性転換ネギま!まとめwiki

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匿名ユーザー

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小さな花

「あー。いい天気だ」
麻帆良学園内にある教会。その屋根の上で寝転がるバチ当たりな人影が一つ。
スポーツマンらしい短いツンツン頭を指でいじりながら仰向けで空を眺める少年。

出席番号9番 春日空。

教会に身を置く修道士ながらも、その生来の自由奔放さを失うことなく教会の屋根で惰眠を貪る素晴らしい根性の持ち主である。
学校が終わった後家に帰るでもなく、また教会の仕事をするでもなく、こうしてダラダラと過ごすことが彼の日課となっていた。
最近はこの教会の上がお気に入りとなっている。時々聖歌隊の練習が聞こえてきたりして、それがまた心地良い。
ぼーっと、空を見る。
自らと同じ「空」の名を冠するこの広大な蒼は、こうして何をするでもなくただぼんやりしているだけでも小言の一つも言ってこない。まったく器の大きなことだ。
「シスターシャークティもこれくらい心が広ければ助かるんだけどねぇ・・・・」
自分の不真面目さを棚に上げて、叱られるのをシャークティの短気の所為にする空。眼前に広がる「空」の器量までは到底辿り着けそうにない器の小ささだ。
そんなことを考えつつも、ただ空を見続ける。
そうしてる内に思考も頭もぼうっとしてきた。頬を撫でる風も気持ちいい。
(あ、なんか気持ちよく寝られそう・・・)
などと考えまさに眠りにつこうとしていた空の頭に、小さな、しかし彼の意識を引き戻すには十分な声が響いた。

『ソラ』

と、名前だけを呼ぶ声。
声と言っても耳ではなく直接頭に伝わる言葉、「念話」での呼びかけ。
それに答える為に、だらけきった体に力を入れて起き上がらせ、屋根の端まで歩いて下を覗き込む。
「おーう、ココネ」
「・・・」
彼を呼んだのはフードを下ろしたシスター服に身を包んだ黒人の少女、ココネ。
空と同じく教会に身を置くシスターである。
下から常の無表情で空を見上げる。
「ちょっと待ってろー・・・よっ、と」
軽く勢いをつけ、空は地面へと飛び降りた。
普通の人間なら怪我どころではすまない自殺行為だが、彼も見習いとはいえ魔法使いだ。魔力による身体強化を行っているのでこれくらいの高さは問題ではない。
重力に従って落下し、見事に着地。
「へぶしっ!!」
したら格好良かったのだが、そこはそれ空である。着地の際に足を滑らし、盛大にズッコケた。
「・・ばか」
「・・・ほっとけ」
幸い怪我はなく、すっくと立ち上がり服に付いた土を払う。
「こんな時間まで何やってたんだ?初等部の授業はとっくに終わってるだろ」
「・・シスターシャークティのお手伝い」
「おーおーココネちゃんは優等生だねー。えらいえらい」
無造作にわしゃわしゃとココネの頭を撫でる空。褒めてるのかおちょくってるのかは微妙な所である。
「・・シスター、ソラがこの前おそうじサボったの怒ってた」
「おろ?おかしいな急に耳が聞こえなくなったー」
耳の穴をほじりながらそんな事をぬかす空を、ココネも白い目で非難する。
小学生でももう少しマシな誤魔化し方をするだろうに。
「で、なんか用か?」
「・・・いっしょに帰ろ・・・・ダメ?」
「おっけ、いいぜ。俺も暇を持て余してた所だし。一人で帰んのは寂しいもんな」
もう一度ココネの頭を撫でる。今度は優しく。
こうしていればいいお兄さんに見えないこともないのだが。
「それじゃ行くか・・・・・て、あ」
「・・・?」
どうしたの?と言う風にココネは首をわずかに傾けて空をうかがう。
「鞄、屋根の上に置きっぱだ」
確かに空は手ぶらだ。屋根の上には主人に置き去りにされた学生鞄がぽつんと佇んでいた。



「・・・・・ばか」
「・・・・・・ほっとけ」



さて、もう一度屋根と地面の間をジャンプで往復するという無駄な労力を使った後、空はココネを連れて帰路についた。
途中ココネがせがんだ為、空はココネを肩車して歩いている。
すれ違う女学生にクスクス笑われたりもしたが、まあ気にしないでおこう。

「そういや、よく俺がいるの分かるよな。俺だっていつもあそこにいるわけじゃないのに。下からじゃ見えないだろ?」
下から見えないので見つからない、というのも空があの場所を選んでいる理由のひとつである。
しかし、ココネは空があそこにいても、いつも分かるのだ。
「・・・・ソラなら、分かる・・」
「ふーん?ココネは探知能力高いもんな。念話も特殊だし。いいよなーそういう能力があって。俺なんて逃げ足くらいしか能ないもんなー」
「・・・ソラは不真面目。修行しろ」
「ハッハッハッ、聞こえんな」

 ・・・ソラ「なら」、という微妙なニュアンスの違いに、空は気づかなかった。

頭の上のココネと会話をしながらも、足を進める空。いくら女の子とはいえ、ヒト一人を乗せてずっと歩いていても息を切らさないあたり、体力はある。
と、そこでココネが何かを見つけたようだ。
「・・・あ」
いきなり空の髪を掴んで、ぐいっと無理矢理左に向けた。
「あいでっ!な、なんすかココネさん!?俺なんかしましたっ!?」
「あっち」
「へ?」
「あっち、行って」
あっちと言うのは、おそらくはココネが空の頭を向かせている方向であろう。
不思議に思いながらも、言われた通りに足を運ぶ。
「降ろして」
「ほいほい」
屈んで降ろしてやると、ココネはとてとてと歩いていき、道端の茂みの中に屈みこんだ。
何をしているのかと、空は上から覗き込む。
見ると、そこには花が何輪かひっそりと咲いていた。
正式な名前があるのかもわからないような、ほんのり青みがかった小さな花だ。
「花、か?」
「・・・(コクッ)」
無言で頷くココネ。視線は花に釘付けになっている。その顔は真剣そのものだ。
(ココネにも女の子っぽいとこあるんだな・・)
珍しく少女らしい一面を覗かせたココネに、空も思わずそんなことを考える。
「可愛い花だな」
「・・・・うん」
ちょんちょん、と花をつついたりしてココネは楽しんでいる。
なんとも微笑ましい光景である。
「・・・」
あ。と、何かを思い出したようにココネは背中に背負っていた鞄を下ろして中をあさり始めた。
何をするつもりなのか気になった空だったが、あえて聞かずにそっと様子を見守ることにした。
すると、ココネは鞄から可愛らしい小瓶を取り出した。中には何も入っていない。
そして花を二輪、根元から慎重に抜き取ると、コルクの蓋を外してそれを小瓶の中に入れた。
小瓶を目の前に掲げて、少し角度を変えながらまじまじと見つめる。
その表情は満足気だ。
「お、持って帰えんのか?」
「・・・(コクッ)」
「でもそんな小さいんじゃ飾ってもすぐ枯れちまいそうだな」
「・・・・大丈夫」
「そうか?よし、そんじゃあんまりトロトロしてると遅くなっちまうし行くか。花はそれだけでいいのか?」
「・・・(コクッ)」
また空はココネを肩車してやり、帰り道に戻る。
道中、ココネは瓶の中の花をじっと嬉しそうに見つめていた。



