第31回メフィスト賞受賞作品なのだそうです。
基本的に文庫になるまで本を買わない主義でもあり、あんまり○○賞受賞とかそういうことで本を選ぶこともないので、この本を購入してみたのはほんとうにただの偶然でした。
基本的に文庫になるまで本を買わない主義でもあり、あんまり○○賞受賞とかそういうことで本を選ぶこともないので、この本を購入してみたのはほんとうにただの偶然でした。
上中下巻の3冊組みでひとつの絵になる装丁、ちょっと気になるあらすじ、で、なにげなく見た著者紹介。千葉大学教育学部卒…あらあら後輩だ、しかも年齢的に在籍期間もかぶってるし…ちょっと読んでみようかなあ、くらいの軽い気持ちでした。
ある雪の日、学校に閉じ込められた男女8人の高校生。どうしても開かない玄関の扉、そして他には誰も登校してこない、時が止まった校舎。不可解な現象の謎を追ううちに彼らは2ヵ月前に起きた学園祭での自殺事件を思い出す。しかし8人は死んだ級友の名前が思い出せない。死んだのは誰!?誰もが過ぎる青春という一時代をリアルに切なく描いた長編傑作。
8人の高校生による青春群像劇とでも言ったらよいのでしょうが、あちこちでも言われているように、わりと型どおりの人物造詣で、それぞれが抱えている過去もそれなりにありきたり…なので、地方の進学校にいたことがない人間が読むと、リアルな青春時代とは感じられず、謎をとくのに都合のいい人物だけを配置したご都合主義の物語に見えてしまうかもしれません。
が、実際に地方の進学校出身者の私の目から見ると、登場人物たちの背伸び加減、他人と比べて自分がちょっと変わっていると劣等感を抱いたり逆に優越感を隠し持っていたりする感じなど、いちいち身に覚えがあって、もう心がひりひりするような痛みなくしては読めません。設定としてのリアリティはぜんぜんないけど、心の機微に関するリアリティがありすぎるというか、リアリティ云々以前に知ってるよというか、「ああもう!!」みたいな。作り物っぽく見えるかもしれないけど、こういう特殊な狭い世界が世の中にはほんとにあるんですよ。
実はこの作品以外の作者のほかの小説を読んでいないので、なんともいえませんが、今回の「天才ではないけど、そこそこ秀才で、でも天才ではないことに限界を感じている」というような作者自身を投影した人物像ではなくて、全然違う世界を書いたらどうなるのかなあと気になるところではありますね。今のところ小学生か大学生かという年齢の違いはあっても、そのあたりの「上の下」クラス以外の主人公というのは出てないようですし。期待したいところです。
最後に、どうしても納得できなかったことがひとつ。なぜ作者と登場人物の一人が同じ名前である必要性があったのか、ということ。この二人が違う名前でさえあれば、もっと世間の評価は高かったんじゃないかなあと思うのですが。