしない! いくぞネギ!」
「結局私も付き合わされるんですか……ってか足速っ! 追いきれませんって!」

遮るものもなくなりまして、爆弾積んで暴走したバスみたいに教室を出て行く明日太……ネギ連れてくならもう少し考えろよ。


「……な、なんとか呼び出せたぞ。じきに来てくれるって」

体育館近くのベンチで、携帯電話を片手にタカミを呼んだ明日太……なんだが、この腰砕けっぷりは一体何だ。

「明日太さん、とても告白できる状態じゃない気がしますけど……」
「いや分かってる、んなテンパることはないと分かっているんだが、どうしてもドキドキってやつが止まらん! 失敗したくねぇよ母ちゃん!」
「占いをあてにするかはともかく、今まで頑張ってきた自分のことを信じて、Tellher"GATSUN"ですっ!」

元大統領のそっくりさんが出てきそうな励まし方ですが、その程度で持ち直す明日太であるハズもありません。

「そうは言うがよ、よくよく考えてみたら高畑先生のことに限らず俺って恋愛疎いじゃんか。いや、お前も隠れて助けてくれるのが不安じゃあないが」
「助けはしますけど告白するのは明日太さんなんですから、もう少ししっかりしてくださいってばー」

そうやってチクチクと説得してみましたが効果は今ひとつで、ネギは木立に隠れ、明日太が1人緊張の一瞬を待ちます。

「やあ、明日太君。相談したいことがあるって聞いたけど、どうしたんだい?」
「た、高畑先生、おはようござ……いえこんにちは!!」
「ええ、こんにちは。立ち話もなんだし、どこか座れる場所に移ろうか」
「いやぁいいんですよ、ネギに隠れt……そうじゃなくて、大したことじゃないんでこのままで、ハイ!」

あぁ……タカミが天然で鈍いとこあるからいいものを、このザマは一体何だ。

(明日太さん、落ち着き無さすぎです!)
(ダメだ、目の前にしたらますます落ち着けやしねぇ、頭ン中まとまりゃしない!)
「そうかい? 明日太君は立ったまま待ってたんだし……それにしても、さっきから小声で何か言ってるけど大丈夫?」
「あぁ何でも無いんですホントに!! 実は趣味が欲しいから先生の意見も聞きたいなーなんて!」

ようやっと雰囲気作りの話題を持ち込めた……んだがまっこと挙動不審な男子中学生ですねぇ。

「ふうん、趣味か……流行り物だと疎いところがあるけど、私が知ってることならなんとか教えて……」
(目の前にはジャガイモ、目の前にはジャガイモ……いや違うこんな綺麗なジャガイモはねぇよ、あえて言うなら男爵夫人イモ……って人妻かよ!!)
「……明日太君、やっぱり様子が変だよ、何かあったんじゃない?」
「いえいえそんなんじゃないんです、ただ男爵イモ何するものぞと……じゃないじゃない!!」

明日太の頭の中が見えないと脈絡の無さにすっコケちまうような……ゴメン、見えてても無理。

(何やってるんです明日太さん、全然関係ないこと話しててどうするんですか!)
「男爵イモ……ああ園芸ね、何かを育てるのはすごくいいことだと思うよ」
「あ……あぁー、先生もそう思います!? ちょっと泥臭くて引くかなーとか思ってたものですから……」

タカミさんがちょっとネジ飛んでt……いえいえ素で無難な話の種を拾ったためか、思ったより話が弾んできてます。

「でも、始めるのにお金と手間がかかるから、バイトしてる明日太君には辛いかもね。ところで引くって何がだい?」
「いいや、こっちの話ですよ! 他にいいなって思うのがあるんですけど……」

はてさて、ここから告白する雰囲気まで繋げるかどうか……無理くさいのはまず無視して早送りしてみましょう。

「……イドでルール違反じゃなかったと言っても、警告喰らうくらい相手を引き倒しにかかるのはさすが素人としか……」
「う、うん、私にはよく分からないけど、そうなんだ……」

やっべ、トリミングミスった! 些細なことから格闘技の話題に持ち込まれて、知識の無いタカミはキョトンである。

(明日太さん何考えてるんですか、タカミがついていけてませんよ!!)
「……あ、やば……」

なんぼなんでも、気付くのおせーって。

「? どうしたんだい、明日太君」
「い、いや……その……すんませんでした、おととい会いに来ます! 会ってないけど!」

おととい云々は自分から言うことじゃないとかは考えず、明日太は気恥ずかしさ全開で逃げの一手でありました。


明日太が夢中で走って、広場のダビデ像の前に腰掛けると、さらにネガティブな想像を頭によぎらせる。

(バカじゃねぇのか俺は、あの流れで総合格闘技って紳士の引き出しなワケねぇだろ!! ありゃダメだ絶対嫌われた!!)

何だかネガティブの方向が間違ってると言われそうだが、明日太もとにかく気鬱さいっぱいで膝を抱えまでしました。

「明日太さん、こっちまで来てたんですか……」
「……んだよ、笑いにきたのならとっとと笑ってみな」

少し間をおいてネギが追いついてきましたが、明日太の返事はやさぐれた言葉だった。

「……ええ、笑いたいというより、情けなく思います」
「そうだよな、俺がいくらカッコつけたって情けないだけだったもんな……」
「そうじゃありません!」

教師の厳格な目で明日太を見つめて、ネギは叱る言葉を放つ。

「タカミは言ってました。『明日太さ……明日太君は明日太君が思ったり、考えたりするままでいる姿が一番好き』、って……」
「…………」
「好きな人が、どんな自分を好きでいてくれるかにニブくて、あるがままの自分を信じられない明日太さんは情けないですっ!」

そんなネギの目にも、感情の高ぶりで涙が溢れ、言い切ると同時に顔を覆ってしまう。

「えぐっ、だから、さっきの明日太さんをダメだって思っちゃ、ぐっ、いけないんですっ……」
「……ったく分かった、分かったから落ち着けって」

幼子に目の前で泣き出されたりしたら、そりゃ近寄って慰めてやろうと思いましょうて。

「いきなり泣きじゃくってんじゃない、それでも教師か? 俺は俺のまんまでいいって言うんだろ、だったら堂々と教師でいりゃあいい!」
「明日太さん……いえ、これはタカミが言ってたことで」
「ハイハイ、高畑先生が言ってたんだな……ま、紳士ぶってみたところで気色悪かったってだけさ、あのニセの本屋みたいにな」

誰が言ってたかなんて、そんなムキになって否定することでもないたぁ思うが……明日太も気は持ち直したんだし。

「ともかく、悪く思われてなかったってだけでも上々ってトコで、問題解決だな」
「結局告白できずまいで解決できてるんでしょうか……」
「うるさいよお前は……何にせよ、放課後は本屋のことだけ考えればいいんだから安心だろ」

ひとまず、中オチは付いたみたいでして、一つ間をおいて今回のお話の山場へれっつらゴー、であります。


雪広あやか 曰く、
”あれだけ人を巻き込んでおきながら、結局告白できなかったなんて明日太さんらしいと言いますか……
い、いえ、ホッっとしてなどいませんわ。していませんったら!”



