白鳳院作・思い出の檻「第二話」 !mv中央公園 !bgm公園 !v27=1 @101 ゼェハァゼェハァ……。 @102 こんな朝からどうしてここまで ダッシュしなくちゃいけないんだよ……。 それもこれも姉さんのせいだ。 悪ふざけするのは母さんだけで十分なのに。 @100 しかし早朝なのに公園には人が多いね。 休日の真昼よりもいるんじゃないか? @510 あらシシト君。おはよう。 @100 あれ、近所の…… @510 リーザよ。忘れたの? @102 普段と格好が違うせいで 一瞬誰かと……。 @100 ちなみにこの寒い時期だって言うのに 半袖半ズボン。 今時こんなの着るのはマラソンの選手…… @102 ……って今日マラソンがあるんですか? @510 ええ。人が大勢いるでしょう? よく見ればゼッケンを付けているのが わかると思うけど。 @100 あ、本当だ。 @102 そう言えば冬休み直前に 「出られる奴は出ろ」とか言われた気が。 知った顔もちらほら見えるね @310 HA〜HA〜HA! シーシートーコワースー (ゴミ箱をボディプレスで破壊) @300 校長先生のあの口癖、 随分ロングヒットしてますな、副校長。 @320 ……ええ、そうですな。 (なんであんなヤツが校長に……) @310 HA〜HA〜HA 副校長減給デ〜ス! @101 今心を読んだぞ校長! あと公共物破壊! @102 ああいう事して 警察に捕まらないから不思議だ。 ……スーツで走るつもりか? あの人達。 @510 ところでシシト君。マラソンじゃないなら どうしてこんな早朝からここに? @102 姉に色目使われて逃げてきました。 @510 ……………………。 (想像中) !bgmサブコミカル ……………………。 (妄想中) @101 いや妄想はしないでください! @510 だってご近所でも色々噂が立ってるから、 そう言うことがあっても不思議はないかな ……って。 @101 噂ってどんな!? @510 お昼頃あそこを通ると 「アニキィ!」って叫びが聞こえてくるとか @101 母さ〜んっ! まだアレ見てるのかあぁっ! @510 横の茂みにリスの死体が転がっていて、 だけどいつの間にかそれが違う場所に 転がっていたりするとか……。 @102 それは僕だね。今度から制裁は 室内オンリーに切り替えよう。 @706 (……オイ……チョット……マテ……)  ※まだ冷凍庫で凍結中 @510 それと……最近よく噂になっているのが、 何か獣の遠吠えが聞こえるとか……。 @102 …………? それは心当たりが無いなぁ。 @510 あくまで噂だし、尾びれ背びれはくものよ。 いい例として、この前君の家の屋根から ミサイルが飛んでいった…… というのもあったわね。 @102 …………あ〜それは真実です。 (じいちゃんの研究所がバグって) @510 …………そうなの? @102 ええ、まぁ。 @510 ……すごい家庭ね。噂に違わず。 !bgm公園 @510 ところでシシト君。家から逃げてきたなら、 もしかして今暇なの? @100 友人と待ち合わせがありますけど…… まだ随分余裕がありますね。 @510 そう……なら一緒に出てみない? 学校の先生もいるなら、もしかしたら 成績に加点してくれるかもしれないし。 @102 いや、それはないでしょう。 @510 わからないわよ。 世の中には退学に追い込まれた生徒が、 「最強」とまで言われた教頭先生と 武術大会で戦って勝利した結果、 退学を取りやめてもらった ……なんて話もあるんだから。 @102 え〜〜〜。 @100 でもまぁ、いいですよ。 成績云々はともかく、暇であることには 変わりないですし。 @510 そう。よかったわ。 それじゃあ飛び入りでペアマラソンの方に 出場登録してくるわ。 @102 ペアマラソン? 何ですかそれ? @510 とにかくお互いが見える範囲内で 一緒に走るマラソンよ。 片方が事故にあっても助けられるから、 山道マラソンとか、危険な場所を走る際に よく使われるわね。 ラストは手を繋いでゴールしなければ ならない……ってルールの所もあるけど、 今回はほぼ一緒にゴールすればいいみたい。 @100 へぇ〜。 @102 でも僕なんかじゃお姉さんの足手まといに なりそうだなぁ……。 @510 何言ってるの。 見てるわよ、毎週恒例の 「村上シシト2000M3分走」 あの走力があれば楽勝よ。 @101 見ないでください! @102 いつの間にかビデオに撮られて 売られてるんだよな、僕の登校風景。 なにげに売れ行きいいらしいし。 @510 それじゃあ、登録してくるわね。 @100 は〜い。 @102 ……ああ、相変わらず予定通りに いかない毎日だよな、僕って……。 @100 でもまぁ、 やるからには全力を尽くさないとね。 !mv全体マップ !bgmテレフォンショッピング @50 今年もやって参りました! 第二回 「ポロリもあるよ。      ドキドキ ペアマラソン!」 @105 ポロリあるのっ!? @510 (ドキドキ) @50 外野の叫びとか心音とか無視して ルール説明いくわよっ! コースは中央公園を始めに このアクアフロートを丸々一周することに なるわ。 公園を南下して倉庫街を横切り、 海岸公園前で曲がって北上よ。 その後ゲーセン前を抜けて住宅街、 ショッピング街。ラストの直線と進むわ。 距離的には大したこと無いけど途中で \f[35]  ちょっとした障害 ……があるけど気にしないでね♪ @101 ちょっととはとても感じられないのは ナゼデスカ――――! @510 がんばりましょうね、シシト君。 @102 うう、何も起こりませんように…… @50 起こるに決まっているのにね、ウフ♪ @105 うわああぁぁぁぁぁっ! @1 そんな訳で、相変わらず僕の日常は 朝から不条理に満たされまくってます……。 @105 うわぁぁぁあああっ! いきなり空からナマコが降ってきたぁぁっ! @50 ペアマラソンには危険が付き物よ♪ トップにいたりすると、アイルランド出身の 緑色の服を着たおっさんに妨害されたり するからどうかお楽しみにねっ! @101 楽しめねええぇえぇっ……! !mv間(笑 !mvnil !bgm @1 所変わってアルバートの部屋…… !mvアルバートの部屋 !bgm安らぎ @250 俺に届いたこの荷物。一体何が入っているか ……しかし送り主名がないな。怪しい。 @1 (ゴドゴド……!) @252 しかも先程からゴドゴドいってるし! @250 ……まぁ、開けてみれば分かるか。 @1 ビリリリ……(ガムテープが取られる音) @940 ブハッ! !bgmコミカル @252 黒猫が飛び出してきた――――! @940 オイ兄ちゃん。ちょっと箱を開けるのが 遅すぎじゃねぇのかコラ。 @252 しかも不良言葉だしっ! @251 ともかく……貴様、何者だっ!? @940 あン……? 何って、見てわかるだろうが。 @251 俺の知識に 段ボールに入っていたり喋ったりする 生物など…… @250 ……約一匹いたような記憶があるが、 それはさておくとしよう。 (※リスの事) @940 そこをスルーするなよ。 いるんだろ。喋ったり段ボールに入って たりする生物が。 俺はそいつと同業なんだ。 !bgmサスペンス @250 同業、だと? @940 ああ、お前にも行ったはずだがな。 お前をスカウトしに参りますってメールが。 @250 メール……? 俺はメールのチェックは 頻繁にしない主義だからな。 @940 つまり滅多にメールが来ないほど寂しい ヤツだと。 @252 それを言うんじゃない! @250 む……本当に来ているな。 つまりお前は俺をスカウトしに来た、と。 @940 ああ。 @250 ……拒否権は? @940 あるが、ない。 ……例えば、ここでお前が断ったせいで、 お前の知り合いが一人死ぬって言われたら 断れるか? @251 貴様……っ! @1 (ヒュッ……! ……ストン) @940 おいおい、そういきり立つな。 俺がするわけじゃねぇ。 第一、俺は正義の味方なんだぜ? @250 信用できんな。 @940 なら信用しなくてもいい。 言っておくがさっきの例えは嘘じゃない。 お前が引き受けなければ 人が死ぬ可能性は膨れあがるんだ。 ……逆に、お前が俺の話に乗れば 多くの人々を助けられる。 どうだ、悪い話じゃないだろう? @251 く……っ! ……いいだろう。だがその前に誓え、 先程の言葉に嘘偽りはないと。 @940 いいだろう。では何に誓う? @250 お前の最も大事とするモノにだ。 @940 では一角の女神に誓って……。 これでいいな。 今はウダウダ話ている時間はねぇ。 走りながら事情は説明する。 おまえはとにかく……。 ――――! @251 なんだ、どうした!? @940 始まりやがった。 ……急ぐぞ! !bgm緊迫状況 !mv警察署コンピュータ室 @602 警部! アクアフロート内の全カメラ 緊急停止! 何者かがハッキングを 行っているようです! @610 わかっている!  どうせ俺たちにそっち方面の対処はできん! これが「奴」の仕業なら……。 @602 …………! シシト君が危ない! @610 場所は分かるか? @600 現在位置の特定は不可能ですが…… 先ほどまで盗聴していましたので 問題ありません。 彼は現在マラソンに出場中。 速力とコースを比べれば 大体の位置は割り出せます! @610 わかった。 行くぞ! @602 はいっ! !mv間(笑 !bgm !mvnil @1 その頃…… シシトは相変わらず凄まじい速度で コースを走り抜けておりました。 !mv倉庫街 !bgm緊急事態 @551 マテマテー! @104 ウボブッハアアァァァッ! あれは「緑の服着たおっさん」じゃなくて 緑色のおっさんだろぉぉぉおっ! @510 さ、さすがはシシトくんだわ。 訓練もつんでいないのに私がペース遅れ するなんて…… ふふっ、この調子なら優勝商品の 海外旅行ペア旅行券は私のものねっ! @101 欲望丸聞こえですよお姉さん! @50 さて、現在トップにいるのは シシト・リーザ組ね。 倉庫街の障害は結構激しいから がんがんリタイアしちゃってね! (全員リタイアなら旅行券は私に……) @101 リタイアさせてどうするんですかっ!? @102 ナマコとかクラゲとかガラクタとか…… 何人気持ち悪さでリタイアしたか。 !bgmけだるい午後 @510 うしろにはもう誰もいないわね。 ……少し、ペースを落としましょうか @102 いいんですか? @510 シシト君は一気に走りすぎだから…… 一キロ二キロならそのペースでもいいけど、 先は長いんだから抑えないと大変よ? @102 すいません。ついいつもの癖で。 毎回襲われたら全力疾走なんで、僕。 @510 大変な人生ね……。 @100 そうでもないですよ。 波乱に満ちているのは変わりないですけど なんだかんだで、楽しいですから。 @102 まぁ、もう少し僕の不幸が抑えられれば 一番いいんですけどね。 @510 そうなんだ。 ……なんだかシシト君て、 私より年上に見えるときがあるわね。 @102 ……老けて見えますか? @510 そうじゃないのよ。 なんだか達観しているって言うか…… 君なら、例えどんなことがあっても、 決して混乱しないで事態に立ち向かえそう ……そんな予感がする。 @102 それはどうも…… (まぁ毎日ああいう生活をしていればね) @510 ……あら、何かしら。倉庫の上に誰か。 @910   @920   @102 きっとあの人たちが障害の準備を するんでしょう。 ……なんだか見たことあるような格好 だけど、どこで見たのかなぁ……。 @1 (パン! パン!) @510 きゃっ……何か撃ってきたわ! @102 豆鉄砲か何かじゃないかな? @100 あれくらいなら当たっても……ん? @1 (豆鉄砲が命中したあたりに穴) !bgm緊急事態 @105 本物だああああぁぁぁっ! @510 え、えっ!? @910 チッ……なぜ当たらない!? @920 もっとよく狙え! @103 ああもうっ! お姉さん、しっかり掴まってて! @510 ……え、き、きゃっ!? (しっかりとシシトに抱きかかえられて) @103 行くぞ! 必殺! WILL4消費! @101 10秒間に200Mダアアァアァァァァ ァァァアァァシュ────! @1 (ズドドドドドドドド!) @910 な、なんて速さだ! 