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『・・・ラ・・・ソラ』
「んあ?」

数日後。
相も変わらず教会の屋根で居眠りをしていた空を、ココネの呼び声が起こした。
「ああ、ココネか・・・」
まどろみの中にあった体を一度伸びをして覚醒させ、傍らに置いておいた鞄を持って下へと飛び降りた。
先日の失敗を生かし、今度は着地も完璧である。
「おっす。なんだ?今日も一緒に帰るか?」
「・・・・・いい」
てっきりそれで呼ばれたと思っていた空は怪訝そうな顔でココネを見る。
「おいおい、他人の睡眠タイムを中断させておいてそりゃないっしょ。じゃあなにか別の用か?」
「・・・・」
空がそう聞くと、ココネはポケットに手を入れて、何かを取り出した。
「・・・これ」
「ん?なんだ?」
「・・・・・あげる」
差し出されたココネの手には、10cm程の厚紙が握られていた。
それを受け取ると、そこには見覚えのあるものが。
「あ、これって・・・」
厚紙には、この前ココネが摘んだあの小さな花が押し花にされて貼り付けられていた。
上からラミネードされていて、上部にはペンチで空けられた穴に可愛らしいリボンがくくり付けられている。
手作りの栞だ。
「これ、この前の花だよな。栞にしたのか?」
「・・・(コクッ)」
「へえー、上手いもんだな」
成る程ね。「大丈夫」ってのはこういうことか。
「でも、貰っちゃっていいのか?」
「・・・うん」
「そっか、ありがとな」
空はココネの頭を撫でてやる。空に栞を渡しても宝の持ち腐れな気もするが、ここは気にしないでおこう。
「・・・それじゃ、バイバイ。空」
「あ、おい。帰るなら付き合うぞ?」
「いいっ」
空の静止も聞かずに、ココネは駆け出した。
(やれやれ、気まぐれなヤツ)
猫みたいだな、とココネの後ろ姿を見ながら空は笑った。
しかし、少し走って行ったところでココネはふと立ち止まり、空の方にわずかに振り向いた。
「・・・・ソラ」
「ん?どうした?」
ココネは黙ったままポケットに手を突っ込み、また何かを取り出した。

「・・・・・おそろい」

取り出したのは、空に渡した物と同じ栞。
あの時摘んだ二輪の花の、もう一方。
それだけ言うと、ココネは振り返って走り去った。
その背中が見えなくなるまで、空は見送った。
「へへ、おそろい・・・ね」
栞の花を見ながら、微笑む空。


振り向いた時のココネの顔が照れているように見えたが、まあ、気のせいってことにしておこう。



その後、教会にて

珍しく聖書に目を通している空に、シャークティが声をかける。
「熱心ですね空。明日は雨ですか?」
「酷いなあシスターシャークティ。俺だってたまにゃあ聖書くらい読みますよ」
「たまに、では困るのですがね」
ふと、シャークティの目が止まる。
「おや?貴方にしては可愛らしい栞ですね」
「ん、これっすか?へへへ。いいでしょ」



小さな少女の
小さな恋心が込められた
小さな花

それは今日も、彼の聖書の中で咲き続けている



.END

本の森の奥で

図書館島、そこは世界有数の図書館
蔵書数は世界有数、稀書、奇書も多く、そこは本のワンダーランド

ただ、ここが普通の図書館とは違うのは・・・危険だということです


のどか 「こ、ここなら誰にも・・・」
そこは本棚に囲まれた小さな場所。小さなテーブルに椅子が四つ、明かりとしてオレンジ色の光を放つシェードランプが置かれています
私は手に持った何冊かの本を、小さなテーブルの上に広げました
持ってきた本は・・・実は全部エッチな本です

”図解、女体の神秘(医学書)”、”HOW TO S●X”、”くそみそテク●ック”・・・
思わず持ってきてみたけど・・・なんだか読むのに勇気がいります

のどか 「うわぁ・・・こうなっているん・・・だ?」
ページを開いた瞬間に飛び込んできた女体の神秘。僕はその色と形に大変なショックを受けました
何でしょうか、どきどきを通り越してなんだか気持ち悪くなってきます

僕は本をそのままにして、ちょっと水を飲みに席を外します
軽く顔を洗い、ハンカチで顔を拭きました
のどか 「ふぅ・・・」
少し落ち着きました。でもどきどきはまだ収まりません

のどか 「ネギ子先生も・・・あんなのかな?」
そんなことを考えつつ、僕は本の置いてあるテーブルのある場所に戻りました

のどか 「あ・・・」
誰もいないはずのその場所に、人影がありました
新田 「むっ・・・この本はお前のか?」

新田先生です。教育指導のとっても厳しい新田先生です
のどか 「あっ・・・あうあ・・・」
新田 「宮崎・・・そうか、お前も男の子だもんな。女について興味がでていてもおかしくはないか」
怒られるかと思いましたが、意外にも新田先生は僕の方を見てにっこりと微笑んだのです
新田 「まあ、お前くらいの年ならこっそりと親に隠れて見るものだが・・・まさにその通りだな」
新田先生は少し笑うと、僕の読んでいた本を閉じたのです

のどか 「せ、先生、どうしてここに?」
新田 「迷った。本を探していたらここにたどり着いた」
のどか 「そ、そうですか・・・ここは広いですからね」
新田 「帰り道はわかるか?出来れば出口まで送って欲しいのだが・・・」
のどか 「い、いいですよ。でも、探している本はどうしますか?」
新田 「場所がわかるなら頼む」

こうして僕は新田先生をその本のある場所に連れて行くことになったのです


のどか 「これですね。”食と体”」
その本はすぐに見つかりました。意外にもこの場所にあったのですから
新田 「なんだ、ここで良かったのか。ん?この本は・・・」

新田先生が別の本を取ろうと手を伸ばしました
僕はそれを見てあわてます。なぜなら・・・

のどか 「あぶない!!!」
新田先生が本を取ったと同時に、僕は新田先生に飛びつきました
新田 「な、何を!?」
すると倒れざまに本が本棚から抜けました。そして棚の本が崩れ落ちてきたのです

侵入者、盗賊用トラップ。図書館島にはそんな装置があります
新田先生はそのうちの雪崩トラップに引っかかってしまったのです
新田 「おい!!大丈夫か、宮崎!!」
のどか 「だ、だいじょう・・・」
僕は本の山の中うもれながら、顔に当たるある感触に気がつきました

むにゅ・・・

新田先生のおっぱいです
それはとても柔らかく、気持ちよく、暖かいものでした
のどか 「わひゃあっ!!ご、ご免なさい!!」
僕はその場からすぐに飛び起きると、新田先生から離れました