7話 バカは死に目に遭ってでも直せ

”前略、天国のおふくろ様。
今日から新展開に突入です、これも多くの方から応援していただけたおかげでごぜえますヘヘー。
で、7人の悪魔超人ってどこっスか? アデランスの中野さ……あ、キャスト表違ぇ!”


7話 ”バカは死に目に遭ってでも治せ その1”
前話まで:頭を打ち付けまくったおかげでますます馬鹿の進む明日太、進級できるんスか!?

今日も平穏な昼休み……かと思えば死線が見えたかってくらい酷いツラの明日太と、がっかり気味な木乃香さんが廊下を歩く。

「占いがな、的中率100%やったのに全然当たらんようになったんや。どないしたんやろ~」
「だから分かんねって、あれだ、クリーニング・オフでもすりゃいいんじゃね?」
「それを言うならクーリング・オフや。どうしたんやろ、力無くなってもうたんかな~」

占いには真剣な木乃香のこと、今までが異常だったのだからと納得は出来ないご様子です。
軽めの漫才が終わりましたらば、鬼達の棲まう職員室へと入っていきまして。

「こんちわー、2-Aの神楽坂っスけど、新田先生は……」
「ああ神楽坂か、こっちへ来い。課題は終わったのだろうな?」

齢は40台というのに若々しい外見、その上ば厳格さに満ち溢れる現国の教師、新田が机に呼び寄せました。
ちなみに、熟女趣味な生徒や教員からの人気が高く、明日太の好みにもドンピシャだとか。

「いやぁ今回こそバッチリキッカリ解きましたよ。今度は合格でさぁ」
「ウチやネギちゃんも手助けしたもんな~、よう頑張ってましたよ」
「仮にもイギリス人のネギ先生に助けられてどうする……うむ、間一髪だが合格だ」

どうやら小テストをやってくるように言われてたみたいで、明日太が自信満々なわりにギリギリだった模様。

「えがったえがった。授業中に不合格だらけで寮でもやって来い、って言われた時はどうしよかと思ったけど実力はコレっスよ」
「実力があったらここまで躓きはしないだろう。学年末も近いのに、これでは先が思いやられるぞ」
「いやー、明日太君も頑張ってますよ? 僕も小テストをやったんですけど、少し上向いて来てますし」
「って瀬流彦先生、いきなり顔出して来んなよ!」

突然後ろから数学の瀬流彦先生が顔を出したもんだから、明日太がびっくりして抗議してっけど容赦ねえな。

「頑張って今の成績ならもっと頑張れ、上位を狙えとは言わないが現状に少しは危機感を持て! ネギ先生と高畑先生に申し訳が立たんと……」

あーあ、新田先生の説教スイッチが入っちゃったよ。

(ん~、毎度よう肺活量保つな~)
(……瀬流彦ちゃんよ、一生分恨んでいいっスか?)
(あははー、それだけは勘弁s)
「聞いているのか神楽坂! それから瀬流彦君も!」

ここで余計に怒られる(それも自業自得で)のが瀬流彦オリジナルのオチでありまして、恐らく宿命なんだろうなぁ。

「……今度の採点次第ではネギ先生の教育実習如何が問われるということも頭に入れておけ、分かったな神楽坂!?」
「さ、サー! 女王アリ様万歳ごっつんこ!!」
「返事は真面目に!」

緊張に耐えられなかった明日太がボケたもんで、プリントで頭を叩かれました。体罰云々と追求されるのも恐れない教師っぷり……かぁ?

「ん……もう5時間目が近いか。いいか神楽坂、結果が全てとは言わないが、努力した分は結果に表れる。それを忘れるな」
「は、はい……」
(僕も期待してるからさ、しょげてないで元気出してくれよ?)
(了解了解。説教長引かせた恩は忘れないけどな!)

普通にしてりゃもうちょっと早かっただろうが、ようやく解放されたんだってさ。

「……はぁぁ、チベットの波紋使いぐらい容赦しねぇでやんの」
「新田先生も、ダメな子ほど可愛いってことなんとちゃう?」
「誰がダメな子ですか、そこで厳しいツッコミ入れんでも……」
「光る風を追い~越したら~でっかい未来が危ないぜ~♪」

一路教室へ戻ろうとした明日太達と入れ違いで入ってきたのは、スレ創成期のネタを平気で使い、スキップまでしているネギでした。

「なっ……何だネギかよ、妙に浮かれてどうしたんだ?」
「あー明日太さんに木乃香さん、いえいえ何でもないんですよー。せんせい~せんせい~それはせんせ~い~♪」
「ネギちゃん浮かれてるな~、何かあったんかな?」
「さぁ……にしてもあの歌、あいつ何歳だよ」

そろそろ明日太君にも、ネギのちょっとした変化が騒動の兆しだと学べよって思うの。


「はぁい、みんな注もぉく!」
(安易に金八っつぁんのモノマネしてんじゃねぇあのバカ!)

授業が終わってのホームルームは、ネギの似てないモノマネから始まりましたとさ。

「え~今日のホームルームはぁ、だぁい勉強会を開こうと思いまぁす! 人という字はですねぇ……」
「まだ続けるのかよ!!」

ネギもしつこかったもんで、思わず明日太も本気でツッコミを入れてます。

「そんじゃ真面目に……学年末も近いことですし本腰を入れていきましょう! できれば最下位脱出できればいいかなー、なんて……」
(へーへー、出資者は無理難題をおっしゃる……しかし急だなオイ)
「素晴らしいご提案ですわネギ先生、今回こそ学年最下位の座を明け渡すべきだと私も考えておりましたの!」

大事なことを言っているのに、どうやら食いついたのはいいんちょだけのようです。このクラスの場合楽天的ってことかね。

「んじゃ提案ていあーーん!」
「はいっ桜子さん」
「英単語野球拳に3000点、倍率ドン! って感じがいいと思いまーす!」
「野球拳……ジャパニーズ・ベースボールの要領ですか、やってみましょう!」

かと思ったら、何だか微妙にズレたボケかましながら桜子も提案……ってそれなんて罰ゲーム?

「ハァ!? 野球拳が何か分かってないだろネギ! 俺をまた脱がす気k」
「そりゃいいっスよ、脱衣ものの王道っスよ! あ、でもアキノさんは俺が独り占め一択で!」
「独り占めって私はやるつもりじゃ……それにアキラだって!」
「やめとけ桜子、そんなのやって喜ぶ女子は美砂ぐらい……ってどうして女物のワンピース出してんのかな柿崎さん」
「んー、脱がしついでにミサ姉ちゃんがクギ坊をおめかししてあげようかと思ってねー♪」
「阪神Vの再来や! 道頓堀に沈む魂や! 絶対勝ち残って御神体拝んだるでー!」
「居酒屋のノリじゃねーか、俺の店でもこんな騒ぐ客は来ないぞ……」

あっはっは、こんなん学生のあるべき姿に程遠すぎるって! それより先生がおかしい? ごもっとも。

「そうだ、成績表をチェックしてみなくちゃ! えっと……」
「止めさせろっつってんだろ、聞けコラァ!」
「ダメだよー明日太、ここは一発わたしと勝負してみよー」
「オイ掴むんじゃねぇ桜子、お前の強運にかかったら倍速で脱がされちmアッーー!!」

明日太には野球拳を勝ち残る能力はない、残念だが……しかし明日太、無駄脱がされではないぞ! ……そうなの?