目が追いつかない! @920 こうなったら撃ちまくれ! 絶対に逃がすな! ……クソ! 物陰に隠れやがった @910 問題はない。後ろは海、この寒さなら 入った時点で凍死は確実だ。 @920 だが携帯で警察は…… ……いや、そうだったな(ニヤリ) @910 ああ。 ここは今や治外法権さ。 !bgm !mvnil !mv倉庫街 !bgmバトル02 @101 ゼェハァゼェハァハァ……! @103 よし、なんとか隠れられたぞ! このまま警察に…… @100 ……ってアレ? 圏外? そんな馬鹿な。 @102 お姉さん。僕の携帯さっき壊れたみたい なんで、お姉さんの携帯から警察に…… @510 ……………………。 @102 …………? あの、お姉さん? @510 あ……えっ? 何かしら、シシト君。 @102 だから警察を。 どう考えてもこの状況は異常だし、 マラソンしている場合じゃないでしょう。 @510 そ、そうね……。 ……あら。私の携帯も圏外だわ。 @102 …………一体どうなってるんだ? @1 (パン、パン、パン!) @510 きゃっ……! @100 この位置なら当たらないから大丈夫です。 そんなに震えないで下さい。 @510 …………本当に冷静なのね。 @102 自分でもどうかと思う時がありますけど。 @100 とにかく、今は何とか逃げることが 重要だ。 僕等の盾になっているコンテナは、 拳銃の弾を耐えるには十分だけど、 あいにくと逃げ道がない。 @102 背後は海で、多分飛び込んだら 十分としないうちに凍え死にしちゃうね。 (寒中水泳に慣れてる人なら話は違うけど) @100 それなりの時間寒さに耐えられても、 アクアフロートは海から人が這い上がれる ような場所が少ない。 コンクリートの壁が水面から 2メートル以上伸びている場所がほとんど で、高さが無い場所は海岸公園くらい。 @102 そこまで泳ぎ切る自信はないな。 第一海をわたっている間は無防備だし。 状況は絶体絶命。さて、どうしようか? @1 (ファンファンファン!) @103 あの音……パトカー? @602 シシト君はこの辺りにいるはずですっ! @610 狐狩。倉庫の上、男が拳銃を持ってるぞ。 @602 ビンゴ! そこの黒服二人! 直ちに銃を捨てて 投降しなさい! 従わない場合、 こちらも強硬手段に出ます! !mvnil !mv倉庫街 @910 どうして警察がここにいるんだ!? @920 偶然近くにいただけだろ。 他に応援がいる気配も無い。 ……あいつらごと殺るぞ! !mvnil !mv倉庫街 @1 (パン、パン、パン!) @602 く……っ! 随分と好き勝手に やってくれるじゃないのっ! @610 狐狩! 無駄口の前に応戦しろ! @602 まずはシシト君の保護が重要ですっ! 所内一のドラテク、見せてやりますから! @1 (キイイィィィィイィイッ!) @105 うわあぶねぇぇえぇっ!? @602 シシト君! 助けに来たわよ! @101 だったらドリフトかけながら僕らに当たる ギリギリの所で止めないでください! @602 男が細かいことを気にするんじゃないの。 ……後ろの女性は? 恋人? @102 いえ、近所のお姉さんです……。 その、腰が抜けちゃってるみたいですけど。 @510 …………。 (シシトの後ろで震えている) @600 銃撃戦に巻き込まれたらそれが普通よ 安心して。私達は警察の者です。 @610 狐狩! @602 はいっ! @1 (パン、パン!) (ババババババババババ!) @101 音が急激に変化しましたけどっ!? @602 マシンガン!? 拳銃の弾が切れたなら さっさと退きなさいよねっ! それが悪役ってものでしょうが! @102 あの、警部さん、もしかして劣勢? @602 所内が混乱していて、 まともに武器も調達できなかったのよ。 あるのはこれと……これくらいかしら? @100 予備の拳銃と、手榴弾が3つ? @602 麻酔銃よ。手榴弾の方は制圧用の催涙武器。 けど、相手は倉庫の上。距離が足りないわ。 もっと近づければ良いんだけど……。 @610 くそ、弾切れだ! 本部! 