新田 「怪我はないか?済まなかったな」
のどか 「け、怪我はないです・・・」
僕はそういいながらも、新田先生の方を振り向けませんでした
新田 「どうした?もしかして怪我をしているんじゃないのか?」
自分の方を振り向かない僕を心配したのか、先生はそう言うと僕の肩を掴んで自分の方に振り向かせました
僕は・・・思わずかがみ込んでしまいます
新田 「ん?足か?かがみ込んでいるじゃ・・・」

どうやら気がつかれてしまったようです

新田 「あー、うん。コホン」
新田先生が気まずそうに咳を払います
僕は、新田先生のおっぱいを・・・女性の柔らかさに興奮してしまったのです
新田 「その・・・悪かったな」
僕は何も言うことができませんでした。だた、おそらく真っ赤になっている顔を伏せました
そして・・・涙が溢れてきます

新田 「や、やっぱりどこか痛いのか!?」
のどか 「ち、ちが・・・その・・・」
むにゅ・・・
突然抱きしめられました。目の前が暗くなり、いい匂いがします
のどか 「せ、せん・・・」
新田 「柔らかいか?私みたいなおばさんでも嬉しいのか?」

おばさんだなんて・・・僕・・・僕・・・
のどか 「先生・・・これ以上は・・・」
新田 「いいから、私に任せるんだ。さあ、力を抜いて・・・」


新田先生の指が僕の・・・に触れました。その瞬間、頭の中に白い閃光が走ったのを覚えています


ハルキ 「ふーん・・・こんなこと考えていたんだ・・・」
のどかのアーティファクトを見ながらハルキそんなことをつぶやきました
のどか 「な、なんで僕のアーティファクトが!?出していないのに!!」
ハルキ 「絵に描いたものはすべて現実と化す。それがハル様のアーティファクトォォォ!!!!」
のどか 「自分で作り出すなんて・・・み、見ないでよ~」
ハルキ 「で、その後は・・・白紙!?そうか、これ以上は知らないから想像できなかったんだ・・・」


空 プール

どーも。春日空ッス。今俺はココネとシャークティーと一緒にプールにいる。
何故かと言うと話は一時間前……

いつものように俺は教会の屋根で昼寝をしていた。青い空、白い雲、照りつける太陽。屋根の上はとても…、
「あっち~~」
当たり前だ。現在気温は31℃。その上直射日光なのだ。下手すれば睡眠が昏睡になってしまう。
「しょーがない。どっか日陰で寝よう」
独り言をブツブツいいながら屋根から降りると目の前にココネがいた。麦藁帽子を被り浮き輪を装着して…。
「おっ、その格好はもしや?」
「ソラ、プールいこ…」
「ナイスココネ!ちょうどこの暑さに参ってたとこなんだよね。」
俺は急いで支度をすませ、出発しようとするとシャークティーが来た。
「どこ行くんですか、空?」
「ココネとプールに。シャークティーも行かない?」
「私は遠慮しときます」
「え~いいじゃん。行こうよ」
「みんなでいこ…」
「…仕方ないですね。では支度をしてくるから少し待ってなさい」
こうして三人でプールに行く事となった。

そして現在……
「ソラ、今度はあっち…」
まだ遊ぶんですか、ココネさん?さすがの俺もヘトヘトです…。
この流れるプールも何週目だろう?よく飽きないなぁ。
「ココネ、空、そろそろ上がってきなさい」
プールサイドから助けの声が。…ありがとうシャークティー。俺とココネはシャークティーの所に向かった。
三人で一休みしていると声をかけられた。
「お、空じゃん。何してんの?」
声の主は神楽坂明日太だ。後ろには刹那と木乃雄もいた。
「なにってプールでエンジョイしに来たに決まってんじゃん」
「それもそうか」
「シャークティー泳ご…」
ココネとシャークティー泳ぎにいってしまった。ココネ元気だなぁ。てかシャークティーも結構楽しんでんじゃん。
「せっちゃん、向こうのプール行こ」
「あっ、若!お待ちください!」
刹那と木乃雄も仲良く行ってしまった。てか一歩間違えると相当危ないっすよ。お二人さん。

「いいねぇ空は。あんな綺麗なお姉さんや可愛い少女に囲まれて」
「そんないいもんじゃ…、てかさらりと凄い事言ってますよ…」
「冗談だよ」
すいません。俺には冗談には聞こえません…。
「でもおまえ達見てると家族みたいだな。空が夫でシャークティーさんが妻、んでココネちゃんが娘」
家族ぅ!?…そっか、周りからはそう見えるのか。
「空。空もこっち来なさい」
「じゃっ、お呼びなので」
「おう、じゃあな」


家族…か……。まっ…、





それもいいかな?

おわり


プリンセスとナイト

 程よく月が輝き、夜の世界を照らす。
 街頭がそれを補助し、夜道でも歩くに不自由しないくらいの明るさだ。

 よい子は眠るこの時間帯。
 普段は騒がしい麻帆良の街も、この時間は一時休息。
 治安がいい日本といえども、深夜に外出する人間はそうはいない。


「こんな時間に外出なんて、なんかドキドキするわぁー」


 ……はずなのだが、外出している少女がいた。
 その隣には、10歳ほどの少年もいる。

 その少女の名前は近衛木乃香、そして少年の名前は桜咲刹那。
 まるで姉と弟のように、とても仲良さげに歩いている二人だ。


「お嬢様、早く帰らないと。夜更かしはいけません!」


 しかし、この二人は姉と弟の関係ではない。
 木乃香は護衛される理由のある、訳有りのお嬢様。
 刹那はそのお嬢様を護衛する剣士。

 そう、プリンセスとナイトの関係なのだ。


「もーちょい、な?」


「う……」


 えへへっ、と無邪気に笑う木乃香の笑顔。
 その笑顔には、鍛えた剣の業も全く意味を成さない。

 ただただ、動揺するのみ。
 ナイトはプリンセスに敵わない。


「お願ぁい、せっちゃん」


 トドメは甘ったるい声のおねだり。
 もし刹那が精通していたら、この場で押し倒してしまうであろうこの甘さ。

 しかし、10歳の少年には押し倒すなどという選択肢は存在しない。
 心臓の鼓動を早め、顔を真っ赤に染め、木乃香から目を逸らすことで誤魔化そうと必死になる。


「しっ、しっ、仕方ないですね。もうちょっとだけですよ!」


 『お嬢様のワガママ』という名目で、10歳児なりに体裁を保つ。
 ぎこちなく歩く姿は全く以って滑稽だ。

 数歩か歩いた後、派手に転ぶ。


「ああっ! 大丈夫せっちゃん?」


 刹那が転ぶのは日常茶飯事だが、今回の原因は木乃香にある。
 なので、必要以上に心配してしまう。

 転んだ当人は、下唇を噛み締め、泣くのをこらえている。
 かえってそれが泣きっ面に見えてしまうのは刹那に内緒だ。


「泣いてません! 泣いてません!」


 そんなこと聞いてないよ、なんて言ったら本格的に泣き出してしまうだろう。
 動揺で混乱している刹那は、状況判断すらできないほどにパニクってしまっている。

 どうしたらいいのか分からない、なんとも可愛い泣きっ面の刹那に、木乃香は助け舟を出す。


「せっちゃん、手ぇ出して」


「ふぇ?」


 鼻をすすりながら、言われた通りに手を出す刹那。
 木乃香は、その手をギュっと握る。


「おじょっ! お嬢様っ!?」


「うちな、ちょっと夜道が怖いねん。せやから、せっちゃんの手握ってたいんよ。……ダメカナ?」


 ダメダヨ、なんて言う理由はない。
 激しく首を上下に振り、了承の合図を送る。

 言葉を発したら泣いてるのが分かってしまうから、言葉にしない。
 転んで泣いた、なんて思われたくないのだ。(もうとっくにバレてるが)


「それじゃ、行こか」


 木乃香は刹那の手を引いて、先導する。
 いつの日か、刹那に先導される日も来るだろう。

 夜の散歩は、もうちょっとだけ続くのです。



fin.