「成績のダントツに低い、バカレンジャーの人たちをどうにかすれば……って何やってるんですかー!?」
「やっぱりこれかぁぁぁぁっ! 降参すっから服返せ!!」
「やめて、パンツだけは止めて! うわーーん亜貴の裏切り者ー!」
「僕らがこうなることは決まっていたのに、よくはしゃぐバカなクラスです……」

考えるのに夢中だったネギが気付いてみれば脱がされたバカレンジャー一同……注意する前に口あんぐりで止まってるけど無事ですかい?

「あ、明日太さん……そのパンツって……」
「ん~、『ようこそ、男の世界へ』……って変わった柄アルねー」
「渋い外人の顔と横文字で”まんだむ”とは、なかなか小洒落ているでござるな」
「2003年だということをシカトした小ネタにはうんざりです」
「お前らも脱がされたクセして、平然とツッコむんじゃねぇ!」

また自慢するつもりで履いてきたガラパンですが、見事に酷評だあ。いや、明日太が趣味悪いからだろうけどさ。

「ってそうじゃなくて、何で服脱いでるんですか!?」
「だってー、野球拳なんだからハズれたら脱ぐってルールなんだよー」
「やっぱり夕達バカレンジャーがネックみたいねー……それより男の裸体ktkr! 素材としてスケッチ!」
「……と、ともかくこんな目に遭うことの無いように、明日太さん達を重点的に鍛えましょう! いいですね!?」
「りょーかい! じゃあボクが明日太のパンツを脱がしてやるぞー、勝負だー!」

……だーれもいいんちょやネギのこと気にしてねぇな、こりゃ。

「least……ってローストビーフ? ってやめろパンツに手を掛けるな、俺のリン○ォにムリヤリするなぁっ!!」
「あわわそんな能天気な……これはホントに強制送還かも……」

ネギもあんまりな状況に目に見えて落胆……するのは分かるが、少々オーバーと取れなくもないかね。

「……こうなったら仕方ありません、フィンガーフレアボムz……じゃなくて後々1ヶ月ほどパーになる代わりに3日間だけ天才級になれる禁断の魔法を使っt」
「諸刃の剣にも程があるわバカガキィーーーー!!」

焦ってるのか怖いことを言い出すネギに、明日太もハンマーで反撃して外へ連れ出します。

「あ、明日太さん何を……」
「何をじゃねぇ、さっきも切羽詰ったからって魔法に頼ってるんじゃない! 共歩きみたいなのならまだしも、この前のドッジとかでもバンバン使いやがって、アレか、故郷にドロップアウトですか!? オコジョ志願ですか!?」
「で、でもこのままだと正式な先生になれそうもn……あっいえ今のは忘れてくださいっ!」
「忘れるも何も、何も具体的なこと聞いてないぞ……そうじゃなくてだ、俺だって一応新田先生や瀬流彦ちゃんの課題もギリギリこなしてるし、そもそもやっと明日太さんが小テストで20点台行った、って喜んでた英語教師はお前だろが」
「あ……そういえば」

……なんて頑張り甲斐を無くす方言をなするお方なんでしょうか、この先公は。

「人を焚きつけておいて無責任なヤツだぜ……そんなな、ヤバけりゃドーピングコンソメな魔法でどうにかしようなんて教師は生徒にとっちゃ毒だ毒、俺は付き合いきれないからな!」
「……!!」

ネギの心を抉る会心のお言葉を残して、明日太はクールでニヒル臭を漂わせたつもりで教室に戻って行きました……が。

「あ、明日太さん! 見ないでください!!」
「は……いいんちょ、何でお前まで下着姿に……って全員!?」

帰ってきたら、2-A一同が身包みをはがされて……否、一人だけ2-A・ザ・2-Aがいたようで。

「フム、神楽坂クンがご帰還カ、でも君じゃ相手になりそうにないネ」
「あのー超君よ、これはいったいどういったことですか」
:超さんが、自分で考案した問題をやるといって聞かなかったもので、その結果が……

一人だけ平然と制服のまんまな超っていう妙な状況を、五月が親切に説明して……いや、釈然としねーって!

「そうか、超なら仕方ないな……って納得できるか! せめてハカセと引き分けとかそういう結果じゃねぇのかよ!?」
「いやーー、流石に神話学や民俗学に関わる英単語は解りませんよーー」
「一体どんな問題出しやがったこのサコ○・ゲ○は……」

こんなクラスだったら、ネギじゃなくても魔法でどうにかしたくなってもおかしくはないのかも、と一瞬明日太は考えたとか考えてないとか。


釘宮円 曰く、
”あはは、超の考えた問題なんて俺達に解けっこないんだよなー。
……え、ちょっと美砂さん、何で俺の制服仕舞ってるの? あ、羽交い絞めにするな桜子! また女装kアッーーー!!!”


”前略、天国のおふくろ様。
やっぱり10歳児ともなると担ぐのが重たくなってきます。そりゃ本屋程じゃねぇにしても。
……あれーどうしたのかな首元がつねられたみたいに痛いぞぉ、ハンマー出しちゃおっかなー!”


7話 ”バカは死に目に遭ってでも治せ その2”
前回まで:期末だからって調子に乗ってるネギにお灸を据えた明日太。そんな中でも危機は迫る。

「水兵リーベ僕の船、なんとウグイス平安京……あれ、違ったっけ?」
「バッカ違ぇよ、えーと涙くんさよならさよなら涙くん~」
「違いますよー、七曲がりシップスクラークか、ですよ」
「誰がボケ合戦にしろと言ったのですか……ん、抹茶コーラが無くなりましたか」

野球拳で実りがあるわけがなくて、寮の談話スペースに明日太・まき男・夕と陣取って、学年21位なんて優等生なのどかの解説で勉強に励んでいましたらば。

「おー、賑わてるアルな」
「丁度いい、体を流した後の一勉強にお供させてもらうでござるよ、明日太殿」
「あぁ、構わねぇよ。んだが、これで益々変わり映えのない面子になったな、オイ」

今までさっぱり見かけなかった古と楓も参入すると、居残り戦隊バカレンジャーの勢ぞろいですってね。写真撮っとけ!

「明日太ここにおったんか、大変や……ってバカレンジャーで一緒に勉強しとったん?」
「どした木乃香、んな慌てて」

ペンが遅々と進んでいく中、木乃香とハルナが大急ぎで駆け寄って来ました。ああ、騒ぎの香りが……

「あのね、次の学年末で物騒なウワサが流れてるのよー。裕奈と桜子がさ、ネギちゃんとしず樹先生が逢引してるところを見て……」
「え~、ウチは何かプリントを渡しただけって聞いたえ」
「あのガキと逢引って、勝手にロリコン増やすなよ……ともかく、どう物騒なんだ?」
「私としては逢引説を信じたいなーってそれはともかく! なんでも、学年最下位のクラスが解散になるって話なんだよ!!」
「「「「な、なんだってーーーー!?」」」」

メガネを輝かせて暴露するハルナに合わせて、オーバーなリアクションを取る明日太・まき男・古・楓……あ、元ネタより一人多くね?