本部! 緊急事態。至急応答…… ……駄目だ、使えない! @602 こっちも残弾数ほとんどありません。 ……逃げますか? @610 危険だ。 あのパトカーじゃマシンガンまで防げない。 蜂の巣になりたいならいいけどな! @602 万事休す……。かしら。 @100 警部さん。ここから倉庫まで、直線距離で どれくらいですか? @600 ……25メートルくらいかしら。 そんなことを聞いてどうしようって…… @602 あ、シシト君。それを返しなさい! @100 警部さん。これが爆発したら、 残った弾で出来るだけ相手の気を逸らせて ください。 相手の位置から考えると、15メートル まで気付かれずに接近できれば、 相手の死角に潜り込めると思うんで。 @610 素人は手を出すな……と言いたいが、 考えがあるんだな。シシト君? @602 警部まで何をっ!? ダメよシシト君。一般人を危険な目には 合わせられないわ。 @102 じゃあ警部さん、他に良い案は? @600 それは……ないけど。 @100 死ぬしか可能性がないなら、 僕はやります。 @102 成功確率はまぁ、低いかも知れませんけど。 その時はその時で、がんばってください。 @602 …………。 シシト君。あなたは、怖くないの? @102 怖いに決まってるじゃないですか。 さっきから震えっぱなしですよ。 @600 ならどうして―― !bgm @100 僕の近くで誰かが死ぬのは、 もっと嫌なんで。 ……それだけです。 !mvnil !mv倉庫街 !bgm緊迫状況 @910 おい、向こうの銃撃が止まったぞ。 弾切れか? @920 だろうな。 フフ。それじゃあそろそろ決着をつけるか。 俺は下に行って直接奴らを撃つ。 逃げないかどうか上で見張っていてくれ。 @910 わかった。 ……ん、誰か出て―― @103 これでも……食らえ! @1 (ボンッ! ボンッ!) @910 催涙弾か? ……だが全然届いてないな。 @920 最近の学生なんてあんなもんだ。 それよりさっさと―― @602 …………っ! (残弾六発。はったりには十分よ!) @1 (パンパンパンパンパンパン!) @910 まだ弾が残ってやがったか! @107   @920 …………? 今、何か? @910 応戦するぞ! どうせ弾は少ないのに 変わりはないんだからな! @920 あ、ああ……。 !bgmサスペンス !mv倉庫内部 @102 ふう、なんとか気付かれずに侵入できた。 @100 催涙弾の煙で姿を隠して 倉庫内に侵入する作戦は成功だ。 (ちょっと目が痛いけど) あとは、警部さん達に集中している あいつらをこれで眠らせれば……。 @100 上に上がるハシゴは……これだな。 ……よいしょっと。 !mv倉庫街 @910 (一心不乱に銃を撃っている) @920 (同じく) @102 後ろには物騒な武器が山積みになっている。 これだけあれば軍隊相手にしても 勝てそうだ。 @100 とにかく気付かれない内に二人を―― ――――(銃を構える) \S !bgm !mvnil @1 その時、ほんの一瞬だけの映像が僕の頭を かすめた。 薄暗い通り、撃ち殺される人、撃たれる僕、 真っ赤になっていく視界…… ――僕の持っている武器は麻酔銃だ。 人を殺す武器じゃない。 ……けど、この僕の握っている武器の 形状が、否応なく昔と重なって…… ほんの少し込めればいい指先が、震えた。 !bgm !mv倉庫街 @1 (かしゃん) @910 !? 貴様は…… @920 村上シシト! @103 やばっ……! 銃落とし―― @1 (パァンッ!) !mvnil @1 その音が妙にスローモーションに聞こえた。 弾が見えるような気がして前を見ると、 本当に弾の動きが見えた。 それは、どれだけ動かそうと思っても 動いてくれない体を目がけて 真っ直ぐに突き進み―― @1 \r[守護の理力,シールド フォース]! !mv倉庫街 @1 その言葉と共に、はじき飛ばされた。 !bgmバトル01 !v29=1 @262 ゼェハァゼェハァ……! 何とか間に合ったか……! @940 始めて使った魔法にしては上出来だ。 