風香×史也SS風

とある休日、風香と史也は寮の部屋でゴロゴロしていた。
二人の保護者役の楓は山に行き、だらけていても咎める人はいない。
だから史也はソファーで文庫本を、風香は床に寝そべり雑誌を読んで寛いでいた。

『今、母性的な女がモテる!』

ゴシック体の派手な見出しのページに差し掛かり、風香は雑誌を捲る手を止めた。

『男性のアンケートによると、好きなタイプの女性は母性的という結果が出た』
『そこで今回はあなたの思い人をゲットするための方法を大公開!』

風香は寝転がっていた状態から体を起こした。

『最も男性に効果的な方法は膝枕だ。耳掃除も一緒にしてあげると効果は倍率ドン!さらに倍!』

しばらくそのページを凝視した風香。
突如立ち上がると、目の前にいた史也の文庫本を奪い取った。

「あぁ!何するのさ、今探偵が犯人の推理を始めた所なんだよ」
「犯人はヤス」
「ひ、酷い!ネタバレされた!今までワクワクしながら読み進めてたのに!」
「嘘だよ。それより、膝枕!」
「……は?」

脈絡も無く出てきた単語にキョトンとする史也。
そんな史也に風香は拳を振って力説した。

「この雑誌に載ってたの!膝枕が大事だって!」
「大事って、何が?」
「……えっと、家族の絆とかそんなので」
「そんなのって何さ」
「もー、どうでもいいだろそんなの!とにかく膝枕なの!」
「はぁ……分かったよ」

史也は嘆息してソファーに座りなおすと、膝を真っ直ぐに整え、ポンポンと太腿を叩いた。

「はい、いいよ」
「え?」
「膝枕。したいんでしょ?」
「…………」

誘われるがままに風香はソファーに横になると、太腿にゆっくり頭を乗せた。
しばらく風香はその格好のまま、膝枕するのはボクで、されるのは史也のつもりで、なんか違うと心で叫んでいたが。

(ま、気持ちいいからいっか)

そう思って静かに目を閉じた。


end.


カモがネギを背負ってくる

「でさー、そこで姉貴が…」
 ビールの入ったジョッキを片手に、カモはほろ酔い気分で語っている。
 ここは人気の屋台、超包子。朝や昼は学生たちの憩いの場だが、夜になるとちょっとしたバー的な雰囲気になる。
 仕事が終わり、ここでの一杯のために生きている…という教員もいるとかいないとか。
 カモも、ここの常連だった。
 楽しそうに、五月に日頃のドタバタを語るカモ。五月も、時々相槌を打ちながら、笑顔で黙って聞いている。
 ここの人気のもう一つの理由は、愚痴から惚気話まで笑顔で聞いてくれる五月の存在だ。
 そんな彼女の笑顔は、荒れてる人の心さえも癒すという。
「あーっ、やっぱりここにいた!」
 カモが話していると、ネギの声が背後から聞こえてきた。
「あ、姉貴ー」
「どこ探してもいないし…心配したんだよ? 一言、声かけてくれればいいのに…」
「あはは~。ごめんね姉貴~」
 頭をポリポリ掻きながら、カモはネギにコップを差し出す。
「はい、姉貴。ジュースでも飲んで落ち着きなよ」
「え、そう?」
 ネギはカモの隣に腰を下ろし、コップを受け取る。
「綺麗な色だねー。何のジュース?」
「まぁまぁ。とりあえず飲んでみなよ」
「う、うん」

  ゴクッゴクッ…

  ブバァッ!!

「お酒じゃないかーーッ!!!!」
「姉貴、汚いよ」
 飛び散ったお酒を、五月は素早く拭く。
「チューハイだよチューハイ。あんまアルコールも入ってないし…」
「入ってることには変わらないでしょ!」
「まぁまぁまぁ。お酒の一つも飲めないと人付き合いできないよー」
「私、まだ10才ですからっ!」
「じゃあこれは?」
 そう言って、再びネギにコップを差し出す。中には、氷と白い液体。
「……カルピス?」
「そ。それだったらいいでしょ?」
「う、うん…」
 疑いながらも、カルピスを一口飲む。
「あ、おいしい」
「でしょー?」
 その美味しさに、ネギのカルピスはあれよあれよという間に減っていく。
 …多少、五月の笑顔が引きつってるのは気のせいだろうか。



「うぅぅ~~…」
 ネギはカウンターに突っ伏して眠っていた。
「あちゃー、少し飲ませすぎたかな」
 実は、カモがネギに飲ませたのはカルピスではなく、カルピスハイだったのだ。
 結局、ネギは四つもコップを空け、遂に潰れた。
「姉貴ー、起きてよー。お~い」
 カモはネギの頬をぺちぺちと叩いたり、むにゅぅと引っ張ったりするが、ネギが起きる気配は無い。
「しょうがないなぁ…」
 言うとカモは自分の背中にネギを乗せ、言わば「おんぶ」の状態で立ち上がる。
「ごめんね、さっちゃん。迷惑かけて」
 その言葉に、五月は笑顔で首を横に振る。
「はは、じゃあまたねー」
 カモは五月に小さく手を振り、超包子を後にした。



 寮へ向かう道に、カモの影。その背中にはネギ。
(…姉貴って軽いんだな…。って、10才だし当たり前か)
「うぅ~ん…」
 ネギが軽く唸る。
「あれ…? 起きたかな?」
 カモが立ち止まると、ネギはカモをぎゅっと抱きしめる。
「…お…かぁ…さん…」

  ザァッ…

 風が、吹いた。
 ネギの、恐らく寝言に、カモは胸に痛みを感じた。

 まだ10才。

 しかしその小さな背中に背負ってるものは、とても重くて。

 辛い過去を持って、寂しい思いもしてきた。

 だけど、みんなの前ではいつも笑顔で。

 苦しみや、辛さを感じさせない笑顔で。

 しかし心では、寂しかったんだろう。辛かったんだろう。

 夢にまで、見るほどに。

「……姉貴…」
 カモは呟くと、夜空を仰ぐ。
 吹く風が、お酒で火照った体には丁度いい。
「大丈夫だよ。姉貴には、私がいる。姐さんも、このか姉さんも、刹那の兄さんも。うぅん、クラスのみんなや、先生たちもいる」
 優しく、微笑む。
「もっと、頼って、甘えてもいいんだよ」
 それに答える声はなく。
 しかしカモは、届いてると思った。
「まさに、『カモがネギを背負ってくる』だね」
 笑いながら、カモは再び歩き出す。
 ネギが背負っているものを、半分背負って。