「ど、どういうことなのハルナ、麻帆良ってクラス替えはないハズでしょ!?
「と言うより、またハルナが突拍子もない噂を掴まされただけでしょう」
「よく訊いてくれたまき男クン、それについてはこのアナグラムを……」
「ガン無視してネタを続けるなです!!」

コントが始まろうかってところで、夕が止めまして……ウワサの段の話を膨らませるのがハルナ流だと知ってるとツッコミも加熱しがちですね。

「でもウチのおば……学園長もエライ怒ってるみたいなんや、2-Aの成績悪すぎや~って。桜子たちも詳しいことは知らんらしいけど」
「その上、特に成績が悪いのは留年を飛び越して初等部に戻ってやり直し! なんて話も上がっているみたいなんだy」
「M○Rネタでばっかり突っ走るなです! しかし学園長の意思もあるのでしたら、デマと楽観できないですね……」
「で、でも小学生にやり直しって嘘だよね!? 僕ランドセル捨てちゃったから買いなおすのヤだよー!」
「ランドセルあったらやる気なのかよ!? そもそもんな突拍子もないことになるワケが……」

何か予断を許さない段階に来てるとか来てないとか情報が飛び交ってると、明日太が突然変なことに思い至ったみたいだぞぉ。

「……いや、ネギがあんなに慌てまくってたのがこのことだと考えられなくも無いよな、ひょっとするのかこりゃ!?」
「今のクラス好きやから、バラバラになるのイヤやわ~……せっちゃんもおるし」
「どうしよう、僕らが足引っ張ってるんだし本気でどうにかしなきゃ……」
「しかし拙者たちバカレンジャーと月曜に控えたテスト、彼我の戦力差はあまりにも大きいでござる」
「今からシャカリキになって勉強しても付け焼刃にもならないアル……」

なんだか勝手に小学生出戻りになると決まってしまい、絶望的な状況に悲嘆するバカレンジャー一同……少しは疑いません?

(そんなかでダントツなのが俺だもんな……ここは一ヶ月パーでもいいからネギに頼……いや、男の面子があるだろでも初等部は……)
「……まだ可能性の域を超えてないとはいえ、有効な対策を取るならばやはりアレを探すべきですね」
「夕!? アレってまさかあのプレシャス級のブツのことじゃ……」
「何だ、切り札があんのか!? 面子が守れるなら虎の穴でも大リーガー養成ギプスでも構わないから教えろ!!」

明日太が天使と悪魔のデスマッチを頭でやらせてると、いつの間にやら逆立ちでもしてたのか、夕がはっちゃけてしまった模様で。

「これは、我々図書館探検部の活動場所、図書館島に関することなのですが……」
「うん。湖に浮かんでて地下まで続いてる大きな図書室だよね」
「あのむさ苦しいぐらい本がたかってる島だな。ここ1週間くらいヤな思い出しかねぇけど」
「その図書館島の深部に、読むととても頭が良くなるという『魔法の書』があるとの口伝を聞いたことがあるです」
「「「「ま……魔法っスか!?」」」」

いきなり魔法なんて話に飛んだ所為か、バカレン残り4人はキャラ忘れて驚いてます。

「質のいい参考書の存在が伝わるうちに尾ひれがついたのでしょうが、話題になっている以上手に入れて損はない代物かと思うです」
「いやいやー夕ってば、そりゃゼ○ムスのダー○マターやルド○ン家の財宝並の都市伝説でしょー」
「そーだよ、2-Aもカッ飛んだ人多いけど魔法はさすがにねー」
「残念やったな~、明日太ってそ~ゆ~の信じないってゆうとるし……」
「いや、待てよ……魔法使いが店開いたり車飛ばしたり中学校で先生したりする昨今、本ぐらいあってもおかしくは……」

また明日太君、小声とはいえそーやってイった人みないなこと口にするぅ。

「レッツゴートゥー図書館島! ビーハッピーグッドラック! ドミネ・クオ・ヴァディス!?」
「途中から意味変わってるぞコノヤローです! 毎度隙あらばボケまくりやがってこの味噌っカス共です!」

締めなきゃならん決めシーンでコレなもんで、夕も怒りのあまり”です”が語尾についてるだけなツッコミに……心労溜まってそうね。


「図書館島のことやったら探検部に一日の長があるえ、まずは持ってく荷物を厳選や」
「まぁそこら辺は任せるさ……ほらネギ、とっとと起きんかい」

各々の部屋で突入準備と相成って、木乃香がせっせと動く横で明日太はソファーで眠りこけるネギの頬をつねりつねり……やる気ねぇなこいつ。

「ネギちゃんも授業を詰めてて疲れたみたいやし、起こさないで連れて行ったらええんやない?」
「俺に担げっつうのか、しょうがない娘っ子だよな……あ、熊殺しの試合あるからビデオセットしねぇと」
「そうや明日太、おにぎりの具やけど柴漬と梅、どっちがええ~?」

嫌々でも一応ネギを肩にだらりと担ぐ明日太君。お姫様抱っこって選択肢は無いのな。
そんなシュールな姿でビデオデッキにしゃがむ明日太とのんびりご飯を握る木乃香には、これから起こる惨劇は予測できなかったのである!

「明日太さん、木乃香さん、そろそろ出発の時間です。荷物を持って集合してくださいです」
「了解や夕くん、もう少しでおにぎりできるから待っててな~」
「いやだから、そろそろ出発だと言ってるじゃないですか……」

ドアをノックして呼びかけようとペースを乱さぬ木乃香さんに、夕も声からしてテンションが下がってきたみたいで。
まぁ遅れたといっても大して支障も無く、図書館島へ向け夜の学園を歩きに歩くバカレンジャー・探検部連合の皆様。

「そもそも図書館島というのは、明治中期の学園創立に併せて建設された、世界でも……」
「やぱり胴着を着ると気が引き締まるアル。数学でも理科でも何でも来いアル!」
「この探検、冒険譚として格好のネタになるわー。パル様楽しみ♪」
「そういや漫研の出し物って見たこと無かったわ、今度見してえな~」
「二度の大戦の戦火から守るために世界各地から貴重書が……」
「よく元気出せるよなーくーふぇ、僕もう怖くてたまんないよー」
「んん……あれ、逆さまに……ってどうなってるんですか!? 誰が持ち上げてるんですかー!?」
「やっと目ェ覚めたかネギ。それより何だその手首の黒いの、今話題のタトゥーってやつか?」
「蔵書の増加に伴い幾度も増改築が行われ……」
「え、ネギ先生そんな不良みたいなものに興味があったんですか!?」
「そもそも、たとぅーが最近話題になったのか覚えがないのでござるが……」
「……つーか聞けよお前らです! これから入るとこの説明してるだろです! 特にバカ一同はどんだけ危険か理解しろよです!!」