発動して良かったなぁ、お二人さん。 @102 黒猫が不良風に喋ってる……。 で、今のはもしかして魔法? ……うわぁ。こんな所で純正の魔女っ娘 を見ちゃったよ僕。 ……ゴスロリの。 @910 銃弾をはじき返しやがった……!? お前、何者だ! @260 貴様等悪人に名乗る名はない。 ……さっさと眠ってもらおうか。 @102 怖っ……。 小さいのによくあんな迫力出せるなぁ @920 馬鹿にしやがって! 魔女っ娘気取りの ガキに負けてたまるか! (両手で拳銃を構える) @910 そうだ! 俺らにだって プライドってもの―― ――ぎゃああぁあぁぁっ!? @100 一瞬で男の服が燃え上がった。 ……髪型をアフロに変えて倒れたね。 @260 \r[火炎の理力,フレイム フォース]。 ……お前も、焼き具合はそれでいいか? @920 ひっ……来るなぁぁっ! @1 (パァン! パァン!) @103 危な―― @940 くないぜ。むしろ危ないのはお前だ @1 ――――!(目の前で銃弾が弾かれる @101 うわ危ねぇぇっ!? @100 ……って、じゃああの子は? @940 覚えておけ、相手の武器が射撃だったら、 WILLを消費しても前進してくっつけ。 近距離での命中率は非常に低い。ケケッ! @102 ……はぁ? @260 …………。 (一瞬の内に男の懐に入っていた) ……ふん。 (そのまま両手を横に一振り) @1 (かしゃん、かしゃん!) @920 俺の銃が……! 待て、待ってくれ。どうか命だけ―― ――は?(指先を額に押し当てられ) @260 \r[雷撃の理力,プラズマ フォース]! @1 (シビビビビビビビビビビ……!) @920 うぎゃぁぁぁあぁぁぁああぁっ! …………(バタン!) @102 すげぇ、大の男を秒殺…… 僕よりずっとすごいや。 @260 ……こんな所か。 シシ――いや、そこの少年。無事か? @100 あ、はい。 どうもありがとうございました……。 えっと……。 @260 ん? ああ、名前か。お――私の名は……。 …………。 @100 …………? @260 …………ちょっと失礼。 @1 (猫を捕まえて隅に移動) !mvnil !mv倉庫街 !bgmサブコミカル @261 (猫! 俺の名前は何て言えば良いんだ!) @940 (知るかよ。アルバートでいいじゃん) @261 (この姿でアルバートと名乗ったら  間違いなく俺は明日から変態扱いだ!) (こんな姿に変えておいて、少しは  責任感じないのか、お前は!) @940 感じないね。 それに大丈夫。お前は既に変態だ。 要は折れ線グラフの一番下。すでに 落ちきったモノがこれ以上落ちはしないさ。 @262 ガーン! @102 あ、あの〜〜。 @260 ――――! (と、とにかく適当に名乗るからな) !mvnil !mv倉庫街 @102 (何話してるんだろ) あ、あの〜〜。 @260 ――――! い、いや……何でもない……もとい、 ありません。 @102 はぁ。 @260 私の名前は……ア、ア、ア…… @100 ア? @260 アナスタシアだ。……どうぞ、よろしく。 @100 えっと、僕は村上シシトって言います。 @260 ああ……(まぁとっくに知っているけど) @260 で、ではお――私はっ! これから向かわなければならない所が あるので、これにて失礼するっ! さらばっ! @1 (倉庫の屋根から素早く飛び降り、去る) @102 すごい早業……。 さて、一段落付いたし、刑事さんを 呼ばないと。 !mvnil !bgm @0 結局、その犯人を逮捕して、事情聴取を 受けることも無く僕は家に戻った。 あんな事があった後だ。リョウヘイ達に 「今日は急用が出来て行けなくなった」 と仮病を使わせてもらうと、 !v28=1 @202 なんだお前もかよ。さっきアルバートから 連絡があって、あいつも行けないってさ。 今日は中止だ。 @0 とのこと。これ幸いにと午前中は ゆったりと休ませてもらうことにする。 だけど眠ることはできなかった。 ……腕には、引き金に指をかける感触と、 想像以上の重さがまだ残っている。 