 ネギが、いつまでも笑っていられるように。

 その日まで。いや、それからも。

 このひとに、ついていこう。





      終わり


刹那 バッド(?)エンド

一人の少年「桜咲刹那」は木にもたれ掛かっていた。その体は傷だらけだった。

―もう限界か?体がうまく動かねぇ…。ここで終わりか?…龍宮、まだ戦ってる。 すまない、最後まで戦えなくて…。
 てか何で俺戦ってたんだっけ?
刹那は自分の左腕を見た。

―そうだ……



刹那 『何してるんです?』
せつな『ん、ちょっと…ハイ、出来た!』
せつなは自分の髪留めを刹那の腕に巻き付けた。
刹那 『これは?』
せつな『御守り。絶対生きて帰ってきてね。』
刹那 『…ああ、約束する。』



―……大切な人を守るためじゃないか!弱音なんか吐いてられない。

刹那の瞳に再び光が戻った。刹那は立ち上がると龍宮の方へと向かった。
龍宮「…!!何してる!大人しくしていろ!死にたいのか!」
刹那「……龍宮、任務の依頼だ。聞いてくれるか?」
龍宮「何?」
刹那「任務の内容は……彼女、せつなを影ながら支えてやってくれ!」
龍宮「な!?オマエまさか……!?」
刹那は真っ直ぐと龍宮を見ていた。その顔は覚悟を決めた表情だった。
龍宮は悟った。もう何を言っても聞かないと。ならば今自分に出来る事……
龍宮「……いいだろう。報酬は、」

それは……、

龍宮「報酬は『平和な日々』だ。………行って来い。」

それは彼を安心して送り出すこと。

刹那「ありがとう。」
刹那は真っ白な羽を広げると真っ青な空へと飛んでいった。

―ありがとうみんな。俺、今まですごく幸せだった。
 ネギ子先生、虐められたりもしたけど楽しかったです。
 明日太さん、俺はあなたの元気に何度も救われました。
 このちゃん、最後まで守れなくてごめん。でも安心して、あなたは強い人です。立派に生きてください。
 ……せつな、こんな俺を愛してくれてありがとう。君には沢山の大切な物を貰ったよ。…残念だが約束は守れそうにない。

刹那は髪留めが巻きついている左腕を握った。

―でも、俺はいつまでもお前の事を見守ってやるから安心しろ。

刹那「神鳴流剣士、桜咲刹那参る!!」







―五年後

世界樹の近くの墓標に二人の親子がいた。

せつな「ただいま、あなた。」

あの後、彼女は刹那の死を聞いた。彼女は大声で泣いた。一日中泣いた。そしてしばらく無気力な生活を送った。
しかし、ある日彼女は夢を見た。刹那が出る夢だった。夢の中で刹那は語りかける。
刹那『俺はいつでもお前の事を見守ってる。だから俺の分まで生きろ。』
やがて子供が出来た。愛するあの人の子供。この小さな命を守るため強く生きる事を誓った。
そして現在に至る。

セツナ「おか-さん。おと-さんってどんな人だったの?」
せつな「ん?そうね、格好良くて、強くて、優しかったよ。」
セツナ「じゃあ僕も強くなる!それでおかーさんを守るんだ!」
せつな「ふふ、ありがと。」
セツナの目には優しさが溢れていた。それを見てやはりあの人の息子なんだと思った。
せつな(あなたの子は元気に育っています。)
二人はお墓の掃除おしてから手を合わせた。やがて帰る時間がきた。

セツナ「おとーさーん、バイバイ。」
あなたが守ったこの平和な世界、一瞬一瞬精一杯生きて行こうと思います。だから最後まで見守っててください。
輝く明日に、私達の未来に向かって、
せつな「…いってきます。あなた。」




『いってらっしゃい』

END


刹那 挙式

「いよいよ、か――――」

ある小さな教会の一室。
白いタキシードを着込んだ刹那は、天井を仰ぎながら小さくつぶやいた。
その顔のあちこちに傷跡が薄く残っているのは、先日の戦いで受けた傷の深さをありありと物語っている。



実際、刹那はほぼ“死んでいた”。
全身に刻まれた傷、とめどなく溢れ出る鮮血。
それらをものともせず敵を斬り、裂き、突き、抉る刹那。
彼には、絶対に失えない恋人(ひと)がいた。
全てを捨ててでも護りたい、大切な婚約者(ひと)がいた。
愛する者を背負った彼は、気高い武神のごとき闘気を纏い闘った。
その刹那に、一片の憐憫すら与えずになお傷を刻み命をそぎ落とす敵。
刹那の剣を掻い潜り、その体に“死”を刻み込む悪意を全て倒したとき、刹那の体もまた、力の全てを失って崩れ落ちた。
彼が死の淵に落ちようとした、まさにそのとき。
彼の眼に浮かんだのは、愛しい、愛しい少女の姿。

『アホ・・・・・・こんなに傷作って帰ってきて・・・・・・』

――――ああ、やっと・・・一緒になれるんやなぁ・・・・・・

震える体、こぼれ出る涙。

――――もう、何も・・・辛くない・・・幸せに、してやれる・・・・・・

その言葉が彼の意識から消えると同時に、彼の愛刀は、力を失った彼の手から滑り落ちた。

本来なら、刹那はそこで死に、永久に目覚めることはなかっただろう。
だが、天は愛する者のために刃を振るう彼の気高さに心打たれたか、それともいわれなき迫害を耐え生きてきた彼と、彼の愛した少女へのせめてもの償いか。
駆けつけたネギ子達、その中にいた木乃香と木乃雄の治癒魔法の力によって、刹那は死の暗闇から抜け出した。
ただ傷を癒されただけなら、身体を離れかけた彼の魂は戻らなかったかもしれない。
しかし――――――――

「一緒に、暮らそうって・・・結婚しようって、言うたのに・・・・・・っ! 嘘、付きっ、嘘付きぃっ! 眼ぇ、開けてよぉっ!」

愛する少女の、悲しみと絶望がないまぜになった叫び。

――――もう二度と、辛い思いはさせたくない。

――――幸せに、してみせる。

その強い想いが、刹那の魂を呼び戻した。

刹那が眼を開けたとき、彼が愛した少女はもちろん、周りにいた仲間達も、天地を揺るがすほどの歓声をあげた。
大粒の涙を流しながら、「よかった、よかった・・・」とつぶやく者。
お互いに抱き合って喜びを噛み締める者。
言葉を発することなく、ただただ涙を流している者。
自分が“生きている”ことを歓喜する声に包まれながら、刹那は思った。