あれま、なんとも連帯感のない集団だこと。話半分でもいいから聞いてやれよ。

「あぁあぁ分かったよ夕。ごめんな、悪ぃ、すまねぇ、許せ」
「本気で謝ってるんですか……ともかく図書館島に着きましたよ。裏手の入り口から入りますから付いてきてください」
「うっわ、水の中歩くの!? あーー冷たっ!!」
「我慢するですよ、着替えを持ってくるよう言っておいたでしょう」

もはや魔境かと思うくらい険しい場所を歩いていきまして、裏手に回ると表に負けないほど大きな扉が構えてありました。

「よっしゃ、早速中を拝んでみようぞ、と……ぐぅぅぅぅっ、こりゃ重てぇわ!」
「ならば、拙者が助太刀いたそう……ぬ、確かに重いでござるな」
「僕とハルナはここで待機して、携帯から案内します……明日太さん、開けられますか?」
「いやぁ引いても押しても動きゃしな……どわっ!」

呆れ顔で夕が壁に隠れたスイッチを押したらば、あら不思議。ぴくりとも動かなかった扉が低い音を出して開きましたとさ。

「図書館で腕力ばかり使うわけがないのですから、何らかの仕掛けを探すことを考えてくださいです」
「そう言われても、バカレンジャーで気が回りそうなのは夕しかいないアルよ」
「このパープリン共が……解りました、注意したらとっとと動きやがれですよ」

最早、夕君もどうでも良くなってきたんだろうな。とぼとぼ中へ入っていって他の突入組も続いていきます。

(まぁネギ、そういうこった。イザって時は魔法でタスケテケスタを頼むぜ)
(はい……? あ、魔法ならテストが終わるまで封印しちゃってますよ)
「なぬ!? いやいや冗談は程ほどにせぇよ先生さんよぉ」
「冗談って決め付けられてMKファイブぅ~、今の私はキャピキャピの美少女教師ってカンジぃ~」
「ギャル語でゴマかしてんじゃねぇ! 何だよ魔法がありゃ罠でもどんとこーいだってのに連れてきた意味ねぇだろ!!」

嘆いたところで時既に遅し。勝手に閉まった大扉を背に、綾瀬夕探検隊は迷宮を降り始めたのである!!!


早乙女ハルナ 曰く、
”やっぱりアレかな、夕と明日太ってツッコミ系同士気持ちが通じるところがあるっぽくない!? あるよね!?
でも攻め受けが決めづらいのよねー、この2人どっちもこなせs『ソクラテススラッガーー!!』ゲフッ……”


”前略、天国のおふくろ様。
いきなりネギがその層狙ったセリフを使い始めてます。
……あぁ、手遅れな状況ってこういうことを言うんだろうな”


7話 ”バカは死に目に遭ってでも治せ その3”
前回まで:頭が良くなる本なんて都合のいいものを求めるバカレンジャー。そういうズルもおテントウ様は見てるんじゃねーの?

「先程も言ったような理由で、全貌の知れないこの図書館島の謎を解明しようと、麻帆良大学の有志が提唱しまして……」
「中等部や高等部からも興味ある人が集まってきて、図書館探検部を作ったんやて~」
「へー、そうなんですか……うっわー! こっちにも本がたくさんあるーーっ! 先生マンモスうれピーですっ!」
「いちいちオーバーリアクションとらんでいい! それにマンモスうれピーってお前何歳だよ!?」

暗闇を抜けて行きますと、ランプのぼんやりした灯りが数え切れない本棚を浮かび上がらせる大きな広間に出てきました。

「本来ならば、ここ地下3階までしか中等部は入って来られないことになっていますが……」
「入れない階までこっそり行くなんて、ますますゲームみたくなってきたアルね」
「あー明日太さん見てください、これってすごく珍しい本で……」
「だから聞けっつーに……って先生、そこにh」

いっつも通り夕の講釈なんざ聞く気もなく好きに動く一同で、ネギも本に触ろうとしますが別の本棚の隙間から矢が!

「うひゃぁぁっ!!」
「いやいや、間一髪でござったな」
「貴重書狙いの盗掘者への防護策として、今のようなワナがそこらじゅうに仕掛けられてるので気をつけろ……と言うつもりだったのにみなさん自由過ぎです」
「うっそー! それヘタしたらタマ取っちゃうよ! タマ取られちゃうって!!」
「あぁ、道理でこの前来たときの本屋はやたら本棚に近寄ってなかったのな……つうかどんな防犯対策だよ」

危うくネギのタマが取られるところで、楓が矢を掴み取ったもんだから良かったが、夕の解説聞かなかったことが問題よね。

「大体僕ら探検部でも、正確な情報をやり取りしなければ危険な場所だというのに……こちら夕、地下3階に到着したです……ハルナ、聞いてますか?」

ひとまず、地上で待つのどかとハルナに連絡しようと携帯を取る夕ですが、通じてるハズなのに返事が来ねぇでやんの。

「……こちらスネーク、地下3階に到着した。大佐、指示を頼む」
『スネーク、一体何が起きた!? スネーク、スネーーーク!!!』
「うるせえよこのヲタ女がです! 作戦会議で『今回の連絡にはMGSネタ混ぜて』なんて真に受けることを期待すんなです!!」
『いやー、夕ならノってくれると信じていたから黙ってたのよ♪ アムル・ライ、ガンガってね!』
「了解……って今どきガンガルネタで悦に入ってんじゃねえです! 通信終わり!」

……どっかでコントグループとしてやっていけそうね、この子ら。

「あの……ところで、皆さんはなんで図書館島に……また誰かの偽者が出たんですか?」
「ん~とな、せっちゃんとのラブラブライフの為に、頭の良くなる魔法の本が欲しいんよ」
「僕らも向学心に目覚めたってことでさ、ネギちゃんも協力してよー」
「え……そんなズっこいモノ手に入れるために来たんですか!? あとせっちゃんって誰!?」

いきなり生徒に反則スレスレな点数の取り方を提案されたら呆れもすらぁね。あと疑問も持っても無駄なときは無駄。

(明日太さーん、てめぇ魔法使いすぎんなって言ったばっかりじゃん! いたいけな私騙してたってことー!? チョベリバー!!)
「いやーネギ子ちゃんよ、これも大人の事情ってヤツだから勘弁してくれ。ガ○ンコ!みたいなとんでもない事態も控えてることだしさ」
「え、それって……」
「何いきなり目ェ潤ませてんだ、俺らはお前の両親一生懸命探したりとか日本全国探したりとか見つけたりとかしてねぇぞ?」
「いえ、いいんです。バカレンジャーの皆さんの思いは伝わりました! 全ての生徒は先生の為にズルするものです! ズルしてもいいのです!」
「また分かりづらいパロを……サンラ○ズに訴えられても知らねぇぞ」

