酒井順子さんと言えば、負け犬の遠吠え効果のせいで、いわゆるオンナの立場から社会を斬ったつもりになっている系みたいな変なイメージがついてしまいましたが、彼女の普段の作品は意外にもまっとうなエッセイが多いです。
このまっとう感はどこから来るのだろうと考えてみると、どうも「○○な時」「○○なもの」を列挙していくような全体の構成が枕草子に似ているんですね。枕草子の1章をむりやり本1冊に引き延ばしたような作品、とでも言いましょうか。「煩悩カフェ」(幻冬舎文庫)ならさしずめ「心塵覚ゆるとき」、「ホメるが勝ち! 」(講談社文庫)は「あへてあはれがるとき」:……つーかよく見たらこの人、「枕草子REMIX」(新潮社)なんて本を書いてたー! ガチだったー!
まあ、1章分の内容を1冊に引き延ばしてるぶん、もちろん内容も薄いわけですが、「あー、あるある」と呟きながら頭をからっぽにして読めるので、通勤電車の10分間の暇つぶしにはもってこいです。
まあ、1章分の内容を1冊に引き延ばしてるぶん、もちろん内容も薄いわけですが、「あー、あるある」と呟きながら頭をからっぽにして読めるので、通勤電車の10分間の暇つぶしにはもってこいです。
本書も枕草子形式の作品の1つで、「気持ちいいとき」を列挙したエッセイです。せっかくなので、内容を枕草子風に要約してみようと思います。文法とかはちょう適当です。
「こきみよしとき」
こきみよしとき。日負しぬる肌が、二、三日のちにおもてが白く浮きしところを広く剥ぎぬるとき。痒き耳を綿棒にて清めしとき。ことに、いかめしきかさぶたの取れたる、いとこきみよし。美容院にて、よそびとに己の髪頭をすすがれしとき。生卵をはしらかし、中の薄ひ皮に爪を立て引破るとき。
甘きならさらなり、もちもちと太き麺子をつづしり食るとき。ことごとく筋を搔き払ひた柑子を口に含むとき。蟹の殻を割り、なごりなく身をくじるとき。なにもなにも、したたむときは皆こきみよし。
ものを購ふとき、消費税の故にいみじうはしたなき値なるも、ささやかなる銭をかたがた帯していて、返代が要なきとき。潮浴に来たりて、海なかにて尿を放るとき、いとこきみよし。
さて、次は「に」。
書痴マサトクさんによる「ニーチェ全集」の枕草子訳に乞うご期待!(嘘)
書痴マサトクさんによる「ニーチェ全集」の枕草子訳に乞うご期待!(嘘)