――――ああ、俺は・・・・・・なんて、“幸せ”なんだろう。

死から逃れたから安堵からではない、再び命を手にした喜びでもない。

――――自分の“生”を心から望んでくれる人がいる。

数多の迫害に晒され続けた彼は、ただ、それだけで十分だった。




「どないしたん? ぼーっとして」

「あ・・・ちょっと、考え事です」

眼をそっと閉じたまま、思いにふけっていた刹那を呼ぶ澄んだ声。
そこには、彼と同じ名と純白の翼を持つ少女――――彼と苗字まで同じ、桜咲刹那が立っていた。
(わかりやすくするため、それぞれを「刹那♂」「刹那♀」と表記させていただく。 最後の性別記号は無視していただいてかまわない)
刹那♀が身にまとっているのは、彼女の翼と同じ、どこまでも汚れのない白いウェディングドレス。
これで刹那♂の着ている白いタキシードにも合点がいくであろう。
そう――――二人は、今日この教会で結婚するのである。
しばらく無言で見つめあう二人――――ふと、刹那♀が静かに微笑んだ。

「えっ・・・ど、どこか変ですか?」

慌てて自分の格好を確認する刹那♂、しかし刹那♀は微笑みを絶やさないままゆっくりと彼に近づいて、そっと、しかし力強く抱きしめる。

「――――ありがとう、帰ってきてくれて」

かすかに震える声で、愛する人の胸に顔をうずめたまま、言葉を紡ぐ。

「もし、貴方が死んでたら、うち、おかしくなってもうたかもしれへん」

初めて出会った、自分と同じ悲しみを知る人。
悲しみに囚われ続けていた自分を、優しく諭してくれた人。
『一緒に暮らしましょう』と言ってくれた人。

「後でもう一回言うことやけど、今、言わせて」

周囲から、ずっと「化け物」と呼ばれてきた。
大好きな親友といても、その記憶が消えてくれなかった。
怖くて、さびしくて、壊れてしまいそうだった自分。
そんな自分を助けてくれた、彼。
私は、私は――――――――

「――――私は、貴方を、愛してます。 ずっと、ずっと、一緒にいてください」

自分の胸で、小さく震えながら、想いを紡ぐ愛しい少女。
自分と同じ迫害に晒され、じっとそれに耐え続けていた少女。
自分の命を投げ捨ててでも、護ろうとした少女。
――――『幸せにする』と誓った少女。
愛する花嫁を抱き返し、刹那♂は答える。

「はい――――僕は、絶対に貴方のそばで、貴方を護ります。 何があろうと、絶対に」

その言葉に、ゆっくりと顔をあげる刹那♀。
眼に涙をためながらも、彼女は心の底から幸せそうに微笑んだ。
そのとき。

こんこん。

「二人ともー、準備でけた?」

「そろそろ始まってまうで、急いでや~」

「「は、はいっ!」」

静寂が包んでいた部屋に響くノックの音と、その後に続く少年と少女の声に二人そろって素っ頓狂な声をあげ、顔を見合わせて苦笑する二人。
二人を呼びにきたのは、二人の幼馴染である近衛木乃香と近衛木乃雄だ。
この結婚式で進行役を務めることを買って出たのは、幼馴染の幸せを心から願う純粋な気持ちからだろう。
そして、花婿と花嫁の二人は、祝福してくれる人たちの待つ、ドアの外へと歩き出した。




「――――貴方達は、いついかなるときも、互いに助け合い、愛し合うことを誓いますか?」

「誓います」

「――――誓います」

穏やかな光が、ステンドグラスを通して教会の中を照らしている。
神父の役目を務めているのは春日空、その横にシスターの姿で小箱を持って控えているのは春日美空だ。
本来ならば二人がこんな役回りをしていいはずはないのだが、「お世話になった人たちだけで式を挙げたい」という新郎新婦の願いにより、二人がこの役を負うことになったのだ。
そして、神父空の問いに二人が答えたあと、美空がゆっくりと二人の前に移動し、小箱をゆっくりと開ける。
その中にあったのは、いたずら好きな二人が仕込んだ蛙などではなく、銀色に輝く、二つの指輪だった。
やや小さいほうを新郎が、大きいほうを新婦が取り、互いに向き合う。
一瞬、しかし二人にとっては十分な時間見つめあい、互いの指に指輪をはめる。

「――――いよっしゃ! これでお二人は夫婦だかんねー、いいなぁーラブラブ新婚生活!」

「あーあ、桜咲がうらやましいぜ、こんな可愛い花嫁さんなんてさぁ。 神様ー、俺にも出会いをぷりーず!」

二人が指輪をはめ終えた瞬間、それまでの空気を吹き飛ばすかのように美空と空が騒ぎ出す。
これまでおとなしくしていた分を取り替えそうかとするようなハイテンションぶりに苦笑いする刹那♂と、それすらも嬉しそうに微笑んでいる刹那♀。
すると出口のほうから、二人を呼ぶ声が飛んできた。

「せっちゃーん! そろそろみんなのとこ行ったってー!」

嬉しそうに叫ぶ木乃香の声に答えつつ、二人は教会の出口へと向かう。
扉のところで立ち止まると、木乃香と木乃雄がゆっくりと扉を押し開ける。
そこには――――

「刹那さん、おめでとうございます!」

「桜咲さん、今までみたいに私にからかわれて慌てたりして花嫁さんに愛想尽かされたりしないでくださいよ?」

素直に祝福の言葉を捧げるネギと、ひねくれた言い回しをするネギ子。
正反対な二人だが、心からの祝福が顔に表れているのは同じだった。

「刹那さん泣かすんじゃねえぜ、桜咲!」

「よかったでござるな、刹那殿。 お幸せにでござる・・・ニンニン♪」

「あの時はひやひやさせられたが・・・これで一安心だな」

「ううう、よかったよぉ~」

「ええ、まったくです」

色取りどりの紙ふぶきの中で飛び交う、クラスメイトたちからの祝福の言葉。
刹那♂の世界のクラスメイトも、刹那♀の世界のクラスメイトも一同に会し、幸せな二人を祝っている。
刹那♀は涙を浮かべながらも微笑んで愛する人を見上げ、刹那♂は愛する人に微笑み返しながらそっとその背中を押す。
そして、刹那♀は手にしたブーケを思い切り高く投げ上げた。
ブーケが飛んだ空は、雲ひとつない、美しい青空だった――――――――


蒼穹を駆ける純白の翼。
少女の翼を縛る悲しみの鎖は、少年の想いによって断ち切られた。
自由となった少女は、愛する少年と共に大空に飛び立つ。
――――“自由”という名の青空へと。


刹那×せつな

刹那 「あ~疲れた…。」
俺は桜咲刹那。今日は晴れてせつなさんと結婚式を挙げることができた。
これからの新婚生活を想像したらそりゃあもう…、いかん、顔がにやけてきた。
せつな「…あのぉ、」
刹那 「うひゃい!!」
せつな「だ、大丈夫ですか?」
刹那 「あ、ああ大丈夫だ。なんでもない…。」
あぶなかった、もう少しで俺の情けない顔を見られる所だった。

プルルル…

刹那 「あ、電話だ。龍宮♂から?」
せつな「私も龍宮♀からだ。」

ピッ

龍宮♂「おう、結婚おめでとう。ちゃんと濡らし…」
龍宮♀「結婚おめでとう。最初は痛いかもしれないが…」

プッ

刹那・せつな「///」
あいつらめ、この反応だとせつなさんも何か言われたか。糞、スゲ―気まずい…。
どうすればいいんだ?いきなりはまずいだろ?なにか会話をしてからさりげなく。

―10分後

不味い、何も話題が浮かんでこない!どうすんだ俺?もういっちゃうか!?いっちゃっていいのか!?

