遅れましたが、今回は「ど」ということでフィリップ・K・ディックの「ドクター・ブラッドマネー」を読んでみました。
SFはたぶん好きなんだけれど、実は(?)あまり読んでいないので造詣がまったく深くなかったりします。ディックは「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」だけ読んだことがある。
SFはたぶん好きなんだけれど、実は(?)あまり読んでいないので造詣がまったく深くなかったりします。ディックは「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」だけ読んだことがある。
「ドクター・ブラッドマネー」はいわゆる核戦争物で、舞台は1981年。これが書かれたのが1963年ということなので、書かれたときには近未来世界、でも今読むと起こらなかった過去の世界で、いきなり読み始めるとけっこう違和感があります。テクノロジーの発達具合が微妙。1963年当時の(ディックの)未来のイメージはこうだったのだなーと楽しめる部分でもありますが。
核戦争自体の描写は割とあっさり終わり、主眼は核戦争後の世界の描写に置かれています。なんというか、状況は劇的に変化しているけれど、人間は変わらない。適応して変わっている部分もあるけれど、基本的には変わっておらず、そういう意味で非常にリアリティのある核戦争後世界の描写になっています。
あと、全編通して共通しているように思えるのは、妄想と現実の境界が曖昧なところかもしれません。ただの妄想かと思えば事実であったり、事実かと思うと妄想から引き起こされた(?)事柄で、どちらかというと妄想に属するものだったり。どろどろしたリアリティと妄想が混在していて、使われているアイテムはSF的なのだけれど奇妙な現実感のある作品です。
ストーリー的にはわりとはっきりしたドラマティックな展開があって、読みやすいように思います。途中はちょっとだるいかも。
あんまりSFっぽくないのかもしれません。そうでもないのかな。とにかく人間の描写がごつくて、ぐちゃぐちゃした人間関係とかイヤな感情とかが丁寧に書かれている印象です。
あんまりSFっぽくないのかもしれません。そうでもないのかな。とにかく人間の描写がごつくて、ぐちゃぐちゃした人間関係とかイヤな感情とかが丁寧に書かれている印象です。
一気に読める面白さは十分にある良作だと思いますが、好みが分かれるかもしれないなーと思いました。