結局あのアナスタシアっていう女の子が 来てくれたからいいものの、 彼女が来なかったら、 自分は一体どうなっていただろうか……。 \s !mvゲームセンター !bgmゲームセンター @430 ねぇ知ってる? 最近また「SYK」が 出たんだって! @550 ほほう、それは見逃せませんな。 「SST」のような新しいプレイヤーも がんばってはいますが、 さすがに「SYK」が出てきてはランク 一位の座は危ないですなぁ……。 ――――ん? @430 ――あら? あんた誰? ――「SYK」の知り合い? ――姿? 見てないわよ。 私だって四六時中ゲーセンにいるわけじゃ ないし。 ただ、ランキングが更新されてただけよ。 !mv本屋 !bgmショッピング街 @1 ――ここでよく本を見ていた女の子? ああ、あのゲーム雑誌を真剣に見てる子か。 ギャップがかわいくてよく覚えてるよ。 ――え? 最近かい? 確かに見ないね。 でも、別に来ないって訳じゃない―― ……どうしたんだい、急に興奮して。 ――見間違い? そんなはずはないよ。 髪の毛が長くて、文学少女って言葉が よく似合いそうな子だろう? ここ半年、一回か二回はみた記憶が あるよ。うん、間違いない。 !mvnil !bgm神秘 @1 (プルルルル……プルルルルル) @1 はい。どうしたのこんな朝早く? ――え? 何言っているのよ。 そんなはずないじゃない。 だってあの人はずっと前に……。 あ、でもね。 ……こんな事、あの人の親友だった貴女に 言うのも失礼だって思うんだけどさ……。 ……時々「出る」らしいよ。 少なくとも、学内では噂になってる。 ――場所? 色々あるけど…… やっぱり、「あそこ」じゃない? !v35=1 !mv七影霊園 @400 とまぁ、来るには来てみましたけど……。 @402 いるわけ、ないですよね……。 こんな調査みたいなことして、 私って失礼な子なのかも……。 @404 よしっ! ここに来たのも何かの縁だし、 お墓参りにしましょう。 そして今日の事謝らないと。 !mvnil !mv七影霊園 @400 冬村さん、あなたが亡くなってから もう一年になります。 シシト先輩も、学校のみんなも、 とても元気に過ごしていますよ。 私は、時々つらいこともあるけど、 元気に過ごせていると思います。 どうか私たちの事を見守っていてください。 @402 ……それと、今日は冬村さんによく似た 人を見てしまって、冬村さんの事を 街の人に色々聞き込んでしまいました。 ……ごめんない。 @400 …………ふぅ。 それじゃぁ、帰ろ―― !bgm !v36=1 @410   @400 え……? ……冬村、さん? @410   @400 冬村さんですよねっ!? もしかして生きて―― @404 んっ……くっ!?(急に喉を掴まれる) !bgm緊迫状況 @410   @404 や、やめ……っ! 嘘、片手でこの力―― ううっ……! @410   @402 冬村さん? わた、私、です……っ! セ……トですっ……。 やめて……っ! @410   @402 う、そ……! どうして、 こんな、こと…… バチ……? 私があんなことしたから バチがあたったの……? 謝ります……もっと……謝り……! @410   @402 (ダメ……ッ! もう、苦しくて……  目の前が……真っ暗に……) (やだ、こんなの……助けて、先輩っ!) @410   @402 (シ――シ――ト――せん――ぱ――) !bgm @1 (ヒュッ!) @410   @1 (ドシンッ!) @404 ――――! ゲホ、ゲホッ! 何、が――! 冬村さん、血が! 手に刺さってるのは……ダーツ? !bgmサスペンス @120 死者が眠る神聖な場所で、 死者を増やす邪な儀式は御法度よ。 @404 あなたは……先輩のお姉さんで、 名前は確か――シイナさん。 @120 そこの黒い髪の女の子。先に忠告するわ。 今日弟に一本使ったから、 私のポケットには後一本しかダーツがない。 @410   @120 それがどういう意味か分かる? これ以上あなたが奇妙な動きを見せたら、 \r[その一本で確実に命を取る,・・・・・・・・・・・・] ――そう言っているのよ。 @404 ケホッ……そんな…… ちょっと待ってください! この人は―― @120 冬村サユキ。 彼女の事はよく知っているわよ。 もちろん、一年前に死んだって事もね。 犬山セトさん。……だったわね? 弟の知り合いを見殺しに出来るほど、 私は冷血な姉じゃないつもりだから。 @402 ……………………。 @120 さて、それじゃあ大人しく―― !bgm @1 (シイナ、シシトがっ!) @120 えっ……!? !bgm緊迫状況 @410   @402 あ、冬村さん……! @120 しまっ……! ……あの逃げ足じゃ追いつけないわね。 それよりも、シシトがどうしたの!? @1 (ここから離れた場所でトラブルに  巻き込まれているようだ) @120 ……危ないの? @1 (かなり。命の危険性がある) @120 「アレ」の事は後回し。そっち優先よ。 @1 (御意) @402 あ、あの……。 @120 悪いけど話している時間はないわ。 また後日、シシトの所に遊びに来なさい。 !mvnil !mv七影霊園 @404 あ、ちょっと……! @402 行っちゃった……。 先輩のお姉さんだけあってすごい速さ……。 でも…… 一体何が、起こっているんだろう。 !mvショッピング街 @1 (シイナ。あの「冬村サユキ」は……) @120 後回しよ。まずはシシトを……! @1 (……五点減点だ。シイナ) @120 なんですって? !mv中央公園 @1 (弟に優しいことは構わないが、  固執しすぎるのもいかがなものか) (あの場合。彼を信じ我々はあの  「冬村サユキ」を追うべきだった) (原因の究明は、我々にしかできぬ仕事。  それを放棄してまで彼を守るのは……) @120 ――――。 そこ、左に曲がって。 学校を通り抜けた方が近道よ。 !mv薙島高校 @120 ……まぁ、そうよね。 私らしくない判断だったわ。今のは。 けどね。何度同じような事が起こっても、 私はシシトを助けに行くと思う。 @1 (シイナ!) !bgm @120 嫌なのよ…… もう……あんな悲しい気持ちになるのは。 \s !mvnil @1 私はいろいろなことが出来た。 勉強もスポーツも平均以上。 仕事だって人の何倍も上手くこなせていた。 ……自信があった。 冷静沈着な人物でいられる自信が、  家族を守っていける自信が、 どんな事があっても決して泣かない自信が。 ……それが一瞬で粉々に砕かれた。 血まみれになりながら、 意識も何も無い中でずっとうわ言を呟く たった一人の弟の姿に。 ……だから誓った。 今まで以上に強くなることを、 誰よりも頼られる存在になることを、 そして…… 決して、 これ以上弟を苦しませたりしないことを。 !mv倉庫街 @120 着いた! @1 (シイナ、上だ!) (……くっ! このタイミングでは……) @120 (間に合わない……そんな……!) @260 \r[守護の理力,シールド フォース]! @120 えっ!? !bgmバトル01 @1 ゴゴゴオォォォォッ! ――ぎゃああぁあぁぁっ!? (シビビビビビビビビビビ……!) うぎゃぁぁぁあぁぁぁああぁっ! @1 (……ふむ、危機は去ったようだな) (シイナ……?) !bgm @120 ……………………。 また、守れなかったわね。 @1 (気にすることはない。今回の場合、  距離がありすぎた) @120 それじゃダメなのよ……。 例えどんなに遠くにいても、あの子を 守れないんじゃ。 ……誓った意味が、無い。 @1 (……………………) (欲張るなシイナ。一人に出来る事など  たかが知れている) (お前は彼のためにここまで必死に走った。  それでいいではないか……) @120 わかっているわよ……そんな事。 ……調査を再開するわ。 まずは姿を消した「冬村サユキ」を探す。 彼女が鍵なのは間違いないんだから。 @1 (そうだ、それでいい。シイナ……) \s !mvnil @1 けれど……やっぱり悔しい。 あれだけ守る、守ると誓って今日まで 生きてきて……。 結局その時になって、私はまた 出遅れたんだ……。 \s @0  ……TO BE CONTINUED……