ぐぅ~

刹那 「あ。」
せつな「あ、あの。そうだ何か食べましょうか?ね、それがいいですよ!」
刹那 「ああ、そ、そうだね。じゃあ何か頼むよ…」
た、助かった~。俺の腹GJ!!
せつな「じゃあちょっと待ってて下さいね。その、…あ、『あなた』。」
刹那「!!!」
せつな「あ、やっぱり呼びなれないから変ですか?」
刹那 「い、いや。大丈夫だよ」
販促だろこれ!萌え死ぬ!体内の血液が鼻に溜まってきた!こんな毎日呼ばれたら出血多量で死ぬぞ!
てかエプロンで後ろ姿でああもうあwせdrftgyふじこlp;@:

刹那・せつな「ごちそうさまでした」

いつのまにか食事終わってたー!!何も覚えてない…。取敢えず片付け手伝うか。
そ、その後は…。ヤバイ、心の準備が。落ち着け俺。手が、食器が震えてるぞ。足元がふら付く。あっ!

ポチッ

リモコン踏んだ。なんか映画やってる。
せつな「あっ、この映画好きなんです。一緒に見ましょ。」

映画を見始めて1時間くらい、もう我慢の限界だ。まずは隣に座ってる彼女の肩を…

トサッ

刹那 「うひゃあ、ごめんなさい!そんなつもりは!」
何謝ってんだ!向こうからくっ付いてきて、つーかせつなさん大胆…あれ?

せつな「すー…すー…。」
刹那 「寝てる…」
そっか今日はいろいろあったから疲れたんだな。しょうがない、よいしょ!やっぱり軽いな。
よっ!ふー、かわいい寝顔だな。こんな人と結婚できて俺は幸せだぁ。

じゃあおやすみ、せつな。

END


千雨♂×夕映

「明日太さんはこんな問題も解けないのですか? 情けないですこと!」

「うるせーコラァ!!」


 うるせーのはお前だ、神楽坂。
 あんな問題くらい解けるようになれっつの。

 ああ、またいいんちょと神楽坂が喧嘩始めやがった。
 よく飽きねーのな、アイツら。
 そういや喧嘩するほど仲がいいっつーしな、実は付き合ってたりすんのか?


「いつもいつもうるせーんだよ! 出来ないことの一つや二つくれーあんだろ! ここは日本なんだよ!!!」


「ネギ子先生の授業に加えて私が直々に補習してさしあげているのに、いつまで経っても出来ないから言ってるんです!!」


 おや、放課後も一緒なのか。
 こりゃ付き合ってる可能性大だな。

 とりあえずお前ら、担任のガキが半ベソかいてっからもう止めたれ。


「うるせーなぁ……」


 オレの名前は長谷川千雨、学生兼ホストだ。
 まあ、ホストについては突っ込まないでくれると有難い。
 質問は禁則事項ということでよろしく。


「二人ともやったれー!!」
「いつものトトカルチョやるか! いんちょに食券10枚!」
「明日太に20枚!」
「ふ、二人とも止めてくださーいっ!!」


 うるせーのは神楽坂だけじゃねぇ、クラス全体的にうるせー。
 文化祭の準備とかじゃねーんだから、あんまはしゃぐなっつーの。


「……全く以ってうるさいです」


「ああ、いつもと変わらずうるせー」


 隣席の綾瀬はオレと同じで、このクラスの騒がしさに呆れている。
 こーやってクラスがバカ騒ぎし始めた時は、なんとなく話している。

 よくあるだろう?
 教室じゃ話さねーが、移動教室した時だけ話す奴。
 オレと綾瀬は、そんな感じの関係だ。
 隣だっつーのに、おかしな話だけどな。


「なあ綾瀬、アイツらデキてると思わねーか?」


「デキ……てるのでしょうか?」


 顔を赤くしてら。
 この手の話を振ると、綾瀬は決まって恥ずかしがるんだよな。


「いや、あくまで憶測の話だけどよ」


「でも、あのように公然と喧嘩できるということは、少なくとも仲は悪くないということです」


「そー思うだろ? 一人の男と女がトムとジェリー状態だぜ? 仲良く喧嘩しな、ってか?」


「実際、仲良く喧嘩してますし」


「ははっ、ちげーねぇ」


 お、終了のチャイム。
 チャイムをきっかけに、あの二人は仲良く喧嘩し終えると。

 そしてまた授業が進まないと。
 テスト範囲が狭くなるし、オレにとっちゃいいことだから構わないんだけどよ。


「あのガキ、また桜咲にあたってらぁ」


「ネギ子先生が言ってる『タンシオ』って何でしょう?」


「さぁ? さ、移動移動」


 綾瀬は図書仲間のトコへ行く。
 これでしばらく、綾瀬とは話さないワケだ。

 …………誰か騒ぎ起こさねぇかな。



fin.




屋上にて

俺、長谷川千雨は、何かつまらない事があると屋上へ向かう。
放課後の屋上に佇んでいると、なんとなくしんみりするからだ。
何処からか聞こえる運動部の掛け声が疎外感を生み出したりして。
実際は仲間外れなんてものではなく、単に俺が好きで帰宅部を選んでいるのだが。
まぁとにかく、独りきりの放課後の屋上ってのはダウナーな思考を働かせるのには向いている。
思考の先は、俺の人生へと。
毎日同じ事の繰り返し。
朝起きて飯食って学校で馬鹿なクラスメートを横目で眺め、夜は店で深夜まで客の相手、そして帰って風呂入って寝る。
なんて単調で、つまらなく、意味のない日々。
果たしてこの生きるという作業を続ける意味なんてあるんだろうか。

「……死ぬかな」

放課後の屋上で一人、呟いてみた。
なるほど、声に出してみるとなかなか魅力的な案に思える。
ここから紐無しバンジーなんてやったら面白そうだ。
よし、ここは一つ死んで見るか。
俺は屋上に設置されている転落防止用の壁と向き合った。
壁はあくまで転落防止で、自殺防止ではない。乗り越えるのは簡単だ。
軽くジャンプして体を乗っけて、壁の上に立つ。
いつもより高い視界で辺りを見回し、俺は思った。