サン○イズ云々は今更だろうが、何が心を動かしたのかネギもあっさり承諾。それもそれでクサい気が……明日太バカだし気付いてないっぽいな。

「あのさ夕くん、あとどれくらい歩くの?」
「やっと訊いてくれるようになりましたか……それでは、部室からくすねたこの地図で解説しましょう」

まき男が質問してきまして、待ってましたと夕は控えていた地図を取り出して広げるには。

「現在地下3階まで来ていますが、11階まで下った先にある地下道で……宝物殿らしき場所まで上がっていけるようです」
「なんか時間が書いてあるけど……へー、4時間あれば往復できるんだー」
「ちょっと夜更かしするってレベルだな。バイトもねぇし気合入れていこうか!」
「でもさ、ホントに帰ってこれるかも分からないしさ、今のうちにやめといた方が……」
「大丈夫やて、階級章持っとるウチらに任しとき~」
「ワタシたちからすれば軽い遠足気分アルよー」
「とはいえ油断は禁物。気を引き締めるでござるってばよ」
「あのー楓さん、それはNGワードですよ! 講○社なんだしおきらくらくしょーとかで……」

まとまりかけたのかと思えば、結局奔放な皆様に戻る始末。夕もツッコむ気が失せてきてますね。

「やっぱ緊張感ねーなこのスッカラカン共……ともかく出発ですよ!」
「「「ハイル・ハ○イダー!!」」」
「お前ら、絶対ワザとやってるだろです!!」

ともあれ、彼らがこうもふざけてられるのは今のうち……あ、危機的になってもバカだし気付かねえか。


「父さん、そして母さん……明日太です。今、網の目の通路みたく置かれた本棚の上を歩いているわけで……本溜めすぎだとか、そんなに本いつ読むのかよと小十時間ぐらい問い詰めたくなるわけで……」
「説明セリフ喋っとるとこスマンけど、そこらじゅうにワナあるから気い付けてな明日太……ん? そうなるとネギちゃん連れてきてよかったんかな~?」

おっしゃるとおりに、高くそびえる本棚を橋代わりに奥へと進む一行ですが、今更幼女を連れてきたことについて考え始めた木乃香さんで。

「心配ないんじゃねぇか? 毎朝俺の足に追いついてるくらいだし、別の入り口からだが一回入った場所d」
「イヤァーーーっ! 先生落ちちゃいます! 逝っちゃう、逝っちゃいますぅっ!!」
「ね、ネギちゃんが落ちてる!? あ、でも悲鳴がなんかヒワイ……」

心配しとけよな、こんな展開もあんだし。明日太の信頼も空しく本棚の上からずり落ちて棚や本にしがみついて助けを求めるネギ……なんだが、漢字使ってないと発禁喰らいかねない悲鳴にまき男も興奮気味さ。

「……あぁもう、人の気苦労増やす真似ばっかりしやがって! 助けに行くぞオラァ!」
「ちょっと待った! このねるとんは僕だけで十分だよ、伸びろリボンー!」

ょぅι゛ょ萌えが頂点に達すると、まき男は次元の壁を越えてリボンを呼び出すのである。まき男はリボンを手に取ることによって、自由自在に操ることが可能となるのだ!
……そんな気合のこもったシーンではなく、カバンからリボンを取り出したまき男君は梁に巻きつけて、ネギのしがみつく虚空へダイビング!

「性欲をもてあまーーす! アーーアアーー!!!」
「ターザン……いえ佐々木さん!? 助けてください、私を抱いてっ!」

ご新規さんをつっぱねるようなノリのまんま、まき男がネギを捕まえて別の本棚の列に着地なんて救出劇を魅せるが……いやホントに何これ。

「大丈夫だったかい、クラ○ス?」
「ク○リスじゃないですけど、ありがとうございます! そのリボンスゴイですねー」
「あ、そうかな!? お望みとあらばコタツの上のみかん取ったりご無体なプレイ堪能させたりしちゃうよグヘヘヘヘ……」

なんだかキャラが歪んできたまき男君が、いやらしく笑いながらドタドタしてると、カチッとワナっぽいスイッチを踏んだ感触が……

「「……『カチッ』?」」
「ほ、本棚が崩れてきた!? ネギ、まき男! すぐにそっから逃げ……」
「ライジング・スマッシュ、アルー!!」

やっぱりワナだった……と驚く間もなく古菲が飛び出しまして、飛び蹴りで押し返す……明日太もそうだが人間のやることじゃなかろうよ!

「くーふぇさんスゴ……って今度は本が雪崩みたいに!? あ、とても濃いのがいっぱい……」
「おきらく忍法千手観音の術でござる、ほいほいほいほいほいほい♪」
「はーい、見境なしにボケ倒して時間押してますから巻きで行きますよー」

本棚が押し返せても、中の本が降りかかる二段構えの策! だが楓さんの手際の前に全て受け止められたぜ! ……もういいや。

「そ、それにしても明日太さん以外にミュータントみたいな人たちがいたなんて……」
「ワタシ達テ成績悪いかわりに運動神経いいアルから、この程度序の口アルよ」
「え、たちって僕も入ってんの?」
「ネギ子の心配には及ばないでござるよニンニン」
「ねえ、僕も入ってんの? ねえ!?」

否定したい気持ちは分かるが、君も末席に座れるレベルの変た……達人さ、まき男君よ。

「……あ、言い忘れてましたけど”濃いのがいっぱい”って印刷が濃い本がいっぱいってことですからね。勘違いしないでくださいねPTAの皆s」
「思い出したように訂正してんな! 大体どうした、今のワナなんて魔法が無くても逃げ切ることくらいできっだろ!? 腹痛でも起こしたか?」
「いえー、魔法で運動能力を強化できないことをすっかり忘れてまして……」
「え、何お前それも魔法頼みだったのかよ!? 1投だけなのにガーター出すお助けプロボウラーのつもりかこのガキャァ!!」
「す、すみませんーー!! ……って私謝るようなことしたっけ?」

魔法使えるか確かめずに連れてきたのは明日太だから、ネギが謝るのは不当っちゃ不当だよね。

「ったく、結局お前がいるとトラブルとお友達になっちまうのか……ホレ、杖落としたままにしてないで持っていくぞ」
「え、そんないいですよっ、自分で拾いますから……あっ」

そんな中、二人して杖を拾おうとして指先がこっつんこ……ああそうだ、元はラブコメなんだよねコレ。

「おっ、すまね……ってお前、妙に手ェ冷えてないか?」
「あっいえ、そんなことは……」
「今更しらばっくれんじゃねぇよ、パジャマのまんまなのがムリあったしな……ホレ、上着着とけ」

気負いもあるのか、明日太は自分の上着をネギに羽織らせました。バカで煩悩持ちなだけでは無かったのね。

「なんや明日太、子供ギライやのにやけにネギちゃんに優しくなって~……ウチ妬けちゃうわ~」
「な、バカ吐かせ! 今んとここいつがまほ……」
「……まほ??」
(……うが使えないって言っちまうとこだった、セフセフ!)
「あーそのマホ体験って知らないのか!? ほらアハ体験の親戚みたいなヤツ!!」

木乃香さんの茶々が突発だとはいえ、こんな苦しい返し方はないと思われ。

「明日太さん上着ありがとうございますっ! 今の私、明日太さんと一つになってます……」
(このアホ助は、最悪のタイミングでエロセリフかますんじゃねぇ!!)
「つーかアハ体験って今2003年ですy……ん、こちら夕、どうしましたのどか」

そろそろ胃に穴が開きそうな明日太の苦悩はどこへやら、夕のケータイが連絡が来たことを伝えまして。

『こちら地上班ですー、そろそろ休憩できる場所があるのでお食事にしてくださいー』
「……ということです皆さん、急いだりしてペースを崩さないようn」
「おー、待ちに待ったときが来たでござる、ダッシュでござるよー♪」
「多くの英霊が、無駄死にでなかった事の証の為に! アルー」
「再びジオンの理想を掲げる為に!」
「星の屑成就させようとしてんじゃねーです! もういっそソロモンに帰っちまえ貴様らです!」

さて、悪ノリ許すまじがどこまで続くんだろうな……つかそろそろ加勢してやれよ明日太。


綾瀬夕 曰く、
”えー皆さん、僕のことを何か勘違いしてませんか?
僕は仮にもバカリーダーなんですよ、哲学はもちろんあらゆる文学にも意見を持つキャラだというのに、常時ツッコミ最大稼動って何だよ! 責任者出て来いです!!”


