My Little Brother [3]

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カイトは少しおっとりしすぎな感もあるものの、順応性はメイコより高いようだった。
寒い日暮れにやってきてから数日もしないうちに、松本家の生活にすっかり馴染んでしまった。
松本夫妻も、素直で柔和で何の躊躇いもなく慕ってくれるカイトがすっかり気に入ったようで、丁度休暇中ということもあり、買い物に連れ出してはあれこれと服や靴を取り揃えてやったりしている。
それは喜ばしいことなんだろうけど…とメイコは溜息をついた。
「メイコちゃん、今日は横浜に行くの。一緒に行かない?」
衿子夫人がにこやかな笑顔でキッチンで一人お茶を啜っていたメイコを手招きしながら呼んだ。
「いえ…私、留守番でいいですけど…」
「いやぁね、カイトの服選びに付き合ってくれてもいいじゃない。私たちだけじゃどうしても落ち着いた服ばかりになっちゃう。そろそろ春物も買いたいし、メイコちゃんも一緒に春の新作見て回りましょうよ」
衿子夫人がウインクする。
何かいいものがあったら買ってあげるわよ、というサインだ。
しかし、気乗りがしないのも正直なところだった。
「カイトの買い物に付き合うの、つまらないかしら?」
小首を傾げた衿子夫人に「いえ、そんなことないです」と慌てて笑顔を作ってメイコは否定の返事をした。
「ただ、横浜まで行くとなると帰りの時間を気にしたり、夕食を作るのがちょっと大変かなー?って…」
「せっかくだからいろいろ見て歩くつもりだし、ランドマークタワーにも行きたいし、今日の夕食は中華街で飲茶よ?――メイコちゃんもたまには家事を忘れたらどう?遊びたい盛りでしょ?」
悪戯っぽく微笑む夫人の言葉に何も反駁する言葉が見つからず、メイコは「じゃあ…」と頷いた。
「今日はお天気だけどまだまだ風は冷たいから気を付けてね?メイコちゃんの洋服楽しみにいているわ」
少女のように手を前で合わせてにっこり微笑んだ夫人は「私もお洒落して行こうっと♪シャネルにしようかしら?ちょっと固いからインゲボルグがいいかな♪」とハミングしながらキッチンを出て行った。
はぁ…何着て行こうかしら…めんどくさい…
夫人を見送ったメイコは溜息をついて、温くなったお茶を啜ってその渋味に眉をひそめた。

マスター夫妻とカイトの買い物にメイコが付き合った確率は七割五分。
数日で「身の回りの物を揃えよう」と夫妻がカイトを買い物に連れ出したのは四回。
そのうち最初の三回付き合ったメイコは四回目には「夕食の支度しますから」と笑顔で辞退した。
数日で何度も賑やかな繁華街や若者の多い街に出かけるのは正直疲れた。
ただ、それ以上になんだか居心地の悪さを感じてしまうのも事実だった。
カイトが来てから――その居心地の悪さは外出先に限らずいつでも感じるようになっていた。


カイトが嫌いなわけじゃない――あの子はいい子だ。
マスター夫妻とて、カイトだけに夢中になることなく私のことも気遣ってくれている。
なのに……なんでこんなに居心地の悪さを感じるんだろう…?

こういう詮無い思索は苦手だ。


気持ちを切り替えるべく、メイコは今日の服装を考えることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっと三話目。

この後にちょこちょこ足して行きます。

遅筆で申し訳ない。

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