KAITO×初音ミクの小説です。にゃっぽんで一度あげた小説です。
苦手な方はご注意ください。
俺のプログラムに最悪なプログラムが入ったらしい。どうりで朝から寒気がして、体が重いわけだ。昨日はそんなことは無かったのに…。
俺はいつの間にか倒れて、気がつけばベッドの上にいた。マスターかレンが運んでくれたんだろう。周りを見れば、ミクが悲しそうな瞳で俺を見つめている。きっと…ミクは全てを知っていて、俺が消えてしまうかもしれないことを怖がっているんだろう。いつもは隣でにこにこと笑っているのに…なんて顔をさせてしまったんだ。悲しい顔なんて絶対にさせたくないのに…。
「ミク…俺は大丈夫だから」
心配させまいとつぶやいた言葉は震えていた。そこまでウイルスに犯されているらしい。この状態もいつまでもつか分からない。けれど…笑わないと。ミクに心配をかけるわけにはいかない。そして無理をして笑うとミクは大粒の涙をこぼし始める。違うんだ。本当は君に笑ってほしくて…俺は…。
「お兄ちゃん…こんなになるまで気づかなくてごめんなさい。私…私…」
ミクはとうとうしゃくりあげて泣きながら、俯いてしまった。俺はごめんねと心の中で謝りながら必死に手を伸ばし、ミクの頭を優しく撫でた。
「ミクのせいじゃない。それにこれは俺が気づけなかっただけだから、俺自身のせいだよ」
俺はせいいっぱい笑った。するとミクはお兄ちゃんと2度呟くと俺の手をぎゅっと握る。その手は温かかったけれど…震えていた。俺はミクに泣かないでと一言言いたかったんだけれどその言葉を言うことすら出来なかった。段々と視界がぼやけていっている。そうか…もう俺は…いやまだ消えるわけにはいかない。ミクを…ミクに悲しい想いをさせたくないんだ。
俺はミクの手を少しだけ握り返す。その時、マスターの声が聞こえた。ミクの声もその後に聞こえて、どうやら俺はワクチンソフトをインストールされることだけはなんとか理解することが出来た。しばらく二人が何か話していたと思ったら、ミクが両手で自身の顔を覆って声にならないほどに泣いてる姿が見えた。俺は必死に自身の口を開いて、こう言う。
「な…かないで…み…く」
どうか泣かないで…どうかいつものように笑って…あの幸せに満ち足りている笑顔をどうか…。
それからしばらく俺の意識は無くなった。きっとそろそろ危なかったんだろう。ミクがいなかったら俺はもっと早く意識を失っていたのかもしれない。ミクが俺を…俺の命を繋ぎ止めてくれたんだ。
ミクのことばかり考えていたからか、意識を取り戻してからすぐに発した言葉も…ミクの名前だった。
「ここは…俺…ミク?」
俺はゆっくりと起き上がって、そこがどこだか確かめた。どうやら助かったらしく、ミクとマスターがはっきりと視界に入る。そして、急にミクからぎゅっと抱き締められた。
「お兄ちゃん!お兄ちゃん!良かった…本当に…」
抱き締めてくれたミクの手は震えていた。そうか…そんなに怖かったんだね。
「ミク…ごめんね。こんなに泣かせてしまって…怖い思いをさせてしまって…」
俺はなるたけ優しくミクを抱き締めた。もうこんな思いはさせたくない…いや、させない。大好きな君にはいつも笑っていてほしいから。いつまでも笑顔で…。
fin
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。