”前略、天国のおふくろ様。
今回はホントにギリギリです。いやパロネタ満載っつっても限度あります。
タダでさえ旅路に疲れた中で、あれだけネタ武装されてもツッコミきれねぇって”


7話 ”バカは死に目に遭ってでも治せ その4”
前回まで:想像以上に弱まっているネギとツッコミに疲れた夕。バカレンジャーの行き先は暗い……

「よーし、わさビーフ争奪ジャンケン始めるよー!」
「拳闘アルか? それならワタシの出番アルよー!」
「ジャンケンを格闘に使うのはサイ○人ぐらいだろ……んぐ、ふぉのふぉかかふまひは、ひゃふがふぉぼかひゃん」
「いやや明日太、食べてるまま喋ったらカツオ節飛んでくるやん~」

第178閲覧室……ってこんな部屋がどれだけあるんだって広いお部屋でのんびり食い散らかす探検隊の皆さんで。

「あー負けた……でもだだっ広いしワナもあるし、変わった図書館だよねー」
「変な学校とはングング思てたアルがングング、ここまでングングとはネ」
「裏山の世界樹について飛び交ってる噂が本当だとしても、あながち驚けないでござるな」

変り種のバカレン3人組も一応、変だとは思っていたらしいですね。

「……! あの明日太さんっ、ここやっぱり変ですよ」
「ごぅっ……んぁ? 何だよ人が食ってるとこに」
「その……どことか何個とかは分からないんですが、私以外の大きな魔法の力が感じられまして」
「え……そりゃどういう意味だ、また共歩きとか厄介なのが出てきたのか?」
「いえ、敵意が感じられませんし大きさも桁違いなので、ひょっとしたら魔法の本かも……」

どうやらネギが妖気を感知したようで、こっそり明日太に打ち明ける……のはいいが内容知らんと怪しいことしきりでしょうよ。

「何ネギちゃん、明日太とヒソヒソ話なんてしてさ……お義兄さん? 恋敵?」
「ええな~ネギちゃん、そない仲良うしてて~」

ほら、まき男と木乃香が食いついて来たってね。

「ち、違わい! 別に怪しまれっようなことは話しちゃ……」
「ネギちゃんとベッドで添い寝しとるクセに、まだ話し足りないんやな、このこの~」
「バカ吐かせ! あれはこいつが何べん言っても忍び込んでくるだけだ!!」
「でも~、ネギちゃんのお兄ちゃんと明日太って似とるんやろ?」
「ハイ、ちょっとガタイがいいのを除くとお兄ちゃんにそっくりd」
「ハンマァァァァァヘヴンッ!!!」
「むきゃーっ!!」

最近ご無沙汰だったピコハンの再登場ですが、ヘヴンだと引き抜かにゃいかんこと忘れとるぞこの坊ちゃん。

「勝手に人の体検分してんじゃねぇ! ティーチャーヒヤリハットで訴えるぞクソガキ!!」
「そんなヒヤリハット大歓げーい! 明日太代わってー!」
「勝手にしろ、つか今から持ってけ! 送料はジャ○ネットに負担させっから!」
「誰かハラスメントって言い直してやれよです……経路の確認も出来ましたし、そろそろ行くですよ」

散々明日太がイジられてからの再出発となりましたが、図書館島先任軍曹はこのウジ虫共をしごき倒していくことになる!


「マ○オ……ロック○ン……トゥーム○イダー……いや違うよ僕らあんな人外じゃないもーん」
「ト○ガラ・ド・ペパ○ーチョの気持ちが分かってきた……つか湖って何だったんだよ湖って」
「比較的常識的なこの2人はやられてるですね……まぁ僕らにとっても人外魔境に等しいですが」
「でも大げさやな~、わんさか本があるだけやん」
「こんな狭いトンネルにある本って誰が読むんですか……あーん、杖がつっかえてますー!」

いろいろと揉まれてきた探検隊の面々は細い通路を這って行く。これを越えればベトナムに送られ……ないか。

「おい夕、まだこんな調子なのかぁー!?」
「もうすぐで着けるですよ。つか要所要所で地図辿って見せたんだから気づけよです」
「ど~や夕君、抱きしめた心の小宇宙が燃えさかってるやろ?」
「今どき☆矢ネタですか……まあ熱く燃えてるのは否定しないですが」
(いや、ツッコミ過ぎでイライラしてんのしか分かんねぇよ!)

夕が無表情がちなのはそうなんだが、ツッコミ疲れの原因の一つは明日太君じゃないのか。

「大学部でも到達が至難という宝物殿……中等部の我々が着けたのはバカレンジャーが奇跡を起こした故でしょう。さあ傷ついたままでいないで、この上から本を頂いて遥かな銀河を誓い合うですよ!」
(あぁ、燃えてるとネタ被せてくるのか……)
「こ、この上にペガサス幻想と書いてファンタジーがあるんですね! 先生楽しみですっ!」
「お前までノってくんなってかホントに何歳だ!?」

誰もまともに答えられそうも無い疑問をさて置いて、真上の石蓋を開けて上れば物々しさが漂ってまいります。

「さて、こここそが魔法の本の安置室と言われr」
「ほえ~っ、いかにも魔法かかってそうなお部屋やわ~!」
「すっごーい! 妹のRPGで見たのっぽい感じだー!!」
「ラスボスの間アルか? くらやみのくもはドコアル?」

夕の上がったテンションを冷めさす程の盛り上がりもむべなるかな、そんじょそこらの中世モノの設定を上回る本格的な宝物殿でござーい。

「いや、そんなにまで盛り上がってないで僕の話を聞いt」
「……み、皆さんあの本を見てください!!」
「なっ、どしたよネギ突然でかい声出して!」
「アレは伝説のメルキセデクの書ですよ! なんでジャップのせっまいお庭にパクられたのか知りませんけど私も初めて見ました!!」
「なんかとんでもなく下に見られた気が……って正真正銘のモノホンかよ!?」
「モノホンどころか最高の魔法書と呼ばれる代物ですよ! あれなら頭を良くした上に女の子の前でアガらない体にしてもお釣りが来るくらいですっ!!!」
「えっマジ!? お代官様のご無体な~プレイやり放題なの!? ねぇそれホント!?」
「ネギちゃんやけに詳しいな~」