……なんだ、死ぬ間際になっても何の感慨も湧かないじゃないか。

急に死ぬ気が萎え、溜め息一つ吐いて屋上の内側へと降りようとすると、

「死ぬなー!」

そんな大声と共に、ドン、と外へ突き飛ばされた。

「へ」

思わず間抜けな声を上げる。

おいおいちょっと待てよ今俺は戻ろうとした所で――。

俺の体が重力に沿って落下し始めた。

「う……あぁぁぁ!?」

無我夢中で腕を伸ばす。
反応が早かったおかげか、腕はなんとか壁の上に腕が引っ掛かった。
力任せに体を引き上げ、殺人未遂犯へ怒声をぶつける。

「てめぇ、朝倉、殺す気か!」

怒鳴りつけられた方、朝倉和美はにっこり笑って、

「シャレだよ」
「そんなもんシャレになるか!」



「で。何で自殺なんてしようとしたの?」
「俺は戻ろうとしてたんだけどな。それと人を死地に追いやった後は、まずごめんなさいだろ?」
「ごめんなさい謝るから頭から手を離して。なんかミシミシ言ってるし」
「まぁいいだろう」

なんとか無事に戻った俺は、朝倉の頭を圧迫していた手を尊大な態度で離してやった。
朝倉は頭を手で押さえながら、殺す気か、と呟く。
うん。お前が言うな。

「でも最初は死のうとしたんでしょ?何故に自殺なんて?」
「別に。生きる事がつまらないと思っただけさ」
「あはははは!何その今時の若者っぽい発言!」

……なんだろう、今凄く馬鹿にされた気がする。

「お前だって少しはあるだろ?こう、死にたいと思った事とか」
「ん?ないけど」
「そうだろ?つまり今の俺も――なんだって?」
「私、死にたいなんて思った事ないけど」

ンな馬鹿な。
人間生きてりゃ死にたいって思う事の一つや二つ、普通あるだろ。
というか無いと変だ。
でも、コイツは『なんでそんな事思うのか不思議で仕方ない』って顔をしている。

「本当に、一度も思った事ないのか?」
「あるわけないじゃん」
「テストの点が悪かった事は?」
「それはあるけど」
「誰かに怒られた事とか」
「あー、記事の件で部長に何度も怒られるけど」
「何かとんでもないミスをした経験は」
「そんなの人間一つや二つあるでしょ」

「……そういう時、少しくらい死にたいとか思わないのか?」
「全然」

朝倉はそう言い切った。

「だってさ、テストの点は次頑張ればいいじゃん?怒られたら認められた時もっと嬉しくなるし、ミスなんてどっかで挽回できるモンでしょ」

それは。
次があった時の話で。
それは。
自分は考えもしなかった発想だった。

「それにさ。人生って楽しいじゃん、自分で終わらすのは勿体無いって」

そう言った朝倉の顔は、本当に楽しそうで。
全く、なんて楽観的で能天気で夢見がちで、馬鹿みたいに前向きな奴。
こういう奴には敵わねぇな、と苦笑した。

「む、何笑ってるの?」
「いや、別になんでもないさ。お前が良い女だって思ったんだ」
「なに?ひょっとして惚れちゃった?」
「そうだな、今度デートしてくれよ」
「おぉ、NO.1ホストにデートに誘われるとは光栄だね」

軽口を言い合い、俺たちは笑った。

「さて、私はもう行かないと」
「なんかあるのか?」
「明日の記事のネタ探しよ」
「それならいいのがあるぜ。『屋上で殺人未遂発生!』てな」
「まだ根に持ってるの?」

笑って流してよー、と言いながら朝倉は屋上を去って行った。
流せだって?冗談じゃない。
今日の事は多分ずっと忘れないだろう。

「さて、私も行くか」

もう壁の向こうに未練はなかった。
思考の先は、話題のデートスポットへと。
マジで誘ってやったらアイツどんな顔するかな。
飯くらいなら、奢ってやってもいいかもしれない。
俺は誘った時の朝倉の顔を思い浮かべ、含み笑いしながら歩き出した。


end

月詠♂×千草

「はぁ・・・・・・」

もう何度目かわからんようなため息がまた出てきよりました。
ウチは天ヶ崎千草、関西呪術協会の呪術師どす。
以前、呪術協会の長の一人娘、木乃香お嬢様の力を利用して関東魔法協会の連中を一掃しようとして失敗、こうして懲罰を受けるハメになっとります。
幸い、協会内の懲罰房で一定期間謹慎する、というだけで済みましたけど、やはり腹立たしいことに変わりはありまへん。
成功まであと一歩のところで、あのサウザンドマスターの息子とその仲間の小娘共に負けさえしなければ・・・・・・!

「・・・・・・ッ!」

思わず、目の前の机を思いっきり叩いてまいました。
こんなことで現状がどうにかなるわけやありまへんけど、溜め込んでばっかりやったらやってられまへん。

「駄目ですよ~、千草はん。 あんまり乱暴なことしたら~」
「・・・ほっといておくれやす、月詠はん」

ひょっこり顔を出した中学生くらいの男の子にとがめられて、向こうが正しいとわかっとっても、ついイライラしてまうのも、この状況のせいどす。
そのうえ、先の計画で手を組んだこの神鳴流の剣士、月詠はんが最近どうにもウチにかまってきよります。
同じ懲罰房の別室で謹慎処分を受けとるから退屈なんはわかりますし、あの小娘達よりちょっと年下の男の子やから、暇をもてあましとるんもわかりますけど、こう毎日毎日来られたらさすがにうっとうしいもんどす。
やからなるべく、適当にやり過ごすようにしとるんどすが、どうもこの子は鈍いというか、なんというか・・・
うちがどれだけ邪険に扱っても、ニコニコしたままずっとそばにおるんどす。
一体何が楽しいのやら・・・・・・

「千草はん、どないかしはりました? 何かさっきからぼーっとしとられますけど」
「へっ? べ、別に何もありまへんえ!」
「そうどすか~? ならええんですけど・・・ あ、お菓子食べはります?」

なんやそんなこと考えとったら、いつの間にか月詠はんが目の前で顔を覗きこんどりました。
慌てて後ずさって、なんでもない、とは言うてみたものの、声が上ずってもうたのは自分がよぉわかってます。
やけど、やっぱりというかなんというか、月詠はんは何もなかったみたいな顔してまたニコニコしながら、戸棚のほうに行ってまいました。
ウチの部屋なはずなんやけど・・・まぁ随分あちこち探って回っとりましたから、どこに何があるかもうわかっとるんでしょな。

それにしてもあの子、どこまで鈍いんやろか・・・
そやけど、落ち着いて考えてみたら、何もウチが飛びのくことなかったなぁ。
まぁ、目の前で顔覗き込まれても気づかんかったウチもウチですけど。
にしても月詠はん、結構可愛らしい顔しとったなぁ。
シネマ村でノリノリで女装しとったときは、さすがに危ないんちゃうかと思いましたけど。
いざ着替え終わってみたら、女の子いうても通るくらい似合とりましたし。
あんな風にニコニコしとると、ホンマ可愛らしい・・・・ハッ?!

「ななな、何考えとんのやウチはッ!!

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