おいおい、ここでネギさんまで盛り上がったら誰が流れ止めるんだ。

「ともかく! 何らかの仕掛けが無いといえない以上、一旦慎重になりまs」
「ワタシが一番乗りアルー!」
「くーふぇズルいよ僕もー! ご・無体・な! ご・無体・な!」
「本物だってならとっとと確保だ! 最下位脱出すんぞ!」
「いい加減聞けよお前らです! ガンガン進むなって言ってんだろです!」
「夕さんの言うとおりですよっ、どんなワナがあるか分からないんですから……っていやーっ!!」
「「「へ……あぁぁぁぁっ!!」」」

いかにも何か仕掛けてありそうなほっそい渡し橋にも果敢に突撃する古菲らと止めようと追いすがる夕とネギ……って構図も見事に橋がおっぴろげて崩壊しちゃいましたとさ。

「ゆ、床が抜けても~た!? ネギちゃん大丈夫!?」
「うーむ引っ掛かってしまったでござるか。夕殿たちはともかく古まで見落とすとは修業が足りんでござるな」

追いつけなかった木乃香と開いた橋にまだ立っている楓は随分と余裕ありますが、脱落者の皆さんはそんなこたぁないさね。

「アイヤー、つい本に夢中になてたアルー」
「大丈夫じゃないですっ……背中打ちましたー……」
「いたた……こんな単純な罠に掛かってしまうとは……本命前の罠にしては浅すぎるのが不気味ですが」
「ひ、ヒザ小僧割れた、割れてる! ……アレ、この床ナニ?」
「あぁん……英単語ツ……ツイスターゲームバージョン10.5ォ? 何じゃこりゃ!?」

明日太が読み上げたとおりで、アルファベットを含んだ○の点在するそれはいかにも、美女とセットで大きい男の子の味方・ツイスターゲーム。そして! そんな状況をじっくり観察する暇はッ! 彼らに全く与えられなかったッ!!

『かかったなアホが!』
「せ、石像が動いた!? 何、バトル物にテコ入れでもされたのか!?」
「おぉぉぉぉ、金の針はどこアル? 瞬殺するアル!」
『この本が欲しくば! ワシの出す問題に! 正解するのジャ○プスーパースターズ!』

まさに奇怪ッ! 本を警護するかの様に構えていた石像がッ! おもむろに動き出しt……ってノド痛っ! ともかく動き出してネタキャラ全開でクイズ出してきてますピンチです!

『では第一問ッ! ”アリーヴェデルチ”の日本語訳を答えなさい○ご100%!』
「問題って突然かよ! ってかモロにイタリア語じゃねぇか!」
「みなさん落ち着いてください! ともあれ問題に正解してワナを解くしかありません! つか明日太さんジョジョラーならすぐ解けってカンジ~!」

ネギはそう言いますが、ツッコミどころの多すぎる状況に動けずまいですよ。

「ハッ……そりゃそうだ落ち着いて正解を踏めば……」
『ば!』
「……ってうっかり”ば”踏んじまった畜生ぉっ!」
『そうそう、一回踏んだ文字を取り消すことはできないZ○MBIEP○WDER!』

あーあ、もうグダグダですよ。ここで彼らの探検は終わってしまうのか!?

「んーと、よく分かんないけど正解何なの?」
「いやまぁ、別れの時に言う言葉なんだが……」
「なーんだ、だったらこうすりゃいいじゃん。”い”、”ちゃ”!」
『”ばいちゃ”……一応正解じゃNARUT○』
「その○は隠しきれてないだろです」

かと思ったら、まき男クンの機転でなんとか……これは機転ってレベルですか?

『第二問ッ! ”サンダークロススプリットアタック”の訳を答えテ○スの王子○!』
「いや確かに英語だけど! えぇと”か”、”ま”、”せ”!」
『第三問ッ! ……うーむ”COOL”!』
「語尾ネタ切れてるじゃーん! えーと”た”、”し”、”け”!」
『第四問ッ! ”スマート”の訳を答えロ○ットで突き○けろ!』
「思い出したようにネタ入れたアル!? ”ぽ”、”る”、”た”!」
『第五問ッ! ……あーもういいや”タカヤ”!』
「もう日本語になっているでござるな……”あ”、”て”、”て”、”ん”、”の”、”よ”」
「つーか、本格的に集○社が乗り込んで来そうです」

いやホント、見てるこっちもヒヤヒヤ物で……それよりこれで正答なんスか!?

『ラストッ! ”ヒステリア”の訳を答えよろしくメカドック!』
「いきなり古っ! まぁいいやコレで正解だ! ”い”、”ぬ”!」
「は、背筋痛いけど僕も! ”い”、”ぬ”!」
『ぞ!』『ぬ!』
「「……え?」」

ゲームを続けて無理な体勢になっていたのもあるが、決めてた答えを突き抜けてワケの分からん生物の名前に……

『ホホホホホ、残念ながらはずレベルE!』
「ってーかぞぬはねーッスよ明日太さん、まき男さん! 頭悪すぎなんですけど~!」
「語尾ネタもいい加減アルし……は、ハンマーなんて構えて何する気アル!?」

そりゃもちろん床をブチ抜く為、なんて言う親切心もないらしく無言で振り下ろされる一撃! そして砕けるゲーム盤!

「なっ……あぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!」
「正解できた問題を落とすとは、流石バカレンジャーですねハハハハハ……」
「あ、夕くん壊れても~た」
「明日太さんサイテー! ぞぬ肉食べて死んじゃえーっ!!」
「簡単に死ぬとか言うな! って7話はこれで締め入っちゃうのかぁぁぁぁぁぁっ!!!」

嗚呼探検隊よ、奈落の底に落ちる最期とは……え、次回もあるの?


『エンディングコントのコーナー!! 今までキャストさんの一言だけだと続いてるのか次の話行くのか分からない貴方の為の駄弁り場です! 今回は”鳴かぬなら ○○○○○○○ ホトトギス”、真ん中を埋めてみましょうってことで明日太さんから!』
『鳴かぬなら 闘魂注入 ホトトギス!』
『別の意味で泣いちゃいますよ! ハイ木乃香さん!』
『鳴かぬなら 鳴くまで占うえ ホトトギス~』
『キャラ残した無難なネタですね、ハイ宮崎さん!』
『鳴かぬなら 鳴く本読ませます ホトトギス!』
『無難ネタ以下略、ハイ綾瀬さん!』
『鳴かぬなら ツッコミ換われです ホトトギス』
『切実な思いが伝わってきますねー、ハイ早乙女さん!』
『鳴かぬなら ”ここが気持ちいいんだろ……鳴いちゃえよ!” ホトトギス!』
『夕方アニメ放送する原作から離れすぎな上長っ! しかし何ですかこの二流なネタ共は! ボキャ天なら問答無用でポイですよ!!』
『……いやぁよ、これってネギパのパクリ企画じゃねぇか』
『あ、気付いちゃいました?』
『気付くにきまってんだろ!』

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